親父の再婚相手が俺の元カノだった件について

アンジェロ岩井

文字の大きさ
34 / 43

兄貴と妹を和解させる事が俺の使命ですと悟りました

しおりを挟む
「と、いうわけなんだ。そのままの意味には取らないで、あれは単なる兄貴の怒りを表した曲で、別に深い意味はないぞ」

俺はなんとか、自分の意見を表し、涼子の誤解を解く。

「なーんだ。そういう事だったのか、いや、それでも、流石に誠太郎さんに向かって、あれは酷くない!?殆ど誹謗中傷だよ!」

「実際にそうじゃあないか!お前のような子に手をーー」

「出してないから!なんて事言うんだよ!」

涼子は珍しく怒っている。それはそうだろう。
一応は自分の愛する人が侮辱されたのだから。
先程とは異なり、舞台裏に移った事で、あまり多くの人に聞かれなかった事から、大きな声を出していたのだろう。妹の予想外の言葉に幸樹さんが戸惑っている。

「わ、分かったよ。桐生さんはお前に手を出してない。そ、それは認めよう。だがな、それでも、オレが気掛かりはある……」

すると、彼は一旦、目を閉じ、それから、目をカット開くと、夏の日の夜の心霊番組に出てくる幽霊のように、

「お前だッ!」と叫び、俺を指差す。
それには思わず、俺も自らを人差し指で指して、

「えっ、オレ!?」

と、戸惑った反応を幸樹さんに見せてしまう。
呆然としている俺に向かって、幸樹さんは声を上げて、

「そうだよ、お前だ!聞けば、お前は涼子と同じ高校の生徒だというじゃあないか!もし、お前が涼子を襲ったら思うと、おれは気が気で仕方がないんだ!」

いや、襲わないぞ。ただでさえ、俺の新しいお袋が元カノで気まずいのに、そんな大胆な事ができるか。
と、俺は心の中で、幸樹さんに突っ込みを入れる。
そして、なんとか自らの弁舌のみで言い訳を行い、その場を凌ぐ。

幸樹さんは納得しかねた表情を浮かべつつも、懐から三枚の紙を取り出す。
そこに映っていたのはマイクを持って、叫んでいる幸樹さんの写真。
俺が小首を傾げていると、幸樹さんがその紙の解説を行う。

「これは今度のオレのコンサートのチケットだよ。良かったら、今度、家族で聴きにきてくれ」

成る程、コンサートのチケットらしい。
俺も親父もチケットを受け取ると、そのまま顔を見合わせる。
だが、すぐにその後に二人で幸樹さんに向かって微笑んで、

「ありがとう。またコンサート行きますんで」

と、声を合わせて二人で礼を言う。
幸樹さんはそれを見ると、満足そうに鼻を鳴らして、仲間の元へと戻っていく。

「ふぅ~なんとか分かってくれて良かった」

「だねー、お兄ちゃんはねぇ、ロックやってる上に、あんな格好してるから誤解されやすいけど、基本はいい人だよー。ただ、姉さんに過保護過ぎるのが問題だけどね」

いや、一番、シスコンのお前が言うな。
俺の心の中で突っ込みが入っていく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...