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新しい時代の守護者編
静かなる決闘
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獅子王院風太郎は刀を握って遠呂智と睨み合う。風太郎は東京で初めて対峙した時に彼はまだ赤子。例えるのなら、鶏の雛。生まれたばかりでピーピーとしか鳴く事ができない雛だった。
だが、今はどうだろう。風太郎はあの時以上の力を誇って、自分の目の前に立っていた。
最初に戦うのはどちらなのだろうか。それぞれが刀と直剣を構えて向き合う。
最初に待ち切れずに動いたのは遠呂智の方だった。
遠呂智は直剣を振り上げて、風太郎を襲っていく。
遠呂智の持つ直剣には雷が宿り、その電流が風太郎を襲っていく。
風太郎は刀を構えて遠呂智の剣を受け止める。
そして、前回と同様に氷を纏わせて遠呂智と剣を斬り結ぶ。
互いに何度も打ち合わせていくのだが、決着は永久に付かない。
ように思われたのだが、その実、風太郎は自身の真下の地面に氷と風の紋章を作っていく。
その戦いを真横で見ていた綺蝶はそれで風太郎がこの勝負を一気に決めるという事を悟った。
風太郎の放った氷と風邪の紋章からは世にも美しい二人の雪女が作られ、その雪像が口から雪を噴き出ていく。
いや、口から出るのは雪ばかりではない。小さな氷柱や強風も同じだ。
それだけで終わったとしても十分に美しく逞しい破魔式であるのだが、風太郎の放った攻撃はそれ以上のものである。
風太郎は美しい雪女から放たれる風に後押しされ、遠呂智の目の前で迫るのと同時に刀を右斜め下から振り上げて、雪や氷を纏わりつかせた刀が遠呂智へと振っていく。
紋章からの雪像に後押しされ、加えて、太刀の刃にもこれ程までに後押しされている。
負ける筈がない。風太郎がそう思っていた時だ。
それまでは直剣を握って視線を下に向けていたばかりであった遠呂智が黙って立ち上がったかと思われると、真上に迫る刀を見上げて鋭い目で睨む。
「……やはり、来たかッ!かつて、紅葉があの征服者以外に唯一、恐れをなして逃げ回った氷と風の紋章!それと対峙できる日が来るとは……幸運だッ!オレは幸運だッ!」
そう言うと、遠呂智はそう言うと直剣を持って一言呟く。
「ならば、こっちもそっちの誠意に応えてやらねなけりゃあ無作法っていうもんだろ?」
遠呂智は直剣を振り回す。刀が下る前に自暴自棄になったのかと思われるのだが、風太郎は遠呂智が七つ、北斗七星を描く形で直剣を地面に下ろした事に気が付く。
「……魔獣覚醒『破軍金鎖』あの天井に蠢く北斗七星を描き、それが怪しく光った時にお前はどんな反応をするのかな?」
遠呂智の言葉に風太郎は思わずハッと息を呑む。
だが、こうなれば『破軍金鎖』と『氷と風の紋章』との戦いだ。
風太郎は勢いのままに遠呂智の元へと斬りかかっていく。
雷を意味すると思われる黄色い色と氷を思わせる青白い色と風を表す言葉と思われる真っ白な一本の筋が遠目には見えた。
「……そう言えば、黒崎様から伺った事があるぞ、草薙遠呂智の扱う魔獣覚醒『破軍金鎖』は最強の魔獣覚醒で未だに誰もそれを破った事がないそうですよ」
一瞬で多くの部下を彼の手によって商った騎士団の副団長は馬上から降りた女性団長に声を掛けたのだが、彼女は聞いていない。
ただし、その理由というのは怖くて震えているからなどという邪なものではない。
彼女は機会を伺っていたのだ。遠呂智に隙が生じる事を。
彼女は刀を構えて遠呂智という妖鬼の姿が見えて、それが噴煙の中から出てくるのを待ち構えている。
(流石は団長……その努力には敬意を表しますよ)
彼はそんな団長を横目で眺めながら、今後の事を考えていく。
彼は噴煙から満を生じて現れて互いに剣と太刀を打ち合う二人の姿を眺めながら、このまま何も考えずに山へと逃げるか、或いは自分たちと同様にこの戦いを眺めている対魔師の連中を攻撃するのかの二択を思案していく。
この二択はあまり下劣な作戦だ。優秀なドイツの参謀本部ならば即座に却下されるに違いない愚策。
前者はもし、逃亡に成功したら負うのは戦いの最中に逃げた臆病者という事になるし、後者に至ってはその行為は自らの首を真綿で絞める行為に他ならない。
この様な馬鹿げた考えに従う必要はない。
涼介は首を横に振ってその考えを頭の中から消して、激闘を繰り広げる青年の姿を眺める。
本当に変わった。彼が初めてその青年の顔を見たのは船橋帰りの黒崎から大きなホールのついた高価なドレスや和服を着た女性たちが接待を務める店。あろう事か、彼はそこで手渡された一枚の書類を。
彼は書類を受け取り、そこに顔写真と共に書かれた文章に目を通していく。
黒崎は手元のグラスをの端を親指と残った四本の指で持ち上げながら、彼に向かってこう言った。
「彼の名前は獅子王院風太郎だよ。優秀な対魔師だよ。実際に私は彼が玉藻直属の24魔将の中の精鋭をその刀で斬り落とす場面を見たんだ。あれは凄かった。キミにも見せてやりたかったな」
彼はそう言うと、グラスを揺らしながら女性の店員にウィスキーの代わりを注文する。
それ以来、彼の無意識下の中でで獅子王院風太郎の名前は憧れの対象であった。
そんな、彼は今、その憧れの対象が得体の知れない悍ましい怪物と刀と剣を結び合っている姿を見て感涙の涙を流していく。
彼は感銘を受けていた。騎士として、或いは対魔師として。風太郎の腕に。そして、この素晴らしい勝負を見せてくれた神に。
もう何度打ち合っているのだろう。二人は互いに打ち合う太刀と剣の数を記録していないのは明白である。
それを見た宝生蘭子は思わず自分の腕と目の前で激しい剣の斬り合いを続けている自分との差に気が付いて膝を落としてしまう。
同時に、自分があの程度の腕前で驕っていた事を痛感してしまう。
彼女は腰に下げた刀の塚を握り締めながら、戦いを睨む。
戦いの結果がどう終わるのかは分からない。
だが、彼女は心の中で風太郎の勝利を祈った。
すると、彼女の目の前で風太郎が大きく旋回し、空中で弧を描いた後に遠呂智に向かって斬りかかっているではないか。
あのままならば、遠呂智の首を斬り落とせるのではないのか。
そう考えた時だ。遠呂智の体が雷撃の音を鳴らして大きな電流を放出する。
だが、直前にそれを見切った風太郎は自らの体を吹き飛ばす。
そうする事により、彼は雷が当たるという事態を防げたのだ。
本番はここからだ。風太郎は刀を握って、もう一度、遠呂智に向かっていく。
だが、今はどうだろう。風太郎はあの時以上の力を誇って、自分の目の前に立っていた。
最初に戦うのはどちらなのだろうか。それぞれが刀と直剣を構えて向き合う。
最初に待ち切れずに動いたのは遠呂智の方だった。
遠呂智は直剣を振り上げて、風太郎を襲っていく。
遠呂智の持つ直剣には雷が宿り、その電流が風太郎を襲っていく。
風太郎は刀を構えて遠呂智の剣を受け止める。
そして、前回と同様に氷を纏わせて遠呂智と剣を斬り結ぶ。
互いに何度も打ち合わせていくのだが、決着は永久に付かない。
ように思われたのだが、その実、風太郎は自身の真下の地面に氷と風の紋章を作っていく。
その戦いを真横で見ていた綺蝶はそれで風太郎がこの勝負を一気に決めるという事を悟った。
風太郎の放った氷と風邪の紋章からは世にも美しい二人の雪女が作られ、その雪像が口から雪を噴き出ていく。
いや、口から出るのは雪ばかりではない。小さな氷柱や強風も同じだ。
それだけで終わったとしても十分に美しく逞しい破魔式であるのだが、風太郎の放った攻撃はそれ以上のものである。
風太郎は美しい雪女から放たれる風に後押しされ、遠呂智の目の前で迫るのと同時に刀を右斜め下から振り上げて、雪や氷を纏わりつかせた刀が遠呂智へと振っていく。
紋章からの雪像に後押しされ、加えて、太刀の刃にもこれ程までに後押しされている。
負ける筈がない。風太郎がそう思っていた時だ。
それまでは直剣を握って視線を下に向けていたばかりであった遠呂智が黙って立ち上がったかと思われると、真上に迫る刀を見上げて鋭い目で睨む。
「……やはり、来たかッ!かつて、紅葉があの征服者以外に唯一、恐れをなして逃げ回った氷と風の紋章!それと対峙できる日が来るとは……幸運だッ!オレは幸運だッ!」
そう言うと、遠呂智はそう言うと直剣を持って一言呟く。
「ならば、こっちもそっちの誠意に応えてやらねなけりゃあ無作法っていうもんだろ?」
遠呂智は直剣を振り回す。刀が下る前に自暴自棄になったのかと思われるのだが、風太郎は遠呂智が七つ、北斗七星を描く形で直剣を地面に下ろした事に気が付く。
「……魔獣覚醒『破軍金鎖』あの天井に蠢く北斗七星を描き、それが怪しく光った時にお前はどんな反応をするのかな?」
遠呂智の言葉に風太郎は思わずハッと息を呑む。
だが、こうなれば『破軍金鎖』と『氷と風の紋章』との戦いだ。
風太郎は勢いのままに遠呂智の元へと斬りかかっていく。
雷を意味すると思われる黄色い色と氷を思わせる青白い色と風を表す言葉と思われる真っ白な一本の筋が遠目には見えた。
「……そう言えば、黒崎様から伺った事があるぞ、草薙遠呂智の扱う魔獣覚醒『破軍金鎖』は最強の魔獣覚醒で未だに誰もそれを破った事がないそうですよ」
一瞬で多くの部下を彼の手によって商った騎士団の副団長は馬上から降りた女性団長に声を掛けたのだが、彼女は聞いていない。
ただし、その理由というのは怖くて震えているからなどという邪なものではない。
彼女は機会を伺っていたのだ。遠呂智に隙が生じる事を。
彼女は刀を構えて遠呂智という妖鬼の姿が見えて、それが噴煙の中から出てくるのを待ち構えている。
(流石は団長……その努力には敬意を表しますよ)
彼はそんな団長を横目で眺めながら、今後の事を考えていく。
彼は噴煙から満を生じて現れて互いに剣と太刀を打ち合う二人の姿を眺めながら、このまま何も考えずに山へと逃げるか、或いは自分たちと同様にこの戦いを眺めている対魔師の連中を攻撃するのかの二択を思案していく。
この二択はあまり下劣な作戦だ。優秀なドイツの参謀本部ならば即座に却下されるに違いない愚策。
前者はもし、逃亡に成功したら負うのは戦いの最中に逃げた臆病者という事になるし、後者に至ってはその行為は自らの首を真綿で絞める行為に他ならない。
この様な馬鹿げた考えに従う必要はない。
涼介は首を横に振ってその考えを頭の中から消して、激闘を繰り広げる青年の姿を眺める。
本当に変わった。彼が初めてその青年の顔を見たのは船橋帰りの黒崎から大きなホールのついた高価なドレスや和服を着た女性たちが接待を務める店。あろう事か、彼はそこで手渡された一枚の書類を。
彼は書類を受け取り、そこに顔写真と共に書かれた文章に目を通していく。
黒崎は手元のグラスをの端を親指と残った四本の指で持ち上げながら、彼に向かってこう言った。
「彼の名前は獅子王院風太郎だよ。優秀な対魔師だよ。実際に私は彼が玉藻直属の24魔将の中の精鋭をその刀で斬り落とす場面を見たんだ。あれは凄かった。キミにも見せてやりたかったな」
彼はそう言うと、グラスを揺らしながら女性の店員にウィスキーの代わりを注文する。
それ以来、彼の無意識下の中でで獅子王院風太郎の名前は憧れの対象であった。
そんな、彼は今、その憧れの対象が得体の知れない悍ましい怪物と刀と剣を結び合っている姿を見て感涙の涙を流していく。
彼は感銘を受けていた。騎士として、或いは対魔師として。風太郎の腕に。そして、この素晴らしい勝負を見せてくれた神に。
もう何度打ち合っているのだろう。二人は互いに打ち合う太刀と剣の数を記録していないのは明白である。
それを見た宝生蘭子は思わず自分の腕と目の前で激しい剣の斬り合いを続けている自分との差に気が付いて膝を落としてしまう。
同時に、自分があの程度の腕前で驕っていた事を痛感してしまう。
彼女は腰に下げた刀の塚を握り締めながら、戦いを睨む。
戦いの結果がどう終わるのかは分からない。
だが、彼女は心の中で風太郎の勝利を祈った。
すると、彼女の目の前で風太郎が大きく旋回し、空中で弧を描いた後に遠呂智に向かって斬りかかっているではないか。
あのままならば、遠呂智の首を斬り落とせるのではないのか。
そう考えた時だ。遠呂智の体が雷撃の音を鳴らして大きな電流を放出する。
だが、直前にそれを見切った風太郎は自らの体を吹き飛ばす。
そうする事により、彼は雷が当たるという事態を防げたのだ。
本番はここからだ。風太郎は刀を握って、もう一度、遠呂智に向かっていく。
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