太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います!

アンジェロ岩井

文字の大きさ
132 / 135
天楼牛車決戦編

いい加減にしてください!

しおりを挟む
「さっさとくたばれこの野郎ォォォォォ~!!」
綺蝶は彼女に似つかわしくない乱暴な言葉を使いながら、何度も何度も闇を纏わせた刀を振るっていく。
だが、紅葉には当たらない。薙刀の腕は確実に姑獲鳥を超えている。彼女は驕り高ぶった表情で綺蝶を薙刀で弾き、地面の上に寝転がる綺蝶に向かってその刃先を突き付ける。
「全く残念よ。まさか、あんたがここで死ぬ事になろうとはね。私はねぇ、興醒めしたわよ。残念、残念」
「残念ですか?あなた、もしかして変態ですか?自分の首を闇の破魔式で斬られなかったのが?あ、もしかしてあなた頭が良くないから、『残念』という言葉の意味を知らずに、取り敢えず覚えたから、使ってみたいという事ですか?頭が悪いと苦労しますね」
彼女は死の間際であるのにも関わらず、命乞や泣き顔を見せずに、最後の最後まで彼女を弄ってやる事にした。
それが彼女の逆鱗に触れたらしい。紅葉は薙刀を握り直して、地面の上の綺蝶の頭に向かって何の躊躇いもなく薙刀を振るっていく。
このまま彼女の頭をかち割ってやろうかと考えた時だ。
背後から大きな音が聞こえたかと思うと、予想だにしない速さで風太郎が斬りかかってきた。
避けきれない。風太郎の刃は紅葉の体の中に突き刺さっていく。
紅葉は衝撃のために、口から血を吐き出して地面の上を倒れていく。
風太郎は綺蝶に手を差し伸ばすと、彼女を連れて一度、紅葉の元から離れていく。
彼に抱き抱えられたまま走るのが綺蝶には恥ずかしくて感じられたらしい。
両頬を赤く染めながら、風太郎の腕の中に運ばれていく。
「ふ、風太郎さん!?いつ目を覚ましたんですか!?」
「ついさっきだよ、おまけに氷と風の紋章の事についてもあの後に色々な時代を見て分かったよ」
風太郎は語っていく。木本奏音がその氷と風の紋章を巧みに操り、玉藻紅葉を後一歩のところまで追い詰めた事、彼女曰く氷と風の紋章はあの世からの冷気をこの世にもたらし、その冷気で相手を仕留めてるという事。
そして、その冷気こそが玉藻紅葉を打ち破る唯一の方法だという事も。
「成る程、確かにその通りかもしれません。実際、今まで誰も手も足も出なかった玉藻紅葉にあなたは傷を負わせる事ができたんですから」
綺蝶は風太郎に運ばれながら、空を眺めていたが、次に風太郎の方へと向き直ると、
「風太郎さん。もし、私が妖鬼だったら、あなたはどうしますか?容赦なく首を狩りますか?」
「な、何言ってるんだよ」
風太郎は焦った様子で答えるが、綺蝶は自分がそう語った理由を述べていく。
「……そんな奴が居たんだ」
「ええ、もしかしたら、死んだら私は地獄行きかもしれませんし、下手をすれば闇の破魔式が暴走して、あなた達を襲って、新たなる妖鬼の女王となり、アメリカや世界を敵に回してしまうかもーー」
風太郎はそう言う綺蝶の眉間に軽い口付けを置いて黙らせていく。
「な、な、え、え、ええ!?」
明らかな戸惑いの声が聞こえる。風太郎は狼狽する彼女に対して笑顔を向けて、
「お前がどんな奴でもオレはお前と一緒に戦うよ。世界が敵?アメリカが駆除の対象としてオレたちを選ぶ?なら、背中はオレに任せろ!例え、世界が敵に回ったとしてもオレはお前の味方だから」
と、彼は満面の笑みを向けて言った。綺蝶はそれを聞くと、のぼせ上がった後の様に顔を赤く染めていく。
風太郎はそんな彼女の眉間にもう一度、口付けを置く。
そして、紅葉とある程度まで距離を取ると、彼女の耳元で囁く。
「続きは玉藻紅葉を仕留めからな」
「いや、待ってください。その前に然るべき準備はしてもらいますよ。それまでは幾らあなたと言っても駄目です」
「分かったよ」
風太郎はそう言うと、綺蝶の首元にもう一度口付けを行う。
それから、彼女と共に目の前から迫る玉藻紅葉へと向かっていく。
復活したばかりの風太郎は刀を振り上げながら、氷の破魔式、風の破魔式と次々と破魔式を紅葉に打ち込む。
紅葉はそれを見ても動じる事なく、反対に触手や毒やらで二名を激しく攻撃していく。
特に風太郎には先程、体を突き刺された恨みが積もっていたらしい。
彼女は入念に触手や毒を風太郎に向かって放っていく。
風太郎は太刀でそれを防ぐと、もう一度、今度は正面から刀を持って迫っていく。
紅葉は目の前から迫る風太郎に向かって風太郎に向かって咄嗟に薙刀を構えたが、その前に風太郎は太刀を滑らせ、薙刀の上から滑り落ちていくと、真正面から紅葉に太刀を突き刺す。
紅葉は悲鳴を上げて地面の上を転がっていく。
加えて、背後からの突きの攻撃。しかも、ただの攻撃ではない。
神馬による炎を纏わせた斬撃だったのだ。
それを真後ろ、しかも先程、風太郎に突き刺された箇所を重複して狙われたものだから、溜まったものではない。
彼女が背後に首を向けている時だ。二名の男女が自身の前にまで迫っている事を知る。
二人は共に刀と太刀を振り上げて、そこに破魔式を纏わせて紅葉に斬り掛かっていく。
紅葉は全身で光と闇、氷と風、炎と風の紋章を同時に喰らう。流石の妖鬼の総大将でもその結果を覆すのは難しかったのだろう。彼女はかつてない程の悲鳴を上げて地面の上に倒れていく。
これで、彼女は死んだかと思われた。だが、彼女はまた死んではいない。
まだ生き続けていた執念で。紅葉は手を使って地面の上を這うと、黙って綺蝶を引っ張って、自身の元に寄せていく。
「……あなたよ。あなたこそが相応しいわ」
「何を言っているんですか?」
「……よく聞きなさい。私が死ねば、私が生み出した妖鬼は日本から消えてなくなるの。けれど、私の意思を受け継ぐ者がいれば話は別……私の意思を受け継ぎなさい!闇の破魔式を持つ者よ!」
紅葉は綺蝶の首元に自身の指を伸ばして彼女を妖鬼にしようと目論む。
実際に少しばかり、彼女の指は綺蝶の首元にあたった。
だが、全ての指を入れる前に、風太郎がその首を跳ね飛ばした事により、彼女はその先を遂行する事は不可能になってしまう。
だが、少しばかり妖鬼が、いや、玉藻紅葉の意思が歳入されてしまったかもしれない。
いずれにしろ、彼女はそのまま地面に倒れてしまったのだから分からない。
折角、妖鬼の総大将を倒したというのに、どうして落ち着けないのか。
松風神馬と獅子王院風太郎の両名は互いに肩を並べて、気絶した斑目綺蝶が起き上がるのを待つ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...