王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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大統領の陰謀編

砂の王様

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私は右手に握った拳銃で相手の足を撃ち抜くと机の上へと飛び上がり、現れた梟の形をした怪物と対峙していく。
怪物は私の姿を見つけると、もう一度翼を広げて穴の開いた翼で空中へと飛び上がっていく。
正直、その姿は見ていて非常に痛々しかったのだが、同情はしていられない。同情をしていれば殺されるのは私なのだから。
私は銃を構えてあの得体の知れない梟が急降下してくるのを待ちわびる。
通常ならば、あの梟などは見るだけで怯えてしまう存在である事は間違いない。
だが、私には秘策がある。それはあの梟男の操り主から奪った魔法だ。
『銃が効かなければ魔法を使えば良い』何処かの国の我儘なお妃様を揶揄した国民の言葉だったらしいが詳しくは覚えていない。
元はパンが無ければケーキだかお菓子だかを食べれば良いと国民に発した言葉だと幼い頃にピーターが私の好き嫌いを嗜めた時に聞いた言葉だったのだが、私はどうやら、本来のその言葉の意味を忘れてしまったらしく、長らくこの言葉の意味を誤解していたらしい。そう、好物が口に出来ないならば、別の好物を口にすれば良いというプラスの意味で捉えていたのだ。
その意味が間違っていた事を知ったのはつい最近にピーターに確認を取った時であったが、今回の場合は私の間違った意味のままに使用しても良いだろう。
実際にあの怪物は銃では倒せないのだから。
私は拳銃を撃つ真似をして梟男を待ち構える。
あの男がどんな魔法を使用するのかは分からないが、何せ、この重要な作戦を任させられる程の男なのだ。しかるべき魔法を持っていた当然だろう。
私が目の前に迫ってきた梟男に向かって意を決して放ったのはどうという事は無い魔法だった。
そう、この男の持っていた魔法はマッチ程度の炎を出す程度の魔法。
私の左腕から僅かな炎が出た時には冷や汗が出た。いや、自分の心臓の慟哭の音までもが自分の耳に届く。
その途端に全ての動作がスローモーションになってしまう。あの怪物が目の前から迫る中で私が見たのはこれまでの記憶でも仲間との楽しい思い出でも無い。
私が見たのは梟男の翼の傷。目の前に迫る梟の顔をした人型のビーストの唯一の弱点とも呼べる箇所だ。
最初にその弱点に気が付いた時はどうでも良いかと思われた弱点であったのだが、私は翼を持つ生物にとっての翼の意義を思い出す。
あの生物にとっての翼は私たちの手であり、重要な移動手段であり、自分たちにとっての強みを活かす箇所でもある。
この箇所を他の生物に壊されたりしたのならどうなるのだろう。
恐らく、餌など取れずに一生を地面に落ちて過ごす事になるだろう。
この梟男と例外ではないだろう。つまり、翼を駄目にしてやればこの男は何も出来なくなってしまうのだ。
歩く事は出来たとしても、梟の足では人間の足には敵わないだろう。
私は自らを奮い立たせ、梟男が私に向かってくる瞬間を狙って飛び上がり、すれ違い様に翼に銃撃を喰らわせる。
梟男は悲鳴を上げて何とか二箇所の穴の開いた翼で空中へと飛び上がる。
こうなれば、もう意地である。私は地上から空中の梟男に向かって銃を放っていく。
勿論、闇雲に銃を放っていたわけではない。あの梟男が降下してくる瞬間を狙い、翼を撃ち抜いたのだ。
降下するたびに左右の翼を私に撃ち抜かれた梟の形をした怪物は私に向かって悲鳴を上げた後に威嚇の鋭い目を向けて、私の元へと降下していく。
ヨレヨレの翼に失った先程までの勢い。
まさしく、この怪物は後一歩で大空へと飛び立てなくなるだろう。
私はありったけの声と共に両手に持った自動式拳銃の引き金を引く。
「このド外道がァァァァァ~!!!」
勢い良く叫ぶ私の声は怪物にも通用するらしい。怪物は怯んだ様子を見せ、そこに私の銃弾が怪物の翼に突っ込む。
とうとう怪物はバランスを失って地面の上を滑っていく。
私はそれを見て安心した様子を浮かべていると、私の背後でストロンバーグが懐に隠していた小型の拳銃を握って立っており、その銃口を私に向けていた。
私は険しい視線を向けて、大統領に向かって尋ねる。
「……大統領。これはどういう事でしょうか?なぜ、あなたは逃げないのですか?」
「フフフ、悪いがね。この場は私のものだよ。集まった各国の代表いや、中枢メンバーはみんなここで死ぬのさ、既に宮殿は私の護衛が抑えている筈だ。ここに集まったメンバーはみんなここで死ぬのさ!勿論、我が国のメンバーは除いてね」
やはり、大統領は今回の会合式に向けて陰謀を張り巡らせていたらしい。
彼は口元の右端を吊り上げて、
「これで王様や貴族といった前時代的なものは全て消え去り、人類は一歩未来へと進む筈さ、父の理想もこれで一歩前へと進むわけだ」
「こんな野蛮なやり方で?冗談でしょう?どうしても、国王や皇帝を無くしたいのだったら、他にやり方があったと思うけれど……」
「所詮はお姫様さ、そんな生温いやり方では進歩はやって来ない。私のやり方こそがこの世界に進歩をもたらすのだッ!」
大統領は懐に隠していた二連式の拳銃を私に向けてる。大統領の大きな手に握られる小型の拳銃の銃口が怪しい光を放つ。
思わず銃を見て思わず生唾を飲み込む。
すると、大統領は大きな声で笑って、
「アッハッハッ、安心したまえ!キミだけならば、助けてやっても良いぞ!」
大統領は口元を緩ませながら、
「私は昔からお姫様と結婚するのが夢でね。親父の意思を受け継いでこの計画を進める中で何処かの国のお姫様を一人、私の妻にしようと思っていたんだ。喜びたまえ!ラスト・プリンセス!キミは大統領夫人ファースト・レディというお妃様と変わらない地位を手に入れるのだからなッ!」
ストロンバーグはそう言うと右手を振るう。すると、彼が右手を地上へと振った瞬間に宮殿の庭に敷き詰められていた芝生が破け、その下にある地面の砂が集まっていき、やがて人形の怪物へと変形していく。
ストロンバーグは大きな声で笑いながら、
「これが私の魔法だよッ!私の魔法砂の軍隊サンド・アーミーさッ!この砂の軍隊に囲まれて生きていた奴はいないぞ」
ストロンバーグはどうやら、海の人間の子供として産まれたのに陸でしか効力を発揮しない魔法を手に入れていたらしい。
私は皮肉な魔法を身に付けたストロンバーグを哀れに思ったものの、実際に砂の軍人が砂の槍を持って襲い掛かってくればそんなことも言っていられないだろう。
私はやむを得ずに左手の掌を広げて砂の軍人を吸収していく。
そして、吸収した魔法で一体だけの軍人を作り出す。
それを見た大統領は左手を地中に向けて十体ばかりの軍人を作り出していく。
どうやら、勝負は岩礁に乗り上げたらしい。私は思わず苦笑した。
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