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エピローグ
赤い血の贖罪
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「似合ってるぜ、ケネス」
と、マーティが背後から茶々を入れる。
「……そうか、ありがとう。マーティ」
あの陽気な男は俺が素直に礼を言ったのが相当珍しかったらしい。何故だかヘソを曲げた様な顔をして拗ねていた。
「ちぇーつまんねーな。全く、こんな時くらい怒ってもいいんだぜ」
「そんなんだから、あなたモテないんじゃあないの?」
マーティに声を掛けたのはクラリス。彼女は地味なデザインの空色のドレスで今日の式の会場へと訪れていた。
そのマーティが着ていたのもハプタイと呼ばれる首飾りに黒色のスリーピースーツ。クラリスはああ言っていたが、こいつはこいつで中々格好が良いと俺は思う。
「ふ、二人とも何、喧嘩をしているんですかぁ~今日は折角のミス。いや、ミセス・スペンサーの晴れ舞台なんですよぉ~」
背後で緑色のスーツを着ておどおどした様子を見せているのはジャック。
かつて、学院の馬繋場で馬係を担当していた男だ。彼は卒業後、地元で馬を売る店に就職している。
今日は有給を貰ってここにやって来たらしい。
相変わらず彼の様子も変わらない。俺が懐かしさにかまけて笑っていると、俺の前に二人の男女が俺の控え室を覗き込む。
ソルドとかれんの二人組だ。二人は大人しい性格であり、卒業後には地元の大学に進学した後、地元で就職する事が殆ど確定していた。
恐らく俺とウェンディの次に結婚する相手であろうから、式の終わりにウェンディングブーケを渡すようにあいつに言わなければならんだろう。
俺が苦笑していると、宮殿のメイドにそろそろ式場に向かう様に指示を出された。
今日の俺の格好は黒色の上着にズボン。白色のドレスシャツ。そして、白色の蝶ネクタイと呼ばれる礼装用のネクタイだ。
俺の花婿衣装を着た女性陣がなぜか歓声を上げていたが、あれはどういう事だろう。
俺はそんな事を考えながら、仲間と共に式が行われる予定の宮殿の会場へと向かう。流石に我が国の王室が住まう宮殿だけあり、中々に広かった。
どうも、普段は何もない建物であるらしいが、今日の日のために主賓席が置かれ、その前に客たちが料理を楽しみ、俺たちを祝福する席が置かれていた。
俺は国王、王后両陛下並び、シンディ王女殿下の座る席とスペンサー公爵家の公爵夫妻の座る間の席に座らされた。
何でもない家柄の俺がこんな凄い家柄の二人に挟まれるとは大変恐縮な思いである。
俺はプレッシャーもそこそこに周りの人間を見渡していく。
さっきの友人たちだけではなく、ウェンディが二年前のレースの際に知り合った帝国のケイレブ・オーウェンという男にあのロジャー・キャロウェイなる射撃教師。
そして、学院の賞金稼ぎ部のメンバーにして公爵令嬢の護衛を司る白亜の騎士団面々以外にも王国の有力ともいえる貴族たちが席の上に座っていた。
無論、俺の両親や親戚も俺を祝福するためにここに集まっていた。
そして、近くの席にはウェンディの執事と使用人のピーターとボニーの二人が立っていた。
もう他の面々は揃っている。
後は少しだけ到着の遅れているウェンディを待つだけだ。
だが、いつまで立ってもウェンディはここには来ない。流石に集まった人たちも不安に思ったのか、席に座りながら、互いの顔を見合わせていく。
俺は自分に言い聞かせた。彼女が逃げるはずは無い。彼女が俺を捨てるはずは無いのだ、と。
そして、集まった一人が待ち切れずに立ち上がった時だ。広場の扉が開かれ、中に純白のウェディングドレスを血に染めた花嫁が現れたのだ。
俺は慌てて席を立ち、彼女の元へと向かう。俺はその場で力尽きた筈の彼女の体を抱き起こし、涙を流しながら彼女に向かって話しかける。
「ウェンディ!ウェンディ!頼む!死なないでくれ!頼む!」
やめろ、やめてくれ。神様、頼む。俺の大切な人をあの世に連れて行かないでくれ!
俺は神に縋りつつ、また意識を失い掛けている大切な女性に向かって叫び続ける。
そんな彼女は俺の頬を優しく撫でて言った。
「泣かないでケネス……私ね、あなたと出会えて幸せだったわ。賞金稼ぎ部に入れて、あなたと一緒になれてね……」
「そんなッ!そんな事を言わないでくれッ!ちくしょう、オレが……オレがお前の側に付いていたら……」
そうして悔やむ俺を突き飛ばし、ピーターや他の友人、それに国王、王后両陛下とシンディ王女が駆け寄り、ウェンディに話しかけていく。
彼女は消えゆく最後の命の輝きを最愛の人たちへと最後の挨拶を交わしていく。
俺はその場では何もできずにただ嗚咽を上げて涙を流していた。
結局、式は取り止めとなり、俺が歩む筈だった輝かしい将来は栄光に絶たれてしまう。
だが、有難い事に国王、王后両陛下もシンディ王女殿下も俺を責めはせず、仲間でさえも俺を責めようとはしなかった。
あの後の事を掻い摘んで話せば、あの後に世界を救った英雄の死は大々的に伝えられ、彼女の葬儀が執り行われた。
葬儀屋は彼女の死体を綺麗にし、生前着ていたウェディングドレスと同じものを彼女に着せ、彼女の愛用していた自動拳銃やら愛読書やらを棺の中に入れ、多くの国民の哀悼の元に彼女の死体は地下の冷たい場所に死んだ時の体をそのまま状態できるようにしておく。
これで彼女は王族の一員として埋葬される事になった。
当初こそ悲しみに覆われていたのだが、俺はそんな時に彼女が何というのかを思い出す。
彼女なら、俺を叱責するだろう。そんなものはケネスではないと。
だから、俺は懸命に彼女と学ぶ筈だった大学で必死に勉強し、エリートである代表保安委員として田舎町の警察署で務める事になった。
俺が保安委員となった理由というのは彼女が賞金稼ぎ部に入った時の思いを思い出したからだ。
彼女は弱い人を守るために賞金稼ぎ部の部員となり、人々を脅かす無法者やテロリストと命をかけて戦ったのだ。
だから、俺は彼女同様に命を掛けて人々を犯罪から守る職務へと就いたのだ。
俺は落ち込むのは辞めたが、田舎町に建てた大きな屋敷の庭の揺り椅子にもたれながら考える。
この場にウェンディが立っているのではないかと。
だが、それが一時的な幻覚に過ぎない事を俺はよく知っていた。
だから、現実に引き戻された時に思い出すのだ。
彼女がもういない事を。彼女のいない世界で過ごしているという事を。
そんな事を思いながら、椅子の上で目を覚ますと俺は自分の両頬を強く叩く。
かつての俺の思い、あいつならこの俺を見てどうするのかと言い聞かせて。
その後に俺はいつも太陽を見上げるのだ。あの大きく万物を平等に照らす太陽には勇気を付けられた。
俺は自分の虚しい感情を鼻で笑って太陽の中を歩いていく。
何処かで俺を見ている最愛の人に怒られないように。自分は元気だと伝えるために。
と、マーティが背後から茶々を入れる。
「……そうか、ありがとう。マーティ」
あの陽気な男は俺が素直に礼を言ったのが相当珍しかったらしい。何故だかヘソを曲げた様な顔をして拗ねていた。
「ちぇーつまんねーな。全く、こんな時くらい怒ってもいいんだぜ」
「そんなんだから、あなたモテないんじゃあないの?」
マーティに声を掛けたのはクラリス。彼女は地味なデザインの空色のドレスで今日の式の会場へと訪れていた。
そのマーティが着ていたのもハプタイと呼ばれる首飾りに黒色のスリーピースーツ。クラリスはああ言っていたが、こいつはこいつで中々格好が良いと俺は思う。
「ふ、二人とも何、喧嘩をしているんですかぁ~今日は折角のミス。いや、ミセス・スペンサーの晴れ舞台なんですよぉ~」
背後で緑色のスーツを着ておどおどした様子を見せているのはジャック。
かつて、学院の馬繋場で馬係を担当していた男だ。彼は卒業後、地元で馬を売る店に就職している。
今日は有給を貰ってここにやって来たらしい。
相変わらず彼の様子も変わらない。俺が懐かしさにかまけて笑っていると、俺の前に二人の男女が俺の控え室を覗き込む。
ソルドとかれんの二人組だ。二人は大人しい性格であり、卒業後には地元の大学に進学した後、地元で就職する事が殆ど確定していた。
恐らく俺とウェンディの次に結婚する相手であろうから、式の終わりにウェンディングブーケを渡すようにあいつに言わなければならんだろう。
俺が苦笑していると、宮殿のメイドにそろそろ式場に向かう様に指示を出された。
今日の俺の格好は黒色の上着にズボン。白色のドレスシャツ。そして、白色の蝶ネクタイと呼ばれる礼装用のネクタイだ。
俺の花婿衣装を着た女性陣がなぜか歓声を上げていたが、あれはどういう事だろう。
俺はそんな事を考えながら、仲間と共に式が行われる予定の宮殿の会場へと向かう。流石に我が国の王室が住まう宮殿だけあり、中々に広かった。
どうも、普段は何もない建物であるらしいが、今日の日のために主賓席が置かれ、その前に客たちが料理を楽しみ、俺たちを祝福する席が置かれていた。
俺は国王、王后両陛下並び、シンディ王女殿下の座る席とスペンサー公爵家の公爵夫妻の座る間の席に座らされた。
何でもない家柄の俺がこんな凄い家柄の二人に挟まれるとは大変恐縮な思いである。
俺はプレッシャーもそこそこに周りの人間を見渡していく。
さっきの友人たちだけではなく、ウェンディが二年前のレースの際に知り合った帝国のケイレブ・オーウェンという男にあのロジャー・キャロウェイなる射撃教師。
そして、学院の賞金稼ぎ部のメンバーにして公爵令嬢の護衛を司る白亜の騎士団面々以外にも王国の有力ともいえる貴族たちが席の上に座っていた。
無論、俺の両親や親戚も俺を祝福するためにここに集まっていた。
そして、近くの席にはウェンディの執事と使用人のピーターとボニーの二人が立っていた。
もう他の面々は揃っている。
後は少しだけ到着の遅れているウェンディを待つだけだ。
だが、いつまで立ってもウェンディはここには来ない。流石に集まった人たちも不安に思ったのか、席に座りながら、互いの顔を見合わせていく。
俺は自分に言い聞かせた。彼女が逃げるはずは無い。彼女が俺を捨てるはずは無いのだ、と。
そして、集まった一人が待ち切れずに立ち上がった時だ。広場の扉が開かれ、中に純白のウェディングドレスを血に染めた花嫁が現れたのだ。
俺は慌てて席を立ち、彼女の元へと向かう。俺はその場で力尽きた筈の彼女の体を抱き起こし、涙を流しながら彼女に向かって話しかける。
「ウェンディ!ウェンディ!頼む!死なないでくれ!頼む!」
やめろ、やめてくれ。神様、頼む。俺の大切な人をあの世に連れて行かないでくれ!
俺は神に縋りつつ、また意識を失い掛けている大切な女性に向かって叫び続ける。
そんな彼女は俺の頬を優しく撫でて言った。
「泣かないでケネス……私ね、あなたと出会えて幸せだったわ。賞金稼ぎ部に入れて、あなたと一緒になれてね……」
「そんなッ!そんな事を言わないでくれッ!ちくしょう、オレが……オレがお前の側に付いていたら……」
そうして悔やむ俺を突き飛ばし、ピーターや他の友人、それに国王、王后両陛下とシンディ王女が駆け寄り、ウェンディに話しかけていく。
彼女は消えゆく最後の命の輝きを最愛の人たちへと最後の挨拶を交わしていく。
俺はその場では何もできずにただ嗚咽を上げて涙を流していた。
結局、式は取り止めとなり、俺が歩む筈だった輝かしい将来は栄光に絶たれてしまう。
だが、有難い事に国王、王后両陛下もシンディ王女殿下も俺を責めはせず、仲間でさえも俺を責めようとはしなかった。
あの後の事を掻い摘んで話せば、あの後に世界を救った英雄の死は大々的に伝えられ、彼女の葬儀が執り行われた。
葬儀屋は彼女の死体を綺麗にし、生前着ていたウェディングドレスと同じものを彼女に着せ、彼女の愛用していた自動拳銃やら愛読書やらを棺の中に入れ、多くの国民の哀悼の元に彼女の死体は地下の冷たい場所に死んだ時の体をそのまま状態できるようにしておく。
これで彼女は王族の一員として埋葬される事になった。
当初こそ悲しみに覆われていたのだが、俺はそんな時に彼女が何というのかを思い出す。
彼女なら、俺を叱責するだろう。そんなものはケネスではないと。
だから、俺は懸命に彼女と学ぶ筈だった大学で必死に勉強し、エリートである代表保安委員として田舎町の警察署で務める事になった。
俺が保安委員となった理由というのは彼女が賞金稼ぎ部に入った時の思いを思い出したからだ。
彼女は弱い人を守るために賞金稼ぎ部の部員となり、人々を脅かす無法者やテロリストと命をかけて戦ったのだ。
だから、俺は彼女同様に命を掛けて人々を犯罪から守る職務へと就いたのだ。
俺は落ち込むのは辞めたが、田舎町に建てた大きな屋敷の庭の揺り椅子にもたれながら考える。
この場にウェンディが立っているのではないかと。
だが、それが一時的な幻覚に過ぎない事を俺はよく知っていた。
だから、現実に引き戻された時に思い出すのだ。
彼女がもういない事を。彼女のいない世界で過ごしているという事を。
そんな事を思いながら、椅子の上で目を覚ますと俺は自分の両頬を強く叩く。
かつての俺の思い、あいつならこの俺を見てどうするのかと言い聞かせて。
その後に俺はいつも太陽を見上げるのだ。あの大きく万物を平等に照らす太陽には勇気を付けられた。
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