王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
123 / 211
大統領の陰謀編

賞金稼ぎ部の新たなる部長

しおりを挟む
「ったく、納得がいかねぇっつーのッ!」
「そうだよッ!普段は部活をサボってばかりの根暗オカルト女にどうして、あたしらが負けるんだよッ!」
二人は学院前の街の近く、スペンサー家の屋敷の近くの森の中で雑貨屋から購入したウィスキーとバーボンを放課後の余った時間を利用して浴びる様に飲んでいた。
その最中に二人の口から出るのは愚痴。いきなり、現れて自分達の部長就任の機会を奪ったジャネットへの不満だった。
勿論、他の部員から見れば二人にジャネットの愚痴を言う資格は無いと言い放つに違いない。
二人は学院占領事件の際に教室に現れた私設警察の銃に怯え、大勢の生徒ともに情けなく両手を挙げて震えていたのだから。
サラマンダー壊滅作戦の時も二人は家で寝ていた。そもそも、あの時に他の部員たちと連帯する事もなく捜査を怠っていたのだから、サラマンダーの拠点を知らなかったのは当然とも言えるのだが。
だからこそ、部員たちもこんな姿の二人を見れば愚痴を言いたくもなるだろう。
最も、二人がそんな事を気に留める事もないだろう。二人の頭の中に存在するのは自らが部長として賞金稼ぎ部に君臨する明るい未来だけなのだから。
太った黒色の髪の男が都合の良い妄想をしながら、バーボンを飲んでいると不意に獣の唸る声が聞こえた。
それを聞いた男は腰に下げていたホルスターから拳銃を抜き取り、大きな声で誰が言葉を発したのかを叫ぶ。
「ちくしょう!怪物か!?何処に嫌がるんだ!?」
その言葉を聞いて酔っていた筈の緑色の髪の女性も素面に戻ったのか、腰のホルスターに下げていた拳銃を抜き取って辺りを見渡す。
銃を抜きガンマンとなった二人は大慌てで辺りを見渡し、対象の相手を探っていく。
そんな時だ。目の前に牛ほどのサイズの狼の様な風貌の黒い毛並みの怪物が現れて太った男に飛び掛かっていく。
怪物は太った男の喉に喰らい付いたのかと思うと魔法を使う暇さえもなく一瞬で彼の体に喰い付いていく。
恐怖を感じた緑色の髪の女性は大慌てでその場から逃げようとしたが、その前に髪を二つに結んだ金髪の少女が現れた。
銃を構えた少女は可愛らしい顔で笑って、
「初めまして、先輩。えっ~と先輩のお名前って何でしたっけ?」
「そ、そんな事はどうでも良いだろうが!?さっさとあたしを逃せよッ!一年ぽっくりの〈杖無し〉!!」
「ふーん、あたしにそんな事を言っちゃうんだ。もういいや、やっちゃえ、ジェーパウンド」
少女が訳の分からない名前を呟いたかと思うとその黒色の怪物は太った男を喰らうのを辞めて、緑色の髪の少女に襲い掛かろうとしたのだが、彼女の背後から聞こえた声により、彼女は思わず振り向いてしまい、命令が中断されてしまう。
振り向いた彼女は最初に驚き、次に笑ってみせた。
と、言うのも背後にはいる筈のない存在、ウェンディ・スペンサーが立っていたからだ。
彼女は自身の手足にして大統領から預かった黒魔術と科学技術とで作り上げた生物兵器、ジェーパウンドの足をこの街で殺すべき少女に向けた。











まさか、ここまで的確に位置を把握するとは思わなかった。保安委員の捜索係でさえも突き止められなかった怪物とその怪物の正体まで見抜くとは。
あの先輩はやはり、本当に悪魔と契約しているのかもしれない。
放課後に先輩が迎えと言った場所にケネスと共に向かったのは正解だったかもしれない。これで、この街を騒がせていた怪物とそれを操っていた存在を追い詰められたのだから。
最も、目の前の少女、少し前に馬繋場で会ったアーリー・シリウスなる猛獣使いビーストテイマーは追い詰められとは思っていなさそうなのだが……。
代わりに、彼女はニッコリとまるで親に悪戯がバレた少女の様に笑って、
「あ、こんにちは!ウェンディ!今日の授業はどうだった?やっぱり、お腹減ったよね?お昼食べてないから、実技の授業も辛かったーー」 
「ねぇ、本当にあなたがあの怪物を操っていたの?」
分かってはいる。私はハッキリと聞いたのだ。彼女が地面の上で佇む怪物に地面の上で震えて蹲る先輩を殺せと命令する声を。
だが、否定して欲しかった。あの時の馬の頭を優しく撫でた少女がこの街でいくつもの残虐な事件を起こした少女と同一人物だとは思いたくなかったから。
けれど、彼女は何の躊躇いもなく言った。
「そうだよぉ~私がこの街に混乱をもたらしたのぉ~この国に混乱と恐怖をもたらすためにね。ちょっと可哀想な事をしたかな?でも、必要な犠牲だったと思うな」
「……必要な犠牲?必要な犠牲って何よ?殺された人たちがあなたに何をしたというの?」
彼女は可愛らしい顎を擦って考える素振りを見せたが、思い付かなかったのか舌を出して可愛らしく自分の頭を叩いて、
「ごめんね。思い付かない~強いていうのなら、一人で出歩いていたのが悪いって事かな?」
私は歯を軋ませながら、例の台詞を叫ぼうとしていた。もう既に喉元にまでその台詞は迫っていた。
だが、叫んだのは私ではない。私の代わりにケネスが声を振り絞って、
「ド外道がァァァァァ~」
と、引き金を引く。目の前の彼女に狙いを定めた筈なのだが、弾は上手く飛ばずに彼女の背後の木の中にめり込む。
それを見た彼女はクックッと笑って、
「それって、宣戦布告って事でいいよね?」
と、言って指を鳴らす。指が鳴らされるのと同時に彼女の忠実なる手足であるこの街を騒がせている怪物がケネスに向かっていく。
ケネスは目の前から走ってくる四足歩行の怪物に向かって何度も手に持っていた回転式拳銃の銃口を向けて引き金を引いていくのだが、弾丸が当たっても怪物が目の前から迫っていくのだから、しょうがない。
加えて厄介だったのが、前の時には存在しなかった猛獣使いビーストテイマーの存在。
小柄な体の少女はまるでスパイスシーの向こうの大陸に存在する猿なる動物のように木の上を登り、木の上から私を狙ってくるのだ。
私は撃ち返すのに必死で四足歩行の怪物に向かって銃を放って以降のケネスの様子はあまり見れてはいない。
あの怪物が私に向かって来ていない事から、まだケネスが殺されていない事だけは分かるのだが、それでも不安なのだ。
私がどうすれば良いのかと考えていると、先程まで耳を両手で塞ぎ震えていた先輩が突如、立ち上がり闇雲に銃を乱射し始めた。
すると、ケネスに向かっていた筈の怪物はなぜか、銃を放った先輩に向かっていく。
それをケネスが追い掛け、怪物の尻に拳銃を放つ様子が見えた。
だが、怪物は止まる様子を見せようとはしない。緑色の髪の先輩は涙を流しながら、逃げたが、怪物が追い付く方が早かったらしく、直ぐに彼女の足に噛む付いてしまう。
緑色の髪の先輩は悲鳴を上げてその場で倒れ、木の上の少女はそれを見て笑っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...