王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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エージェント・ブリタニアン編

世界を支配すべし力を持ったグラントと強くなれる理由を知ったチミノの対決

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看板での戦いは完全にジェーン・グラントのペースで進められていく。モスマンは彼女のナイフの前に翻弄され、何度も何度も空中へと逃げ帰っていく。
そればかりではない彼女は時間を停止してティファニーか、はたまた横で転がっているギャングの懐から取ったのかは分からないが、火炎瓶とマッチを取り出し、それをモスマンに当てた。
あの扱いの当てにくそうな瓶を怪物に当てたのだ。怪物は悲鳴を上げて海中へと落ちていく。
彼女は船上の上で海の中に沈んでいく怪物を暫く見つめていたが、やがて興味をなくしたのかその場からスタスタと立ち去っていく。
私はそれを見て彼女の凄さを改めて知った。そんな時だ。船の入り口から一人の男が現れたのは。
入り口から現れた男は狐の様な顔をしており、上半身は逞しい筋肉が見える事から、何も身に付けてはいない事は言うまでもないだろう。
私は男が何かをするよりも前に、男に向かって銃を構え、それを見たのか、男も私とほぼ同じタイミングで背中に下げていた散弾銃を両手に持って銃口を構えたが、同時に短い溜息を吐いて散弾銃の銃口を私たちの前から下ろす。
「ったくよぉ~やってられねぇよぉ~どおして、オレがこんな事をしなくちゃあいけねーんだよ。本当にめんどくせー」
私もティファニーも男の発した言葉に思わず拍子抜けしてしまう。いや、唖然としたと言っても良いかもしれない。
だが、男は困惑する私と気を取り直して銃を構えるティファニーを他所に話を進めていく。
「可哀想なのはオレの弟だよ。無い知恵を必死に振り絞って考えたのに、無残に殺されちまってよぉ~“兄貴、今日はオレが代わりに受け持つよ。だから、兄貴は代わりに地下で休んでてくれ”何て言って、オレからオレの服を借りると、そのまま外でマリオ・チミノとして殺されちまったんだよなぁ~ウッウエウウウウウ~」
彼は、いや、本物のマリオ・チミノが顔に両手を覆って泣いていく。
そうして暫く泣いたかと思われると突然、背後を振り向いて自分が出てきた扉に向かって散弾銃の銃口を構える。
ティファニーは嫌な予感がしたのか、彼に向かって拳術を放つが、男はそれを素早く左に交わして避ける。
もう一つの銃弾が粉々になった扉から中へと入っていき、階段に弾かれて地面の上に落ちていく。
男は舌を打ってから、もう一度散弾銃を粉々になった船の入り口に向けたのだが、同時に彼の首元にナイフが突き立てられる。
ジェーンだ。彼女は何らかの手段を用いてここに来たに違いない。
最も、彼女の魔法など私には検討も付かないのだが……。
彼女は唖然とした表情の男に向かって言った。
「お嬢様はお相手になりません。代わりに私がお相手致します」
男は散弾銃の銃口を振り上げて彼女の顔を叩こうと試みたが、その前に彼女は飛び上がり、男に向かってナイフを飛ばす。
だが、男は散弾銃を放って回避しようと目論む。
普通ならば、散弾銃で目の前から迫るナイフを避けるなど正気の沙汰では無いだろう。
だが、その男はやってのけた。散弾銃の弾丸から刃物を出して彼女の放ったナイフを弾いていく。
ジェーンはそれを見た意外そうな顔をしていた。どうやら、彼女のナイフが弾かれたのはこれが初めてであるらしい。
彼女はそれを見届けるのと同時に目の前へと飛び上がり、男の目の前にナイフを放り投げていく。
しかも、単に投げたのではなく、男の周りを囲む様に投げている。
一斉に襲い掛からられば、ここでマリオは死んでしまうだろう。
だが、彼はそのナイフの攻撃さえも容易に避けられた。
彼はナイフが自分の体に向けられていくのと同時に散弾銃を周囲に振り回し、ナイフを次々と弾いていく。
彼はそのまま彼女に向かって散弾銃を放つのだが、彼女はそんな事にも構わずに、突然、彼の目の前に現れて彼の首元に向かってナイフの先端を突き付ける。
彼は慌てて地面を蹴り、彼女の持っていたナイフを交わすと、そのまま銃口を持って彼女に向かってその銃の尻で彼女を殴り殺そうと試みた。
当然、彼女が黙って打たれる筈もない。いつの間にか後部へと逃亡し、彼の銃の尻を交わす。
その事実を彼は銃尻を空振りさせた後に気が付いたらしく、チッと舌打ちをすると離れた彼女に向かってもう一度散弾銃の引き金を引く。
散弾銃から放たれた弾丸は鋭い刃となり、彼女に向かって襲い掛かっていくのだが、彼女は傷を一切付ける事なくもう一度マリオの前へと向かっていく。
彼女は手に持っていた小型の果物ナイフをマリオに向かって突き刺そうとするものの、彼はそれを銃を盾にして防ぐ。
彼女は勢いのままに銃ごとマリオを叩き切ろうとしたのだが、マリオはそれを許さない。
ジェーンを弾いて、もう一度彼女に向かって引き金を引く。
彼女はいつものように避けていたのだが、その顔に少し疲労の色が出ていた。
彼女は小さく溜息を吐いて、手に持っていたナイフをマリオに投げ付けると、これまたいつの間にか私の直ぐ側にまで近寄って、私の耳元で囁く。
「あの男の処分はあなたに任せます。好きなように料理なさいまし」
そう言うと彼女はティファニーの側に佇み、私に無言の圧を掛けていく。
どうやら、マリオは私の手で始末しなくてはなるまい。
私は銃を構えて男と対峙していく。波止場から吹く潮風が私の肌を突き刺すのだが、私は気にする事なく銃をマリオに向かって構えた。
「おいおい、あのメイドが気紛れに戦いから放り出したと思ったら、次の相手は王立魔法学院の制服を着た小娘じゃあないか、へっ、あんな雑魚相手に勝ったつもりか?」
「あんまり粋がるのもやめてもらえないかしら?危うくあんたらがロクでもないものを輸出して、大陸に大混乱が起こるのは必須だったのよ。それを止めたのは私たちだからね。忘れないで」
「おいおい、随分と恩着せがましく言うじゃあねぇか?え?」
マリオは頬をボリボリと掻き、目を尖らせながら私に向かって言った。
「こっちはよぉ~今回の取り引きじゃあ、部下はおろか、商売相手さんや、積荷までも失ってんだよなぁ~そんな惨劇を引き起こした奴が偉そうに言うなよ。なぁ~」
男はそう言って散弾銃の引き金を引く。同時に私は避ける前に、左手の掌を広げて男の魔法を奪っていく。
私は自分の拳銃の引き金を引くのと同時に放たれた銃弾が粉々に砕かれ、割れた弾片が刃物に変わっていくのを見届けた。
どうやら、これがあの男の魔法の正体らしい。私はあの男がジェーンのナイフを弾いた理由を知った。
後はこれをどう上手く活用していくかだ。私は左手の掌を広げ、右手に持った拳銃を目の前の男に突き付けながら考えた。
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