王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ウィンストン・セイライム・セレモニー編

四大国家の隠蔽する大いなる計画とそれに立ち向かう勇気あるガンマン達

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私の顔を真剣に見ていたピーターの顔が一旦、落胆したように見えたのは気のせいだろう。そうに違いない。そう思っておこう。と、私は自分自身の手で自分を納得させて下へと降りていく。
そもそも、今回、彼に話したかったのは夢の話、暗黒の邪神にまつわる話なのだ。他の人にすれば一蹴される様な大事な話だからこそ、私はベッドの上で話すべきか悩み、ピーターにバカにされた折にはこの話は自分一人だけで解決しようと思っていたのだが、彼の落胆ぶりから察するに、彼に話してもきっと笑われるだけであろう。
だが、それでも一抹の望みには賭けてみたい。なので、私は今日の夢の事を彼に向かって話していく。
が、私の予想はいい意味で裏切られたらしい。彼は真剣な顔で私の話を聞いてくれた。
彼は私の両肩を掴んで、
「お嬢様、よく話してくれました。きっと、みんなもお嬢様の言葉だったら信じてくれますよ」
と、彼は笑う。百点満点の笑顔。私は幼少期、彼が噴水の前で忠誠の儀式を行ってからというものの、彼のその真っ直ぐな笑顔が好きだった。
思えば幼少期の辛い稽古も彼の笑顔があったからこそ耐えられたような気がする。
それでも、基礎魔法を芽生えさせられはしなかったのだが……。
私が暗い表情で顔を曇らせていると彼が私の肩に手を置いて、
「大丈夫ですよ。お嬢様……あなたの左手、私の右手を共に掴んで支え合っていけば、どんな敵とも戦えますよ。だから、お嬢様!元気を出してください!悪魔が何です?邪神が何です?お嬢様はお嬢様らしく戦えますよ。だから、そんな悲しい目をしないでください。ウェンディ」
その時の彼の言葉はハッキリと私の耳に響く。敢えて敬称ではなく私の名前を呼んだのはどういう事なのだろう。
そのままピーターが私の腕を掴み、私に迫ろうとした時だ。
「貴様ァァァァァ~!!!何をやっておる!」
と、ケネス、マーティ、ジャック、副部長、クラリスの五人の声が共鳴して彼の元に迫っていく。
「抜け駆けとはいい身分じゃあないか、執事殿?」
「オレの実家から届いた武器があるんだけどさぁ~それが今ホルスターにあるから、ちょっと試し撃ちさせてくれないかな?」
「知ってます。幼馴染みって都合のいい言葉ですけど、所詮は赤の他人何ですよ!」
「こーゆー図々しい奴が刑務所じゃあ嫌われたりすんだよなぁ、ちょっと面を貸してもらおうか?」
「サイテー。あなたお嬢様にそんな事しようとするなんて、あたしがスペンサー家の当主なら、即刻銃殺刑にしてるわよ」
全員の言葉にピーターの顔が引きつっているのが見えた。彼は青い顔を浮かべて直ぐに料理を準備しに戻る。
それを見た五人は一斉に溜息を吐いて、両肩の力を抜いていく。
「ったく、油断も隙もあったもんじゃあなぇな、おい?」
「全くだ。ピーターとか言ったな。あいつはそろそろ何か危険な、何かこう伝説に出てくる化け物みてーな奴に変身するんじゃあないのか?」
マーティとケネスが次々と愚痴を口走る。それに続いて他の三人も愚痴を吐き出していくので私は苦笑して彼らを見守る事しか出来ずに険悪な雰囲気に呑まれるまま困惑していたのだが、やがて、その重い雰囲気を壊す救世主存在が現れた。
その二人、ソルドとカレンの二人のカップルの姿が見えた時には二人が天から現れた人類を救う神の如き存在に見えたような気がした。
ソルドとカレンはなぜかいきり立つ五人を宥めて五人を朝食に連れて行く。
朝食の席に用意されたのはスープとパンという粗末なメニューであったが、彼らは特に不満を言う事なく食事を摂っていく。ただ、ソルドとカレンの二人を除く仲間たちが給仕に現れたピーターに険しい目を向け、彼も険しい目で睨み返そうとしたのは何故なのだろう。
流石にクラリスにそれを向けさせるわけにはいかないので、私は慌てて彼にその険しい目を下げるように手で指示していく。
一通り、食事が終わった所で私はスープを掬うために使っていた銀のスプーンを置いて信頼できる仲間たちに昨晩、見た夢の話をしていく。
てっきり、笑われるのだろうなと思っていたので全員が真剣な目で聞いてくれたのは本当にありがたかった。感謝の思いで胸がはちきれそうだ。
全員が重い視線を向ける中で静かにマーティが手を挙げて自分の意見を述べていく。
「あのさ、その海底に地底に封じ込められた邪神の話なんだけどさ、これ、あくまで噂レベルの話なんだけど……」
マーティは語っていく。各国の首脳陣が競い合って邪神を探そうとしているという話、その邪神を利用して世界統一を図ろうとしているという話を。
彼は噂だと前置きしたが、貴族の彼の伝でこの噂を仕入れたに違いない。どうやら、王族・貴族階級というのは世界の暗部を知る必要が、いや、王族・貴族にさえも遮断されている情報であるに違いない。
恐らく、その噂の真相を知っているのは各国の首脳やそれらの人間に仕える国の中枢部と言った人間に限るだろう。
もし、この四大国家の中の何処かがあの空間から逃げた邪神を招き入れていたとすればどうだろう。
私が深く考えているとソルドとカレンが今度、帝国の学院から一人の男子生徒が交流で訪れる事を告げた。
この二人の話題転換が功を奏し、朝食の席は一気に帝国の学院から来る男子生徒の事に変わっていく。
マーティがパンをちぎりながら、ソルドにどんな人物かと尋ねると、彼は苦笑いを浮かべて、
「あ、あんまり詳しい事は知らないんだ。でも、すっごく良い人だって聞いたよ。何でも、今年のフォー・カントリー・クロスレースで優勝候補に挙がっていた人物らしいけど、ある仮面の騎手に負けちゃって、以降は賞金稼ぎとしてのクラブ活動を頑張っているんだって」
その言葉を聞いて私の顔に思わずあの男の顔が連想されていく。
そう、レースの優勝候補と言われたケイレブ・オーウェン。あの砂が吹き荒れる荒野で私と銃撃戦を繰り広げた人物だ。
その彼が来ることになろうとはと、私が苦笑していると柵がガタガタと揺れている事にピーターが気付き、柵へと向かっていく。
すると、柵の方へと向かった彼はある人物を連れて私たちの前に帰ってきた。
そう青色の髪の射撃教師を連れて。
彼は一斉に見られて恥ずかしかったのか歯に噛むように笑うと、屋敷にいる全員に静かな声で告げた。
「キミたち、遅刻だよ」と。
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