いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

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第二部『救世主と悪魔達との玉座を巡る争い』

動乱の序章 パート2

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何頭もの馬を掛けながら、中隊と呼べる程の数の騎士や兵士が森の中を駆けていく。
やがて、見張り台から少ししか離れていない街道に差し掛かるなり、先頭に立っていたシルヴィアと双子の騎士は大きな声で馬を止めるように指示を飛ばす。
三人の指示に従い、馬を止めた兵士達が見たのは目の前を覆わんばかりのゴブリンとオークの姿。
彼らが街道に現れているという事は見張り台への援軍が間に合わなかったという事だろう。
シルヴィアは険しい目付きで目の前のオークやゴブリン達を睨む。
彼らのような怪物にとっても騎士の睨みは恐ろしかったのだろう。
彼らの足が竦むのをシルヴィアは確認した。
シルヴィアはこれならば勝てるとばかりに剣を鞘から引き抜き、その鋭い刃先を怪物達に向けた。
怪物達はシルヴィアの持つ剣に怯んだが、彼らの目の前に一体のオークが現れ、自分の味方達に向かって大きな声で演説を行う。
「何を怯えたおる!これは国王陛下のご意志であるぞ!貴様らには国王陛下に尽くそうと言う心意気はないのか!?」
オークの言葉に怪物達は北の国の国王への忠誠を思い出したのか、体を奮い立たせながら騎士達に向かっていく。
騎士と兵士で構成される騎馬隊はオークやゴブリンの群れの中に向かって走っていく。
馬に蹴散らされながらも、何体かのゴブリンはその馬に槍を刺して馬上の兵士達を地面に落とす事に成功する。
だが、兵士達はそこからも粘った。兵士は自分の腰に下げてある剣を鞘から抜き取り、ゴブリンの槍やオークの巨大な剣に立ち向かっていく。
剣の腕はゴブリンやオークよりも兵士達の方が上だったらしい。ゴブリンが一人を槍で突き刺すよりも、オークがその刀で一人を葬る数よりも兵士達が振った剣によってゴブリンとオークが倒れた数の方が多いのが何よりの証拠だろう。
兵士達は彼らより少ない数でありながら、自分達の背後にある人間達を守るために懸命に歯を食い縛りながら、剣を振るっていく。
その中でもシルヴィアが最も活躍していたと言うべきだろう。
彼女は何度も何度も剣を振り回しながら、ゴブリンやオークの兵を死神の元へと送り付けていく。
シルヴィアは自分の体が他の騎士や兵士よりも小柄である事を活かし、ゴブリンの突く槍やオーク達がめちゃくちゃに振り回す巨大な剣を頭を下げて交わしていき、反対に武器を振るった亜人へと下から上へと剣を振るっていく。
シルヴィアの剣の前に多くの亜人が死ぬの中で、他のオークよりも更に大柄なオークが彼女の元に向かっていく。
彼の手に持っていたのは他のオークが持つような包丁のような形をした剣だけではなく、多数の小さな刺の付いた棍棒であった。
多くのゴブリンやオークに囲まれる中を彼は狙い、自分の注意が向いていない事を確認し、彼女の頭上から棍棒を振り下ろす。
シルヴィアは最初は大柄のオークが振り上げた棍棒に気が付かなかったが、彼女は月に照らされた影によって棍棒の存在を知り、慌てて体を捻り、オークの棍棒を交わす。
そして、オークの手に持っている棍棒が地面にめり込んでいる隙を狙い、彼女は反対に頭上からオークの頭を狙う。
彼女の鋭い剣はオークの体を捉えて上から下へと斬り込んでいく。
真っ二つに体を割られたオークは小さな唸り声を上げてから絶命する。
彼女ば巨大なオークの絶滅を見届けてから、もう一度自分達の周りを覆うオークやゴブリンの姿を見つめた。
オークの数は当初に遭遇した数よりも明らかに減少していた。
初めは森を覆い尽くさんばかりの数であったのに対し、現在は森の中における数も減少傾向になっている。
シルヴィアは剣を振るいながら、ゴブリンやオークの群れを斬り刻んでいく。
オークの体やゴブリンの体が斬られていく度に、彼女の力は強くなっていく。
シルヴィアが剣を左右に大きく振り回していると、背後から一匹のゴブリンが彼女の心臓に目掛けて槍で突き刺そうと企んでいた。
ゴブリンが彼女の心臓に目掛けて突き刺そうとした時に、誰かが大きな声で彼女に向かって狙われている事を叫ぶ。
シルヴィアは咄嗟に背後を振り向き、槍を投げようと腕を大きく上げていたゴブリンの存在に気が付く。
シルヴィアはゴブリンの元に滑り込み、彼の目の前で上から下にかけて剣を振るう。
ゴブリンの体は真っ二つに裂けて地面に倒れ込む。
シルヴィアはその様子を見て荒い息を上げていたが、彼女にとっての受難は次だったと言えるだろう。
彼女の周りをオークやゴブリンが取り囲んでいたのだった。
幼年の女騎士が思わず生唾を飲み込むと、大きな声が聞こえ、彼女を取り囲むゴブリンとオークの集団の中に穴が開いていく。
シルヴィアが目を凝らすと、包囲網を破ったのは例の双子の騎士だった。
双子の騎士は一心不乱に剣を振り回しながら、ゴブリンとオークの群れを地面に倒していく。
包囲網の中心となった場所に彼が入り込み、長い黒髪の女性が幼年の騎士に向かって手を伸ばす。
彼女は満面の笑顔で、
「大丈夫だよ!必ずあたし達があいつらを葬ってみせるからッ!」
シルヴィアは年上の女騎士に甘えて、初めて彼女の手に取った。
温かくて優しい手だ。幼年の騎士は温もりを知ったような感触を味わった。
シルヴィアはマートニアの手を取り、包囲網を脱却していく。
オークとゴブリンの群れを双子の男の方の騎士の手によって掻い潜った後には、一気に殲滅へと向かっていく。
シルヴィアは双子の騎士や残った剣士達と共に亜人達の部隊とぶつかり合う。
三人の騎士の剣舞によって残りのゴブリンやオークは消え去っていく。
最後のリーダー格のオークのみが彼の元に残った。
リーダー格の男は諦めたのか、はたまた自分ならば残りの人数を相手に出来るという自信があったのだろうか、彼は口元の右端を吊り上げながら、短い黒い髪の男の騎士に向かっていく。
ディリオニスはリーダー格のオークの大きな剣を自らの剣を盾にして防ぎ、彼の空いていた左水平から下に突き上げて斬り上げていく。
リーダー格のオークはディリオニスに体を貫かれ、真っ二つになって地面に倒れ込む。
ディリオニスはオークが倒れたのを見計らい、自分の腰に下げていた剣の鞘に自分の剣を仕舞う。
それから、待っていた妹や幼年の騎士や剣士達に向かって大きく手を左右に動かす。
大きく手を振るディリオニスを仲間達は大きな歓声で出迎えた。
ここに、北の国とプロイセン大陸初の統一王朝による最初の争いと呼ばれる『森の戦い』は終結した。
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