王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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フォー・カントリー・クロスレース編

悪役令嬢と悪の女ガンマン

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夜の中で山に向かって馬を走らせるのは辛かったのだが、不満は言ってられない。恐らく、奴らは私があの山小屋に到着したのを皮切りに、殺戮を止めるつもりなのだろう。
私の背後に王国の保安委員の連中が付いて来ているのがその証拠と言えるだろう。
私は先程、王子の奪還のために訪れた山小屋を見つめると、そこには山小屋が建っているばかりであり、ポピーらしき姿もグレースらしき姿も見えない。
恐らく、街で殺戮を繰り返しているに違いない。
私は小屋の前で一緒に付いて来た衛兵から受け取った小瓶に入ったウィスキーを飲んでいると、目の前から人質と思われるカップルの男女に銃を突き付けた状態の二人の女性が現れた。
片方の男のような姿から、彼女の正体は掴めた。間違いない。ポピー・ブラックだ。
そして、もう片方、煌びやかな刺繍をスカート部分に施した絹のドレスを着ているのがグレースで間違い無いだろう。
ポピーは銃を突き付けながら、
「あんた、ウェンディって言うのかい?知らなかったよッ!あんたもお姫様なんだってね!知らなかったよ!ハッハッハ」
最後に含まれている笑いは明らかに嘲笑。
恐らく、王宮を追放され、落第生のレッテルを張られるている私の事がおかしくて堪らないのか、それとも王女でありながら、落第生と煽られる私の事が面白いのだろうか。
いや、弟以外の人間は虫だとか小動物かのように思っている彼女の事だ。
恐らく、その両方の意味で笑っているに違いない。
すると、隣でカップルの男性を脅していたグレースもケタケタと笑い出し、
「その通りよッ!この女はとんだ劣等生よ!王女でありながら、基礎魔法の一つも使えない落ちこぼれッ!レースに参加したのはいいけれども、その最中に事件に巻き込まれて、順位は大きく下落!本当に空虚の女よ!それに比べて、あたしの方はどうよッ!」
グレースは大きく胸を張って、ドレスを見せびらかせるかのようにその場でグルリと回転して、私にその綺麗なドレスと自分がいかに大貴族の令嬢に相応しい可愛らしくて可憐で優雅な存在であるのかをアピールしていく。
彼女のアピールの時間を狙ってカップルの男の方は逃げようとしたのだが、グレースはそれを許さない。
彼女は躊躇う事なく引き金を引き、男の命を奪う。
彼女はケタケタと笑って、
「下賤な賎民風情が、私の手から逃げられるとでも!?本当に頭がおかしいんじゃあないかしら!?私は公爵家の令嬢であり、貴族なのよ!その私に人質に取られる事自体を誇りに思いなさいッ!」
そう言って彼女は回転式拳銃の銃口を握り、銃の尻で人質になっている少女の頬を思いっきり叩き付けた。
頬を強力な武器で殴られた彼女は悲鳴を上げるまもなく、殴られた衝撃で倒れそうになるも、その体をポピーに乱暴に支えられる事により、地面に倒れる事を防ぐ。
ぐったりとした彼女の髪を彼女は強く掴んで、
「良い!?これが適切な平民と貴族のあり方なのよッ!あたしは公爵家の令嬢ッ!出来損ないのお姫様ともこんな薄汚れた平民とも違う、真のお姫様よッ!さぁ、早くあたしを迎え入れなさい!」
グレースは両手を大きく広げて、山小屋の周りに集まった保安委員の人達にアピールをしたのだが、彼らはそれに動じる事なく、背中に下げていた長銃や散弾銃を持ち出し、目の前の二人の少女に向かって銃口を構えていく。
怒りの形相で二人を特に、グレースを射殺せんとばかりに引き金に掛けている人差し指を震えさせる彼らの気持ちも分からないではない。
この国の貴族の負の遺産の積み重ねとも言え、その呪いを一挙に引き受けた公爵令嬢を目の当たりにしていたのだから。
しかも、彼女は側にいる凶悪犯と共に王都で凶悪な犯罪を繰り替えていたのだから。
だが、業を負うのも、他国とはいえ堕落した貴族を救うのは王女である私の役目であるとも言えるだろう。
私は彼らを手で静止し、彼らに銃口を下させる。
それから、目の前で女性を人質に取る二人に向かって、
「よく聞きなさい。あなた達の要望は満たされたわ!私は約束通りにきたわ!だから、その女性を離しなさい」
「おっと、そうだったね」
ポピーは女性を私達の前へと突き飛ばすと、口元を緩ませて、ニヤニヤとした表情を浮かべながら、
「行けよ。あんたは解放だ」
女性は恋人を失った悲しみからか、それとも自身も文字通り、死ぬ程怖い目に遭った恨みからか、涙を流しながら逃亡を図ったのだが、その女性をポピーは無情にも背後から撃ち抜く。
あまりにも非道、あまりにも外道。まさに、悪魔という言葉に相応しい残虐な声であった。
ポピーとグレースの両名はケタケタと笑いながら、
「ハッハッハ、本当にあたしらが約束を守るとでも?もうこいつは用済みだから、始末させてもらったわ」
二人の声が同時に響く。私はその自分勝手で残虐な言葉を聞いた瞬間に我を忘れて叫ぶ。
「このド外道がァァァァァ~!!!」
怒りに我を忘れた私は即座にホルスターから拳銃を抜いて、ポピーの頭を狙ったのだが、彼女は銃口が構えられた瞬間に頭を下げて、私が引き金を引く頃には弾丸は背後の木を貫通し、二人の背後に地面に落ちてしまっていたらしい。
ポピーは最初の攻撃を避けた事を皮切りに、私に向かって反撃を行い始めた。
例の強力な腕を使用して、私に向かって殴り始めた。
それに対し、私は白い光に包まれた左腕を向かわせて、左腕で相手の魔法を吸収し、ポピーに向かって殴り掛かっていく。
これで、あの男と同じで、魔法を解除さえしなければ、ずっとこの通りだ。他の系統の魔法だと折角、吸収したとしても、一度使えば消えてしまうので、私にとって体を強化させる魔法の系統はありがたいと言っても良いだろう。
私は左腕でポピーを殴り殺してやろうと模索したのだが、ポピーは素早く体を背後へと反らすと、もう一度こちらに腕を構えて向かって来る。
私はそれを迎え撃つべく拳をぶつける。
ポピーと私の二つの異形の腕がぶつかり合う中に、一人の女性が私の左脇に現れた。
グレースだ。グレースは私の脇腹に拳銃を突き付けて、
「あなたが出来損ないのは思った通りね。それに頭も悪いね?普通なら、脇を警戒して戦いに臨むでしょう?でもね、あたし頭の悪いお姫様は嫌いじゃあないわよ。本来ならば、お姫様って言うのは椅子の上に反り返りながら、アイスクリームでもーー」
乾いた音が響く。同時に私の脇に向かって拳銃を突き付けていた元公爵令嬢は吹き飛ばそうと銃を突き付けていた箇所を山小屋の前で待機していた男達に撃たれてしまったのだ。
銃弾を左脇に帯びた彼女は口から血を吐いて倒れてしまう。
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