上 下
14 / 33
ロックウェル一族の闘争篇

ロックウェル一族の計画

しおりを挟む
「まず、ロックウェル家の総資産は2017年時点で6千500億ドルとも言われている」
「6千500億ドル!?」
チャーリーは思わず目を丸くしてしまう。
「それだけあれば、もう何も稼がなくても良いだろうな、アラブの富豪の持つ資産が可愛く見えてしまうだろ?」
シャリム・ギデオンは意味深に微笑む。
「次にロックウェル家の保有会社だが、アメリカの10大会社のうちの6社に始まり、10大証券会社の6社。10大銀行の6行。GMにフォードにクライスラー、GE、IBM、エクソン、他にも世界各国の1千以上の多国籍企業群をその傘下に収めている。つまり、世界に冠たる巨大企業の全てがロックウェル家の保有資産なんだよ」
チャーリーはその言葉に全身を震わせていたが、アンドリューは別の事に関心があったようで、ただ黙って立っている。
「どうしたんだね、キミは?」
「いいえ、そのロックウェル家とやらは世界の支配者なのでしょう?なら、何故皇帝の名前を名乗らないのです?我が主人、サセックス王は世界を平定するものこそが、皇帝だといっていましたが……」
「いい質問だよ。アンドリューくんだっけ?キミも分かってきたようだ。ロックウェル家が何故世界皇帝の名前を名乗らないか、それはかつて倒した敵に民衆を扇動される事を恐れているのさ」
「民衆ですか?」
「ああ、ソビエト連邦の設立の裏にはロックウェル家が関わっていたが、その時に彼は容赦なくロシアの皇帝ツァーリーを殺す民衆の狂気を垣間見たのだろうよ。だからこそ、彼は束になった時の民衆の恐ろしさを知っている。だからこそ、世界皇帝を名乗らんのさ、民衆を恐れているから……」
シャリム・ギデオン氏の言葉は的を射ているような、射ていないような気がした。
少なくとも、チャーリーには魚の骨が引っかかった時のように、何からしらの違和感があり、何かを喋ろうとして、喉に引っかかっている。
「一つよろしいでしょうか?扇動する存在というのは誰なのでしょうか?」
アンドリューの質問にシャリム・ギデオンは大きく口元を緩めながら答えた。
「ロスチャイルド家に始まり、ロシア、中国政府、日本、華僑……数を挙げればキリがないな、デヴィット・ロックウェルは彼の代で、ロックウェル家を世界の実質的な王者へと導いたが、やり方が強引だったために晩年は姿の見えない暗殺者の存在に常に怯えていたそうだ」
「要するに彼には敵が多過ぎると?」
「その通りさ、デヴィットはもう少し穏やかな方法を取るべきだったな……お陰で、魔法なんぞに頼る必要が生じてしまったようだ」
シャリム・ギデオン氏は一息吐くためなのだろう。葉巻を吸って一服する。



ローランド・ロックウェルはその日はホワイトハウスを訪れていた。
内容は例のニューヨークの事件の事である。
ローランドは大統領執務室にて、大統領を詰問していた。
「さてと、お聞きしたいのですが、大統領……あなたは先日にアメリカ政府の秘密のためと、何を隠蔽したのでしょう?」
「仰る意味が分からないのだが、ミスター・ローランド」
大統領と呼ばれた、初老のボブカットの黒髪の男はたじろぎながらも、何とか言い訳をしている。
「ジャック・ピーターソン大統領! あまり図に乗らない方が良いですぞ、以前にも我々を邪魔した敵が大統領にいましてな、宿敵と呼ばれた彼は我々を苦しめてきました。ですが、我々はある方法を使って、彼を失脚させました。それはあなたもこの国の歴史を勉強した人間ならば、誰でも知っている有名な事件ですよ」
ジャック・ピーターソンと呼ばれた男の脳裏には「ウォーターゲート」という言葉が頭に浮かんでいる。
あの事件で、国内の宿敵であった、ニクソン大統領は失脚に追い込まれてしまったのだ。他ならぬロックウェル家の力によって。
「マスコミを使うのはあなた方の政敵降ろしの最適な方法という事ですな?」
「あくまでも、そんな手段があるんだと言っているだけですよ。それで、どうですか?ピーターソン大統領?その言葉を聞いた後のあなたの判断をお聞き願いたいのだが」
ジャックは何かを紛らわせたいのだろうか、両手を何度も大統領が使う机の上で揉み合わせている。
ジャックは八方塞がりという言葉の真意を悟ったような気がした。
「分かったよ。だが、この件はマスコミには内緒にしてくれ」
ジャックは秘書を呼び、ジャック・カルデネーロの事件が書かれたファイルを持って来させた。




「間違いないのだな?ローランド?」
「アメリカ大統領から直々に渡された資料ですよ。間違っている筈がありませんよ」
ローランドは勝利を確信したような笑みを浮かべている。
「あとはエミリオ・カルデネーロから、奴らの世界の秘密を聞くだけだな、ソビエト時代に拷問官を務めていたという男が警備にいただろ?」
「成る程、ソビエト仕込みの拷問を使えば、いくらマフィアでも……」
「そういう事だ。ついでに五大ファミリーの資産をも凍結させてもらうか」
エリックは心底楽しくてたまらないとばかりの笑みを浮かべている。
「彼らも何かを知っている筈ですからね」
ローランドはいよいよ、更なる世界支配への準備が整ってきたのだと思うと、笑みがこぼれ落ちてしまう。




「分かったッ!喋るよ! 」
エミリオ・カルデネーロがそう発言したのは、拷問を加えられたから、11時間が過ぎてからのことだ。まさに地獄の時間と言っても過言ではない。
どんな、悪どいファミリーでもこれ程の事はしないだろうと思わんばかりの酷い拷問を加えられ、ようやくエミリオは喋る気になったのだ。
「よし、待ってろよ、今すぐにあの人を呼んでくるからな……」
あの人?例の秘書の事だろう。ともかく、この事態から解放されるのなら、何でもよかった。エミリオは自然と目が垂れ下がってしまい、眠りこけてしまう。
だが、ロックウェル家の人間はエミリオが思うよりも、優しくはない。
彼は水を頭から被せられ、目を強制的に覚まさせられた。
「私を覚えておいでかな?ミスター・カルデネーロ」
その言葉を忘れるものだろうか。目の前の小太りの男こそ、自分をこんな場所に連れてきた張本人なのだから。
「忘れるもんかよ、クソ野郎……」
「まだ元気そうで、何よりです」
小太りの男はテレビドラマに出るようなサディストのような意地の悪い笑みをエミリオに向けていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

くすぐりジャック

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:639pt お気に入り:27

【1話完結】清貧なる夜、サンタは何も願えない。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

輪舞曲-黒と白のcaprice-

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

手袋

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

紡がれた物語に対する僕の異常な愛情。

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

黒歴史

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

しゃしょり座なのじゃ!✧‧˚

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

遠く離れた、この世界で。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:29

強面魔王子様は幼馴染婚した小動物系令嬢を溺愛しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:50

処理中です...