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新しい時代の守護者編
竜の血を引く者
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玄竜という名前の由来は『竜』からきているらしい。彼は幼い頃に自分の名前を尋ねた時に、両親がそう返してくれた時の事をハッキリと覚えたい。加えて、その竜は日本や中国で見られるような空を自由自在に滑空する蛇型の竜ではなく、二本足で立ち、火炎を吹く騎士の敵。
それが、今の彼だった。あまりの悍ましさに風太郎は思わず身震いしてしまう。
けれども、彼は刀を振るっていく。対魔師としての義務を果たすために彼は恐怖を押し殺して人間大のドラゴンへと立ち向かっていく。
だが、ドラゴンは背中に生やした翼を生やして飛び上がり、風太郎を襲っていく。
大きな突風が風太郎の頬を冷やしていく。
彼は刀を振り上げて人間大のドラゴンに対して斬りかかっていく。
だが、人間大のドラゴンは既に意識を奪われてしまっているらしい。
彼の背中から生えた翼で彼は風塵を巻き上げて彼が迫るのを阻止しようと目論む。
確かに、彼の巻き起こす風は先へと向かう大きな足枷となり、彼が来る事を阻む。
そのまま、ドラゴンは火炎を吹く。熱風が風太郎の肌にまで伝わり、頬を赤く染めていく。
同時に彼の中に一抹の不安を生んでいく。このまま焼き殺されてしまうのではないかという不安だ。
辺りを見渡せば、周りの草木が炎の残りで燃えている。
あくまでも雑草や雑木の葉の端であったのだが、それは風太郎に恐怖を抱かせるのに十分であった。
足を下げて背中を振り向いてそのまま逃げ去ろうと考えたのだが、彼は綺蝶の言葉を思い出して、自身を奮い立たせていく。
そして、火炎を吹いて暴れ回る怪物に向かって叫ぶ。
「オレは逃げない!お前が例えどんな卑劣な手段を使ったとしてもオレはお前の首を狩る!」
この言葉を聞いた途端、既に奪われた意識、単純な事しか考えられない蛇の脳の中に何故か、玄竜の意識が芽生え、同時に彼の知らない記憶が無いはずの意識の中へと流れ込む。
氷と風の紋章を使う女性の対魔師。いや、巫女の記憶だ。
それは妖鬼の始祖を責めている時の言葉だろう。彼女はそれを聞くと長襦袢のままその上に着物を羽織る事もなく逃げ回っていく。
振袖に火事が引火し、そのまま天守閣を業火が包み込む。
同時にそれ以前の記憶が急速に彼の頭の中に流れ込む。そう、玉藻紅葉と木本奏音が初めて会合した時の前後の事が。
彼女は少しばかり前、双子の弟も一つ下の妹も連れずに、出来たばかりの江戸の町で殺戮を楽しんでいた。
木造の家々が密集し、尚且つ路地も多い場所は紅葉の絶好の狩場であったと言っても良いだろう。
彼女は何度も殺戮を繰り返して、その歪んだ顔を見るのを楽しんでいた。
そんなある時の事だ。彼女はたまたま出歩いた寺子屋で友達に囲まれて楽しそうに笑うある少女の姿を見つけた。
何と楽しそうに笑うのだろう。まるで、赤子の様に無邪気でこれからの不安など何もないばかりに楽しそうに。
紅葉はそれを見るなり、その笑顔を壊したい衝動に駆られた。
あの楽しそうな顔を涙と鼻水と恐怖の感情で崩せたらどんなに良いだろう。
そこで、彼女は子供の姿に化けて、その翌日からその寺子屋へと潜り込む。
早速、彼女はその少女の笑顔を破壊するための工作を行なっていく。
まず、彼女を見えないところでいたぶり、更には弁当遠トイレの中に投げ込んだ上には彼女の教材を破く。
あまり、裕福な家庭ではないであろうから、教材の買い直しは出来ないだろう。
紅葉はなんとも言えない幸福な感情で満たされていく。
だが、そこに立ち塞がるのは元の友人たち。
彼らは小さくても姫を守る立派な若侍であった。
これは厄介だ。なので、彼女は代わりに自分を活用して少年たちに彼女の若い侍たちに彼女を守る事をやめる様に進言する。
玉藻紅葉は元より、千年以上の時間を過ごした妖鬼の総大将。
これくらいの工作には訳がない。彼らを簡単に味方に引き込んだ上に、彼女が寺子屋の教師から借りていた本を破き、彼らに証言をさせて先生からの信頼を失わせていく。
孤立した彼女を見て、彼女は途方もない愉悦感に見舞われていく。
だが、ただ一つ疑問な点があった。それは、彼女の家族の存在。
いかに、寺子屋で虐められようとも、家に帰れば両親が慰めてくれる。
紅葉はこれを潰すために、長屋の住人を懐柔し、また時には脅す形で彼女の一家を追い込んでいく。
そして、彼女の一家はとある神社で最後を迎える事になり、両親は子供を殺してから、心中する予定であった。
だが、運良く子供は生き延びた。そして、そのまま神社を去ろうとした時に、保護されたのだ。木本奏音に。
巫女装束の彼女は奏音の頭を優しく撫でると、強く抱き締めて彼女を保護すると告げた。
これは不味い。紅葉はそれを感じて奏音の少女を始末しに向かったのだが、奏音は自分の事を見破り、妖鬼の力を使用しようとする彼女に向かって紋章を使って彼女を追い詰めていく。
あまりにも圧倒的なまでの力に戦慄し、その時代の紅葉は奏音からいかに逃げ切るかを考えていたらしい。
あの後に四代将軍、家綱に言い寄り、討滅寮を潰そうとしたのもその一貫だろう。
だが、江戸城の天守閣で二人はまたしても巡り合いあのまま……。
と、そこまで考えていた時だ。自身の体が大きく裂けていくのを感じた。
体がゆっくりと左右に分かれ、徐々に距離を広げていき、そのまま光に包まれて彼の体は浄化されていく。
彼はもう一度、そして今度こそ最後に意識を失ってしまう前に、この姿になるまでに斬り合いを続けていた青年、獅子王院風太郎の姿を見つめていく。
その姿は堂々とした侍そのもの。太刀を縦に構えた風太郎の周りから放たれるのは冷気と氷。
恐らく、この男は完成させたのだろう。最強の紋章、氷と風の紋章を。
あの妖鬼の総大将を凌ぐやもしれない紋章使いが居るのだ。
玄竜は薄れていく意識の中で最後に何をしようかと迷ったが、盛大に笑ってやる事にした。
この世ではあの少年に敵わない。なれば、自身で培った実力を利用してあの世で皇帝になってやろうではないか。
そう考えると、地獄の中で反乱を起こし、閻魔大王に成り代わってやるのも悪くはない様な気がしてきた。
すると、今の彼には敗北を味わった感触はない。むしろ、安全な場所に逃してくれてありがとうと礼を述べたい気持ちであった。
彼はそう言って大きな声で笑いながら地獄の業火に包まれていく。
それが、今の彼だった。あまりの悍ましさに風太郎は思わず身震いしてしまう。
けれども、彼は刀を振るっていく。対魔師としての義務を果たすために彼は恐怖を押し殺して人間大のドラゴンへと立ち向かっていく。
だが、ドラゴンは背中に生やした翼を生やして飛び上がり、風太郎を襲っていく。
大きな突風が風太郎の頬を冷やしていく。
彼は刀を振り上げて人間大のドラゴンに対して斬りかかっていく。
だが、人間大のドラゴンは既に意識を奪われてしまっているらしい。
彼の背中から生えた翼で彼は風塵を巻き上げて彼が迫るのを阻止しようと目論む。
確かに、彼の巻き起こす風は先へと向かう大きな足枷となり、彼が来る事を阻む。
そのまま、ドラゴンは火炎を吹く。熱風が風太郎の肌にまで伝わり、頬を赤く染めていく。
同時に彼の中に一抹の不安を生んでいく。このまま焼き殺されてしまうのではないかという不安だ。
辺りを見渡せば、周りの草木が炎の残りで燃えている。
あくまでも雑草や雑木の葉の端であったのだが、それは風太郎に恐怖を抱かせるのに十分であった。
足を下げて背中を振り向いてそのまま逃げ去ろうと考えたのだが、彼は綺蝶の言葉を思い出して、自身を奮い立たせていく。
そして、火炎を吹いて暴れ回る怪物に向かって叫ぶ。
「オレは逃げない!お前が例えどんな卑劣な手段を使ったとしてもオレはお前の首を狩る!」
この言葉を聞いた途端、既に奪われた意識、単純な事しか考えられない蛇の脳の中に何故か、玄竜の意識が芽生え、同時に彼の知らない記憶が無いはずの意識の中へと流れ込む。
氷と風の紋章を使う女性の対魔師。いや、巫女の記憶だ。
それは妖鬼の始祖を責めている時の言葉だろう。彼女はそれを聞くと長襦袢のままその上に着物を羽織る事もなく逃げ回っていく。
振袖に火事が引火し、そのまま天守閣を業火が包み込む。
同時にそれ以前の記憶が急速に彼の頭の中に流れ込む。そう、玉藻紅葉と木本奏音が初めて会合した時の前後の事が。
彼女は少しばかり前、双子の弟も一つ下の妹も連れずに、出来たばかりの江戸の町で殺戮を楽しんでいた。
木造の家々が密集し、尚且つ路地も多い場所は紅葉の絶好の狩場であったと言っても良いだろう。
彼女は何度も殺戮を繰り返して、その歪んだ顔を見るのを楽しんでいた。
そんなある時の事だ。彼女はたまたま出歩いた寺子屋で友達に囲まれて楽しそうに笑うある少女の姿を見つけた。
何と楽しそうに笑うのだろう。まるで、赤子の様に無邪気でこれからの不安など何もないばかりに楽しそうに。
紅葉はそれを見るなり、その笑顔を壊したい衝動に駆られた。
あの楽しそうな顔を涙と鼻水と恐怖の感情で崩せたらどんなに良いだろう。
そこで、彼女は子供の姿に化けて、その翌日からその寺子屋へと潜り込む。
早速、彼女はその少女の笑顔を破壊するための工作を行なっていく。
まず、彼女を見えないところでいたぶり、更には弁当遠トイレの中に投げ込んだ上には彼女の教材を破く。
あまり、裕福な家庭ではないであろうから、教材の買い直しは出来ないだろう。
紅葉はなんとも言えない幸福な感情で満たされていく。
だが、そこに立ち塞がるのは元の友人たち。
彼らは小さくても姫を守る立派な若侍であった。
これは厄介だ。なので、彼女は代わりに自分を活用して少年たちに彼女の若い侍たちに彼女を守る事をやめる様に進言する。
玉藻紅葉は元より、千年以上の時間を過ごした妖鬼の総大将。
これくらいの工作には訳がない。彼らを簡単に味方に引き込んだ上に、彼女が寺子屋の教師から借りていた本を破き、彼らに証言をさせて先生からの信頼を失わせていく。
孤立した彼女を見て、彼女は途方もない愉悦感に見舞われていく。
だが、ただ一つ疑問な点があった。それは、彼女の家族の存在。
いかに、寺子屋で虐められようとも、家に帰れば両親が慰めてくれる。
紅葉はこれを潰すために、長屋の住人を懐柔し、また時には脅す形で彼女の一家を追い込んでいく。
そして、彼女の一家はとある神社で最後を迎える事になり、両親は子供を殺してから、心中する予定であった。
だが、運良く子供は生き延びた。そして、そのまま神社を去ろうとした時に、保護されたのだ。木本奏音に。
巫女装束の彼女は奏音の頭を優しく撫でると、強く抱き締めて彼女を保護すると告げた。
これは不味い。紅葉はそれを感じて奏音の少女を始末しに向かったのだが、奏音は自分の事を見破り、妖鬼の力を使用しようとする彼女に向かって紋章を使って彼女を追い詰めていく。
あまりにも圧倒的なまでの力に戦慄し、その時代の紅葉は奏音からいかに逃げ切るかを考えていたらしい。
あの後に四代将軍、家綱に言い寄り、討滅寮を潰そうとしたのもその一貫だろう。
だが、江戸城の天守閣で二人はまたしても巡り合いあのまま……。
と、そこまで考えていた時だ。自身の体が大きく裂けていくのを感じた。
体がゆっくりと左右に分かれ、徐々に距離を広げていき、そのまま光に包まれて彼の体は浄化されていく。
彼はもう一度、そして今度こそ最後に意識を失ってしまう前に、この姿になるまでに斬り合いを続けていた青年、獅子王院風太郎の姿を見つめていく。
その姿は堂々とした侍そのもの。太刀を縦に構えた風太郎の周りから放たれるのは冷気と氷。
恐らく、この男は完成させたのだろう。最強の紋章、氷と風の紋章を。
あの妖鬼の総大将を凌ぐやもしれない紋章使いが居るのだ。
玄竜は薄れていく意識の中で最後に何をしようかと迷ったが、盛大に笑ってやる事にした。
この世ではあの少年に敵わない。なれば、自身で培った実力を利用してあの世で皇帝になってやろうではないか。
そう考えると、地獄の中で反乱を起こし、閻魔大王に成り代わってやるのも悪くはない様な気がしてきた。
すると、今の彼には敗北を味わった感触はない。むしろ、安全な場所に逃してくれてありがとうと礼を述べたい気持ちであった。
彼はそう言って大きな声で笑いながら地獄の業火に包まれていく。
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