親父の再婚相手が俺の元カノだった件について

アンジェロ岩井

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大変に気まずい状況なのだが、どうすれば良いのだろうか

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「はい、あーん、誠太郎さん」

「あーん」

俺の前に広がる光景がもし、新婚で尚且つ幼い子供のいる家庭で繰り広げられているのならば、子供が二人のラブラブっぷりに苦笑いをしているところだろう。
或いは駄々をこねて、自分に構ってもらおうとするかもしれない。

だが、生憎と俺の年齢は高校生。そして、俺に新しく出来た母親も高校生である。
なので、駄々をこねるわけにもいかない。かと言って、苦笑するわけにもいくまい。

そんな俺に出来るのは、マリアナ海溝よりも深い溜息を吐き出す事だろう。
だが、二人は自分だけの世界に居るので、止めようがない。

全く、息子の思いも察してくれというものである。
いや、言ったところで無駄なのかもしれない。
俺は半ば諦めにも似た思いを抱えながら、重い足取りで二階の自分の部屋へと向かう。

一階で夫婦水入らずで過ごしているのを邪魔するのも悪いだろう。
この後、二人は夫婦の部屋で一緒に復習をするのだそうだ。
羨ましい限りだ。最も、正式な結婚まで、親父は涼子には手が出せないだろうが……。

俺は復習もそこそこに、漫画雑誌を手に取り、ベッドの上に横になっていく。
だが、手に取った漫画にはよりにもよって、メインキャラクターの恋愛シーンが描かれていた。

なので、俺は慌てて漫画雑誌を閉じ、ベッドの上から降りて、恋愛とは無関係な漫画を探していく。
だが、そうしていると、途端にまたあの二人のラブラブシーンが頭の中にフラッシュバックしてしまう。

よりにもよって、俺の親父と俺の元カノがイチャイチャしているシーンが俺の頭の中に鮮明に浮かんでいく。
あぁ、如月涼子よ、君はかつて、俺が愛を囁いたその耳には、今は親父が愛を囁いているのか。

何だろう。居ても立っても居られない気分になってしまう。
やむを得ず、俺は禁断の手段に打って出た。俺は格闘ゲームをセットし、それから、邪念をかき消すほどの大きな声を上げながら、ゲームのコンピューターをボコボコにしていく。

そして、全てを終えて、コンピューター相手に完勝を収めた際には、頭の中からはあの画像は消えてなくなっていた。
俺は大きな溜息を吐いて、そのまま徹夜でゲームを続けていく。

……事はできなかった。どうやら、夫婦水入らずの時間を楽しんだ後の涼子が俺の部屋に現れて、俺に注意したからだ。
お陰で、俺は風呂に入り、歯を磨き、パジャマに着替えねばならない。

全く、厄介な母親が来たものだ。俺はまた、大きな溜息を吐きながら、湯船に浸かっていく。
やはり、湯はいい。この世の汚れが全て落ちるような気がした。
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