王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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ムーン・アポカリプス編

男の名はウッディ・ビーナル

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不気味な男の魔法は吸収した限りでは影を操る魔法だ。この日差しの照りつける環境ならば影はあちこちに出来ている。男にとっては好都合とも呼べる時間帯と言っても良い。
同時に、私の左手から魔法を繰り出す前に男が襲撃を仕掛けてきたのが夜ではなかった事に心の底から安堵する。
もし、夜ならばあの男の操る影が何処から迫るのか分かったものではないからだ。
そんな事を考えていると、私は街の広場に出ている事に気が付く。
私の目の前にはあの男が私を見て唇の周りを舐め回す。
私がそんな彼をじっと眺めていると彼は影へと手を伸ばし、散弾銃を取り出す。
その銃口を獲物を狙う猟師のような勝ち誇った目を浮かべながら、私に向ける。
私は拳銃を構えて男の散弾銃に挑む。だが、結果としては散弾の方が有利である事は言うまでもないだろう。
私の銃弾は外れ、男の散弾は私の体の直ぐ側を通過していく。
正直に言えば思わず腰を抜かしてしまう程に恐ろしい。
だが、私は構う事なくもう一発を男に向かって喰らわせていく。
だが、男は銃弾にも怯む事なく何度も散弾銃の引き金を引いて私の命を狙う。
私は堪らずに絶句する。今でこそ散弾を避け切れているが、このままでは限界が来れば私の体は粉々に砕かれてしまうだろう。
焦った私は先に魔法を使用して彼の真後ろにある刃物の影を操作し、彼の影に当てるべく動かしていたのだが、男は私の動きを読んでいたらしく私が完全に操作を行わせる前にもう一度散弾銃を構えて私を狙う。
私はギリギリで回避する事に成功したのだが、結局、刃物の影はあの男には当たらずに未だに置いてある樽の上から落ちようともしない。
すると、男が散弾銃に弾込めをしている姿を発見した。
今こそ男を撃ち殺す絶好の機会だと思われたのだが、その前に彼の首に巻き付いていた筈の蛇が立ち塞がり、私に向かって飛び掛かる。
それを酒場で他の仲間と共に決闘を見ていたケネスが蛇に向かって拳銃を放ったので蛇が私の顔に噛み付く事は無かった。
だが、それを見ていた男は地面を踏んでケネスに向かって怒鳴り付ける。
「テメェ!決闘に首を突っ込むんじゃあなねぇよ!ルール違反だろう!」
「構うものか、ウェンディはその蛇と決闘している訳じゃあない。あくまでも決闘をしているのはあんただ。むしろ、一対一の決闘なのに蛇に頼るあんたこそが卑怯者なんじゃあないのか?」
その言葉に男の両眉が下がっている事に気が付く。
男は無言で散弾銃を酒場の外で決闘を眺めていたケネスに向けた。
私は慌てて拳銃を構えて男の両腕を撃ち抜こうとしたのだが、男はその前に素早くケネスから私の方へと振り向いて、散弾銃の銃口を私に向ける。
彼が舌舐めずりをした時だ。乾いた音が街の中で鳴り響き、次の瞬間には彼の両腕から大きな血が流れていた。
咄嗟に両手に持っていた散弾銃を落とした事から、彼が相当なダメージを負った事が窺える。
では、その彼にダメージを与えた人物というのは誰なのかと酒場の前で決闘を眺めていた人物を見渡していくと、持っていた拳銃の銃口から白い煙を出している例の射撃教師の姿に気が付く。
「……私の生徒に手を出す事は許さないよ。それに、正論を言われたからと殺すのは私としては感心しないなぁ」
ロジャー先生はそう言って無言で彼に向かって銃口を突き付ける。
それを見た男は今度は影の空間からナイフを取り出して、彼に飛び掛かったのかと思われた。
だが、彼は咄嗟に自分の影を操り、酒場で決闘を見物していた女性騎手を人質に取る。
彼はナイフを女性の首元に突き付けて、
「動くんじゃあねぇぞ!テメェら!この女を殺したくなけりゃあ、テメェらの手でウェンディを殺せ!そうすりゃあ、人質の命だけは助けてやるッ!」
白亜の騎士団の団員たちは一瞬はたじろいだ様子を見せたものの、次の瞬間には一斉に首を横に振る。
「ダメだな。ウェンディは殺せん」
ケネスの意見が騎士団全員の意見だった。それを聞いた女性が悲鳴を上げる。
だが、同時にケネスが無言でナイフを持つ男の腕を撃ち抜いて人質を解放させると彼は腕を抑えてケネスを睨む。
「ちくしょう……クソガキが……だが、これで終わったと思うなよ。黒魔術っていうのは中々に恐ろしいものなんだぜ……」
彼はそう言うと何やらとブツブツと言葉を口にすると、自分の影の中から取り出した拳銃で自らの頭を撃ち抜く。
全員がその様子を固唾を飲んで見守っていたのだが、次の瞬間には頭を撃ち抜かれて死んだ筈の蛇が動き出し、私たちに向かって襲いかかってきた。
蛇は私の元に襲い掛かってくるのと同時にもう一度、あの男の姿へと変わっていく。
漢は満足そうな顔で言った。
「これが、黒魔術の威力だぜ?どうだ?ガキども……恐ろしいだろう?」
どうやら、彼は死の直前に闇の魔術を呟いて蘇ったらしい。
その後に男は慌てた様子で酒場の外に出てから、例の魔法で酒場を持ち上げて地面へと叩き付けた。
その瞬間に私は意識を失った。
そして、気が付いて目を覚ませば、目の前で男が私の拳銃を握って瓦礫に挟まれた私に向かって銃口を向けているという始末だ。
「動くな。あんたはこのまま殺しても良いんだがな。さっきこの街にやって来たミス・クラウンがあんたを呼んでるんでな。この場では殺さないでおいてやるよ」
彼はそう言うと私を乱暴に粉々になった酒場から引き摺り出し、チェックポイントの街に停まっていた馬車へと私の体を引っ張っていく。
私は男に強制的に馬車の中へと引っ張られ、真向かいに座っているクラウン元生徒会長の前に座らされた。
クラウン元生徒会長はいや、レナは私を見て手をパチパチと叩いて、
「流石だね。あのウッディ・ビーナル氏にここまで立ち向かえたのはあなた達が初めてかな?かな?」
「よく言うぜ、やられたフリは演技だったのお前が一番よく知ってくせに……」
彼は馬車の扉を閉めて言った。
そして、馬車はそのままゴロゴロという音を立ててレースの方角を向かっていく。
「……私を何処に連れて行くつもりですか?ミス・クラウン」
「何って私がお持ち帰りするだけだよぉ~キミって可愛いからさぁ~」
彼女は舌を舐め回しながら言った。
だが、代わりに人差し指を横に振ってウッディが代わりに本当の理由を答える。
「決まっているだろ?これから、あんたをレースのゴールの街にまで連れて行って、そこに監禁させてもらう。このまままともにゲームをプレイされて、ゴールでオレ達の邪魔をされたら厄介だからな」
男は先程、私に突き付けていた拳銃を突き付けながら言った。
「まぁ、せいぜい頑張りなよ。生きていれば、囚われのお姫様をあんたの素敵な騎士ナイトたちが助けに来てくれるかもしれねぇからな」
男は楽しそうに笑いながら言った。
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