王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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サラマンダー・パシュート編

サメディ司祭の乱心

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フォックス・サメディは学院前の酒場で魚のフライ料理に舌鼓を打っていた。
何もかも、普段、自分や仲間たちが行動している大都会、王都に比べれば劣る田舎町であるのだが、飯だけは上手い。
サメディはフライを片付けると、バーカウンターでお客のグラスに酒を注いでいた酒場のマスターに向かって満面の笑みを浮かべて親指を立てる。
マスターは両肩を下げて恐縮した様子でサメディへと頭を下げていく。
サメディは明日の前祝いとばかりにバーボンにウィスキーと、次々お酒を注文しそれを飲んでいく。
だが、不思議な事に決して酔う気配は見えない。サメディはマスターに酒を次々と要求し、酒を喉の奥へと流し込む。
流石に顔が赤くなり、マスターはそれ以上飲むのは辞めたほうが良いと警告したのだが、サメディは構う事なくウィスキーを飲む。
今日のあのウェンディとかいう女の反応は見事だった。苦しむ表情を自分に見せてくれ、それを自分に向かってアピールしていた。あの彼女の苦しむ姿がもっと見たい。
苦労知らずのお姫様をもっと苦しめてやりたい。
そんな事を思いながら飲む酒は最高だった。
サメディがグラスを揺らしてお代わりを注文するが、酒場のマスターは首を縦に振ってそれを拒否する。
「ダメですよ。お客さん。幾ら何でも飲み過ぎです」
「構うものかよ。これは明日に起こる出来事への前祝いなんだから、分かったら、もっと酒を注いでくれ、な?」
サメディの言葉を聞くと、マスターは小さく溜息を吐いてバーカウンターから酒を取り出し、サメディのグラスへと注ぐ。
グラスから溢れんばかりの琥珀色の液体をサメディは一気に飲み干していく。
彼は口元を袖で拭うと明日の事を思案していく。どうすれば、あの女の鼻を明かせられるかと楽しみだ。











「ありがとうございます。部長、それにケネスにマーティ。私と一緒に護送を担当してくれるなんて……」
あの後、部活に帰った私は部室のメンバーに助けを求めたのだが、やはり、〈杖無し〉のいう事を聞くのが馬鹿らしいという意見もあるのだろう。加えて、明確に襲って来るのかが分からない存在を相手に対処するのが馬鹿らしいというのだろう。大半の生徒が夜の護送を棄権したが、この三人だけは来てくれた。
馬に乗った私たちは多くの護衛の保安委員の方々と共に護送馬車を取り囲み、馬を進めていく。
警察署を出て、夜の森林の中を歩いていく。森の中はフクロウの声しか聞こえない程静かであったのだが、それでも私は昨日の男を警戒しながら馬を進めていく。
勿論、サメディが狙うというのはあくまでも私の推測に過ぎない。
もはや、推論と言っても良い領域であったのだが、それでもこの護送に何か起こると考えてやまないのだ。
私がそんな事を考えていると、とっくに馬車も私たちもアンダードームシティーを出ていたらしい。気が付けば、隣の街との境目にある開き切った道へと差し掛かったいた。
あの男があの対決の後に逃げるとするのならば、ここら辺で勝負を仕掛けて来るだろうと予測していると、急に馬車が止まる。
それに合わせて、周りの護衛の馬も止まり、私は慌てて背中に昨日買ったばかりの散弾銃を取り出して、先頭を見に行こうとしたのだが、私の左横で馬を進めていた保安委員の男が馬車の先頭で何が起こっているのかを見に行こうとしたのだが、その前に乾いた音が夜空の中に響き、額に穴を開けた男が馬の上から転がり落ちていた。
私はあの男が仕掛けてきたのと判断し、拳銃を抜いて相手を警戒する。
相手の男は何処に居るのだろう。ここは切り開かれた道だ。隠れられる場所など何処にもない。
私が辺りを見渡していると、目の前にあのサメの顔をした男が現れて、私に昨日と寸分変わらないあの気色の悪い表情を見せる。
「いよぅ、久し振りだなぁ。あの時は逃げたが、今回は違うぞ。オレは今日は全力なんだからなぁ~」
男はそう言って私の頬を思いっきり殴り付けた。
殴られた衝撃により、私は地面へと落とされたのだが、男は倒れた私に向かって更に拳を加えようとしたのだが、その前に一緒について来ていたケネスが例の雷雲を男に向かわせて来てくれた事から、私は難を逃れる事が出来た。
馬を降りたと思われるケネスは護送馬車から回り込み、男に拳銃を突き付けたが、男はそれこそ噂に聞く野人のような身のこなしで飛び上がり、逆にケネスに向かって自動式の輸入拳銃を突き付ける。
「オレを狙えたのかと思ったのかな?残念でしたぁ~」
「このクソ馬鹿野郎がッ!どうして!?」
「ハッハッハ、あんなやわな雷でオレは死んだりはしないさ。そうだ。今のオレは超気分が良いから、教えてやるよ」
男はそういうと、懐から一枚の緑の葉を取り出す。
「これがオレの元気の源……凄いだろ?こいつをどんな痛みも感じなくなるんだ。これをオレはボスから支給されている。あ~幸せだぁ~」
男は両頬に手を置いて、体をくねらせていく。
私は理解した。あの男の元気の秘訣とやらを。
どうやら、あの男はボスから渡された麻薬を使用して今まで戦いを行っていたらしい。
それに、あの葉っぱはただの麻薬ではない。
あれは……。
死の天国デッド・ヘブンか……四大国家の全てで禁止されている凶悪な麻薬……そんなものを使用していたのか……」
ケネスは明らかに顔を引きつらせていたが、その麻薬を濫用している本人は満面の笑みを浮かべて、
「キミは麻薬を嫌っているらしいけれど、それは偏見だ。一度吸ってごらん。とても、気持ち良いからさ」
男が麻薬をケネスに手渡そうとした時だ。銃声が鳴り響き、男の持っていた葉っぱを粉々に砕いていく。
男は葉っぱを壊された事が理解できなかったのか、暫く空いた右手を眺めていたのだが、やがて状況を理解すると、ワナワナと震え始めて、やがて言葉では表現できないような悲鳴を上げる。
それから、大きな声で泣くと、銃声のした方向を睨んで、
「お前か?お前かァァァァァァァ~!!!!!よくも、よくも、よくも、オレのデッド・ヘブンを壊しやがったなァァァァァ~!!!!!」
我を忘れた男に向かって私は銃口を向けて、男の急所を狙う。
だが、麻薬で精神を壊した状況であるのにも関わらず、精神の方は思ったよりも冷静であったらしい。
彼は荒い息を吐きながら、私を睨んでいた。
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