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エージェント・ブリタニアン編
決闘の末に起こった心境の変化は誰に益をもたらすか
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私は無事にピーターの元に到着すると、彼から銃を受け取り、もう後数十歩で追い付くという距離にまで追い縋った彼に向かって銃口を向ける。
私に殴られた事により、相当に疲弊していると思われるあの男にもう避ける力ないと思われる。
銃口を向けられた後に微かに肩を震わせたのが良い証拠だろう。
もう一度、あの男はこの地面を油の海に変えるのだろうか、はたまた蟹に変えるのだろうか、或いはそのどちらもやりかねない。
だから、私はあの男が何かするよりも前に男の頭を撃ち抜く事に決めた。
あの男は先程、自分を殺した後にこの街で大規模な殺戮を起こそうとしていたのだ。そんな事は許される事ではない。
また、展開次第では先程と同じ事をしないとも限らない。
私は銃を構えてあの男が魔法を放つために右手か左手の掌を広げるのを待つ。
向こうが早いか私が早いかの勝負。一種の決闘だと言っても良いだろう。
王国の中に伝わる『決闘』はフェアだ。だから、私もあの男に一種のフェアな状態を集めた。
あの男が先に魔法で再度、この街に災害をもたらす方が早いか、それとも私の銃弾が男の頭を撃ち抜くのが早いか。
恐らく、向こうも分かっているのだろう。中々、魔法を放とうとしない。緊張の一瞬。思わず私の脳裏にあの男の魔法が発動した瞬間の光景が思い浮かぶ。
無数の蟹や油が街を覆い尽くす悪夢のような光景。
それを防がなくてはなるまい。私は意を決し、先に引き金を引く。
男はその瞬間に左手の掌を光らせてその手を地面へと向けていく。
男の魔法の発動が早いか、はたまた私の銃弾が男の頭を撃ち抜くのかは神のみぞ知る事だ。
私は固唾を飲んでその瞬間を見守る。もし、あの銃弾が男の眉間に直撃した後にこの世を去る前の最後の置き土産として発動したのなら、私たちには打つ手などない。
これから、家々から出て来るであろう人々は油や蟹に驚くに違いない。
油は誰かが街灯を揺らし、火を落としたり、或いは家から出て葉巻や煙草を吸って地面に落とさない限りは大丈夫であろうが、問題はあの男の繰り出す人喰い蟹。
あんなものが街を蔓延したとするのなら、街はパニックに陥ってしまうに違いない。
永遠とも思える時間が過ぎ去ったのはその後だった。男は銃弾を眉間に喰らって地面に勢いよく倒れていく。
悲鳴を上げる暇もない一瞬の時間。その間に存在したのは不安に苛まれた永遠とも言える時間。
私は足元を恐る恐る確認し、男が完全に地面の上で大の字になって死んでいる事と男の魔法の発動が間に合わずに絶命したという二つの事実を確認した。
私は唖然とした様子の武器屋の店主に武器を返し、疲れた表情で笑いを向ける愛しい執事に抱き付く。
そんなピーターは私の頭を優しく撫でていく。私は彼に抱き返され、彼の体から発せられる優しい匂いを鼻に収めていく。
と、そんな時だ。ピーターが咄嗟に私を背後に隠したのはどうしたのかと目の前を眺めると、そこにはティファニー嬢付きのメイドいや、帝国首席死刑執行官のジェーン・グラントが両手に料理用の果物ナイフを携えて現れた。
彼女は地面に倒れている男の死体を確認するとそのナイフをメイド服のポケットの中へと仕舞う。
まさか、ここで私を始末するつもりなのだろうか。彼女は私の目の前に足を進めていく。
私はあの男との戦いで完全に体力を奪われていた。ピーターもあの男から加えられた暴力でボロボロだ。
加えて、目の前の女は容易に戦える相手ではない。私は死を覚悟したのだが、彼女は私とピーターの間を潜り抜け、唖然とした様子の武器屋の店主の男に懐から茶色の財布を取り出し、そこから一枚の紙幣を取り出し、彼の手に手渡す。
状況が理解できずに目を白黒とさせている老齢の男に対し、彼女はメイドに相応しい人を魅了しそうな笑顔と物腰で彼女に接していく。
「ご主人……お嬢様が失礼致しましたわ。この王国ドルはお嬢様がご主人の使用なされた銃のレンタル料ですわ。どうぞ、お納めくださいまし」
彼女は丁寧に頭を下げ、私たちの元へとやって来る。顔に浮かべた表情といい従者に相応しいテキパキとした歩き方と良い彼女は本当に瀟洒な従者だ。
彼女は昨日に強盗の喉をかっき切った人物と同一人物とは思えない程の柔らかい笑顔を向けて、
「お嬢様、宿は取っておりますわ。警察への事情聴取は私が代わりに受けますから、お休みになられてはどうでしょうか?」
宿の場所を指差す彼女からは無言の圧力のようなものを感じた。恐らく、言葉の真意に含まれているのは暫く歩いて事情を聴くというものだろう。
彼女はそれから、ボロボロになったピーターを思ってか、はたまた逃げないように人質を取るつもりなのか。
いや、彼女の場合は絶対に後者だ。私が逃げないように人質を取りたいのだろう。
私が断ろうとする前に彼女は強引にピーターに肩を貸して宿へと私を連れて行く。
彼女の取った宿は港町の端にあるらしい。彼女は静かな口調で、
「先程は手荒な真似をして申し訳ございません。ウェンディ様。お嬢様のご学友にこのような事をする事は忍びありませんでしたが、どうしてもあなた様に聞いていただきたい事がございまして」
と、話を切り出していく。
何でも彼女はこの街の生物兵器の取り引きを阻止するために、昨晩のうちにここにやって来たのだという。
どうやら、あの暗い解散の後に彼女の相棒もといお嬢様が国から与えられたその取り引潰しを行う事を決めてここに来るのを決意したのだという。
それも、気まずさに耐え切れなかったのが理由だったらしい。
最も、あの男がここまで私たちを強引に拉致したお陰で私までもがここに来る羽目になってしまったのだが……。
そして、彼女はすべての理由を話し終えると、細めた両目で私を見つめて、
「お願いが御座います。あなた様はララミー・ブラザーズのために酷い目に遭わされたのですよね?ならば、それに対し報復をしたいとは思いませんか?」
確かに私は酷い目に遭わされたが、それだけでララミーを潰したいとは思わない。第一、ララミーを潰しても私には何の得もないが、彼女と彼女のかりそめの主人は仕事を成し遂げて利益を得る。
これではあまりにも一方的だ。そう思っていると、彼女は人差し指を掲げて、
「タダとは申しませんわ。もし、あなた様が我々に協力してくれるのなら、本国に懇願しましょう。あなた様を抹殺リストから外して欲しい、と」
この女性はもう自分の正体がバレていると感じたに違いない。そうでなければ、こんなにストレートに言う筈がない。
それに、私からピーターを奪って介助という名目で人質に取ったのもこの事が目的であったに違いない。
大方、私の力を欲したのだろう。あの戦いを物陰から見て……。
私は首を縦に振り、彼女の提案に乗る事にした。そうでなければ、ピーターは彼女に殺されてしまうであろうから。
私に殴られた事により、相当に疲弊していると思われるあの男にもう避ける力ないと思われる。
銃口を向けられた後に微かに肩を震わせたのが良い証拠だろう。
もう一度、あの男はこの地面を油の海に変えるのだろうか、はたまた蟹に変えるのだろうか、或いはそのどちらもやりかねない。
だから、私はあの男が何かするよりも前に男の頭を撃ち抜く事に決めた。
あの男は先程、自分を殺した後にこの街で大規模な殺戮を起こそうとしていたのだ。そんな事は許される事ではない。
また、展開次第では先程と同じ事をしないとも限らない。
私は銃を構えてあの男が魔法を放つために右手か左手の掌を広げるのを待つ。
向こうが早いか私が早いかの勝負。一種の決闘だと言っても良いだろう。
王国の中に伝わる『決闘』はフェアだ。だから、私もあの男に一種のフェアな状態を集めた。
あの男が先に魔法で再度、この街に災害をもたらす方が早いか、それとも私の銃弾が男の頭を撃ち抜くのが早いか。
恐らく、向こうも分かっているのだろう。中々、魔法を放とうとしない。緊張の一瞬。思わず私の脳裏にあの男の魔法が発動した瞬間の光景が思い浮かぶ。
無数の蟹や油が街を覆い尽くす悪夢のような光景。
それを防がなくてはなるまい。私は意を決し、先に引き金を引く。
男はその瞬間に左手の掌を光らせてその手を地面へと向けていく。
男の魔法の発動が早いか、はたまた私の銃弾が男の頭を撃ち抜くのかは神のみぞ知る事だ。
私は固唾を飲んでその瞬間を見守る。もし、あの銃弾が男の眉間に直撃した後にこの世を去る前の最後の置き土産として発動したのなら、私たちには打つ手などない。
これから、家々から出て来るであろう人々は油や蟹に驚くに違いない。
油は誰かが街灯を揺らし、火を落としたり、或いは家から出て葉巻や煙草を吸って地面に落とさない限りは大丈夫であろうが、問題はあの男の繰り出す人喰い蟹。
あんなものが街を蔓延したとするのなら、街はパニックに陥ってしまうに違いない。
永遠とも思える時間が過ぎ去ったのはその後だった。男は銃弾を眉間に喰らって地面に勢いよく倒れていく。
悲鳴を上げる暇もない一瞬の時間。その間に存在したのは不安に苛まれた永遠とも言える時間。
私は足元を恐る恐る確認し、男が完全に地面の上で大の字になって死んでいる事と男の魔法の発動が間に合わずに絶命したという二つの事実を確認した。
私は唖然とした様子の武器屋の店主に武器を返し、疲れた表情で笑いを向ける愛しい執事に抱き付く。
そんなピーターは私の頭を優しく撫でていく。私は彼に抱き返され、彼の体から発せられる優しい匂いを鼻に収めていく。
と、そんな時だ。ピーターが咄嗟に私を背後に隠したのはどうしたのかと目の前を眺めると、そこにはティファニー嬢付きのメイドいや、帝国首席死刑執行官のジェーン・グラントが両手に料理用の果物ナイフを携えて現れた。
彼女は地面に倒れている男の死体を確認するとそのナイフをメイド服のポケットの中へと仕舞う。
まさか、ここで私を始末するつもりなのだろうか。彼女は私の目の前に足を進めていく。
私はあの男との戦いで完全に体力を奪われていた。ピーターもあの男から加えられた暴力でボロボロだ。
加えて、目の前の女は容易に戦える相手ではない。私は死を覚悟したのだが、彼女は私とピーターの間を潜り抜け、唖然とした様子の武器屋の店主の男に懐から茶色の財布を取り出し、そこから一枚の紙幣を取り出し、彼の手に手渡す。
状況が理解できずに目を白黒とさせている老齢の男に対し、彼女はメイドに相応しい人を魅了しそうな笑顔と物腰で彼女に接していく。
「ご主人……お嬢様が失礼致しましたわ。この王国ドルはお嬢様がご主人の使用なされた銃のレンタル料ですわ。どうぞ、お納めくださいまし」
彼女は丁寧に頭を下げ、私たちの元へとやって来る。顔に浮かべた表情といい従者に相応しいテキパキとした歩き方と良い彼女は本当に瀟洒な従者だ。
彼女は昨日に強盗の喉をかっき切った人物と同一人物とは思えない程の柔らかい笑顔を向けて、
「お嬢様、宿は取っておりますわ。警察への事情聴取は私が代わりに受けますから、お休みになられてはどうでしょうか?」
宿の場所を指差す彼女からは無言の圧力のようなものを感じた。恐らく、言葉の真意に含まれているのは暫く歩いて事情を聴くというものだろう。
彼女はそれから、ボロボロになったピーターを思ってか、はたまた逃げないように人質を取るつもりなのか。
いや、彼女の場合は絶対に後者だ。私が逃げないように人質を取りたいのだろう。
私が断ろうとする前に彼女は強引にピーターに肩を貸して宿へと私を連れて行く。
彼女の取った宿は港町の端にあるらしい。彼女は静かな口調で、
「先程は手荒な真似をして申し訳ございません。ウェンディ様。お嬢様のご学友にこのような事をする事は忍びありませんでしたが、どうしてもあなた様に聞いていただきたい事がございまして」
と、話を切り出していく。
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どうやら、あの暗い解散の後に彼女の相棒もといお嬢様が国から与えられたその取り引潰しを行う事を決めてここに来るのを決意したのだという。
それも、気まずさに耐え切れなかったのが理由だったらしい。
最も、あの男がここまで私たちを強引に拉致したお陰で私までもがここに来る羽目になってしまったのだが……。
そして、彼女はすべての理由を話し終えると、細めた両目で私を見つめて、
「お願いが御座います。あなた様はララミー・ブラザーズのために酷い目に遭わされたのですよね?ならば、それに対し報復をしたいとは思いませんか?」
確かに私は酷い目に遭わされたが、それだけでララミーを潰したいとは思わない。第一、ララミーを潰しても私には何の得もないが、彼女と彼女のかりそめの主人は仕事を成し遂げて利益を得る。
これではあまりにも一方的だ。そう思っていると、彼女は人差し指を掲げて、
「タダとは申しませんわ。もし、あなた様が我々に協力してくれるのなら、本国に懇願しましょう。あなた様を抹殺リストから外して欲しい、と」
この女性はもう自分の正体がバレていると感じたに違いない。そうでなければ、こんなにストレートに言う筈がない。
それに、私からピーターを奪って介助という名目で人質に取ったのもこの事が目的であったに違いない。
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