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ウィンストン・セイライム・セレモニー編
邪神が退散する時
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やはり、あの怪物の弱点は触手であったらしい。現にあの怪物は触手に銃を向けられると怯えて動けなくなっていた。
「どう降参する気は起きた?そうすれば、命だけは助けてあげるわよ」
「……悪女め」
「まだ言うの?確かに、別の世界の私は悪女かもしれないわ。けれど、この世界の私には何の関わり合いもない事でしょ?」
その言葉に怪物の見えない見えない筈の片眉が上がっていくのが見えたような気がした。
怪物は再度、槍を構えて私の元へと突っ込む。
厄介な奴だ。私は槍を右に交わし、逆に彼の元へと回り込む。
あの怪物はその光景を見て大いに焦ったに違いない。
実際に私の銃口はあの怪物に向かって突き付けられていたのだから。
頭の目の前に銃口が突き付けられている状況と例えた方が分かりやすいだらうか。
あの怪物は相当に追い詰められていたに違いない。
怪物は大慌てで左手の掌を広げ、私の目の前に見えない足場を作り出し、私を弾く。
だが、あの触手を狙えば良い事が丸わかりだ。
私はその後も容赦する事なく触手に向かって狙いを定める。
再度、引き金を引く。短く乾いた音が鳴り響き、怪物の体を銃弾が貫く。
怪物は痛がりもしなかったのだが、直ぐに私に向かって透明の足場を何重にも作り上げ、それを投げ付けていく。
大方、私を少しでも遠ざけたいのだろう。勿論、相手は透明である。見切るのは難しい。なので、私は怪物の思惑通りに吹き飛ばされてしまったという訳だ。
だが、機会はまだある。ケネスとマーティの放った雲が怪物の元へと近寄り、多数の雨を降らせたかと思うと雨によく濡れた怪物に向かって雷撃を喰らわせていく。
雷の直撃した怪物は大きく痙攣し、地面へと倒れ込む。
それでも、怪物は怪物。通常であるのならば、このまま崩れ落ちていく筈であるのに、目の前の怪物は正気を保ったまま怨念の言葉を呟きながら、私たちの前へと近付いて来る。
この時を待っていた。恐らく、あの怪物の頭の中に存在するのは怒りと恨みのみだろう。
目の前で槍をブンブンと振っていて私や私の仲間を殺す事しか考えていない様子から、攻撃を弾き返す事など考えもしなかったに違いない。
それでも、無意識のうちに防御魔法を使用する可能性がある。
そのため、私はいつもの台詞を使用してあの男の動揺を誘う事にした。
私は銃を構えて、
「このド外道がァァァァァ~!!」
と、叫ぶ。その言葉に怪物は細い目を更に真横に広げて目を見開く。
その直後だ。私の放った銃弾が頭足類の怪物の触手を撃ち抜いたのは。
触手に銃弾が直撃したかと思うと怪物は背後に大きく飛ばされ、その直後に白い閃光が発生し、体全体を包み込む。その直後に体が元の男の体へと戻り、放ったかと思うと黒い塊のようなものが空中へと消えていく。
恐らく、あれが神界から抜け出したというマーシュという神であるに違いない。
どうやら、この男に取り憑いてこの世界に来ていたらしい。
私は銃をその黒い塊に向けたのだが、直後に銃を下ろして溜息を吐く。
やめだ。神を撃ち殺せる筈がない。恐らく、あの触手というのも直接の弱点ではないだろう。
恐らく、あの男を依代としていたマーシュがあそこを攻撃すれば、男の体から強制的に離れてしまうという類のものであったのだろう。
勿論、それは自体は単なる分離に過ぎない。あの神を直接には狙えないので処遇は夢で出会った少年やあの得体の知れない顔貌の人々に任せる他ないだろう。
私が銃をホルスターに仕舞っていると神妙な顔付きの二人が現れて天空に漂う黒い塊を指差す。黒い塊はどうするのだろうか。
だが、私は彼らの無言の問い掛けに対して黙って首を横に振る。
その様子を見て二人も察したらしい。
二人は黙って人差し指を劇場の前へと向ける。
私はそれを見ると首を縦に動かし、二人を呼びに向かう。
慌てて二人の前に駆けた劇場の前でアンデッド達の処置に及んでいる筈の二人を大きな声で呼び出す。
背後から声を掛けられて気が付いた二人は私たちの方に向かって振り向く。
二人は振り向いて、ようやくアンデッドの数は十体態度にまで減らせた所をどのアンデッドもパタリと倒れた事を私に話してくれた。
だが、二人に不満は無かったらしい。その証拠に二人は充実感のある笑み、見ているこちらも思わず微笑んでしまう様な笑みを浮かべていた。
その笑顔のまま彼は無邪気な声で、
「よぅ、あの怪物はどうした?」
と、尋ねた。
「怪物なら追い払ったわよ。この手で」
「どういう事なの?」
クラリスが私の答えに対して両眉を上げる。どうやら、私の言葉の意味が分からないらしい。
当然の反応と言えるだろう。普通ならば「倒した」と答える所を「追い払った」と返されたのだから。
なので、私はあの怪物の詳細を話していく。
怪物が邪神と呼ばれる存在である事、普段いるべき場所から邪神の中でも突出して邪な考えを持っていた神が彼らの住う世界から抜け出した事。
そして、あの男に取り憑いていた事、あの男からマーシュが消えたから、アンデッドがゼンマイの切れた人形のようにパタリと倒れた事。
それらの全てを話すと二人は納得の表情を見せた。
「成る程……マーシュとかいうヤローがこの狂った劇団を裏で操ってたって事か……」
「その上、あの男の体を媒介にこの世に現れた……と」
二人と合流し、そして死体の前に待機していたケネスとマーティとも再度、合流して五人で劇場の前から離れ、シティーの警察署へと向かう。
五人で肩を並べて歩いていると、マーティが不意に、
「そう言えばさ、保安委員の奴らはこの事を信じてくれるのかな?」
その言葉に全員が顔を見合わせる。確かに、魔法こそあるもののいきなり、アンデッドだの邪神の取り憑いた男だのを説明すれば、異常者扱いされるのが当然だろう。
歩きながら私たちが頭を抱えているとケネスが両手を重ねて力強く叩く。
ポンという軽快な音が響いたかと思うと彼は人差し指を上げて、
「そうだッ!こいつらは邪神や邪神に操られたっていう事じゃあなくて、テロリストって事にすれば良いッ!」
ケネスは口元の右端を緩めながら言う。何でも、彼らは表向きは人気の劇団であったのだが、裏では国王暗殺を図るテロリストであったというのだ。
それを察した私は単独の潜入を試みるも、彼らに捕らえられてしまい、牢屋に入れられていた所を劇を見に行った直後に行方不明になったために、劇団が私の捕らえられている所を劇団の楽屋だと突き止め、ケネス達が捜査に向かった所を劇団側が攻撃を仕掛けたために、やむを得ず殲滅したという事になるらしい。
彼らの正体が単なるテロリストではないという事を除けば、そのままの事を行っていた。少なくとも、保安委員に話す内容に嘘は吐いていない。
私はケネスの話術に半ば感心しながら、夜の街を歩いていく。
「どう降参する気は起きた?そうすれば、命だけは助けてあげるわよ」
「……悪女め」
「まだ言うの?確かに、別の世界の私は悪女かもしれないわ。けれど、この世界の私には何の関わり合いもない事でしょ?」
その言葉に怪物の見えない見えない筈の片眉が上がっていくのが見えたような気がした。
怪物は再度、槍を構えて私の元へと突っ込む。
厄介な奴だ。私は槍を右に交わし、逆に彼の元へと回り込む。
あの怪物はその光景を見て大いに焦ったに違いない。
実際に私の銃口はあの怪物に向かって突き付けられていたのだから。
頭の目の前に銃口が突き付けられている状況と例えた方が分かりやすいだらうか。
あの怪物は相当に追い詰められていたに違いない。
怪物は大慌てで左手の掌を広げ、私の目の前に見えない足場を作り出し、私を弾く。
だが、あの触手を狙えば良い事が丸わかりだ。
私はその後も容赦する事なく触手に向かって狙いを定める。
再度、引き金を引く。短く乾いた音が鳴り響き、怪物の体を銃弾が貫く。
怪物は痛がりもしなかったのだが、直ぐに私に向かって透明の足場を何重にも作り上げ、それを投げ付けていく。
大方、私を少しでも遠ざけたいのだろう。勿論、相手は透明である。見切るのは難しい。なので、私は怪物の思惑通りに吹き飛ばされてしまったという訳だ。
だが、機会はまだある。ケネスとマーティの放った雲が怪物の元へと近寄り、多数の雨を降らせたかと思うと雨によく濡れた怪物に向かって雷撃を喰らわせていく。
雷の直撃した怪物は大きく痙攣し、地面へと倒れ込む。
それでも、怪物は怪物。通常であるのならば、このまま崩れ落ちていく筈であるのに、目の前の怪物は正気を保ったまま怨念の言葉を呟きながら、私たちの前へと近付いて来る。
この時を待っていた。恐らく、あの怪物の頭の中に存在するのは怒りと恨みのみだろう。
目の前で槍をブンブンと振っていて私や私の仲間を殺す事しか考えていない様子から、攻撃を弾き返す事など考えもしなかったに違いない。
それでも、無意識のうちに防御魔法を使用する可能性がある。
そのため、私はいつもの台詞を使用してあの男の動揺を誘う事にした。
私は銃を構えて、
「このド外道がァァァァァ~!!」
と、叫ぶ。その言葉に怪物は細い目を更に真横に広げて目を見開く。
その直後だ。私の放った銃弾が頭足類の怪物の触手を撃ち抜いたのは。
触手に銃弾が直撃したかと思うと怪物は背後に大きく飛ばされ、その直後に白い閃光が発生し、体全体を包み込む。その直後に体が元の男の体へと戻り、放ったかと思うと黒い塊のようなものが空中へと消えていく。
恐らく、あれが神界から抜け出したというマーシュという神であるに違いない。
どうやら、この男に取り憑いてこの世界に来ていたらしい。
私は銃をその黒い塊に向けたのだが、直後に銃を下ろして溜息を吐く。
やめだ。神を撃ち殺せる筈がない。恐らく、あの触手というのも直接の弱点ではないだろう。
恐らく、あの男を依代としていたマーシュがあそこを攻撃すれば、男の体から強制的に離れてしまうという類のものであったのだろう。
勿論、それは自体は単なる分離に過ぎない。あの神を直接には狙えないので処遇は夢で出会った少年やあの得体の知れない顔貌の人々に任せる他ないだろう。
私が銃をホルスターに仕舞っていると神妙な顔付きの二人が現れて天空に漂う黒い塊を指差す。黒い塊はどうするのだろうか。
だが、私は彼らの無言の問い掛けに対して黙って首を横に振る。
その様子を見て二人も察したらしい。
二人は黙って人差し指を劇場の前へと向ける。
私はそれを見ると首を縦に動かし、二人を呼びに向かう。
慌てて二人の前に駆けた劇場の前でアンデッド達の処置に及んでいる筈の二人を大きな声で呼び出す。
背後から声を掛けられて気が付いた二人は私たちの方に向かって振り向く。
二人は振り向いて、ようやくアンデッドの数は十体態度にまで減らせた所をどのアンデッドもパタリと倒れた事を私に話してくれた。
だが、二人に不満は無かったらしい。その証拠に二人は充実感のある笑み、見ているこちらも思わず微笑んでしまう様な笑みを浮かべていた。
その笑顔のまま彼は無邪気な声で、
「よぅ、あの怪物はどうした?」
と、尋ねた。
「怪物なら追い払ったわよ。この手で」
「どういう事なの?」
クラリスが私の答えに対して両眉を上げる。どうやら、私の言葉の意味が分からないらしい。
当然の反応と言えるだろう。普通ならば「倒した」と答える所を「追い払った」と返されたのだから。
なので、私はあの怪物の詳細を話していく。
怪物が邪神と呼ばれる存在である事、普段いるべき場所から邪神の中でも突出して邪な考えを持っていた神が彼らの住う世界から抜け出した事。
そして、あの男に取り憑いていた事、あの男からマーシュが消えたから、アンデッドがゼンマイの切れた人形のようにパタリと倒れた事。
それらの全てを話すと二人は納得の表情を見せた。
「成る程……マーシュとかいうヤローがこの狂った劇団を裏で操ってたって事か……」
「その上、あの男の体を媒介にこの世に現れた……と」
二人と合流し、そして死体の前に待機していたケネスとマーティとも再度、合流して五人で劇場の前から離れ、シティーの警察署へと向かう。
五人で肩を並べて歩いていると、マーティが不意に、
「そう言えばさ、保安委員の奴らはこの事を信じてくれるのかな?」
その言葉に全員が顔を見合わせる。確かに、魔法こそあるもののいきなり、アンデッドだの邪神の取り憑いた男だのを説明すれば、異常者扱いされるのが当然だろう。
歩きながら私たちが頭を抱えているとケネスが両手を重ねて力強く叩く。
ポンという軽快な音が響いたかと思うと彼は人差し指を上げて、
「そうだッ!こいつらは邪神や邪神に操られたっていう事じゃあなくて、テロリストって事にすれば良いッ!」
ケネスは口元の右端を緩めながら言う。何でも、彼らは表向きは人気の劇団であったのだが、裏では国王暗殺を図るテロリストであったというのだ。
それを察した私は単独の潜入を試みるも、彼らに捕らえられてしまい、牢屋に入れられていた所を劇を見に行った直後に行方不明になったために、劇団が私の捕らえられている所を劇団の楽屋だと突き止め、ケネス達が捜査に向かった所を劇団側が攻撃を仕掛けたために、やむを得ず殲滅したという事になるらしい。
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