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エージェント・ブリタニアン編
落ちこぼれ王女の正念場
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ともかく、今は男がピーターにこれ以上の乱暴を働く前に、何とかしなければならない。
私は思い切って叫ぶ。
「やめろッ!」
殺風景で家具など何もないためなのか、先ほど、発した私の言葉は部屋の中一杯に響き渡っていく。この状態で気付かないというのがおかしい。
男はピーターを嬲るのを辞め、私の方へと向かって歩いていく。
可哀想にピーターは既に攻撃を喰らわされ続け、口から荒い息が漏れていた。
涙と鼻水とで顔を滲ませて、痛みを抑えて横たわる彼の姿がいじらしい。
だが、間もなく私もピーターの事が他人事ではなくなるだろう。
眉間に何本もの青筋を立てた身勝手な男が私のお腹に向かって拳を振る下ろそうとした時だ。
勢いよく扉が開かれ、たっぷりと肥えた二人組の男が現れた。
先程の二人組を横に従えている事から、この二人はどうやら、そこそこの地位はある人物らしい。
いや、あの顔。よく見ればそっくりではないか。そう、港町のギャングのボス、ララミー・ブラザーズを仕切るオニールとダグラスに。
二人の顔を見ると流石にあの若くて美しい顔の男も自重せざるを得なかったのか、私に向かうのをやめて、現れた二人の男と向き直る。
葉巻を手に持った小柄の男はケタケタと腹をでっぷりと太った鳴らしで笑いながら、
「おいおい、もうやめておけ、それくらいにしておかないと死んでしまうぞ」
「弟の言う通りだ。お前、女の子にそんな乱暴な事をしちゃあいけないよ?な?」
弟という単語から察するに葉巻を手に持った男こそが兄弟を取り仕切るララミー・ブラザーズの弟でありながら、ボスを務めるダグラス・ララミーで違いないだろう。
その傍らに立っている背の高くて恰幅の良さそうな緑色のスリーピースのスーツを着込んだ男が優秀な兄にしてギャング団の軍師役、オニール・ララミーという所だろうか。
手配書に書いていた写真が合っていればの話だが……。
そんな事を考えていると、突如、太った方、ダグラスが私の元へと現れ、私の顎を掴む。
男の脂ぎった親指と人差し指が触れるだけで私の体は拒否感を表しそうになるのだが、ここは堪えてはっきりと目の前の男を睨んでやる。
すると、ダグラスは視線を逸らしてまた下品な声で笑う。
「兄貴、ダメだ。この女、鼻っ柱がつえーよ。とてもじゃあねぇけど、客に愛想なんて使いそうにねー」
「じゃあ、どうするよ?折角、良い顔があんなに勿体ないよなぁ~」
舐め回すように人差し指と親指で顎を摩りながら、私の顔を見つめるオニール。
やはり、この二人はギャングだ。ギャングというのは粗暴で女好きで、庶民には害を及ぼす存在に違いないのだ。
だが、それよりも最悪なのはたった一つの感情に囚われて目の前の事が何も見えなくなり、盲目となっている人間に違いない。
例のハンサムな男が口元を緩めた後に、心底から楽しそうな表情を顔に貼り付け、現れた男二人に応対する。
「どうだい?この自信満々な表情の女を地下へと連れて行き、一方的なショーを見せるのはどうだ?おれはその条件でも全然構わんぞ、むしろ、こいつが長い間、苦しむ姿を見れるのなら、おれその条件でも全然、あんたらの用心棒として活躍するぞ」
若くてハンサムな男はそれに似合わない下品な提案をしながら、唇を舐め回す。恐らく、あの男の脳裏には私の凄惨な光景が浮かんでいるのだろう。何とおぞましい男だろう。
加えて、あの二人がこの男を用心棒として雇っている事も知った。
と、なれば、あの二人が気紛れに私やピーターを解き放つ可能性も無いと見ていいだろう。
何とか、ここを脱出しなければならないが、それも難しい。
例えば、あの男が腰にホルスターを下げて括り付けている拳銃を奪取し、魔法も銃も使う暇さえ与えずに頭を撃ち抜けば確実にその間に出られるだろう。
だが、ピーターが居る場合は話が別。
衰弱した彼を背負いながら、逃亡すれば、この男の部下に直ぐにでも追い掛けられるだろう。
私は額に手を置いて脱出の方法を考えていくが、どうにも思い付かない。
しっかしりしろ!私!このまま何も思い付かなければ、最悪の結末を迎えるのは私とピーターなのだ。ここを出よう。ララミー・ブラザーズに報復し、奴らの成功の足掛かりとなるであろうエテルニタとの取り引きを潰してやろう。
私が決意を固めていると、開けっ放しとなっていた扉の前に一台の馬車が停まる。
金色の壁紙であるが、その中にごちゃごちゃと色々なものが付けられていて正直に言えば趣味が悪い。
手を振ってから、二人のギャングを牛耳る男はその場から消え去っていく。
ブラザーズの元締めである男が私と私の執事を連れて来た時に屋敷へと派遣した二人も連れて……。
この建物に残るのはこの男と私とピーターだけになる。
相手の強みは拳銃を持っている、それに魔法が使える。この二点だ。
要は逆にこの二点さえなければ、この男に私とピーターの生殺与奪の権は抱いていない。
そう考えた私はこの名前も知らない男の拳銃を奪う事を決めた。
男が私に直接攻撃をするために密接に近付いた時こそがチャンスというべきだろう。
男は私を甚振るために密接に近付いてくるだろう。その時に相手のホルスターから拳銃を奪う事ができれば……。
私は一か八かの可能性に賭け、まだギャングの親玉が閉した扉を眺めている男に向かって言った。
別の世界の悪どい私、とんがり耳のエルフの少女を迫害する悪い王女の口調であの猛獣使いの事について刺激していく。
「何を逆恨みしているのか知らないけれど、あの女が死んだのは自業自得でしょう?」
その言葉に頰を紅潮させて男が私の方を振り向く。
本来ならば、この台詞は悪役の台詞回しであるとされているのだが、今の男を刺激するのには最適かもしれない。
「いいかしら?あの女はね、殺していたのよ。罪の無い人間にを、それにあの子も工作員。死んだ時の覚悟だってあった筈でしょ?バカなの?」
エルフの少女のいじらしい無垢な行動を街に現れて騒動をもたらし、死傷者までも出したあの少女と比較するのはどうだとは思うが、それでもピタリと当て嵌まるのが恐ろしい所だ。
かつて、別の世界で勇者、ケイレブが私に我を忘れて剣で斬りかかった時のように、激昂した男が殴り掛かってくる。
真っ直ぐに向かってきた男に向かって私は突っ込み、そのまま彼に激突していく。
私と男は同時に地面に倒れ、直後に私はホルスターに下げられていた拳銃に手を伸ばす。
そして、未だに倒れた衝撃から立ち直れない男に向かって銃口を突き付ける。
これで形勢は逆転したと言っても良いだろう。
私は今、この瞬間にこの男から男が握っている私と私の執事の生殺与奪の権利を一部奪い返す事に成功したのだ。
後は男に魔法を使わせずに、逃がさせる事だけだ。自信はある。
私は地面に倒れて悔しそうな表情で私を見つめる男に向かって笑いを向けた。
私は思い切って叫ぶ。
「やめろッ!」
殺風景で家具など何もないためなのか、先ほど、発した私の言葉は部屋の中一杯に響き渡っていく。この状態で気付かないというのがおかしい。
男はピーターを嬲るのを辞め、私の方へと向かって歩いていく。
可哀想にピーターは既に攻撃を喰らわされ続け、口から荒い息が漏れていた。
涙と鼻水とで顔を滲ませて、痛みを抑えて横たわる彼の姿がいじらしい。
だが、間もなく私もピーターの事が他人事ではなくなるだろう。
眉間に何本もの青筋を立てた身勝手な男が私のお腹に向かって拳を振る下ろそうとした時だ。
勢いよく扉が開かれ、たっぷりと肥えた二人組の男が現れた。
先程の二人組を横に従えている事から、この二人はどうやら、そこそこの地位はある人物らしい。
いや、あの顔。よく見ればそっくりではないか。そう、港町のギャングのボス、ララミー・ブラザーズを仕切るオニールとダグラスに。
二人の顔を見ると流石にあの若くて美しい顔の男も自重せざるを得なかったのか、私に向かうのをやめて、現れた二人の男と向き直る。
葉巻を手に持った小柄の男はケタケタと腹をでっぷりと太った鳴らしで笑いながら、
「おいおい、もうやめておけ、それくらいにしておかないと死んでしまうぞ」
「弟の言う通りだ。お前、女の子にそんな乱暴な事をしちゃあいけないよ?な?」
弟という単語から察するに葉巻を手に持った男こそが兄弟を取り仕切るララミー・ブラザーズの弟でありながら、ボスを務めるダグラス・ララミーで違いないだろう。
その傍らに立っている背の高くて恰幅の良さそうな緑色のスリーピースのスーツを着込んだ男が優秀な兄にしてギャング団の軍師役、オニール・ララミーという所だろうか。
手配書に書いていた写真が合っていればの話だが……。
そんな事を考えていると、突如、太った方、ダグラスが私の元へと現れ、私の顎を掴む。
男の脂ぎった親指と人差し指が触れるだけで私の体は拒否感を表しそうになるのだが、ここは堪えてはっきりと目の前の男を睨んでやる。
すると、ダグラスは視線を逸らしてまた下品な声で笑う。
「兄貴、ダメだ。この女、鼻っ柱がつえーよ。とてもじゃあねぇけど、客に愛想なんて使いそうにねー」
「じゃあ、どうするよ?折角、良い顔があんなに勿体ないよなぁ~」
舐め回すように人差し指と親指で顎を摩りながら、私の顔を見つめるオニール。
やはり、この二人はギャングだ。ギャングというのは粗暴で女好きで、庶民には害を及ぼす存在に違いないのだ。
だが、それよりも最悪なのはたった一つの感情に囚われて目の前の事が何も見えなくなり、盲目となっている人間に違いない。
例のハンサムな男が口元を緩めた後に、心底から楽しそうな表情を顔に貼り付け、現れた男二人に応対する。
「どうだい?この自信満々な表情の女を地下へと連れて行き、一方的なショーを見せるのはどうだ?おれはその条件でも全然構わんぞ、むしろ、こいつが長い間、苦しむ姿を見れるのなら、おれその条件でも全然、あんたらの用心棒として活躍するぞ」
若くてハンサムな男はそれに似合わない下品な提案をしながら、唇を舐め回す。恐らく、あの男の脳裏には私の凄惨な光景が浮かんでいるのだろう。何とおぞましい男だろう。
加えて、あの二人がこの男を用心棒として雇っている事も知った。
と、なれば、あの二人が気紛れに私やピーターを解き放つ可能性も無いと見ていいだろう。
何とか、ここを脱出しなければならないが、それも難しい。
例えば、あの男が腰にホルスターを下げて括り付けている拳銃を奪取し、魔法も銃も使う暇さえ与えずに頭を撃ち抜けば確実にその間に出られるだろう。
だが、ピーターが居る場合は話が別。
衰弱した彼を背負いながら、逃亡すれば、この男の部下に直ぐにでも追い掛けられるだろう。
私は額に手を置いて脱出の方法を考えていくが、どうにも思い付かない。
しっかしりしろ!私!このまま何も思い付かなければ、最悪の結末を迎えるのは私とピーターなのだ。ここを出よう。ララミー・ブラザーズに報復し、奴らの成功の足掛かりとなるであろうエテルニタとの取り引きを潰してやろう。
私が決意を固めていると、開けっ放しとなっていた扉の前に一台の馬車が停まる。
金色の壁紙であるが、その中にごちゃごちゃと色々なものが付けられていて正直に言えば趣味が悪い。
手を振ってから、二人のギャングを牛耳る男はその場から消え去っていく。
ブラザーズの元締めである男が私と私の執事を連れて来た時に屋敷へと派遣した二人も連れて……。
この建物に残るのはこの男と私とピーターだけになる。
相手の強みは拳銃を持っている、それに魔法が使える。この二点だ。
要は逆にこの二点さえなければ、この男に私とピーターの生殺与奪の権は抱いていない。
そう考えた私はこの名前も知らない男の拳銃を奪う事を決めた。
男が私に直接攻撃をするために密接に近付いた時こそがチャンスというべきだろう。
男は私を甚振るために密接に近付いてくるだろう。その時に相手のホルスターから拳銃を奪う事ができれば……。
私は一か八かの可能性に賭け、まだギャングの親玉が閉した扉を眺めている男に向かって言った。
別の世界の悪どい私、とんがり耳のエルフの少女を迫害する悪い王女の口調であの猛獣使いの事について刺激していく。
「何を逆恨みしているのか知らないけれど、あの女が死んだのは自業自得でしょう?」
その言葉に頰を紅潮させて男が私の方を振り向く。
本来ならば、この台詞は悪役の台詞回しであるとされているのだが、今の男を刺激するのには最適かもしれない。
「いいかしら?あの女はね、殺していたのよ。罪の無い人間にを、それにあの子も工作員。死んだ時の覚悟だってあった筈でしょ?バカなの?」
エルフの少女のいじらしい無垢な行動を街に現れて騒動をもたらし、死傷者までも出したあの少女と比較するのはどうだとは思うが、それでもピタリと当て嵌まるのが恐ろしい所だ。
かつて、別の世界で勇者、ケイレブが私に我を忘れて剣で斬りかかった時のように、激昂した男が殴り掛かってくる。
真っ直ぐに向かってきた男に向かって私は突っ込み、そのまま彼に激突していく。
私と男は同時に地面に倒れ、直後に私はホルスターに下げられていた拳銃に手を伸ばす。
そして、未だに倒れた衝撃から立ち直れない男に向かって銃口を突き付ける。
これで形勢は逆転したと言っても良いだろう。
私は今、この瞬間にこの男から男が握っている私と私の執事の生殺与奪の権利を一部奪い返す事に成功したのだ。
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