白き翼の天使が支配するーーanother story〜女神の力を受け継ぎし天使はいかにして世界の救済を図るかーー

アンジェロ岩井

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大魔術師編

人類の罪

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人類に対する死刑宣告を終えた後、魔術師は悲しげな顔を浮かべながら額に手を当てて言った。

「……人間というのはつくづく愚かなものだ。自分たちの罪を忘れ、その過ちを見つめ直そうともしない」

「……何を言っているんだ?」

ブレードの声が険しくなる。だが、ブレードの怒声など耳に入っていないらしい。彼は胸に手を当てながら話を続けていく。

「この世界の人間の罪だ。かつてこの世界には多くの生物が生息していた。しかし、その全てが人間の手によって全滅させられた……ゴブリンもオーガもオークも、そして宙を縦横無尽に飛び回っていたドラゴンたちも……この世界の人間の手によって全滅させられた」

再び指を鳴らす魔術師。すると、私たちの周りに再び映像が浮かび上がっていく。

そこには人間そっくりであるが、その誰もが容姿端麗で尖った耳を生やしたエルフと呼ばれる異種族や全身を剛毛に覆われて小柄な体型でありながらも洞窟に住まい、優れた道具を育成するドワーフ。
空を自由自在に飛び、稀に自我を持ち人間を助ける個体やその自我が悪い方に働いて悪事を働くドラゴンという生き物の姿である。

「な、なんだ……こいつらは本当にこの地球上にいたのか?」

ブレードが唖然とした表情で周りを見つめていた。
その姿を見て得意げな顔を浮かべる魔術師。彼はブレードや私の仲間たちの動揺など無視をして説教を行う。

「お前たち人間が全滅させた生き物だ。目を逸らすな。こればかりではないぞ」

続いて、時に傭兵となって人間と肩を並べて戦い、時に盗賊となって人々を苦しめた豚の鼻のような顔を持つ人型の怪物、オークや少し前に遭遇した緑色の小鬼たちの姿が見えた。
次は土から精製され、その後自分たちで仲間たちを増やしていったというゴーレムと呼ばれる種族の繁栄と共存の姿が見せられた。

ここまでの映像は平穏無事で、見ていて特に害のないものであった。私からすれば教育テレビで動物の生態を見せられている感覚に近かいものであった。
だが、問題はその後であり、見せられる光景は地獄そのものであった。

そう人間と異業種との戦争が繰り広げられ、その姿が余すことなく見せられたのだ。
身体能力に優る異業種がこの戦争を生き残ったかと思われたのだが、勝者は人間の方であった。
勝因は魔法。それから多種よりも大勢の兵士を量産できるという数という武器で異業種を絶滅に追い込んだのである。

ここまでの上映が終わったところで、全員の顔が悲痛に満ちていた。取り分け優しいクリスには大魔術師によって見せられた光景は辛いものであったらしい。
膝を突いて野犬のように泣き崩れていた。その背中を優しく摩るティー。
ブレードやマリアも衝撃を受けてその場に立ち尽くしていた。オットシャックですら全てが終わると吐き気を堪えていたのか、口元を利き手ではない手で押さえていた。

ポイゾもやけに大人しい。他の仲間たちと同様に落ち込んでいるのだろう。
私はそのように考えていたのだが、彼はクックッと笑い始めた。やがてクックッという小さな笑いから始まった彼の笑いは大きなものへと変わっていったのである。

「な、何がおかしい!?」

「……嘘はよくないなぁ。これはお前が作ったものだろう?」

その言葉に仲間たちの視線がポイゾに向かっていく。その視線には期待が含まれていた。
ただ一人、複雑な表情になっている私を置いて、ポイゾは大魔術師に詰め寄っていく。

「大体、さっきぼくらが見たものが本当であるなど誰に証明できるんだい?キミが勝手に言って見せているだけじゃあないか。あの蛇といい、キミといい、ボクらに罪悪感を抱かせておいて、その隙に殺すつもりなんだろうけど、それはボクが許さない」

困惑する大魔術師を前にポイゾは剣ではなく拳を振るった。ポイゾの強烈な殴打を受けて地面の上に倒れ込む。
その姿を見下ろして剣を構えながら言った。

「さっさと死んでくれないかなぁ。キミのような人類の敵の姿なんて一秒だって視界に入れたくないんだ」

ポイゾの言葉に大魔術師は困惑していた。恐らく大魔術師は蛇の失敗に倣って、映像を見せればポイゾを含む討伐隊の面々は自分の主張を受け入れるはずだと思い込んでいたのだろう。
だが、ポイゾの中に含まれる憎悪がそれ以上に強力であったのだ。彼の中の憎悪は白を黒だと言い換えて、討伐隊の仲間たちに言い聞かせてしまったのだ。
ポイゾの言葉を聞いて、仲間たちが次々と立ち上がっていく。

「ポイゾの言うとおりだッ!あれはあいつがボクたちを騙すために見せた都合のいい幻覚に過ぎないッ!」

「危うく騙されるところだったねッ!この礼はさせてもらうよッ!」

ブレードとマリアが立ち直ったことによって他の仲間たちも立ち上がり、一斉に武器を構えていく。
それを見た魔術師は指を鳴らして映像を中断させる。
代わりに海からオークやゴブリンが出現し、港を登って私たちの前に現れる。

「……議論などたくさんだ。悪魔どもめ……根絶やしにしてやる」

彼の呪詛の言葉と共に海中から蘇ったと思われるオークやゴブリンたちが私たちに向かって襲い掛かっていく。
その全員が粗末ではありながらも鉄の鎧を着て、剣や槍といった武器を持っていることから兵士として召喚されたというのがわかる。

蘇ったオークやゴブリンたちを見ても、私たちはポイゾの主張に対して疑念を浮かべることもなく、魔法を纏わせた剣を構えて立ち向かっていく。

恐らくブレードたちの中では魔法で作り上げた眷属か何かだと思い込んでいるのだろう。
魔法を纏わせた剣は天使たち以外にも有効であったらしい。次々と異形の怪物たちが一刀両断にされて倒される。

魔術師はそれを見て、既存の兵力では足りないと判断したのだろう。
再び指を鳴らし、今度は海の中から別の異業種を呼び寄せる。

今度呼び寄せたのはドワーフやエルフといったオークやゴブリンよりも知性を感じさせられる生き物であった。
加えて、召喚された全員がゴブリンやオークよりも本格的な鎧と武器を身に付けている他に魂そのものは復活できないのが、虚な目で彷徨うばかりである。
その姿が不気味であるので、見るものを思わず萎縮させてしまう。

しかし、エルフが弓矢や長剣で装備していようとも、ドワーフが大きな斧や剣を利き手に構え、もう片方の手に円形の盾を構えていようとも、或いは魂のないアンデットであっても私たちには些細な問題ではなかった。
討伐隊の面々と剣を切り結び、しばらく戦った後で魔法によって容赦なく始末されていく。

奮戦して、順調に功を挙げる討伐隊の中ではブレードとポイゾが蘇った異業種の討伐の中では一番功績を誇っていた。

二人は普段の仲の悪さはどこへ消えてしまったのかというほどのコンビネーションを私たちに見せていた。
お互いに背中を預け、肩を並べて戦う姿は古い間の友人でもできないだろう。

私は感心してその姿を見つめていたのだが、その隙に真横から斧を振られたことに気がつき、慌てて自身の剣で防ぐ。
どうやらこの戦いは長引きそうだ。私は心の中で苦笑する。
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