THE Lucifer GAME〜下心のために契約を結んでしまった俺は死なないために頭を使ってデスゲームを生き残ります!〜

アンジェロ岩井

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第一部『悪魔と人』

蜷川大輔の場合ーその④

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だが、大輔の斧がそのまま千凛に振りかぶられる事はなかった。というのも、その前に志恩が彼の脇腹を槍で突こうと試みたからである。大輔は慌てて身を逸らして、槍を交わして事なき事を得たのだが、折角捕らえた千凛は自身の手から逃げてしまったのである。そればかりではなく、引き続き剣を振るって大輔の命を狙う。
大輔は慌てて戦斧の柄腹を用いて千凛の剣を防いだが、それでも剣を防ぎ続けるのには難しそうであった。
そこに加えて、志恩までもが槍による攻撃を加えてくるのだから、彼としてもたまったものではないに違いない。
大輔は慌てて距離を取り、戦斧を志恩に向かって振り上げたものの千凛がそれを許さない。勢いよく剣先を突き上げて大輔の肩に喰らわせたのである。

大輔は小さな悲鳴をあげたものの、それでも武器を引っ込ませはしなかった。
改めて構え直し、そのまま志恩の頭を割るべく斧を引いていく。
それに対抗するかのように千凛が大輔の元へと飛び掛かり、そのまま彼の腹に向かって強烈な一撃を喰らわせたのである。
ロンウェーの悪魔の力を用いての拳であるので当然鎧越しであったとしてもそのダメージは伝わっていく。胸にまで響き渡り、大輔は悲鳴を上げて地面の上を転がっていく。
それでも容赦する事なく、千凛は大輔を強力な力で蹴り付けた。大輔はまたしても悲鳴を上げて地面の上をのたうち回っていく。

「ちくしょう!ちくしょう!こんな馬鹿な……」

「ここで貴様は終わりだ」

「ほざくなよ、殺し屋の分際で」

大輔は千凛を逆に押し倒し、そのまま首を絞めようと試みたのである。志恩が槍を構えて助け出そうと試みたのだが、志恩はそのまま大輔の蹴りを受けて地面の上を転がっていく。

「き、貴様……子供になんて事を」

「これはゲームなんだぜ、ガキだろうがなんだろうが、参加者である限りは戦うべきだ。そうだろ?オレの言っていることは間違ってるか?」

「間違ってはいないが、私の感情が許さないんだよッ!」

千凛は絞め殺そうとしている大輔の首元に向かって強烈な蹴りを喰らわせたのである。怯んだ大輔に対して大量の銃弾が浴びせられていく。先程は銃弾を受けても怯まなかった筈であるのにこの瞬間は銃弾により損傷を負ってしまったらしく
、真紀子の弾丸を喰らうとのと同時に悲鳴を上げてその場に倒れ込む。背後を振り返ると、そこには銃口から白い煙を出した機関銃を構える最上真紀子の姿。

「て、テメェ……背後から攻撃するなんて……」

「あぁ、知るか、近くにいたテメェの方が悪いんだろうが」

「ふ、ふざけんなァァァァァ~!!」

大輔はそのまま戦斧を構えて突っ込もうとしたのだが、真紀子は容赦しない。
そのまま機関銃を乱射して大輔に更なるダメージを与えたのである。
殺すのならば今しかあるまい。千凛は剣を構えて大輔の元へと飛んでいく。
そして、そのまま彼の兜を剥ぎ取り、その首を顕にしたのである。
勿論彼が逃げ出さないように千凛は彼の体を自身の足で強く踏んで抑えていたのである。
先程と同じシチュエーションが再現されたのだが、形成は完全に逆転していた。

大輔は完全に追い込まれていたのである。追い込まれた大輔の鎧は他の参加者の鎧と大差がなくなっていたのだ。
というのも、彼の鎧には他者が怯えれば怯えるほどに防御力が強くなるという特性があり、彼はそれを上手く活用していただけに過ぎないのだ。なのでゲームを始めた当初はそのキャラクターも相まって十分に効果を発揮していた。
だが、時間が経過して今の参加者たちは怯えるどころか、率先して大輔を狩るようになっていた。これでは勝てる筈もあるまい。大輔はこめかみに青筋を立てながら自身を追い詰めた真紀子を睨んだ。

「真紀子ォォォォォ~!!!このクソガキがッ!どうしてテメェはオレを見て小便でも漏らしながらピーピー泣いて逃げねーんだよ!テメェに似合うシチュエーションはそれだろうがッ!」

「あぁ?あたしがそんな事をする様な肝っ玉の小さい女に見えるって言いたいのかい?そりゃあ、見当違いというもんだよ、銀行屋の若旦那」

「な、なんだと……」

「あたしはバカじゃねーんだ。自分がどんだけの人に恨まれてるのかくらいは察してるさ、だからよぉ~毎晩毎晩楽しみにしてんだよ。幽霊が襲い掛かってくるのを」

「……何を言っているんだ?」

兜の取れた大輔が目を丸くしながら真紀子に問い掛けた。

「旦那ァ、幽霊ってどんな奴らなんだろうな?包丁持って来んのか?それとも怨念だけであたしを取り殺そうとでもすんのかな?」

大輔は改めて実感させられた。自身の狂気は作られたものに過ぎなかったのだ、と。そして真に狂っているのは目の前で機関銃を構える軍服を着た女である、と。
彼女は機関銃を放り捨てると、そのまま拳銃を構えて大輔の元へと近付いていく。

「蜷川さん……そういえばあなた私を小馬鹿になさいましたわよね?パーティーの時に私のドレスにワインを溢されましたね。それも、わざと」

真紀子は敢えて『菊岡秀子』の時に用いる丁寧な口調を用いてゆっくりと蜷川の元へと近付いていく。

「私の大切な弟をあなた様の穢らわしい手で殺そうとした罪もそうでございますが、ドレスの罪も重いんです。あの後に私がどれだけ苦労したのか、蜷川さんにわかりますか?」

口調こそ丁寧だが、その語気には激しい怒りの念が備わっている。丁寧な口調とお淑やかな態度で狂気を見せてくるのだから大輔からすればたまったものではないだろう。
彼は今までの底知れぬ不気味さといざ怒った時の狂気じみた態度を引っ込め、代わりに温室に育てられた御曹司に相応しい弱虫な態度を見せたのである。

「こ、来ないでくれ!た、頼む!お、オレが悪かった!」

「ダメですよ、私の大切なドレスを汚した罪と汚らしい手で我が弟をその手にかけようとした罪はその死で償っていただかなくてはなりません」

真紀子は拳銃を構えながら告げた。その目には狂気と歓喜との両方が備わっており、千凛に捕えられており逃げ場のない状況にあるのが、より一層彼の恐怖を引き立てたのである。

「お、おれが悪かった!謝るッ!この通りだよッ!お願い殺さないで!」

悲痛な叫びが聞こえたが、真紀子はそれを無視して返答の代わりに彼の近くに銃弾を撃ち込む。
大輔はそれを間近で感じて泣き始めてしまう。彼からすれば味わった事のない恐怖を感じたのである。彼からすれば理不尽極まりない仕打ちを受けていたのだ。あまりにも辛すぎて酷すぎる状況であった。
真紀子は大輔の元へと近寄り、全員に向かって問い掛けた。

「この男を殺そうかどうかと悩んでいるんだが、賛成の人はいるか?」

志恩を除くその場に居合わせた全員が真紀子の言葉に賛同の意見を述べた。
大輔はそれを聞いて絶望の表情を浮かべていく。

「そ、そうだ!お金だ……おや、いいや父さんならオレのために幾らでも出してくれるッ!なぁ、父さんに連絡をとってくれ、頼むッ!頼むよッ!」

「うるせーぞ、銀行屋のバカ息子、今オメーのパパは関係ねーだろうがよ。この場にいるオメーの処分をどうするのかみんなで話してるんだ」

泣き喚く大輔を他所に真紀子は全員に彼の猶予を与える事に賛成の人を挙げたのだが、誰も手を挙げようとはしない。
穏健派の志恩ですら『棄権』の選択肢を貫いていた。

「や、やめろ!お前らッ!これは人殺しだぞ……お前ら全員逮捕されたらーー」

「うるせぇよ」

真紀子は大輔の頭に向かって躊躇う事なく銃弾を撃ち込んだのである。そして、彼はそのまま頭を貫かれて死亡した。
既に脱落した雛瀬梨奈と合わせてこれで生存者は残り十一名となったのである。
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