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第一植民惑星『火星』
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自身の放った隕石の破片が打ち返されていき困惑したのはアレックスの方であった。
アレックスは焦りさえ感じていた。自分はここまで追い込まれているにも関わらず、目の前にいる少女は平気で破片を砕き返していくのだ。あり得ない。そんなことがあっていいはずがなかった。
仮に今の自分がもし目の前の少女と同じ状況であったとしても自分ならば到底真似することはできなかった。
アレックスはスライムの下で歯軋りをしながら麗俐を睨んでいた。
腹たち紛れにアレックスは何度も溶岩を放っていくものの、その都度冷静な態度を貫いた麗俐の前に弾き返されてしまったのだ。弾き返された溶岩の岩石が剥がれ、岩石がスライムの体に飛んでいくたびにアレックスは焦りのようなものを感じていた。
もちろん、こんな攻撃が続いたところでどうにでもなるわけがない。向こうは何もできないのだ。
溶岩をビームライフルに組み込むことができれば話は別だが、ただ破片を撃ち込んでくるだけであるのならば特に痛くも痒くもない。
アレックスがそう信じ込んでいた時のことだ。麗俐が打ち返した溶岩の岩石が原型を保ったままアレックスの元へ戻ってきたのだった。
アレックスは必死に交わしたものの、岩石は左肩を掠めていった。
と、この時アレックスの左肩に棘のように生えていた岩石の角飾りが粉々に砕かれてしまったのだ。
飛び散った岩石の角飾りはそのままアレックスの背後にあった岩石にぶつかり、粉々に砕かれていってしまったが、もしあの岩石が直撃していれば自分はどうなってしまったのだろうか。
アレックスの全身に鳥肌が立っていった。このまま隕石を飛ばしていれば間違いなく、自身の身は破裂だ。
そうなる前に目の前の少女を完膚なきまでに叩きのめさなくてはならない。
そのためには強力な力で相手を叩きのめさなくてはいけない。
決意を固めたアレックスは自身の体全体に溶岩の炎をたぎらせていった。
全身から湯気が立ち上るほど、今のアレックスの体はマグマで満ち溢れていた。
アレックスは声を荒げながら麗俐を確実に葬るため全身から湯気のみならずマグマを溢れさせ、その上で両腕に備わった剣を突き付けながら麗俐の元へと向かっていった。
この時麗俐に対する恐怖と自身の思い通りに事が運ばないという苛立ちのためすっかりと興奮して頭に血が昇っていたアレックスに対して唯一警告の言葉を発したのは彼に取り憑いた山高帽のような姿をした生物だった。
(お前の体からはあまりにもマグマが吐き出され過ぎだ。危険過ぎる。そんなことでは僅かな熱量でお前の体を守るものはなくなってしまうぞ)
「うるせぇぞ! テメェはすっこんでろッ!」
アレックスは昔からこうだった。人の忠告も聞かずに独断専行を押し進めていく性格なのだ。自分のことを思っての忠告にも耳を貸すことなどなかった。
それどころかそんな忠告を受けた時の彼の反応はといえば暴力による対応のみであった。
そのため両親も教師も医者も弁護士でさえ彼を見放した。弁護を放棄したと思えるような態度を見たアレックスは証人席から弁護士に向かって野次を飛ばしたが、刑務官に押さえ掛かられたことによって断念せざるを得なかった。
だが、出所後に自身の弁護を放棄した弁護士に対する粛清はしっかりと行なった。
屈辱を受けた報いを返すというのは彼にとっての流儀であったからだ。幸いなことに弁護士の犯罪は通り魔の仕業だとされて捜査の手はアレックスに及ぶことはなかった。
もし、この時警察がアレックスに追及の手を伸ばしていればここ二週間の間に発生した連続強盗殺人事件は発生しなかったに違いなかった。
アレックスは山高帽のような姿をした生物からの忠告を完璧に無視した。それどころか、そんなものはどこ吹く風だと言わんばかりに麗俐の元へと突っ込んでいった。
だが、麗俐は目の前からマグマを全身から吹き流した恐ろしい男が迫ってきているにも関わらず、足を後ろに下がらせるといった逃げようとする素振りなどは見せようとしなかった。
そのまま無言で迫ってくるアレックスの体に向かってビームソードを突き刺していった。
アレックスの胴体に対して深くビームソードが突き刺さっていった。その瞬間にビームソードの刃の中へと含まれた熱線がアレックスの体全体に轟いていった。
もし、この時アレックスが忠告に従って頭を冷やしていればその結果は大きく変わったに違いなかった。
だが、いくら終わったことを悔いたとしても仕方がない。結果的に麗俐が突き刺した熱がアレックスの体全体へと伝わっていったのだ。
アレックスの体全体に回っていたマグマのエネルギーがビームソードの刃から伝わった熱によってその熱エネルギーが逆流していくことになった。
その場にいた全員の耳に「言葉にならぬほどの悲鳴」が聞こえてきた。
この世が終わるかと感じるほどの大きな声であったので、その場にいた全員の中に深く印象付けられることになってしまった。
だが、麗俐は心の内に生じた動揺を体からは見せることもせずに、落ち着いた手付きでビームソードの刃をアレックスの体から抜き取っていった。
そして、そのまま何の感情を抱くこともなくアレックスの体をその場から強く蹴り飛ばしていった。
限界状態のアレックスに対して麗俐は背中を向けて家族の元へと戻ろうとしていた。
普通であるのならばここでアレックスは死んだと思うべきだろう。
だが、アレックスはまだ生きていた。麗俐が『執念』の元で『明日なき明日を撃つ者』に挑んでいたようにアレックスもまた『執念』によってその命を地上で長引かせていたのだ。
その目的はただ一つ、自身の死出の旅の道連れとして麗俐を巻き込むためであった。
今ならば麗俐は油断している。その肩を勢いよく掴んで引き摺り下ろし、自身の自爆の道連れにするには最適であるように思えた。
そのまま油断している麗俐の背後から回り込み、その肩を掴み上げようとした時のことだ。
背後から一筋の熱線が飛んでいき、アレックスの心臓部を貫いていった。その熱線が引き金となってアレックスはマグマエネルギーの暴発を抑え切れずに爆死してしまうことになった。
肉片の一つも残さない完璧な自爆であった。そのため無惨な死体を見なくて済んだのはこの場にいた全員にとっての幸いであったというべきだった。
だが、胸を撫で下ろしてばかりもいられない。アレックスに取り憑いていたはずの山高帽のような姿をした生物が宙の上へと飛んでいくのが見えた。
背後の爆発音と宙の上に逃げ出していく山高帽のような姿をした生物を見て麗俐は思わず腰を抜かしてしまった。
麗俐が恐る恐る背後を振り返ると、そこにはビームポインターを構えたカエデの姿が見えた。
どこかぶっきらぼうな態度をしたカエデはパワードスーツを身に付けたままの麗俐に向かって言った。
「勘違いしないでくださいね。あなたには私のメンテナンスをしてもらう予定なので、ここで死なれては困るんです」
「あ、ありがとう」
だが、麗俐は高飛車な態度を取られていたにも関わらず、反感を持つどころか、カエデに助けてもらったことが嬉しくて兜を取り、逆だ微笑み返した。
だが、カエデは先ほどと同様に高飛車な態度で腕を組むばかりだった。
その実は悪く思ってはいない。そんな憎らしく思っていない心境が伝わってくるかのようだった。
麗俐はそんなカエデの心境を察し、嬉しくなり、胸を弾ませながら家族の元へと向かっていった。
次なる惑星に向けての準備もある。麗俐は足早にロケットへと向かっていった。
ロケットの中に戻ってからも大変であった。
発着場の管制官から報告を聞いて駆け付けてきた警察官たちに事情を話はなければならなかったのだ。
幸いなことに中央ポリスステーションに連れて行かれることは免れたものの、長い時間を掛けることになったので出発は翌朝となってしまった。
調書を取り、満足した警察官たちの後ろ姿を見送った後に、ようやく発着場から許可をもらうことができた。
それからジョウジとカエデの運転によって無事に火星を出発することができた。
こうしてメトロポリス社は火星において最悪のトラブルに引き込まれてしまう形になったが、無事に火星を出発して次なる惑星へと向かっていった。
長い時間を掛けることになったが、これで火星ともお別れである。
名残惜しい気もするが、人類が見つけた惑星の中ではどの星よりも発展を遂げ、地球ともっとも近い環境を作り出した唯一の植民惑星ともこれでお別れである。
後ろ手を引かれる思いはあったが、メトロポリス社における交易の仕事はまだ山のように残っているのだ。
こんなところで挫けるわけにはいかなかった。
修也は運転席の中で退屈紛れにそんなことを考えていたが、その一方で気になるのは例の山高帽のような生物の行方であぅた。
アレックスと共に爆死することなく、山高帽のような生物は無事に生き延びていたのだ。どこへ行ったのだろうか。
修也の疑問は膨らむばかりだった。
修也が宇宙船の中で山高帽のような生物のことを考えていた時、奇しくもその怪生物はアレックスのかつての根城へと向かっていた。
相変わらずの朽ち果てたトレーラーハウスであったが、砂埃がまとわりつき汚れきった窓の外からゴミだらけとなった部屋の隅で弱々しい手付きで掃除を行うメイドのような服を着たアンドロイドの姿が見えた。
メイド服は虐待のためところどころボロボロになってしまっていたが、それでもアンドロイドであるため彼女は気にする素振りも見せずに黙々と作業に励んでいた。
山高帽のような生物はこれまで取り憑いてきた相手は生身の生物ばかりであり、アンドロイドのような機械生命体に取り憑いたことはなかった。
だが、そのことを知らない山高帽のような生物は澱んだボロボロの窓の外から絶好の機会を窺っていた。
あとがき
本日より日常生活の方が忙しくなっていったということもあり、しばらくの間連載の方を休止させていただきます。
ただ、再三繰り返させていただくことになりましたが、自分にとっても大事な作品ということなので落ち着き次第、不定期になりますが、未完結となっている他の作品と共に連載を再開させていきたいと考えております。
勝手ではありますが、それまでお待ちいただければ幸いです。
アレックスは焦りさえ感じていた。自分はここまで追い込まれているにも関わらず、目の前にいる少女は平気で破片を砕き返していくのだ。あり得ない。そんなことがあっていいはずがなかった。
仮に今の自分がもし目の前の少女と同じ状況であったとしても自分ならば到底真似することはできなかった。
アレックスはスライムの下で歯軋りをしながら麗俐を睨んでいた。
腹たち紛れにアレックスは何度も溶岩を放っていくものの、その都度冷静な態度を貫いた麗俐の前に弾き返されてしまったのだ。弾き返された溶岩の岩石が剥がれ、岩石がスライムの体に飛んでいくたびにアレックスは焦りのようなものを感じていた。
もちろん、こんな攻撃が続いたところでどうにでもなるわけがない。向こうは何もできないのだ。
溶岩をビームライフルに組み込むことができれば話は別だが、ただ破片を撃ち込んでくるだけであるのならば特に痛くも痒くもない。
アレックスがそう信じ込んでいた時のことだ。麗俐が打ち返した溶岩の岩石が原型を保ったままアレックスの元へ戻ってきたのだった。
アレックスは必死に交わしたものの、岩石は左肩を掠めていった。
と、この時アレックスの左肩に棘のように生えていた岩石の角飾りが粉々に砕かれてしまったのだ。
飛び散った岩石の角飾りはそのままアレックスの背後にあった岩石にぶつかり、粉々に砕かれていってしまったが、もしあの岩石が直撃していれば自分はどうなってしまったのだろうか。
アレックスの全身に鳥肌が立っていった。このまま隕石を飛ばしていれば間違いなく、自身の身は破裂だ。
そうなる前に目の前の少女を完膚なきまでに叩きのめさなくてはならない。
そのためには強力な力で相手を叩きのめさなくてはいけない。
決意を固めたアレックスは自身の体全体に溶岩の炎をたぎらせていった。
全身から湯気が立ち上るほど、今のアレックスの体はマグマで満ち溢れていた。
アレックスは声を荒げながら麗俐を確実に葬るため全身から湯気のみならずマグマを溢れさせ、その上で両腕に備わった剣を突き付けながら麗俐の元へと向かっていった。
この時麗俐に対する恐怖と自身の思い通りに事が運ばないという苛立ちのためすっかりと興奮して頭に血が昇っていたアレックスに対して唯一警告の言葉を発したのは彼に取り憑いた山高帽のような姿をした生物だった。
(お前の体からはあまりにもマグマが吐き出され過ぎだ。危険過ぎる。そんなことでは僅かな熱量でお前の体を守るものはなくなってしまうぞ)
「うるせぇぞ! テメェはすっこんでろッ!」
アレックスは昔からこうだった。人の忠告も聞かずに独断専行を押し進めていく性格なのだ。自分のことを思っての忠告にも耳を貸すことなどなかった。
それどころかそんな忠告を受けた時の彼の反応はといえば暴力による対応のみであった。
そのため両親も教師も医者も弁護士でさえ彼を見放した。弁護を放棄したと思えるような態度を見たアレックスは証人席から弁護士に向かって野次を飛ばしたが、刑務官に押さえ掛かられたことによって断念せざるを得なかった。
だが、出所後に自身の弁護を放棄した弁護士に対する粛清はしっかりと行なった。
屈辱を受けた報いを返すというのは彼にとっての流儀であったからだ。幸いなことに弁護士の犯罪は通り魔の仕業だとされて捜査の手はアレックスに及ぶことはなかった。
もし、この時警察がアレックスに追及の手を伸ばしていればここ二週間の間に発生した連続強盗殺人事件は発生しなかったに違いなかった。
アレックスは山高帽のような姿をした生物からの忠告を完璧に無視した。それどころか、そんなものはどこ吹く風だと言わんばかりに麗俐の元へと突っ込んでいった。
だが、麗俐は目の前からマグマを全身から吹き流した恐ろしい男が迫ってきているにも関わらず、足を後ろに下がらせるといった逃げようとする素振りなどは見せようとしなかった。
そのまま無言で迫ってくるアレックスの体に向かってビームソードを突き刺していった。
アレックスの胴体に対して深くビームソードが突き刺さっていった。その瞬間にビームソードの刃の中へと含まれた熱線がアレックスの体全体に轟いていった。
もし、この時アレックスが忠告に従って頭を冷やしていればその結果は大きく変わったに違いなかった。
だが、いくら終わったことを悔いたとしても仕方がない。結果的に麗俐が突き刺した熱がアレックスの体全体へと伝わっていったのだ。
アレックスの体全体に回っていたマグマのエネルギーがビームソードの刃から伝わった熱によってその熱エネルギーが逆流していくことになった。
その場にいた全員の耳に「言葉にならぬほどの悲鳴」が聞こえてきた。
この世が終わるかと感じるほどの大きな声であったので、その場にいた全員の中に深く印象付けられることになってしまった。
だが、麗俐は心の内に生じた動揺を体からは見せることもせずに、落ち着いた手付きでビームソードの刃をアレックスの体から抜き取っていった。
そして、そのまま何の感情を抱くこともなくアレックスの体をその場から強く蹴り飛ばしていった。
限界状態のアレックスに対して麗俐は背中を向けて家族の元へと戻ろうとしていた。
普通であるのならばここでアレックスは死んだと思うべきだろう。
だが、アレックスはまだ生きていた。麗俐が『執念』の元で『明日なき明日を撃つ者』に挑んでいたようにアレックスもまた『執念』によってその命を地上で長引かせていたのだ。
その目的はただ一つ、自身の死出の旅の道連れとして麗俐を巻き込むためであった。
今ならば麗俐は油断している。その肩を勢いよく掴んで引き摺り下ろし、自身の自爆の道連れにするには最適であるように思えた。
そのまま油断している麗俐の背後から回り込み、その肩を掴み上げようとした時のことだ。
背後から一筋の熱線が飛んでいき、アレックスの心臓部を貫いていった。その熱線が引き金となってアレックスはマグマエネルギーの暴発を抑え切れずに爆死してしまうことになった。
肉片の一つも残さない完璧な自爆であった。そのため無惨な死体を見なくて済んだのはこの場にいた全員にとっての幸いであったというべきだった。
だが、胸を撫で下ろしてばかりもいられない。アレックスに取り憑いていたはずの山高帽のような姿をした生物が宙の上へと飛んでいくのが見えた。
背後の爆発音と宙の上に逃げ出していく山高帽のような姿をした生物を見て麗俐は思わず腰を抜かしてしまった。
麗俐が恐る恐る背後を振り返ると、そこにはビームポインターを構えたカエデの姿が見えた。
どこかぶっきらぼうな態度をしたカエデはパワードスーツを身に付けたままの麗俐に向かって言った。
「勘違いしないでくださいね。あなたには私のメンテナンスをしてもらう予定なので、ここで死なれては困るんです」
「あ、ありがとう」
だが、麗俐は高飛車な態度を取られていたにも関わらず、反感を持つどころか、カエデに助けてもらったことが嬉しくて兜を取り、逆だ微笑み返した。
だが、カエデは先ほどと同様に高飛車な態度で腕を組むばかりだった。
その実は悪く思ってはいない。そんな憎らしく思っていない心境が伝わってくるかのようだった。
麗俐はそんなカエデの心境を察し、嬉しくなり、胸を弾ませながら家族の元へと向かっていった。
次なる惑星に向けての準備もある。麗俐は足早にロケットへと向かっていった。
ロケットの中に戻ってからも大変であった。
発着場の管制官から報告を聞いて駆け付けてきた警察官たちに事情を話はなければならなかったのだ。
幸いなことに中央ポリスステーションに連れて行かれることは免れたものの、長い時間を掛けることになったので出発は翌朝となってしまった。
調書を取り、満足した警察官たちの後ろ姿を見送った後に、ようやく発着場から許可をもらうことができた。
それからジョウジとカエデの運転によって無事に火星を出発することができた。
こうしてメトロポリス社は火星において最悪のトラブルに引き込まれてしまう形になったが、無事に火星を出発して次なる惑星へと向かっていった。
長い時間を掛けることになったが、これで火星ともお別れである。
名残惜しい気もするが、人類が見つけた惑星の中ではどの星よりも発展を遂げ、地球ともっとも近い環境を作り出した唯一の植民惑星ともこれでお別れである。
後ろ手を引かれる思いはあったが、メトロポリス社における交易の仕事はまだ山のように残っているのだ。
こんなところで挫けるわけにはいかなかった。
修也は運転席の中で退屈紛れにそんなことを考えていたが、その一方で気になるのは例の山高帽のような生物の行方であぅた。
アレックスと共に爆死することなく、山高帽のような生物は無事に生き延びていたのだ。どこへ行ったのだろうか。
修也の疑問は膨らむばかりだった。
修也が宇宙船の中で山高帽のような生物のことを考えていた時、奇しくもその怪生物はアレックスのかつての根城へと向かっていた。
相変わらずの朽ち果てたトレーラーハウスであったが、砂埃がまとわりつき汚れきった窓の外からゴミだらけとなった部屋の隅で弱々しい手付きで掃除を行うメイドのような服を着たアンドロイドの姿が見えた。
メイド服は虐待のためところどころボロボロになってしまっていたが、それでもアンドロイドであるため彼女は気にする素振りも見せずに黙々と作業に励んでいた。
山高帽のような生物はこれまで取り憑いてきた相手は生身の生物ばかりであり、アンドロイドのような機械生命体に取り憑いたことはなかった。
だが、そのことを知らない山高帽のような生物は澱んだボロボロの窓の外から絶好の機会を窺っていた。
あとがき
本日より日常生活の方が忙しくなっていったということもあり、しばらくの間連載の方を休止させていただきます。
ただ、再三繰り返させていただくことになりましたが、自分にとっても大事な作品ということなので落ち着き次第、不定期になりますが、未完結となっている他の作品と共に連載を再開させていきたいと考えております。
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