10 / 43
プロポーズ、そして、婚約へ
しおりを挟む
海沿いの街、そこで波の音を聞きながら、私と誠太郎さんは楽しく笑い合う。
ふと、何気なしに海を見ると、そこに何処までも続く水平線が見えた。
誠太郎さんは私に、缶入りのオレンジジュースを渡し、二人でそれを見つめていく。
誠太郎さんはそれを見ると、クスクスと笑って、
「この海は、地球が産まれた時から、あるんだよなぁ、多くの人々が、いや、多くの生き物がこれを見てきたんだと思うと、何か、思う事があるなぁ。今更何を言ってたんだと思うけどな」
と、感慨深そうに言った。そんな風に悪戯っぽく笑う、誠太郎さんがとても素敵に思えた。
そこで、一通りジュースを飲むと、海の近くにある個人経営の喫茶店へと向かう。
そこは、お爺さんの店主がおり、都会の喫茶店ではありえないような、犬も居た。
大きなセントバーナード。人懐っこい性格なのか、私に戯れて、近寄ってくる、犬の頭を撫でていく。
店主のお爺さんもお節介な人らしく、仕切りに私と誠太郎さんに色々と世話をやってくれた。
何処となく温かい喫茶店に、私は一生、ここに居たいと感じでいたらしく、暫くボーッとしている事に気付かされた。
誠太郎さんによって、肩を揺られ、私は現実の世界へと引き戻されていく。
現実に戻った、私は慌てて、ピザトーストと紅茶を、誠太郎さんはコーヒーとピラフを頼んだ。
お爺さんの出したピザトーストはチーズが垂れており、とても美味しかった。
誠太郎さんの頼んだ、ピラフも手作りの感が強い。都会のチェーン店では見られない見た目が面白い。
二人でゆっくりと食事を摂り、時に犬と戯れ、時に飲み物を口に付けながら、二人で他愛のない会話を交わしていく。
二人で会話を交わしていたら、いつの間にか、陽が沈んでいる事に気が付く。
窓から差し込む、陽の光に思わず見惚れていた。私がまたしても、惚けていると、誠太郎さんが私の手を取って、「帰ろう」と促す。
それに対し、私は黙って首を縦に動かす。
喫茶店を出た後は恋人らしく、肩を並べ、手を握って駅へと向かう。
そして、このまま二人で都会へと戻る筈……。
なのだが、今日ばかりはそうしたくはない。
私は誠太郎さんにもう一度だけ海を見たいとせがみ、彼を海へと連れて行く。
夕方の海は夕日が反射されていて、まるで、海自体が一つの芸術のように見える。
誠太郎さんもこの光景に見惚れている事に気が付く。
当分は帰ろうとは言わないだろう。だから、私は左手で、誠太郎さんの手を強く握り、右手でワンピースのポケットに隠していた指輪を取り出す。
「あのね、誠太郎さん!これを見てくれない!?」
誠太郎さんはそれを見て、言葉を失う。当然だろう。私が婚約指輪と思わしき、指輪を突き出しているのだから。
これを出せば、もう後には戻れない。私は二度と彼に会えないかもしれないという思いを抱えながら、この指輪を渡したのだ。
勇気を振り絞り、私はその後に続く言葉を口に出していく。
「お願いします!私と結婚してください!無茶なのは重々承知しています!けれども、本当にあなたが好きなの!」
だが、誠太郎さんは黙っている。黙って、水平線に沈みゆく夕陽を眺めている。
まだ足りないのだろうか。私は更に大きく声を振り上げて、
「あなたが求める事ならなんでもやる!待ち合わせにはあなたより早く来て、起きる時もあなたより早く起きる!毎日、美味しい朝食を用意するよ!それだけじゃあないよ!あなたが望むなら、東大にでも、ううん、ハーバードにだって行くよ!今から、猛勉強すれば、きっと行ける筈!それだけじゃあなく、私はあなたに生涯を尽くします!だから、だから、お願いします……ッ!私のッ!私の思いを受け取ってください!」
誠太郎さんは黙って海を見ていた。横から見上げるだけではその表情は分からない。
彼の決心は中々付かないらしい。黙って海を見つめているので、何も分からない。
その事が焦ったく感じてしまう。私の動脈が動く事に気が付く。
この後の彼からの返事で、私はどうなるのかは分からない。
私が意を決して、彼を見つめると、彼は困ったような顔を浮かべて、私に言った。
「すまない、少し考えさせてくれないか?この返事は後日でーー」
「駄目!この場で教えて!イエスなのか、ノーなのか!」
誠太郎さんはそれを聞いて、もう一度、視線を海へとやり、考え込む。
暫くの間、色々と考えていたらしく、唸る声が聞こえたが、すぐにこちらの方へと向き直って、両眼を大きく開けて、私の両手を強く握る。
「……本当にオレなんかでいいのか?オレは子持ちだし、既に四十は過ぎてる……そんな男と結ばれたらなんて知られたら、キミが親や友達になんで言われるかーー」
「親や友達なんて関係ない!私はあなたが好きなの!あなたと一緒になりたいんだよ……それっていけない事なのかな?」
誠太郎さんはそれを聞くと、黙って私の体を抱擁する。
「……いけない事なんかじゃないさ。オレもお前の事が好きだ」
「そ、それじゃあ!」
「あぁ、結婚しよう」
この日、私はもう死んでも良いと思った。
ふと、何気なしに海を見ると、そこに何処までも続く水平線が見えた。
誠太郎さんは私に、缶入りのオレンジジュースを渡し、二人でそれを見つめていく。
誠太郎さんはそれを見ると、クスクスと笑って、
「この海は、地球が産まれた時から、あるんだよなぁ、多くの人々が、いや、多くの生き物がこれを見てきたんだと思うと、何か、思う事があるなぁ。今更何を言ってたんだと思うけどな」
と、感慨深そうに言った。そんな風に悪戯っぽく笑う、誠太郎さんがとても素敵に思えた。
そこで、一通りジュースを飲むと、海の近くにある個人経営の喫茶店へと向かう。
そこは、お爺さんの店主がおり、都会の喫茶店ではありえないような、犬も居た。
大きなセントバーナード。人懐っこい性格なのか、私に戯れて、近寄ってくる、犬の頭を撫でていく。
店主のお爺さんもお節介な人らしく、仕切りに私と誠太郎さんに色々と世話をやってくれた。
何処となく温かい喫茶店に、私は一生、ここに居たいと感じでいたらしく、暫くボーッとしている事に気付かされた。
誠太郎さんによって、肩を揺られ、私は現実の世界へと引き戻されていく。
現実に戻った、私は慌てて、ピザトーストと紅茶を、誠太郎さんはコーヒーとピラフを頼んだ。
お爺さんの出したピザトーストはチーズが垂れており、とても美味しかった。
誠太郎さんの頼んだ、ピラフも手作りの感が強い。都会のチェーン店では見られない見た目が面白い。
二人でゆっくりと食事を摂り、時に犬と戯れ、時に飲み物を口に付けながら、二人で他愛のない会話を交わしていく。
二人で会話を交わしていたら、いつの間にか、陽が沈んでいる事に気が付く。
窓から差し込む、陽の光に思わず見惚れていた。私がまたしても、惚けていると、誠太郎さんが私の手を取って、「帰ろう」と促す。
それに対し、私は黙って首を縦に動かす。
喫茶店を出た後は恋人らしく、肩を並べ、手を握って駅へと向かう。
そして、このまま二人で都会へと戻る筈……。
なのだが、今日ばかりはそうしたくはない。
私は誠太郎さんにもう一度だけ海を見たいとせがみ、彼を海へと連れて行く。
夕方の海は夕日が反射されていて、まるで、海自体が一つの芸術のように見える。
誠太郎さんもこの光景に見惚れている事に気が付く。
当分は帰ろうとは言わないだろう。だから、私は左手で、誠太郎さんの手を強く握り、右手でワンピースのポケットに隠していた指輪を取り出す。
「あのね、誠太郎さん!これを見てくれない!?」
誠太郎さんはそれを見て、言葉を失う。当然だろう。私が婚約指輪と思わしき、指輪を突き出しているのだから。
これを出せば、もう後には戻れない。私は二度と彼に会えないかもしれないという思いを抱えながら、この指輪を渡したのだ。
勇気を振り絞り、私はその後に続く言葉を口に出していく。
「お願いします!私と結婚してください!無茶なのは重々承知しています!けれども、本当にあなたが好きなの!」
だが、誠太郎さんは黙っている。黙って、水平線に沈みゆく夕陽を眺めている。
まだ足りないのだろうか。私は更に大きく声を振り上げて、
「あなたが求める事ならなんでもやる!待ち合わせにはあなたより早く来て、起きる時もあなたより早く起きる!毎日、美味しい朝食を用意するよ!それだけじゃあないよ!あなたが望むなら、東大にでも、ううん、ハーバードにだって行くよ!今から、猛勉強すれば、きっと行ける筈!それだけじゃあなく、私はあなたに生涯を尽くします!だから、だから、お願いします……ッ!私のッ!私の思いを受け取ってください!」
誠太郎さんは黙って海を見ていた。横から見上げるだけではその表情は分からない。
彼の決心は中々付かないらしい。黙って海を見つめているので、何も分からない。
その事が焦ったく感じてしまう。私の動脈が動く事に気が付く。
この後の彼からの返事で、私はどうなるのかは分からない。
私が意を決して、彼を見つめると、彼は困ったような顔を浮かべて、私に言った。
「すまない、少し考えさせてくれないか?この返事は後日でーー」
「駄目!この場で教えて!イエスなのか、ノーなのか!」
誠太郎さんはそれを聞いて、もう一度、視線を海へとやり、考え込む。
暫くの間、色々と考えていたらしく、唸る声が聞こえたが、すぐにこちらの方へと向き直って、両眼を大きく開けて、私の両手を強く握る。
「……本当にオレなんかでいいのか?オレは子持ちだし、既に四十は過ぎてる……そんな男と結ばれたらなんて知られたら、キミが親や友達になんで言われるかーー」
「親や友達なんて関係ない!私はあなたが好きなの!あなたと一緒になりたいんだよ……それっていけない事なのかな?」
誠太郎さんはそれを聞くと、黙って私の体を抱擁する。
「……いけない事なんかじゃないさ。オレもお前の事が好きだ」
「そ、それじゃあ!」
「あぁ、結婚しよう」
この日、私はもう死んでも良いと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる