女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二十八話 魔女の襲撃ーその⑤

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メアリーはヨロヨロと足を動かす。
「間違いよ、あたしが負けるなんて……あたしはブードゥの呪術師よッ!負ける訳がないんだわァァァァァァァ~!」
「だが負けた……それが結果さ……」
ヴィトは剣を引っ込め、側に近づいてきた構成員の男から、38口径のリボルバー拳銃を受け取り、ピストルの銃口を突きつけた。
「殺しはしない……ただ街からは追放だ……サウンズマウンテンという山に近い、いい街を知っているんだ……海がいいのなら、フロリダにいい街を知っている」
メアリーは微動だにしない。だが、ヴィトはそんな事は御構い無しとばかりに話を続ける。
「外国へ行きたいのなら、キューバへ行けばいい……あそこはいい街だ。カジノもプールもある。南米が嫌なら、ヨーロッパなりアジアなり好きなところへ行けばいい……費用は出してやる。だが、、足を踏み入れた瞬間に……そう思えばいい」
メアリーは悔しそうな表情を浮かべ、ただひたすらにヴィトを睨みつけるばかりだ。
「分かったか?なら、コーヒーくらい飲んでいけよ、何の御構い無しにお客様を返すのは失礼だからな」
その言葉にメアリーと捕まえられたメアリーの部下を除いて全員が笑った。
「連れて行け」
ヴィトの素っ気ない口調で呟く命令にも構成員の男は不快な顔を浮かべる事なく、無言でメアリーの部下たちを引っ立てていく。一件落着かとヴィトが退出しようとした時だった。
「まだよッ!まだ終わっていないわッ!」
メアリーが石槍を動かし、ヴィトに矛先を向ける。
「無駄なことをして命を減らしたいのか?おれは……と言っているんだぜ」
「……あなたは知らないのよ、あたしの執念をッ!」
次の瞬間に雄叫びが聞こえた。ヴィトが何事かと空中を見上げると、そこには、巨大な青色のドラゴンが飛んでいたのだ。
「あれがお前の切り札なのか?」
ヴィトとファミリーの構成員はまるで1947年にロズウェルでUFO未確認飛行物体を目撃した農夫のように唖然とした表情を浮かべていた。
「そうよ、わたしの最後の砦よッ!」
メアリーはそんなヴィトを見下すような笑みを浮かべ、指をパチンと鳴らす。
すると、ドラゴンがメアリーの側に来て、メアリーをドラゴンの背中に乗せた。ドラゴンはメアリーを乗せ、遥か彼方の上空へと上昇していった。
「テメェ!逃げる気かッ!」
部下の一人が空中にショットガンを構えたが、ヴィトは部下の肩に手を置き、静止させた。
「いいんだ。彼女は一人で逃げてくれた……我々が旅費を出す手間が省けたんだ」

ヴィトはそれから、すぐさま部下にメアリーの部下を屋敷に拘束するように急いで命令した。瞬く間にメアリーの部下たちは連行されて姉妹、後はジョナサン一人という状況になった。
「あと一人だ」
手下の一人がジョナサンを手持ちのライフル銃の銃口で突きながら言う。
「よせよ、暴発すると危ない……銃で人を突くのはあまり好きじゃあないな」
部下はヴィトの言葉に呆れるような声で答えた。
「あんたといい、ドン・カヴァリエーレといい、考え方が古いよなぁ~麻薬や暴力は禁止だなんて」
「悪いか?ギャングやマフィアから仁義を無くしちまえば、ただの犯罪集団だろ?最も大衆やFBIからすれば、どちらも変わらんかもしれんが、それでも無いよりはあった方がいい」
「先代の影響かい?それともあんたの持論?」
部下はヴィトにキューバ産の上等のタバコを手渡しながら尋ねる。
「どちらもだ」
ヴィトはタバコを受け取り、それをゆっくりと味わう。
「ともかくジョナサン・トランシーノの拘束を急いでくれ」
ヴィトは腕を押さえられ、呻き声を上げているジョナサンを指差す。
「分かった。さぁこ……」
部下が連行しようとした時だった。部下の目の前にドラゴンが現れたのだ。
「まだ諦めていなかったのか……」
ヴィトはドラゴンの背中に乗っているメアリーに38口径のリボルバー拳銃を向ける。
ヴィトはドラゴンを前にして怯んだのか、引き金を引き手が震えてるのに気がつかなかった。
動揺のためにヴィトは狙いを外してしまう。ビィィィンという反動がヴィトの手にジリジリと伝わってくる。
「ぐっ、外してしまったのかッ!」
ヴィトは拳銃をしまい、剣を取り出す。
浮遊魔法スカイアップ・マジックを使い、その場でうずくまっているドラゴンの上を飛び越え、背中に飛び乗り、ポワカ魔女の元へと向かう。
「あらあら、わたしをそこまで倒したいのかしら?」
メアリーは石槍の矛先をヴィトに向ける。
「その通りさ、これが最後のチャンスだぜ、おれにこの場で殺されるか、それともこの街を去るか……好きな方を選びな」
メアリーは指をパチンと鳴らす。するとドラゴンは再び上空へと上昇した。
「それがお前の答えだな?」
ヴィトは剣を構えてメアリーに突っ込む。
剣と石槍の先端が再び火花を散らす。
「ウォォォォォォ~!」
「甘いわよッ!」
メアリーはヴィトの猛攻を退け、背後へと弾き飛ばす。ヴィトはその衝撃で地面へと落ちそうになったが、寸前のところを足で止めた。
「危なかったよ、後一歩で即死だった」
「そう、あたしはそのまま落ちてもらいたかったけれど」
メアリーは見下すような目で呟く。
「そいつは随分と笑えない冗談だな」
ヴィトはようやく下界と背中の境目のあたりを脱し、背中の三分の一くらいのところにまで戻っていた。
「石槍はもうゴム状にしないのかい?」
ヴィトのようやく出した言葉は皮肉と嫌味に満ち溢れていた。
「考え中……とだけでも言っておきましょうか」
「つまり、あんたが言いたいのは、1930年代のフォード型の自動車が淘汰されたように、あんたは次々と新しい黒魔術を見せるたびに旧来の魔法は使わなくなるという事だろ?」
ヴィトの比喩表現が可笑しかったのか、メアリーはくすりと笑う。
「そうね、でもわたしは古いものを壊して次々と新しいものを買う乱暴な子供じゃあないわ、わたしは古いものも大切にする人なの」
ヴィトは「そうだな」と言ったが、その顔は笑っていなかった。
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