太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います!

アンジェロ岩井

文字の大きさ
107 / 135
新しい時代の守護者編

遠呂智という名の武人

しおりを挟む
懸命の戦いが続く。剣と太刀との斬り合い。紋章、破魔式と魔獣覚醒の打ち合い。
それのどれに至っても彼は満足させられていた。元亀天正の戦国の時代でさえ目の前の青年の様な強い剣士は居なかった。
遠呂智は雷を纏わせ、剣を振って青年の強さに敬意を表していく。
遠呂智は考えた。今、ここで死んでも良いか、と
強者とヤイバを混じり合って、死ぬのならば本望。
そう考えた時だ。彼の頭の中。無意識の空間の中に姉の紅葉が彼の頭を強く握り締めて言う。
「あなた、まさかここで死ぬ気じゃあないでしょうね?もし、そうなら許さないわよ」
やめろ。おれはこの最強の剣士に全身全霊の力を注いで倒したい。もしくは倒されたいんだ。
遠呂智は頭の中の姉に反論し、戦いを繰り広げている自分の意識、肉体の元へと戻ろうとしたのだが、彼女はそれを許さない。
元の意識の元に戻ろうとする遠呂智の頭を押さえ付けて、
「待ちなさい。私にあれだけの事をしておいて、逃げるつもりなの?そんなの許されないわ。あなたは私がいる限り、この世に留まり続けなければならない。それがあなたの責務……忘れたわけじゃあないでしょう?」
それを聞いて言葉に詰まる遠呂智。彼は黙った。無意識のうちでも。
答えが出てこなかったのだ。彼女のお気に召す様な良い回答が。
彼女はその場で黙って弟が黙ったのを勝利だと感じたらしい。
彼女は弟に自分の体を押し付けてあの清楚。可愛らしいと評判の顔を彼の近くまでくっ付けて言った。
「あの男には敵わないわ。逃げなさい。大丈夫よ。幾ら、強くてもあの男は所詮人間よ。奏音みたいにそのうち寿命が尽きて死ぬわ」
その言葉を聞いて彼は思い出す。最強の対魔師、木本奏音と共に刃を結び合えなかった事を。
その瞬間に、彼は全てを思い出す。彼は半ば本能的に姉の手を振り切り、自分の体へと戻っていく。
そして、歴代最強の剣士との決着を付けるために直剣を構える。
両者のエネルギーが空中でぶつかり合う。辺りの空間さえも歪めていきそうな勢いだ。
風太郎は戦いを楽しむ遠呂智とは対照的に、彼を倒すために全力を注いでいた。
遠呂智を早く倒すために、何度も太刀を握って何度も左斜め上から、剣を振り上げて遠呂智に斬りつけていく。
今回も遠呂智の剣に弾かれるかと思ったのだが、彼の太刀は彼の剣の上を滑り、遠呂智の体を斬り上げていく。
勿論、他の妖鬼との戦いの様に体そのものを傷付けたわけではない。
だが、彼の太刀は確実に遠呂智の肉体を傷付けていた。
彼の首の下に傷を与え、そのままその箇所に氷柱を叩き込む。
遠呂智は悲鳴を上げながら、剣を振り上げていく。
だが、それでも笑った表情を浮かべている彼は改めて剣を構え直すと、第二の魔獣覚醒を放っていく。
「魔獣覚醒『八卦の陣』」
彼がそう言うと、彼の剣から雷の球が出て、宙の上で八列に並んでいく。
風太郎は刀を振り上げて、風と氷の紋章を出して対抗していく。
風と氷の紋章からは氷の氷柱が彼の八卦の前に飛んでいくが、やはり、氷では分が悪いのか、氷柱が雷の前に消えていく。
風太郎は舌を打って刀を振っていく。今度は風だ。紋章ではなく、ここは破魔式を使う。
破魔式による大きな風は宙で構える雷の球も流してしまったらしい。
風太郎は刀を構えて、斬り掛かっていく。
八卦の陣が消えたのを確認すると、遠呂智も剣を構えて風太郎に斬り掛かっていく。
両者の刃と刃とが結び合うが、それも暫く続いた後に、彼は自らの剣に雷を纏わせていく。
いいや、それだけではない。彼が何やら呟くと、剣と雷とが完全に適合し、彼の剣は雷の様な歪な形へと変わっていく。
「これの名前は魔獣覚醒『雷剣』自らの剣を雷へと姿を変える。あまり強いとは思えぬ魔獣覚醒。不足とは思うが、そこもともこれでお相手しよう」
「……不足なものかよ。最後の最後ですごいものを出してきやがって……」
風太郎は毒を吐くと、刀を構えると今度は紋章を使わずに、氷の破魔式を使用して遠呂智へと斬り掛かっていく。
氷と雷との剣が大きな音を立ててぶつかり合い、辺りに大きな轟音を立てていく。
風太郎が右斜め下から太刀振り上げれば、遠呂智が目の前に剣を構えて防ぎ、風太郎が遠呂智の顔を狙って攻撃を振るえば、遠呂智はそれを剣で受け止める。
互角の戦いだ。少なくとも、遠呂智の目には悩みが無いように思えた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...