王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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オール・ザ・ソルジャーズマン編

王都動乱 パート2

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市街地での銃撃戦というのは中々に長く続くものであり、加えて今、バラバラに路地裏に散った方が奴らを拡散できるという目的のために仲間と別行動を取っているために私は一人だ。相手の数は一個師団。いや、下手をすればそれよりも多くの人間が放出されている事を考慮すれば、少なくとも二万人を超える計算になってしまう。
これは単純に中将に従う部下の数だけではなく、彼に同調して付いてきた義勇兵や例の武器放出セールで得た武器を持った悪党を含めての換算だ。
勿論、私たちの仲間として王宮を守る兵士たちもそれと同等の数を揃えているだろうが、何せ相手が悪い。
反乱を起こしたライアン中将の軍団は数に加えて厳重な訓練を行なっているのだが、王宮を守る兵士たちはどうだろう。そこまでの訓練を受けているのかと言われれば微妙だ。私の記憶だが、彼らはあまり厳しい訓練を受けている様には思えない。些か厳しいのではないだろうか。
街の陰で王国の守備兵の数を見たのだが、反乱勢力に怯え腰なのが目に見えて分かってしまう。
特にこれまで戦争らしい戦争など体験してこなかった彼らからすれば、馬に乗った騎兵隊などは脅威にしか感じないに違いない。
やむを得ない。私は建物の陰に身を潜めながら、拳銃を構えて彼らを撃ち抜いていく。
何人かの兵士たちが銃撃に倒れたのだが、それでも彼らはまるで意志を持っていないかのように次々と王宮へと流れ込む。
二万という数があまりにも多過ぎるのだろう。加えて、私たちに引く事は許されない。私たちの背後には王宮へと避難する市民たちの存在が見えるからだ。
私は物陰から自動拳銃を放ちながら、前線で次々と兵士たちを撃ち抜いていく。
戦場と化した王都。昨日までに広がっていた活気や笑顔はかき消えてしまい、代わりに美しく発展した王都に訪れたのは銃声と悲鳴。
私は自分の生まれ育った街がこの様に変わってしまった事が許せない。
だから、私は前線に隠れて奴らの行軍を邪魔しているのだ。それで、最初は一緒だった
王都の建物の並べられた住宅と住宅の狭い路地に隠れながら、銃を放っていると私の目の前に大きな体型の中年の男が現れた。
虎のように鋭い瞳に体格を兼ね備えた男は私に拳銃を向けたのだが、私は男が拳銃から銃を放つ前に男の肩を撃ち抜く。
肩を撃ち抜かれて再起不能となってしまった男は撃たれた右肩を抑えてその場に蹲ったのだが、私は容赦なく銃口を突き付けて、
「その怪我ではもう戦えないでしょう?先頭にいた筈のライアン中将が何処にいるのかを教えなさい」
私はそう吐き捨てたのだが、男はそれを自分が生き残るための最後のチャンスだとは思わなかったらしい。
思いっきりバカにした様な笑顔を浮かべて、
「へっ、そいつは無理だね。お嬢ちゃん……中将が最前列から居なくなった理由はあんたにあるしな。オレたちのリーダーを撃ち殺そうとしたあんたにオレ達がその中将の事を易々と教えてやるとでも?」
男の虎の様に鋭い瞳。そう、獲物への狙いを定める肉食獣の様な瞳を見て私は悟った。
この男は生かしておいても意味がない。私は男の頭に銃口を突き付けて、男の頭を撃ち抜こうとしたのだが、男は私の銃を握っていた右腕を強く掴む。
その顔は勝ち誇る様な笑顔だった。男は私を羽交い締めにしていく。
「いい事を教えておいてやろうか、お嬢ちゃん……兎は狼にはなれねぇんだ。どれだけ狼の振りをしようとも、兎は兎。その事を自覚して王宮で震えていりゃあ、あんたは今でも生きていたかもしれんな」
そう言うと男は私を路地の左右に広がる家のうちの一軒に私を強くぶつけていく。私は全面に強い衝撃を受けて思わず悶絶してしまう。体の骨が全て粉々になってしまったのかと思うくらい痛い攻撃だ。
だが、男は私に考慮する事なく、私をもう一度壁にぶつけていく。
「クックッ、これで貴様も手足も出まい。サラマンダーを壊滅させた女だから、期待していたが、所詮はその程度か……」
男は勢いよく私の体をぶつけようとするが、その際に私は自分がぶつかる前に人間の急所というのを思案していく。
男性の場合ならば何処を攻撃すれば相手が悶絶するのかは分かる。
私は男が攻撃する隙を狙って、男にとっての命を思いっきり蹴飛ばす。
予想通りに男は悶絶し、大きな悲鳴を上げて地面に崩れ落ちていく。
私はその男の脚を撃ち抜く。男は大きな悲鳴を上げて地面で震えていく。
ついでにもう一発。私は容赦なく撃ち抜く。
これで男はもう飛び掛かれないだろう。私は男の頭に銃口を向けて尋ねる。
「言いなさいッ!ライアン中将は何処にいるの!?」
「い、いうもんか……くそったれ、オレたち軍人の夢が……」
「何が夢よ。戦争ごっこの夢なら、あの世で好きなだけ見せてあげるわ」
私は続いて男の尋問への重ねていくが、男は答える事なく沈黙する。
力尽きたのか、はたまた完全黙秘のつもりで黙り込んだのか、どちらにしろこの男はもう使えまい。
私はこの男の頭を無言で撃ち抜く。それから、仲間たちや王国の守備兵たちと市街地での銃撃戦を続けるライアン中将の反乱を崩すために市内の真ん中へと向かっていく。
市内では銃声と銃声が飛び交い、道路は完全に死体の山と化していた。
私は道路の上に散った男たちの死体を盾に道路の何も身を隠す場所がないところで戦っていく。
近付いてくる制服の兵士たちを銃で撃ち、魔法が使える人間が居たとすれば、魔法を使用して相手の魔法を自分の魔法で奪い取り、私を襲う筈だった魔法で反対に彼らを襲う。
それらの作業の繰り返しだ。流石に私も疲れが溜まってきていた。
高かった太陽はいつの間にか西に下がっており、辺りをオレンジ色の夕焼けが包み込む。
私は大きな声で空中に、従ってはライアンに聞こえるように叫ぶ。
「聞こえているんでしょう!?ライアン中将!!あなたは軍人なのよね!?なら、ここで一対一の『決闘』を行いましょう!」
その言葉に周囲の陰から動揺の声が漏れるのが聞こえた。
すると、それに応じたのか市内の真ん中の大きな道路にライアン中将その人が足音を立てて現れた。
ライアン中将は老将と呼ぶに相応しい堂々とした態度の軍人であり、それを垣間見た私に思わず畏怖の感情を与える程であった。
ライアン中将は部下に向かって銃撃を辞めるように指示を出してから道路へと出ると同じく建物に隠れている守備兵たちにも銃撃を止める様に指示を出してから、私に向かって叫び返す。
「私がライアンだッ!エルンスト・ライアンッ!王国師団の隊長にして中将のなッ!」
「やっとお出ましというわけね?」
「左様、お主と一対一の決闘を付けるためにな……」
私と男は夕陽の中の市街地の中心部。通常ならば、馬車が走っている線路の上で互いに睨み合う。
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