王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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フォー・カントリー・クロスレース編

クラウン会長の陰謀

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「悪いけれども、そこを退いて下さる?私、急いでいるのだけれど」
「ふざけるなッ!何の関係も無い貴様を恐れ多くも国王陛下のおられる宮殿内へと入れられる訳がないだろうッ!」
門番と思われる豪華な絹の制服を着た男たちは夜の闇、辺りを染める漆黒の光景のために相手の姿が見えなかったので、目の前に立っている女が宮殿内にて開かれる舞踏会に参加している貴族達を狙っているのだと推測し、長銃の先に付けていた銃剣を向けて目の前に現れた得体の知れない女を防ごうとしたのだが、彼女は聞く耳を持とうとはしない。
それどころか、銃剣の先端を突き付けられても、口元の右端を吊り上げて笑うという余裕の態度を見せてさえいた。
その余裕のある態度が騎士という下級貴族の身分を持ち、山のように高いプライドを心の内に持っていた二人の門番の逆鱗に触れてしまったに違いない。
二人の男は互いに斜めした銃剣を構えて目の前の少女を突き殺そうと目論んだのだが、彼女はいとも容易く交わすと、次に息を吐く暇さえも相手に与える事なく、二人の首を手刀で叩いて二人の意識を闇の底へと追い落とす。
門の上でみっともなく倒れた二人を見て、オレンジの髪の女はクスクスと笑って、
「悪いけれども、あなた達に構ってはいられないんだ。私は一刻も早く、この城に危険なテロリストが集まった事を報告しないといけないものぉ~」
彼女はなぜか腰をクネクネと動かし、意識を失った兵士達に色を見せてか。門をくぐり目の前に聳え立つ由緒正しき宮殿の中を進んでいく。
スキップをしながら宮殿を進む彼女は心の底から楽しそうな様子で鼻歌を歌って進んでいく。
跳ね橋の上がった門をくぐり、宮殿の中のジャングルを思わせるような草木の生い茂った庭は見応えがあったのだが、今の彼女は庭を見て回りたいという衝動を必死に心の内に抑えて、庭を歩いていく。すると、大きな白レンガで作られた建物に沿って作られた庭の中に一つ、切り開かれた場所が見つかり、そこに多くの食べ物や飲み物が並べられた机が存在している事から、どうやら、パーティーというのはここで開かれているらしい。
生徒会長はその場に参加しているウェンディを冷やかそうと明かりの差す一角の近くにある木の影に隠れて、様子を伺っていると、自身の耳に笑いの声が届く。
初めは何か面白い事を余興にでもやっているのかと思われたのだが、もう一度、自身の耳に届いた笑い声から推測するにどうやら、舞踏会に参加している婦人やら紳士やらが浮かべている笑いは同じ笑いでも「嘲笑」の類だったらしい。
生徒会長は考えを改めて、暫くは木の上で舞踏会という名の吊し上げを笑いながら眺めていた。










「まぁ、はしたない!そんな事女のする事ではありませんわ!ましてや、王女というのにまるで、平民の読む冒険小説に出てくる怪力男みたい!」
王子の取り巻きの令嬢が馬鹿にすると、それに同調して取り巻きの取り巻きや、それにつられた宮廷の馬鹿な貴族達が一緒に笑い出す。
老齢の執事から舞踏会に招待されたてから、三日後、あの町から無事に王都に辿り着き、ホテルで一服している私に例の執事がまたもや現れて、ドレスを新調せず、あの汚れたままの服で来いと命令したのだ。
少なくとも、公式の舞踏会であるのだから、正装をして参加するのが礼儀だと意見したのだが、執事は王子の決定に逆らうのかと私を大きな声で怒鳴り付け、私に汚れたままの服で舞踏会に来るように言い付けると、そのまま三ヶ月前のように馬に乗り、心底吐き気のすると言わんばかりの表情で、王宮に戻っていく。
国境近くの田舎と呼んでも良い町とは異なり、今、私が居るのは王都であり、部屋の質もベッドの良さもあの町よりはグレードアップしているというのに、あの男はそれでも足りないらしい。
私は窓の下で必死の形相で馬を駆けるあの老人が気の毒に思えてきた。
加えて、あの男もあの男なりで大変なのだろうと思われされた。
あの男は国王の命令で国境近くの町に待機し、気紛れにレースに参加した王子を呼び戻すために派遣されたのだが、王子にレースの辞退を地元の保安委員に申し出る代わりに、ウィンストン・セイライム王国のウェンディ王女を非公式の舞踏会に呼べと命令されたのだから。
と、そんな事を言っても、あの男の価値観が長年積み上げられた貴族社会の負の遺産と呼べる選民意識やら私を今、現在辱めている罪状は変わらないのだが……。
私はこの陰湿な舞踏会に参加する中で、王子はあの時、子爵への横暴を止められた時の憂さ晴らしを私を死んだコール・キャンディマンに代わって行なっているのだと確信していた。
初めに舞踏会の会場に到着した時、王子は私を舞踏会の嘲笑を一身に浴びた。
彼ら彼女らは私の格好を笑い、私が腰に拳銃を下げている事や、私があの男の魔法を奪って、あの男を殺した事を報告した上に、王子は宮廷のピエロと音楽団に命じ、私を嘲笑う曲を奏で歌うように指示を出し、それにつられた社交界の服に着飾った貴族達が躍り狂う様を私は見せ付けられていた。
一刻も早く帰りたい気分であったが、王子はそれを許さない。
帰ろうとする私に酒を勧めて、強引に私の右腕を掴み、私を帰らせまいとしていく。勿論、私は口を付けるフリをして、少量の酒を口にしていくだけなので、王子の思惑通りには事が運ばなかったらしい。私が中々酔わない事を苦々しく思ったのか、王子は途中でパーティー会場から退出してしまう。
それについて行くのは王子の取り巻きにして婚約者の令嬢。
何という名前だったのかは覚えていない。ただ、令嬢は不細工な顔のエリオット王子と口付けを交わすと、見せ付けるように私に向かって笑いかけていく。
私は手に持っていたワイングラスの下を人差し指と親指で弄りながら、あの令嬢の笑顔に含まれていた成分を推察していく。
あの令嬢の顔にあるのは王子を独り占めできて羨ましいだろうと言う笑顔であった。そして、将来、国の妃となるのが羨ましいだろう、と言わんばかりの瞳。
間違ってもエリオットを愛してのものではないのは明白だ。
私が退出していく二人を眺め終え、暫く私の嘲笑を摘みにワインをちびちびと飲んでいた時だ。
突如、悲鳴のようなものが私の耳元に響く。
私がパーティー会場の扉を開くと、そこには腰を抜かした令嬢と王子が腰に下げていた短剣だけがその場に残されていた。


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