王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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サラマンダー・パシュート編

金食い虫が人から吸う血というのはどのような味なのだろうか

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私はホテルの入り口を開き、中年の男を連れてホテルの一階に存在するというレストランへと向かう。
その最中にケネスに首根っこを掴まれている中年の男は私を殺そうとした罪悪感からか色々と今までの経緯を話していく。
元々はホテルのボーイであったのだが、諸々の事情のために金に困っていた所をあの男がつけ込み、小額の金を貸しつけたのだという。
だが、借金はたったの一日で倍に膨れ上がり、男は返すのが不可能になってしまった。返済を待ってくれないかと男は懇願したのだが、男は聞く耳を持つ事なくただ淡々と貸し付ける時に利子の説明をした、聞いていないお前が悪いと突っ跳ねってしまったらしい。
中年の男はそこでレストランの中、男が優雅に食事を取る横で土下座をし、返済を待ってくれと懇願したらしい。
すると、例の男は口元に右端を吊り上げて、
「返せないんじゃあしょうがないな。返済まで待つ代わりにあんたの家とそれから、あんたの家族を人質にする事で許してやろう。それでいいだろう?」
男はその提案に対し激しく首を横に振っていく。当然だろう。自分の家族を売る事など普通の人間だったら出来ない。
中年の男の反応に対し、金持ち風の男は舌を打ったのだが、もう一度口元を緩ませて、心底から楽しいという表情を浮かべて、
「なら、別の条件を提示してやろう。これを林檎に混ぜてある女に売るんだ。オレの元に林檎の代金を持ってくりゃあ、お前の借金は無かった事にしてやろう」
その言葉に逆らえず、毒薬と私の写真を渡された中年の男は男泣きをして受け取った後に、市場で林檎を購入し、私の事を探し回り、ようやく林檎を売る段階まで成功したのだという。
だが、なぜこの男は林檎を途中で潰してしまったのだろう。
もし、この男が林檎を潰しさえしなければ、計画は完璧に進んでいた筈だ。
それを男に尋ねると、中年の男はワナワナと震え始めて、
「こ、怖かったんだッ!人を殺すだなんて……そんな大それた事を今からやるのだと考えると体が勝手に動いて……」
と、言った。この怯え切った表情は嘘を吐いてはいない。私は判断して彼を信用し、わざわざこの男の案内に従ってホテルに向かったのだった。
中年の男はホテルに入り、レストランの近くにまで来ると、太くて大きな人差し指を震わせて、レストランの入り口に近い場所で得意そうな顔で桃色のブランデーを啜っていた。
これから、追い詰められるというのに呑気なものだ。私はケネスと共にレストランへと辿り着くと、ケネスに目配せをする。
ケネスは中年の男を勢いよく放り投げ、入り口の近くでブランデーを飲んでいた男に捕まえた男を投げ付ける。
当然、この事に動揺したのは男だけではあるまい。レストランの客たちは一斉にパニックを起こし、全員が席を立つ。
席を立った客たちは開きっぱなしになっている入り口をくぐり抜けて、ホテルのフロントへと逃げていく。
幸いな事に金貸しの男は中年の男が体に当たった事により、それが重しになり大衆に紛れて逃げるという事はできなかったらしい。
男は別の男が当たった衝撃のために頭をぶつけたのだろう。自身の頭を優しく撫でていると、目の前に私とケネスが迫っている事に気が付いたらしく、勢いよく啖呵を切っていく。
「テメェ!このオレを誰だと思っていやがるッ!オレは金融会社のノックス・ゴールディングだぞッ!」
「そんな身分なんてもうないでしょ?今のあなたは指名手配犯。違法な金利の取り立てがバレたのよね?」
その言葉を聞いてノックスが生唾を飲み込んでいる事に気が付く。
だが、私は怯む事なく、男に向かって銃口を突き付けて、
「さてと、選びなさい。ここで死ぬか、投げ縄で縛られて警察署で保安委員に引き渡されるか」
「どっちも嫌だと言ったら?」
「あら、あなたにそんな権利があるだなんて思うの?」
銃口が怪しく光る。加えて、強い視線であの男を睨んでやる。それで、この男にも私が本気だと理解できるだろう。
だが、その考えは甘かったらしい。男は怪しく笑いを顔に浮かべて、
「待てよ。オレには裁判を受ける権利があるんだぞ、それにお前がオレを撃ち殺せば、オレはお前の生きる権利を奪った事になるんだぞ!そいつは不味いと思わないかッ!え?」
生きる権利?裁判を受ける権利?今まで、多くの人間の人生を奪ってきたこの男にそんな権利があるとでも思うのか。
激情に駆られて、私が引き金を引こうとした時だ。ノックスは彼の重しになっていた男を蹴り飛ばしてから地面から起き上がっていく。
ノックスが蹴り飛ばした男を避けたために、隙が生じてしまったに違いない。
ノックスはその隙に体勢を立て直し、右手の掌を広げてそれを向ける。
私は左手を使用して、ノックスの放つ魔法を吸収して難を逃れる。
その直後、私は左手から大きな金塊を男に向かって放つ。
だが、男は金塊が当たる前に逃げ出し、私の放った金塊が机を潰したのを見て笑う。
「へん、どうだ?重いだろう?まぁ、当然だろうな。あの魔法はオレ以外に扱えるものじゃあないからな。オレでさえあの魔法を操るのに大分時間が掛かっちまったんだぜ、付け焼き刃の魔法じゃあオレを殺すのは不可能だ。諦めな」
男の放つ言葉に私は下唇を強く噛んでしまう。
この根っからの悪党を黙らせてやりたい。
私はその一念から、もう一度男が魔法を繰り出すのを待ちわびる。
男はもう一度右手を光らせて金を放つ。
すかさず、私は左手を白く光らせて男の金を吸収していく。
男の金を吸収し、ノックスに向けるものの結局、ノックスには当たる事なく、ノックスは何度も金を作り出し、私に向かって攻撃を繰り返すばかりであった。
それを私の魔法で吸収し、相手にぶつけるというイタチゴッコだ。
が、そこに転機が訪れる。ケネスが左手の掌を広げ、ミニサイズの雷雲を放っていく。
これで逆転ができる筈だ。私は期待したのだが、ノックスは顔色を変えない。
それどころか、平気で攻撃の範囲をケネスにも広げていき、ホテルのラウンジの廊下が穴だらけになっている事に気が付く。
どうやら、ホテルの客たちは私たち二人とノックスによる戦いを恐れて、外へ逃げ出したに違いない。
私は拳銃を抜いて、直接、ノックスの命を狙ったのだが、彼は今度は自分自身に右手をかざす。
すると、彼は黄金の鎧に身を包まれて銃弾を跳ね返していたのだ。
私もケネスも互いに顔を見合わせて頷き合う。何が何でも、この男の余裕ぶった顔を恐怖の感情で染めてやろうと。
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