王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ウィンストン・セイライム・セレモニー編

全ての道は夢の国(ドリーム・ランド)に通ずる

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その後の話を少しだけしよう。遅刻がバレた仲間たちは全員が冷や汗をかき、その場で平然と彼の接待をしていた私への言い訳としてピーターがかきたくもない汗を流しながら、この後に私を医者に連れて行くという旨を告げていたのだが、射撃教師のまさかの一言により救われた。
「キミ達は朝から、ぼくと射撃の稽古をしていて遅くなった……それでいいだろう?」
射撃教師は満面の笑みで言った。その言葉に食卓に座っていた仲間たちの表情が一斉に明るくなっていく。
「いいんですか!?でも……オレは賞金稼ぎ部ですらないただの馬係をしている生徒でーー」
「キミは我々から銃の手ほどきを受けていた。それで遅くなったんだ。おいで、学校に遅刻したっていう責は私が全て引き受けるよ」
その言葉を聞いて副部長が机を叩いて勢いよく椅子から立ち上がって、
「そ、そんなのダメですぜ!幾ら、人格者として名高いあんたでも流石に今回はーー」
「キミ達は倒れた友達の見舞いに来たんだろう?なら、ここに留まるのは必然というべきだと思うな。私は」
副部長は尚も反論を試みて食い下がろうとしたが、彼はそれを右手の掌を広げて静止して、
「最も、これに反発する頭の固いお方々もいる。彼らは落第生が倒れた事など気にも留めないだろうし、何なら、見舞いに行って遅くなった他の落第生と一部の優等生を彼らは躊躇なく切り捨てるだろうね」
射撃の教師の目がギラリと光っていく。見るもの全てを威圧せんかのような険しい瞳。それに怯えて私たちは何も言えなくなってしまう。
だが、彼はその瞳を引っ込めると柔和な笑みを浮かべて、
「だが、教師の指導があったのなら、話は別だろう。彼らは私が特別な指導を行なっていたために、遅くなりましたと、ね……」
射撃教師は机の前に座っていた仲間たちに笑い掛けて学校に来るように指示を出し、私に早く医者に行くように指示を出すとピーターとボニーに見守られて屋敷を後にしていく。
私は小さな溜息を吐いて紅茶を飲んでいく。やはり、ピーターの淹れた紅茶は味が深い。私が礼を言うと彼は丁寧に頭を下げた。
そうしていると再び玄関の柵が強く揺られていく事に気が付く。
ボニーが玄関を開けると彼女は予想外の来客を見て悲鳴を叫ぶ。
ピーターが慌てて玄関へと駆けつけて行き、それから直ぐに私と同じ長い銀色の髪をした純白の汚れのない乙女のような無垢なドレスを着て頭にティアラを載せている妹が両目から涙を浮かべて現れた。
「お姉様!申し訳ありません!不甲斐のない妹をお許しくださいませ!あの日、慌ててお嬢様の元へと駆け付けようかと思いましたが、どうも両親の監視の目が厳しく、ようやく二人の目を盗めたのが昨日の夜だったんでございますの!」
その言葉に嘘偽りはない。先程の言葉の端から漏れた荒い息がその証拠と言えるだろう。余程、慌てて来たに違いない。普段、訪問する際に履いている綺麗な女性用のヒールの片方が脱げている事に気が付く。
どうやら、彼女の白い靴は馬車から降りるのと同時に玄関に落としてしまったらしい。
大小バラバラの箱を持った若い女性の従者ともう一人、妹の靴を両手で持った同じく若い金色の髪をした従者が玄関先からリビングルームにまで姿を表す。
もう片方の従者が妹に靴を履かせ、もう片方の大小バラバラのサイズの箱を持った従者がリビングルームの地面に荷物を置く。地味なロングドレスを着た従者たちが荷解きをしていくと妹がお見舞いの品と言ってかなり良い物を持って来たことを悟ってしまう。
豪華な器で彩られた年代物の酒、可憐な青色のドレス。私の好きな黒色のネクジェ、それらの豪華な衣装の上に纏うと恐らく、社交界や紳士方の心臓を射抜くには抜群の力を誇るであろうハートを象った首飾り。
いずれも、王女として妹が用意できる最高のものだろう。
金髪の従者に靴を履かせてもらった妹は私の方を向いて、必死に訴える顔で、
「お姉様!どうか、お納めくださいませ!それとも、これではまだ足りませんか!?ならば、もっと良いものを……」
「い、いえ、受け取らせてもらうわ。ありがとう。シンディ」
妹の目は本気だ。ここで受け取らなければ彼女の要求はヒートアップするだろう。
彼女が私の事を思ってくれるのは嬉しい。だが、少しやり過ぎのような気がするので私は少しばかり嗜めていく。
私の言葉に妹は小刻みに首を縦に動かして、
「私の考えが浅はかでございましたわッ!今度、贈り物を持ってくる機会がございましたのなら、少し控え目にさせていただきますわ……」
「い、いえ、私は気持ちだけで嬉しいのよ」
困惑する私を他所に彼女は私にまた何かを訴えようとしていたのだが、上手い具合に医師が診察に訪れたので妹は別の部屋に待機するように言う。彼女と彼女の従者はピーターの案内で二階の客間へと向かう。
私はボニーに玄関に出るように指示を出したが、ボニーはまだ腰を抜かして立てないらしい。
私は深く溜息を吐いて二階に向かったはずのピーターに向かって大きな声で外に来ている客人を迎えるように指示を出す。
ピーターは扉を開けると白衣を着た街の医師が診察に現れた。
私はリビングでの一対一での検査を受けた後に、今日一日は安静にするように指示を出されたものの明日から学校に戻るように言われた。
どうやら、あの医師は本当に過労だと思っていたらしい。
その日、私は暫くシンディと話し、彼女が帰ってからは二階に上がり、自分の部屋のベッドの上で本を読んで過ごして一日を終えた。
いよいよ楽しい夢の世界へと旅立つのかと思われたのだが、再び目を開けた時の私の目の前には例の夢の国ドリーム・ランドの姿が広がっていた。
私はそれを見て昨日の世界が広がっている事に気が付く。また例の少年の仕業かと思って目を凝らしてみると、昨日送られた空間とは少し違っている事に気が付く。
どうやら、同じ夢の国ドリーム・ランドでも壮麗なる石の都と柱ばかりが立ち並び周りが闇で覆われた空間というのはこうまでも差が存在するらしい。
だが、前回よりももっと大きく異なる点は私の目の前に奇妙な人間、三名ばかりが立っている事だろう。長く細い目に、耳朶の長い耳、薄い鼻に尖った顎を持つ彼らの姿はどう見ても人間には見えない。
彼らは宮殿の周りで声を潜めて話していたのだが、やがて私の方に向き直って、
「ようこそ、ウェンディ・スペンサー。王家の血を引く銃使いガンスリンガーよ。私はキミにある事を伝えに来た」
男が顔を近付け、私の耳元で顔を近付けて言った。
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