親父の再婚相手が俺の元カノだった件について

アンジェロ岩井

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お宅のお嬢さんと婚約を結ばせていただきます

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その日、強ばった表情を浮かべた、誠太郎さんを私は家に連れて来た。

いつも通り、外で待ち合わせしてからだが、今日はいつもと違い、私服を着てはいない。今日の彼の服装は挨拶に伺うという目的もあってか、初めて出会った時のようなスーツ。

ネクタイにも背広にも皺一つ見えない。
彼は入り口で深々と頭を下げる。
チャイムの音を聞いて、扉を開けた母は厳かな顔を浮かべていた。

私と誠太郎さんを交互に見比べて、フンと鼻を鳴らす。
それから、怒りのために、まだら模様になった頬を隠そうともせずに、一応は軽く頭を下げる。

それから、恨みがましそうな目で、誠太郎さんを見つめて、

「初めまして、あなたが娘がプロポーズされたという方ですね?既にウチの者は我が家に揃っております、どうぞ」

相手が一応は大人だからか、敬語を使ってはいるものの、言葉の端には怒りの感情が垣間見れた。

幾ら、母とはいえ初対面の人に失礼ではないだろうか。
母を嗜めようとしたが、誠太郎さんはそれを止め、深々と頭を下げてから、ピカピカに輝く革靴を玄関に置いて、家の中に入っていく。

私はその後を黙って付いていく。家の一階に存在する畳の敷き詰められた、大広間には既に二人目の兄の健司を除く全員が集まっていた。
部屋に入るなり、元樹が誠太郎さんを強く睨んで、

「ぼくたち家族の平穏な暮らしを邪魔しないでよ。それこそ、サイコロステーキ状にされても、文句は言えないよね?」

と、開口一番にその言葉を誠太郎さんに浴びせた。

「元樹ッ!な なんて失礼な事を言うの!?謝りなさいよ!誠太郎さんに!」

「姉さんは黙っててよ。これは、ぼくたち家族の問題だッ!」

殺気立った顔で詰め寄ろうとする元樹を静止しようとしたのだが、逆に誠太郎さんは元樹に向かって大きく頭を下げていく。

「……元樹くん。すまなかったね。キミのお姉さんを取ってしまって……だが、私とキミのお姉さんとは真剣なんだ……」

「ッ!あんた、姉の年齢を知ってるのか!?姉はまだ高校生なんだぞ!」

「やめなよ!あんたが心配する気持ちも分かるけど、あたしはもう結婚できる年齢なんだよ!だからーー」

「だから!?こいつが何をするのか、姉さんは分からないの!?」

元樹は切羽詰まった様子で、私に詰め寄っていく。それから、またしても、日本刀のように鋭い視線とその人差し指を誠太郎さんに向けて、

「ぼくは認めないッ!絶対にあんたなんか認めないからなッ!ぼくはーー」

「黙りなさい」

元樹の憎悪と嫌悪と怒りに見舞われた言葉は父の一言によって呆気なく遮られてしまう。

元樹は一瞬だけ、父を睨んだが、すぐに視線を逸らす。
そして、何か言いたげに歯を鳴らしてはいたものの、父には逆らえなかったのか、そのまま用意された自分の座布団の上に腰を下ろす。 

それから、父は部屋の隅の方に誠太郎さんの席をあてがい、そこに座らせていく。
その後、私は家族の席を勧められたが、それを断り、誠太郎さんの隣に座る。
端の席であり、誠太郎さんは姿勢を崩す事なく、私の家族と対峙していく。

家族の視線は誠太郎さんを容赦なく刺しており、普通の人ならば、視線を背けるところだが、彼は一切、視線を逸らさず、家族たちに向き合っていく。

本当に凄い人だ。私の中の尊敬の念と恋慕はますます強くなっていく。
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