王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

入部の許可

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「間違い無い。許可を出したのは私だ」
先程、自分達を門前払いしようとした男を諫める声が聞こえる。
それに対し、男は何やらペチャクチャと喋っていたらしいが、彼女はそれを押し除け、部活の入り口に来た。
「エマ・ダーリングだ。この部活の副部長のな。至らぬ点はあると思うが、よろしくたのーー」
エマが右手を伸ばして自分が誘った少女に手を伸ばそうとした時だ。彼女は横目遣いで隣に立っていた男を眺めていく。
「私はその男まで入部の許可を出した覚えがないんだがな。どうしてその男を連れて来た?」
「私が必要だと判断したからです。彼はクラスにおける私の理解者であり、必要だと判断したから、誘ったまでです。私と同じで基礎魔法は使えませんが、何かの役にーー」
「立つ筈です。キミはそう言いたいのだろう?生憎だが、私はキミの戯言に付き合う気は無い。第一基礎魔法を使えないのに、他の魔法がーー」
「使える筈は無い。そう言いたいのでしょう?ですが、ケネスにも何か魔法が使える筈です。基礎魔法が使えない=何も使えないという認識は改める必要があると私は思います」
ウェンディの言葉にエマは押し黙っている。何か判断するものがあるのだろうか。
そんな事を考えながら、二人の後ろにある壁を眺めていた。
だが、彼女は何も言わずに黙ったまま部室へと戻り、二人に一枚の写真の付いたポスターを渡す。
ポスターの一番上に貼られている写真には綺麗な水色の髪をした妖艶な顔の女性が映っていた。
ポスターを受け取った私はポスターを突き出して、
「部長、何でしょう?これは?」
「……。部活への体験入部とでも言っておきましょうか、それとも、ケネスの入部条件だと言った方が良いかしら」
私は副部長の言葉の意味をようやく飲み込む。
どうやら、部長はケネスを入部させる代わりに、この女を捕まえて来いと言いたいらしい。
「女の名前はメアリー。メアリー・コルフォード。結婚相手の夫十五人を殺して逃亡したとされる凶悪犯だ。懸賞金は100王国ドル。仕留めた場合は二割がキミの手元に、後の八割は我々の部活に入る事になる」
これが、部活の性質らしい。八割を部活に寄付し、残りの二割を生徒の小遣いに渡されるらしい。
だが、あまりにも割が合わない様な気がするのだが……。
私がポスターを手に取りながら、その事を考えている最中だ。ケネスが強引に手を引いて、私を部活から遠ざけていく。
部室から離れると、ケネスは私に向き直って、ひどく真剣な顔で言った。
「よく聞けよ。あんな部活になんて入る価値ないよ」
真剣な顔の彼とは対照的に、私は涼しげな顔を浮かべていた。
だが、そんな私の表情も気に入らなかったのだろう。彼は強くハッキリとした声で、
「何そんな顔してるんだよッ!どう考えてもおかしいだろうッ!どうして、何もしない部活が八割も持って行くんだよ!オレらの苦労はたったの二十王国ドルだぞ!割りに合わないッ!」
そう憤る様子の彼を私は優しい口調で、
「落ち着いて、ここは人が多いわ」
私の一言で彼も正気に立ち返ったらしい。あたりを見廻し、部活棟を歩く人々が一斉に自分の方に向いている事に気が付いたらしい。
彼はそれを察するとすぐ様、私の手を取って部活棟の端の方へと向かって行く。
部活棟の端、人の滅多に通らないスペースだったのなら、彼も安心したのだろう。
先程と同等の愚痴を懸命に吐いていく。
私は涼しい顔でそれを聞き流してから、人差し指を立てて、
「確かにあなたの言う事にも一理あるわ。けれどね、どうしてあの部活が学校内において生徒会と同等の権力を有していると思うの?」
その言葉にケネスはハッと息を飲む。
これはあくまでも私の推測に過ぎないのだが、賞金稼ぎ部の取り分が多いのはもしかしてその部活で稼いだ金を学校に貢いでいるからでは無いのだろうか。
そんな事を考えていると、何やらバタバタと上の階で靴を打つ音が響く。
私はこの理由を確かめたいと思い、ケネスの右手を取って、先程、極秘の話をするために離れた部活棟の中心へと戻っていく。
そこに居る生徒達は全員が全員、顔に慌てた様子を浮かべており、何処にも落ち着いた人間や楽観的な表情を浮かべた人間はいない。
私は堪らず、適当な生徒を掴んで、事態を尋ねる。
緑色のショートカットの杖無しの星型のバッジを胸に付けた男子生徒は忙しそうに視線を右往左往しながら、
「大変なんだよ。今、賞金稼ぎ部が追い掛けている毒婦のメアリーがいるだろ?あいつが学校近くの酒場で少年の人質を取って立て籠っているんだよ!」
それを聞いて、私は思わず両目を丸くしてしまう。次に私は真剣な表情を浮かべて、この事態をどう対処すべきかを思案していく。
だが、そんな思案も緑色の髪の生徒により中断させられてしまう。
彼は私の右腕を強く引っ張って、
「こんな時に不謹慎かもしれないけれど、杖無し僕らの手で毒婦メアリーを捕らえようよ!そうすれば、きっと学校の杖を持っている奴らも少しは見直す筈だよ!」
「……。分かったわ。行きましょう。あなた名前は?」
「ぼく?ぼくの名前はマーティン。マーティン・チェリローズ。マーティって呼んで」
薔薇の桜チェリローズ?可愛らしい苗字ね。素敵だわ。マーティンという名前も素敵よ。あら、失礼、マーティ?」
私のその言葉に何故かマーティは照れており、クネクネと体を動かしていたのだが、ケネスはそれを見ると、頬を微かに赤く染めながら、乱暴に私の手を取って校門へと急いでいく。
その様子を見たマーティも慌てて後を追い掛けていく。
私達三人が酒場に到達した頃には既にメアリーが左脇に人質と思われる少年を、右手に武器と思われる長銃を携えながら、集まった生徒会の生徒達や賞金稼ぎ部のメンバーに向かって叫んでいる。
「それ以上近付くんじゃあないよ!少しでも動けばあたしの拳銃でこの子のドタマをぶち抜くし、そうでなくても、全身を毒に染めらせて、この子と共に死ぬ事は出来るんだからねッ!この子を死なせたくなけりゃあ、あたしの要求を呑むんだねッ!」
「ふぅ、要求は一体なんなの?」
以前、私と対峙したオレンジの髪の生徒会長が気怠そうな様子でメアリーに向かって問い掛ける。
すると、メアリーは大きな声で笑いながら、
「分からないのかい!?あれだよ!逃走用の資金と、逃走用の馬ッ!あたしの要求はそれだけだねッ!」
彼女は泣き叫ぶ子供と共に大きな声でその場に現れた生徒会のメンバーや賞金稼ぎ部の面々に向かって叫ぶ。
私、ケネス、マーティの三人はそれを酒場の向かい側に存在する雑貨店の陰に隠れながら、見ていた。
私と二人の仲間(私の中では既にマーティへの仲間意識はこの時点で芽生えていた)にどうやって、彼女に向かって対処するのかを相談し合う。
ヒソヒソ声で尚且つ、メアリーと生徒会の会長とが交渉をしているタイミングを狙って話し合っていたために、彼女に話が漏れる事は無いだろう。
話し合いの末に、私達三人で酒場の裏口を回って、背後から毒婦メアリーを制圧する事を決めた。
問題は人質となっている少年ではあるが、これも私の射撃技術やら魔法の腕やらでなんとかする事になったらしい。
まず、この木製の建物同士の繋がった街並みを利用して、その陰に隠れながら、私達から見て向かい側の酒場のある方に向かう。
そして、商品搬入用の入り口を利用して、酒場の中に入り込みメアリーを制圧する。
問題は上手くいくかどうかだが、まぁ、頑張るしかないだろう。
私は苦笑しながら友人達と共に建物の後ろを歩いていく。
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