王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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大統領の陰謀編

アンダードーム・ビースト現る!

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「動かないで、撃つわよ」
銃を向ける私。顔を引きつらせる賞金首。いつも通りの光景が学院の近くの森で繰り広げられていた。
彼らは既に私の早撃ちの技術を見ており、しかも私の銃で一人が撃ち殺されたばかりである。
恐らく、新聞部がまた騒ぐだろう。“賞金稼ぎ部の人権無視”と。
だが、撃たなければやられてしまうのだ。彼らは既に強盗から逃亡する際に一人の人間を撃ち殺してしまったと先程、ヘラヘラと自白していた。
加えて私とケネスが後を付けた際には拳銃を構えて先に発砲してきた。
そんな相手を分からせるのには『対話』ではなく銃を使用しての『実力差』だ。
だから、私はこの選択を取った事を後悔していない。
そのために、強盗犯の男たちは苦笑いを浮かべ、次に震え慄き拳銃を地面に落とす。
ケネスは馬に括り付けていた縄を取り出し、二人の強盗犯を馬に背後に乗せて出掛けようとした時だ。
突如、強盗犯の首が無くなり、私の背中に温かい液体が付着したのを感じた。
私が咄嗟に背後を振り向くとそこには鼻息を荒く吐いた例の怪物が現れた。
怪物は馬の背後で呻き回りながら、私を捕食できる機会を狙っている。
危機を感じた私は興奮した馬の尻を蹴り、馬を逃すと地面に降り、この怪物と対峙する事にした。
この怪物はまさしく怪物という表現が相応しい噂通りの生き物。
牛と同じくらいの狼に似た生物。
それが目の前の怪物を表す一番手取り早い表現だろう。
白い目を剥き、目を充血させた怪物は舌舐めずりをして深くて濃く黒い毛に覆われた口元を舐め回す。
どうやら、私や隣のケネスを狙っているらしい。
怪物が明確な捕食の意思を持って睨んでいるためか、馬の怯える声や動揺して地面を乱暴に踏み鳴らす音が私の耳にも聞こえてくる。
ケネスが必死に馬を宥めていたのだが、馬の暴れる様を見て不安になったのか、それとも恐怖の限界に達したのだろうか。
背後で馬の背に括り付けられていた強盗の共犯者がこの場から逃れんと必死に体をくねらせていく。
「離せッ!オレを殺す気か!?離せッ!」
「何を言ってるんだ?お前は強盗の共犯なんだぞ!そんな事ができるわけないだろうッ!」
と、ケネスは怒鳴り付けたのだが、男は聞く耳を持たない。必死に体をくねらせてこの場から逃れようと目論む。
ケネスが乱暴に押さえ付けようと彼の黒色の髪を強く掴んだ所だ。
馬の上でバランスを崩し、馬の背に乗せられていた男は地面の上に転がってしまう。
男が地面の上に転げ落ち、その場から逃げようとした時だ。男の体をくねらせる音に気が付いたのか、怪物が男の元へと飛び掛かる。
男は怪物に喰い殺されてしまい。無惨な肉塊へと変えられてしまう。
そのあまりの無惨な光景に私は思わず生唾を飲み込む。
恐ろしさに我を忘れて突っ立っていると、轟くような大きな馬の声で私は正気に戻る。
どうやら、ケネスが馬の尻を蹴り、遠くに逃したらしい。
あの声は尻を蹴られた時の馬の声だったらしい。
私は自分を正気に戻らせてくれた馬の声に感謝しつつ、目の前の怪物と新たに向き合う。
どうやら、この怪物は私とケネスを食いたくて仕方がないらしい。
グルルと短い声を上げて私二人を睨む。
それから、私たち目掛けて勢い良く走ってきた。そして、私たちの目前で飛び上がり、襲いかかってきた。
だが、怪物の中でどちらを先に襲うかで葛藤があったのだろう。
一瞬だけ悩んだ後に私に向かって襲い掛かってきた。
私はその一瞬の隙を狙って怪物が私に襲い掛かる前に引き金を引いたのだが、怪物は体を勢いよく逸らしてその場を逃れる。
そして、そのまま空中で一回転して私に向かって襲い掛かってきた。
だが、一直線に突入してきたのが幸いした。
私は引き金を引き、今度こそ弾丸を怪物の体に直撃させた。怪物はギャインという小さな悲鳴を上げて地面に倒れ、のたうち回っていく。
だが、銃弾が直撃したというのに倒れる気配が無いというのはどういう事なのだろう。
私が首を傾げていると、怪物はのたうち回るのを辞めて、もう一度体勢を立て直す。
こんな馬鹿な!と、隣で銃を構えていたケネスの叫び声が聞こえた。
「ば、バカなあり得ない……奴の体に銃弾は直撃した筈だぞ!?普通の生物だったら、動けない筈だ……」
その言葉に私も同意する。体に銃弾を喰らったというのにこの怪物はまだ生きているのだろうか。
いや、それどころではない。怪物は私の前で何事もなかったかのように動いているのだ。
最早、これは生物ではないのかもしれない。宇宙から来た怪生物か、はたまた魔界から召喚された魔王の手下か。
私は自分の馬鹿げた考えを頭を横に振る事で外へと追い出していく。
しっかりしろ、私。恐らくだが、先程の銃弾は体に擦りはしたものの、そのまま何処かへと飛んでいったとか、そんな感じなのかもしれない。
薬莢が見つからないのはそのせいだろう。私はそう自分に言い聞かせ、目の前の怪物と対峙していく。
怪物がもう一度牙を鳴らしたかと思うと、呻き声を上げて私とケネスに襲い掛かろうとしたのだが、突然、笛を鳴らす音が聞こえた。かと思うと、先程までの戦意は何処へやら、怪物は尻尾を巻いて逃げ出す。
私とケネスは顔を見合わせると互いに首を縦に振って何を感じたのかをあらためて確認するために、思った事を口に出していく。
「……どうやら、あの怪物は操られているらしいな」
「ええ、あの笛が鳴った後に私たちの元から離れたのが良い証拠だわ。この事件の裏には何かいるわ。想像も付かないような大きなドス黒い何かが……」
どす黒い何かというのはあまりにも大雑把だ。だが、あの怪物を操っている正体が何なのかを推測できない事には何も言えないのが本当だ。
私とケネスは互いに馬を呼び戻し、死体を持って警察署へと向かう。
警察署では運んだ死体と私の正体に驚愕したらしいが、その噂が事実だと判明するとますます警戒心を強めていく。
あの賞金稼ぎ部のメンバーでさえも手も足も出なかったという事実に。
警察署は慌てて連絡員をシティーへと飛ばし、その日のうちにシティーの住民たちに極力、外出を控えるように勧告していく。
最早、このシティーは正体不明の怪物とそれを操る人物に乗っ取られ掛けていると言っても良いだろう。
その上、今回の事件で学校の早期下校はエリート達や私たちのような部活の部員、場合によっては生徒会でさえも対象になるかもしれない。
思ったよりも、この街に巣食い始めた闇は厄介だと思い知らされた。
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