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ムーン・アポカリプス編
公爵家の令嬢に仕えし忠実なる執事は砂糖水のように甘い夢を見るか
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私が目を覚ましたのはチェックポイントの街の病院のベッドの上だった。私は包帯で全身を覆われて動けなくなっていた。指を動かそうにも思ったように動かない。
すると、白いワンピースを着た若い女性が私を止めた。
「無茶はやめてください!まだ動ける状態ではないんですから……」
「……みんなは!?白亜の騎士団のみんなはどうなった!?あの酒場に居た人たちは!?」
その言葉を聞いて看護師の女性の顔に陰が灯る。どういう事だ。あのお嬢様の仲間たちはみんな死んでしまったというのか。
私はそう叫ぼうとしたが、口が上手く動かずに小さな悲鳴を上げるだけで終わってしまう。
それを見た看護師の女性が必死に私を止めた。
あの男の操る魔法は最強だった。思い出してみると、あの男はあらゆる物の影を操る魔法を持っているに違いない。
前世で漫画として読んだ時にもあいつはクラリスを卑劣な手段で追い詰めていたような気がする。考えたらまた頭が痛む。
頭痛を感じた私は今日の所はゆっくりと休む事にして目を閉じ、夢の世界へと旅立っていく。
翌日になり、看護師の女性から色々な事を聞いた。私はあの日からとっくに一ヶ月という月日が経っている事やレースが最終段階にまで進んでいる事。それに、仲間の中の何人かが病院を退院した旨を聞かされた。
幸いにしてあの崩落の中で息が絶えた仲間は居なかった。その代わりに、他の客たちが犠牲になってしまったそうだが……。
私は目を細めてその事を考えていると、ケネスに対しての怒りが湧いてくる。
あの男がモタモタしている間にあの男を撃ち殺せば、こんな事にはならなかったのではないのか。
そう考えるとこの崩落もお嬢様が消えた原因も全部あいつにある様な気がしてならない。
その後にパジャマ姿のケネスが私の病室に現れた。
彼を見た瞬間に私は向かっ腹が立って仕方ない。
見舞いにきた彼に私は罵声を浴びせた。我慢ができなかったのだ。彼は私の話を黙って聞いていた。だが、直ぐに目を開いて言った。
「……確かに、崩落や拉致はオレの責任かもしれん。だがな、オレとしてはこのまま怪我が治ったら、囚われているお姫様を助けには行きたいんだよ。それが唯一の償いというものだろう?」
その言葉に対しては私も何も言い返せない。畜生、論争でもあいつの方が上なのかよ。私は咄嗟に吐き捨てそうになった言葉を黙って飲み込み、ケネスを病室から追い出す。
それから、私は前世で読んだ漫画の知識を思い出していく。
確か、クラリス・チャップマンはこの後にどうしたのだろう。彼は愛するケイレブと一緒に……。
そこで私は考えるのをやめた。
気が付くと私は別の場所で寝そべっていた。それは先程まで横になっていた病院のベッドは比較にならない程のフカフカのベッドの上。
しかも、そのベッドには王様が寝る様な豪華な天蓋が付いており、周りには王様が使う様な豪華な家具が並べられていたり、絨毯が敷かれていたりした。
その上、怪我までも完治している。
私がぼんやりとした様子で辺りを見渡していると、目の前に一人の少年が現れて私の眠っているベッドの前に椅子を引き寄せる。
「やぁ、こんにちは。初めましてだね、ピーター君。この部屋は気に入ってくれたかな?)
私は目の前の小人の様に小さく可愛らしい顔立ちの少年を見て一年ばかり前にお嬢様が言っていた夢の事を思い出す。
私はベッドから起き上がると、彼を自分の元に引き寄せて彼の耳元で叫ぶ。
「お嬢様は!?お嬢様を何処にやった!?言うんだッ!」
「まぁ、落ち着いてよ。こういう本でも読んでね」
と、彼は私に一冊の本をいや、漫画を手渡す。手渡された私は思わず言葉を失ってしまう。
それはかつて私が生きていた世界での人気の恋愛バトル漫画であり、賞金稼ぎ部の劣等生、クラリス・チャップマンが嫌味な貴族の令嬢、ウェンディと手を組んで学校や部活で自分が認められるための戦いを始めていくという作品だった。
間違いない。前世ではとてつもなく頭の良い高校生が巻き込まれた難事件を解決するという漫画と並んで好きだった漫画だ。間違えるわけがない。
私は恐る恐るページを開いていく。だが、そこには何もおかしな事は載っていない。バスに乗っていた時にこっそりと読んでいた漫画の内容と全く同じだ。
私がその内容に驚いていると、彼は私の顔を覗き込んで言った。
「キミはこの漫画を全く別のものにした……その罪は償ってもらわなくちゃあならない。全く、ボクは何だってキミの様な甲斐性無しをこの世界に迎え入れたんだろうね……」
少年は頭を抱えながらいった。それを聞いた私は思わずに耳を疑ってしまう。
つまり、この少年が私をこの世界へと招き入れた張本人だというのか。
私は少年の両肩を揺さぶってでも、この事実を聞こうと思って椅子に座っている彼に向かって飛び掛かろうとしたのだが、少年は素早く椅子の上から降りて私の抱擁を拒否した。
少年はチッチと人差し指を横に振って、
「キミなんかには簡単に捕まらないよぉ~正式な神ではない邪神とはいえ、神に分類されるのは間違いないんだから、それよりも大変だよ」
と、彼は私の目の前にお嬢様が豪華だけれども窮屈そうな緑色のドレス姿で拘束されている姿を見てしまう。
あの寂しそうな目は何なのだろう。もしかして、共和国がお嬢様に何かしたのだろうか。
私が拳を握り締めながら、囚われのお嬢様を眺めていると、彼女の前に一人の長いオレンジ色の髪の女が現れた事に気が付く。
「彼女だよ。あの飛び切りに狂った計画を思い付いたのは……最も、本当は夢の世界でボクが今、キミに話しかけているみたいにあのムーン・ビーストに唆されたらしいけど」
そんな事はどうでも良い。私はこの空間の中に空いた穴を指差して叫ぶ。
「おい、お前!私をここへと連れて行け!報酬なら幾らでも払うからッ!」
その言葉と共に私は今度はオリーブ色の光に包まれてあそこへと連れ去られてしまう。
気が付けば、部屋の中にいた私に対して見知らぬ女はニヤニヤとした顔で私を迎えていた。
それに対し、お嬢様は困惑の色を隠し切れていない。だが、私は言うべきなのだ。後悔してはなるまい。
「私の名前はピーター・パンサーだッ!スペンサー公爵家の忠実なる家臣にして、ウェンディお嬢様の執事、そして、そして、そして……」
頭の中が真っ白になってしまう。こうなってしまっては全ての思いをぶち撒けてしまおう。私は心を無にして叫んだ。
「ウェンディお嬢様の婚約者だッ!」
その言葉を聞いてオレンジ色の髪の女が笑い、ウェンディお嬢様が呆れた顔を浮かべていた。
すると、白いワンピースを着た若い女性が私を止めた。
「無茶はやめてください!まだ動ける状態ではないんですから……」
「……みんなは!?白亜の騎士団のみんなはどうなった!?あの酒場に居た人たちは!?」
その言葉を聞いて看護師の女性の顔に陰が灯る。どういう事だ。あのお嬢様の仲間たちはみんな死んでしまったというのか。
私はそう叫ぼうとしたが、口が上手く動かずに小さな悲鳴を上げるだけで終わってしまう。
それを見た看護師の女性が必死に私を止めた。
あの男の操る魔法は最強だった。思い出してみると、あの男はあらゆる物の影を操る魔法を持っているに違いない。
前世で漫画として読んだ時にもあいつはクラリスを卑劣な手段で追い詰めていたような気がする。考えたらまた頭が痛む。
頭痛を感じた私は今日の所はゆっくりと休む事にして目を閉じ、夢の世界へと旅立っていく。
翌日になり、看護師の女性から色々な事を聞いた。私はあの日からとっくに一ヶ月という月日が経っている事やレースが最終段階にまで進んでいる事。それに、仲間の中の何人かが病院を退院した旨を聞かされた。
幸いにしてあの崩落の中で息が絶えた仲間は居なかった。その代わりに、他の客たちが犠牲になってしまったそうだが……。
私は目を細めてその事を考えていると、ケネスに対しての怒りが湧いてくる。
あの男がモタモタしている間にあの男を撃ち殺せば、こんな事にはならなかったのではないのか。
そう考えるとこの崩落もお嬢様が消えた原因も全部あいつにある様な気がしてならない。
その後にパジャマ姿のケネスが私の病室に現れた。
彼を見た瞬間に私は向かっ腹が立って仕方ない。
見舞いにきた彼に私は罵声を浴びせた。我慢ができなかったのだ。彼は私の話を黙って聞いていた。だが、直ぐに目を開いて言った。
「……確かに、崩落や拉致はオレの責任かもしれん。だがな、オレとしてはこのまま怪我が治ったら、囚われているお姫様を助けには行きたいんだよ。それが唯一の償いというものだろう?」
その言葉に対しては私も何も言い返せない。畜生、論争でもあいつの方が上なのかよ。私は咄嗟に吐き捨てそうになった言葉を黙って飲み込み、ケネスを病室から追い出す。
それから、私は前世で読んだ漫画の知識を思い出していく。
確か、クラリス・チャップマンはこの後にどうしたのだろう。彼は愛するケイレブと一緒に……。
そこで私は考えるのをやめた。
気が付くと私は別の場所で寝そべっていた。それは先程まで横になっていた病院のベッドは比較にならない程のフカフカのベッドの上。
しかも、そのベッドには王様が寝る様な豪華な天蓋が付いており、周りには王様が使う様な豪華な家具が並べられていたり、絨毯が敷かれていたりした。
その上、怪我までも完治している。
私がぼんやりとした様子で辺りを見渡していると、目の前に一人の少年が現れて私の眠っているベッドの前に椅子を引き寄せる。
「やぁ、こんにちは。初めましてだね、ピーター君。この部屋は気に入ってくれたかな?)
私は目の前の小人の様に小さく可愛らしい顔立ちの少年を見て一年ばかり前にお嬢様が言っていた夢の事を思い出す。
私はベッドから起き上がると、彼を自分の元に引き寄せて彼の耳元で叫ぶ。
「お嬢様は!?お嬢様を何処にやった!?言うんだッ!」
「まぁ、落ち着いてよ。こういう本でも読んでね」
と、彼は私に一冊の本をいや、漫画を手渡す。手渡された私は思わず言葉を失ってしまう。
それはかつて私が生きていた世界での人気の恋愛バトル漫画であり、賞金稼ぎ部の劣等生、クラリス・チャップマンが嫌味な貴族の令嬢、ウェンディと手を組んで学校や部活で自分が認められるための戦いを始めていくという作品だった。
間違いない。前世ではとてつもなく頭の良い高校生が巻き込まれた難事件を解決するという漫画と並んで好きだった漫画だ。間違えるわけがない。
私は恐る恐るページを開いていく。だが、そこには何もおかしな事は載っていない。バスに乗っていた時にこっそりと読んでいた漫画の内容と全く同じだ。
私がその内容に驚いていると、彼は私の顔を覗き込んで言った。
「キミはこの漫画を全く別のものにした……その罪は償ってもらわなくちゃあならない。全く、ボクは何だってキミの様な甲斐性無しをこの世界に迎え入れたんだろうね……」
少年は頭を抱えながらいった。それを聞いた私は思わずに耳を疑ってしまう。
つまり、この少年が私をこの世界へと招き入れた張本人だというのか。
私は少年の両肩を揺さぶってでも、この事実を聞こうと思って椅子に座っている彼に向かって飛び掛かろうとしたのだが、少年は素早く椅子の上から降りて私の抱擁を拒否した。
少年はチッチと人差し指を横に振って、
「キミなんかには簡単に捕まらないよぉ~正式な神ではない邪神とはいえ、神に分類されるのは間違いないんだから、それよりも大変だよ」
と、彼は私の目の前にお嬢様が豪華だけれども窮屈そうな緑色のドレス姿で拘束されている姿を見てしまう。
あの寂しそうな目は何なのだろう。もしかして、共和国がお嬢様に何かしたのだろうか。
私が拳を握り締めながら、囚われのお嬢様を眺めていると、彼女の前に一人の長いオレンジ色の髪の女が現れた事に気が付く。
「彼女だよ。あの飛び切りに狂った計画を思い付いたのは……最も、本当は夢の世界でボクが今、キミに話しかけているみたいにあのムーン・ビーストに唆されたらしいけど」
そんな事はどうでも良い。私はこの空間の中に空いた穴を指差して叫ぶ。
「おい、お前!私をここへと連れて行け!報酬なら幾らでも払うからッ!」
その言葉と共に私は今度はオリーブ色の光に包まれてあそこへと連れ去られてしまう。
気が付けば、部屋の中にいた私に対して見知らぬ女はニヤニヤとした顔で私を迎えていた。
それに対し、お嬢様は困惑の色を隠し切れていない。だが、私は言うべきなのだ。後悔してはなるまい。
「私の名前はピーター・パンサーだッ!スペンサー公爵家の忠実なる家臣にして、ウェンディお嬢様の執事、そして、そして、そして……」
頭の中が真っ白になってしまう。こうなってしまっては全ての思いをぶち撒けてしまおう。私は心を無にして叫んだ。
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