太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います!

アンジェロ岩井

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新しい時代の守護者編

決闘のやり直し

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玄竜は先程までとは別人と言っても良い程に人が変わった風太郎を見て頭の中でふと一人の巫女姿の女性がよぎる。
彼女の名前は確か、木本……。
玄竜は首を横に振ると、過去に囚われる事をやめていく。
そもそも、自分は過去に囚われる性質タチではないだろう。
彼は刀を構え直し、刀の刀身を放ち、そこからあの鎖蛇を繰り出していく。
だが、風太郎はそれを風の破魔式で吹き飛ばして、初めて彼の頬に傷を与える。
通常の妖鬼であるのならば、単なる戦闘時での怪我に過ぎなかっただろう。ただ、玄竜からすればそれは大事であった。なにせ、今のいままで対魔師を圧倒し、無敵を誇っていた彼への久し振りの攻撃だったのだから。
「ば、バカなァァァァァ~!!」
彼は頬を抑えて地面の上に膝を突いていく。
こんな事は間違いだ。あり得ない。天地がひっくり返ったとしても自分が破魔式しか使えない対魔師にやられてしまうなどあってはならない事だ。
こんな事が許されて良いはずがない。これは絶対王政期のヨーロッパにおいて国王やその家族並びに貴族たちを傷付けるのと同じくらいにやってはいけない事の筈だ。
いいや、王なんてものでは償いきれまい。自分はいずれ皇帝となるのだ。
日本で革命を起こした後に、アジア各国に革命という考え方を輸出する20世紀のナポレオンとなる呼ばれる様になって……。
その自分に対して目の前の男は頬を傷つけるという暴挙に出たのだ。
これは死罪もやむを得まい。だが、生憎、今は自分一人しかいない。
ならば、自らの手で処刑してやろう。相手は太刀を握っているが、構わない。ヨーロッパの王国での死罪の時に反撃の機会を与えられて、無事それが成功すれば、晴れて釈放という様なものだろう。
ならば、それに答えてやるのが王、いや、皇帝だ。
玄竜は刀を構えて風太郎と向き直っていく。風太郎と玄竜とは互いに刃を交わし合うのと同時に、試合開始のゴングの代わりに刀を二、三合打ち合っていく。
そして、互いにその場から離れるとそれぞれの破魔式と魔獣覚醒を打ち合う。
風太郎は風と氷の破魔式を。玄竜は武器を扱った魔獣覚醒を。
戦いの影響のために、轟音が周囲に響き渡り、両者がどれ程、凄まじく武器を打ち合っているのかが分かる。
それを見て絶句する日下部暁人。対して感嘆の声を上げるのは桐生。
「大学での戦いの時は何とも思わなかったが……まさか、あの少年がここまで成長するとは夢にも思わなかったぞ」
「あぁ、予想以上の成果だな」
それに同調するのは同じく風太郎と船橋で共に戦った氷堂冴子。
二人は互いに激闘を繰り広げる風太郎を見てその手を震わせていく。
「思えば、私もお前もあの少年と関わるまでは綺蝶の事が嫌いだったな」
冴子の問い掛けに、桐生は同意を示す意味で首を縦に動かす。
「あぁ、あんな危険な破魔式を持つ奴がこの討滅寮に居るんだと知ったら、いても立ってもいられなかった。だから、私は綺蝶の事が嫌いだった」
「私もだ。いいや、私は綺蝶の破魔式もそうだが、何よりあいつの態度と口調が気に入らなかった。ガキはガキらしく構えていれば良いのにさ、あんな気取った大人みたいな喋り方をして……」
「だから、煙たがってたってか事かい?甘えさせたいんなら、そう言ってやれば良かったのに」
「……バカいえ、私の方から言えるか。そんな恥ずかしい事……」
彼女はそう言うともう一度、戦いに向かっていく。
今の自分たちの相手はあの鎧武者の老人なのだ。忘れてはならない。
鎧武者の老人は三人の対魔師を相手にしているものの、彼が疲れる様子は見えない。むしろ、まだ足りないと言わんばかりに暴れている。
「厄介なヤローだぜ。テメーの頑丈さは亀の甲羅以上だぜ」
「全く厄介な敵だよ。ぼくの刀がピクリともしないなんて……」
海崎英治と一条新太郎、瀬戸口花陽の三名はそれぞれが愚痴を混ぜながら、三人で老人を取り囲む。
「あまりの多さ……だが、わしの敵ではない。このまま葬ってくれようぞ」
彼はそう言って両手に握っていた大小それぞれの刀を振り回して三人に向けていく。
そこに、二人の対魔師がそれも、両者とも紋章を使える上位の対魔師が参戦したのだが、武者姿の男は怯む様子は見せない。
彼の役目は預かられ先の主人を妖鬼対策研究会の面々と氷堂冴子から守る事こそが義務なのであり、むしろ、二人が今までよりも積極的に戦いに向かって来てくれた事に喜びさえ感じていた。
「さて、いざ参らん!」
武者はこの大多数を相手にしても尚、怯まずに全員に向かって刀を振っていく。
安土桃山時代からの武者が激闘を繰り広げている時だ。
風太郎と玄竜との決闘も後半へと差し掛かっていた。
「己!ゴミがよくもオレを侮辱したな!」
「侮辱したもクソもねぇよ。エリート様。あんたが罵声を飛ばしたから、オレもあんたに憎まれ口を叩き返したそれだけの事だよッ!」
風太郎はそう言って風を纏わせた刀を彼の刀の上に振っていく。
勢いよく振られるものだから、彼の刀にも反動が来てしまう。
玄竜は彼に向かって向き直ると、大きな声で、
「よくぞ、風と氷なんていう破魔式でオレを追い詰めてくれたものだ。そこだけは褒めてやるよ」
「風と氷『なんていう』?そんな過小評価をしていたんじゃあ、あんたがここまで追い詰められたのもしょうがないな。だが、もうヒルも武器もオレには通じない。どれもオレの太刀でひっくり返えせてしまうからな」
風太郎の言葉を聞いて、玄竜は焦りを感じてしまう。
このままでは自分の魔獣覚醒があの男に限っては圧倒的な武器ではなくなってしまうという事に。
逃げるべきか。いいや、逃げるのは不味い。
この先も、あの男に怯えながら今後の人生を暮らすなんてまっぴらごめんなのだ。
やはり、脅威は排除しなければなるまい。例え、どんな卑劣な手段を使ったとしても……。
彼はそう考えるとそれを使う事にもう躊躇いは感じなかった。
これで暴走して死ぬよりも、あの男に生涯を脅かされて暮らす方がマシだと考えたからだ。
彼は躊躇う事なくその魔獣覚醒を使用していく。
すると、彼の体は人間のものから人間とは思えないものへと変化していく。
トカゲの様な鱗を生やし、蝙蝠のような翼を生やし、牛の様なツノを生やしたそれは到底、人間の姿には見えない。
それはまさに怪物。伝説上のドラゴンそのものであった。
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