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新しい時代の守護者編
遠呂智討伐目録
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風太郎は遠呂智を倒す機会を伺う。一見すると、この化け物には弱点がないように思える。だが、怪物と言えども、この世に生き、生存している限りは何処かに弱点がある筈だ。
風太郎は刀を構えて、遠呂智を睨む。
そして、この男の隙を探っていく。その間も斬り合いがあったために、彼は何度かその思考を中断をさせられる羽目になったが、ようやく、風太郎は突き止めた。それは、彼が笑顔を浮かべた瞬間だ。
より正確に言えば、男の気分が高揚し、調子が良くなった時。いわば、一種の興奮状態にあり、心底から楽しんでいると言わんばかりの表情を浮かべた時。
それが、この男が見せる唯一の隙だ。
何度か刃と刃をぶつけ合う。その度に風太郎は隙を窺う。だが、そんな隙は見えない。
風太郎はその間も懸命に両手で太刀を構えて男に向かって斬り掛かっていく。
あるときは左から、剣が。ある時は右から剣を振るわれ、風太郎もその度に太刀を構えて剣を防いでいく。
風太郎は金属と金属がぶつかり合う音を十五回くらい聞いてから、ようやく男の腕が緩んだ隙を見出す。
風太郎は紋章を使用して、一瞬の瞬間に太刀を滑らせると、全身全霊でそれを遠呂智の体へと叩き込む。
遠呂智は刀を目の前に動かしたのだが、間に合わなかったらしい。
風太郎の太刀が体を右斜め下にまで大きく斬り掛かっていく。
遠呂智は小さな悲鳴を上げて地面の上へと倒れ込む。
風太郎は遠呂智が倒れたのを見届けると、太刀を鞘に仕舞う。
妖鬼ならば背後から襲ってくるであろうが、この男ならばそんな事はしないだろう。
彼は堂々たる武人なのだから。風太郎は地面の上に倒れて、光で浄化されつつある遠呂智に静かな礼の言葉を述べて立ち去ろうとした時だ。
遠呂智はか細い声で、恐らく彼の人生の最後となろう言葉で風太郎に向かって尋ねた。
「おれの……剣の腕前はどうだった?」
その問い掛けに、風太郎は自分の気持ちに嘘を吐く事なく、彼が人を大勢殺した妖鬼だという負の感情も抑えて正直に答えた。
「お前の腕前は凄かった。剣も魔獣覚醒も他の奴の比じゃあない。間違いなく、お前は今までおれが倒した中で最強の妖鬼だよ」
「……そうか」
遠呂智はそれだけを言うと光に体を包み込まれて体が消滅してしまう。
風太郎は深呼吸をすると、地面の上に大きく倒れ込む。
どうやら、遠呂智との死闘で体を使い果たしてしまったらしい。
それを見た仲間たちは慌てて風太郎に肩を貸す。
いや、仲間だけではない。本来ならば、敵対関係にある筈の騎士団の二人までも彼を助け起こした。
そして、全員が風太郎の偉業を賞賛していく。特に綺蝶は満足した表情で風太郎を褒め称えて、
「流石は風太郎さんです!まさか、あの最強の遠呂智を倒してしまうなんて!我々対魔師が長年に渡り、苦戦した相手をあんなに易々と!」
と、彼に顔を近付けて言った。その目は純粋に輝いている。まるで、他国のお姫様をテレビで見るかの様な憧れの目。
「うん、全くだ。やはり、お前こそが玉藻紅葉を倒す救世主だ」
冴子の言葉に全員が同意の意味で首を縦に動かしていく。
加えて、日向は飛び上がりながら、
「あたぼうよ!おれの親友なんだぞ!暫くの間、三人で暮らして侵食も共にした仲だぞ!要はおれが面倒を見てやったもんでーー」
「いや、その理屈はおかしい」
冴子の的確な突っ込みが彼の中で突き刺さったらしい。彼はヘラヘラと笑いながら、気まずくなったのかその場を去っていく。
風太郎はそれを見てその場にいた全員と共に笑っていたが、直ぐに綺蝶の方を向いて、
「そういえば、綺蝶……オレの事を名前で……」
「前に約束しましたよね?紋章が出来る様に慣れば、あなたの事を名前で呼ぶって……」
風太郎はそれを思い出して頬を赤く染めていく。
もし、今ならばあの事を言ったとしても承認されるかもしれない。
風太郎が声を震わせながら、あの言葉を口に出そうとした時だ。
彼の腹の虫が鳴く音がして、その懸命な言葉は遮られてしまう。
それを聞いた綺蝶がクスクスと笑いながら、
「いいですよ。風太郎さん。頑張りましたから、ご飯にしましょう」
綺蝶の言葉を聞いて全員が歓待の声を上げる。
ただし、次の言葉を聞いて落胆にする事になったが。
「あ、奢りませんよ。自分の分は自分で払ってくださいね」
「そ、そこはカバとか奢ってくれても良いだろう!?」
冴子は両手の拳を握り締めながら、綺蝶に抗議したが、綺蝶はそれを一蹴して、
「カバを頼んでも良いですけれど、その金は自分で払ってください」
と、笑顔で言った。困惑する様子の仲間たちを尻目に、彼女は風太郎を一人で支えながら、鼻歌を歌いながら上機嫌で高尾山の麓を後にする。
こうして、多くの時間を費やした高尾山の麓の戦いは終わったのだった。
山の麓から帰るバスの中。風太郎は奥の座席を貸し出され、綺蝶がその前に立って風太郎を見守るという様子。
風太郎は綺蝶のこの態度がどうしようもなく重く感じてしまう。
と、風太郎がバスに揺られていると、不意に彼女が頭を下げて風太郎の耳元である提案をする。
「皆様方には内緒で二人でカバを食べに行きませんか?」
「ふ、二人で!?」
「ええ、しかも、私が奢っちゃいます」
彼女は上機嫌な様子で言った。風太郎はその提案に乗りたかったのだが、流石に悪いと感じたのか、断る。
綺蝶は不服そうに頬を膨らませていたために、風太郎は代案を出す。
「なら、今度、またオレと一緒に料理を作ってくれよ。鍋とかどうだ?」
綺蝶はそれを聞いて両目を輝かせて、
「そうですか!やりましょう!是非とも!」
風太郎はそれを見ると苦笑した表情を浮かべてから、小指を彼女に向かって差し出す。
「約束だぞ」
「ええ」
そんな二人の様子を他の仲間たちは鬱陶しそうな表情で眺めていた。
いい加減、結婚しろと言わんばかりの顔がその証拠だろう。
風太郎は刀を構えて、遠呂智を睨む。
そして、この男の隙を探っていく。その間も斬り合いがあったために、彼は何度かその思考を中断をさせられる羽目になったが、ようやく、風太郎は突き止めた。それは、彼が笑顔を浮かべた瞬間だ。
より正確に言えば、男の気分が高揚し、調子が良くなった時。いわば、一種の興奮状態にあり、心底から楽しんでいると言わんばかりの表情を浮かべた時。
それが、この男が見せる唯一の隙だ。
何度か刃と刃をぶつけ合う。その度に風太郎は隙を窺う。だが、そんな隙は見えない。
風太郎はその間も懸命に両手で太刀を構えて男に向かって斬り掛かっていく。
あるときは左から、剣が。ある時は右から剣を振るわれ、風太郎もその度に太刀を構えて剣を防いでいく。
風太郎は金属と金属がぶつかり合う音を十五回くらい聞いてから、ようやく男の腕が緩んだ隙を見出す。
風太郎は紋章を使用して、一瞬の瞬間に太刀を滑らせると、全身全霊でそれを遠呂智の体へと叩き込む。
遠呂智は刀を目の前に動かしたのだが、間に合わなかったらしい。
風太郎の太刀が体を右斜め下にまで大きく斬り掛かっていく。
遠呂智は小さな悲鳴を上げて地面の上へと倒れ込む。
風太郎は遠呂智が倒れたのを見届けると、太刀を鞘に仕舞う。
妖鬼ならば背後から襲ってくるであろうが、この男ならばそんな事はしないだろう。
彼は堂々たる武人なのだから。風太郎は地面の上に倒れて、光で浄化されつつある遠呂智に静かな礼の言葉を述べて立ち去ろうとした時だ。
遠呂智はか細い声で、恐らく彼の人生の最後となろう言葉で風太郎に向かって尋ねた。
「おれの……剣の腕前はどうだった?」
その問い掛けに、風太郎は自分の気持ちに嘘を吐く事なく、彼が人を大勢殺した妖鬼だという負の感情も抑えて正直に答えた。
「お前の腕前は凄かった。剣も魔獣覚醒も他の奴の比じゃあない。間違いなく、お前は今までおれが倒した中で最強の妖鬼だよ」
「……そうか」
遠呂智はそれだけを言うと光に体を包み込まれて体が消滅してしまう。
風太郎は深呼吸をすると、地面の上に大きく倒れ込む。
どうやら、遠呂智との死闘で体を使い果たしてしまったらしい。
それを見た仲間たちは慌てて風太郎に肩を貸す。
いや、仲間だけではない。本来ならば、敵対関係にある筈の騎士団の二人までも彼を助け起こした。
そして、全員が風太郎の偉業を賞賛していく。特に綺蝶は満足した表情で風太郎を褒め称えて、
「流石は風太郎さんです!まさか、あの最強の遠呂智を倒してしまうなんて!我々対魔師が長年に渡り、苦戦した相手をあんなに易々と!」
と、彼に顔を近付けて言った。その目は純粋に輝いている。まるで、他国のお姫様をテレビで見るかの様な憧れの目。
「うん、全くだ。やはり、お前こそが玉藻紅葉を倒す救世主だ」
冴子の言葉に全員が同意の意味で首を縦に動かしていく。
加えて、日向は飛び上がりながら、
「あたぼうよ!おれの親友なんだぞ!暫くの間、三人で暮らして侵食も共にした仲だぞ!要はおれが面倒を見てやったもんでーー」
「いや、その理屈はおかしい」
冴子の的確な突っ込みが彼の中で突き刺さったらしい。彼はヘラヘラと笑いながら、気まずくなったのかその場を去っていく。
風太郎はそれを見てその場にいた全員と共に笑っていたが、直ぐに綺蝶の方を向いて、
「そういえば、綺蝶……オレの事を名前で……」
「前に約束しましたよね?紋章が出来る様に慣れば、あなたの事を名前で呼ぶって……」
風太郎はそれを思い出して頬を赤く染めていく。
もし、今ならばあの事を言ったとしても承認されるかもしれない。
風太郎が声を震わせながら、あの言葉を口に出そうとした時だ。
彼の腹の虫が鳴く音がして、その懸命な言葉は遮られてしまう。
それを聞いた綺蝶がクスクスと笑いながら、
「いいですよ。風太郎さん。頑張りましたから、ご飯にしましょう」
綺蝶の言葉を聞いて全員が歓待の声を上げる。
ただし、次の言葉を聞いて落胆にする事になったが。
「あ、奢りませんよ。自分の分は自分で払ってくださいね」
「そ、そこはカバとか奢ってくれても良いだろう!?」
冴子は両手の拳を握り締めながら、綺蝶に抗議したが、綺蝶はそれを一蹴して、
「カバを頼んでも良いですけれど、その金は自分で払ってください」
と、笑顔で言った。困惑する様子の仲間たちを尻目に、彼女は風太郎を一人で支えながら、鼻歌を歌いながら上機嫌で高尾山の麓を後にする。
こうして、多くの時間を費やした高尾山の麓の戦いは終わったのだった。
山の麓から帰るバスの中。風太郎は奥の座席を貸し出され、綺蝶がその前に立って風太郎を見守るという様子。
風太郎は綺蝶のこの態度がどうしようもなく重く感じてしまう。
と、風太郎がバスに揺られていると、不意に彼女が頭を下げて風太郎の耳元である提案をする。
「皆様方には内緒で二人でカバを食べに行きませんか?」
「ふ、二人で!?」
「ええ、しかも、私が奢っちゃいます」
彼女は上機嫌な様子で言った。風太郎はその提案に乗りたかったのだが、流石に悪いと感じたのか、断る。
綺蝶は不服そうに頬を膨らませていたために、風太郎は代案を出す。
「なら、今度、またオレと一緒に料理を作ってくれよ。鍋とかどうだ?」
綺蝶はそれを聞いて両目を輝かせて、
「そうですか!やりましょう!是非とも!」
風太郎はそれを見ると苦笑した表情を浮かべてから、小指を彼女に向かって差し出す。
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