12 / 43
お宅のお嬢さんと婚約を結ばせていただきます
しおりを挟む
その日、強ばった表情を浮かべた、誠太郎さんを私は家に連れて来た。
いつも通り、外で待ち合わせしてからだが、今日はいつもと違い、私服を着てはいない。今日の彼の服装は挨拶に伺うという目的もあってか、初めて出会った時のようなスーツ。
ネクタイにも背広にも皺一つ見えない。
彼は入り口で深々と頭を下げる。
チャイムの音を聞いて、扉を開けた母は厳かな顔を浮かべていた。
私と誠太郎さんを交互に見比べて、フンと鼻を鳴らす。
それから、怒りのために、まだら模様になった頬を隠そうともせずに、一応は軽く頭を下げる。
それから、恨みがましそうな目で、誠太郎さんを見つめて、
「初めまして、あなたが娘がプロポーズされたという方ですね?既にウチの者は我が家に揃っております、どうぞ」
相手が一応は大人だからか、敬語を使ってはいるものの、言葉の端には怒りの感情が垣間見れた。
幾ら、母とはいえ初対面の人に失礼ではないだろうか。
母を嗜めようとしたが、誠太郎さんはそれを止め、深々と頭を下げてから、ピカピカに輝く革靴を玄関に置いて、家の中に入っていく。
私はその後を黙って付いていく。家の一階に存在する畳の敷き詰められた、大広間には既に二人目の兄の健司を除く全員が集まっていた。
部屋に入るなり、元樹が誠太郎さんを強く睨んで、
「ぼくたち家族の平穏な暮らしを邪魔しないでよ。それこそ、サイコロステーキ状にされても、文句は言えないよね?」
と、開口一番にその言葉を誠太郎さんに浴びせた。
「元樹ッ!な なんて失礼な事を言うの!?謝りなさいよ!誠太郎さんに!」
「姉さんは黙っててよ。これは、ぼくたち家族の問題だッ!」
殺気立った顔で詰め寄ろうとする元樹を静止しようとしたのだが、逆に誠太郎さんは元樹に向かって大きく頭を下げていく。
「……元樹くん。すまなかったね。キミのお姉さんを取ってしまって……だが、私とキミのお姉さんとは真剣なんだ……」
「ッ!あんた、姉の年齢を知ってるのか!?姉はまだ高校生なんだぞ!」
「やめなよ!あんたが心配する気持ちも分かるけど、あたしはもう結婚できる年齢なんだよ!だからーー」
「だから!?こいつが何をするのか、姉さんは分からないの!?」
元樹は切羽詰まった様子で、私に詰め寄っていく。それから、またしても、日本刀のように鋭い視線とその人差し指を誠太郎さんに向けて、
「ぼくは認めないッ!絶対にあんたなんか認めないからなッ!ぼくはーー」
「黙りなさい」
元樹の憎悪と嫌悪と怒りに見舞われた言葉は父の一言によって呆気なく遮られてしまう。
元樹は一瞬だけ、父を睨んだが、すぐに視線を逸らす。
そして、何か言いたげに歯を鳴らしてはいたものの、父には逆らえなかったのか、そのまま用意された自分の座布団の上に腰を下ろす。
それから、父は部屋の隅の方に誠太郎さんの席をあてがい、そこに座らせていく。
その後、私は家族の席を勧められたが、それを断り、誠太郎さんの隣に座る。
端の席であり、誠太郎さんは姿勢を崩す事なく、私の家族と対峙していく。
家族の視線は誠太郎さんを容赦なく刺しており、普通の人ならば、視線を背けるところだが、彼は一切、視線を逸らさず、家族たちに向き合っていく。
本当に凄い人だ。私の中の尊敬の念と恋慕はますます強くなっていく。
いつも通り、外で待ち合わせしてからだが、今日はいつもと違い、私服を着てはいない。今日の彼の服装は挨拶に伺うという目的もあってか、初めて出会った時のようなスーツ。
ネクタイにも背広にも皺一つ見えない。
彼は入り口で深々と頭を下げる。
チャイムの音を聞いて、扉を開けた母は厳かな顔を浮かべていた。
私と誠太郎さんを交互に見比べて、フンと鼻を鳴らす。
それから、怒りのために、まだら模様になった頬を隠そうともせずに、一応は軽く頭を下げる。
それから、恨みがましそうな目で、誠太郎さんを見つめて、
「初めまして、あなたが娘がプロポーズされたという方ですね?既にウチの者は我が家に揃っております、どうぞ」
相手が一応は大人だからか、敬語を使ってはいるものの、言葉の端には怒りの感情が垣間見れた。
幾ら、母とはいえ初対面の人に失礼ではないだろうか。
母を嗜めようとしたが、誠太郎さんはそれを止め、深々と頭を下げてから、ピカピカに輝く革靴を玄関に置いて、家の中に入っていく。
私はその後を黙って付いていく。家の一階に存在する畳の敷き詰められた、大広間には既に二人目の兄の健司を除く全員が集まっていた。
部屋に入るなり、元樹が誠太郎さんを強く睨んで、
「ぼくたち家族の平穏な暮らしを邪魔しないでよ。それこそ、サイコロステーキ状にされても、文句は言えないよね?」
と、開口一番にその言葉を誠太郎さんに浴びせた。
「元樹ッ!な なんて失礼な事を言うの!?謝りなさいよ!誠太郎さんに!」
「姉さんは黙っててよ。これは、ぼくたち家族の問題だッ!」
殺気立った顔で詰め寄ろうとする元樹を静止しようとしたのだが、逆に誠太郎さんは元樹に向かって大きく頭を下げていく。
「……元樹くん。すまなかったね。キミのお姉さんを取ってしまって……だが、私とキミのお姉さんとは真剣なんだ……」
「ッ!あんた、姉の年齢を知ってるのか!?姉はまだ高校生なんだぞ!」
「やめなよ!あんたが心配する気持ちも分かるけど、あたしはもう結婚できる年齢なんだよ!だからーー」
「だから!?こいつが何をするのか、姉さんは分からないの!?」
元樹は切羽詰まった様子で、私に詰め寄っていく。それから、またしても、日本刀のように鋭い視線とその人差し指を誠太郎さんに向けて、
「ぼくは認めないッ!絶対にあんたなんか認めないからなッ!ぼくはーー」
「黙りなさい」
元樹の憎悪と嫌悪と怒りに見舞われた言葉は父の一言によって呆気なく遮られてしまう。
元樹は一瞬だけ、父を睨んだが、すぐに視線を逸らす。
そして、何か言いたげに歯を鳴らしてはいたものの、父には逆らえなかったのか、そのまま用意された自分の座布団の上に腰を下ろす。
それから、父は部屋の隅の方に誠太郎さんの席をあてがい、そこに座らせていく。
その後、私は家族の席を勧められたが、それを断り、誠太郎さんの隣に座る。
端の席であり、誠太郎さんは姿勢を崩す事なく、私の家族と対峙していく。
家族の視線は誠太郎さんを容赦なく刺しており、普通の人ならば、視線を背けるところだが、彼は一切、視線を逸らさず、家族たちに向き合っていく。
本当に凄い人だ。私の中の尊敬の念と恋慕はますます強くなっていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる