女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

世界審判教の乱心ーその②

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結局ホワイトハウス爆破事件の犯人はその日の夜になっても発覚する事はなかった。
「こちらABCテレビです !私は今ですね、爆発があったと思われるホワイトハウス前にいます !」
紺色のスーツを着た中年のメガネをかけた男性がテロの様子を視聴者に伝えるべく大声で叫んでいる。
「現在、FBIならびにCIA、そしてアメリカの全ての警察を動員し、捜索に当たらせていますが、犯人の正体は一向に掴めておりません !」
男性のインタビューが現場で叫んでいる途中に一枚の紙が入ってくるのを見た。
「ただいまですね !アメリカ政府から緊急連絡がありました !アメリカ政府はこの事件をギャング撲滅宣言に反対する暴力団による犯行だと断定し、国内の全てのギャングのボスたちに逮捕状を発令しました !」

カリーナ・ルーシー・カヴァリエーレにとって厄日を上げるのならば、この日において他ならない。
折角苦労してエンパイア・ハミルトン並びに各地の中華街を牛耳れたというのに、その帰りの車で警察の車に呼び止められるとは。
「ミス・カヴァリエーレ !あなたに逮捕状が出ています !あなたには法律によって黙秘権が認められます。これによりあなたは全ての不利な証言を拒否する事が認められます !」
オスカー・マーロンはここぞとばかりに黒のリムジンから出てきたルーシーに手錠をかける。
「わたしの罪は何なの?」
ルーシーは自分の手に手錠をかけた捜査官の男を半ば睨みつけるように見つめる。
「今朝のホワイトハウス爆破事件の容疑者としての罪ですね、あなたがこの街のギャングのボスだという事は……いや、サウス・スターアイランドシティーまでも牛耳るボスだというのは、周知の事実です !どうか、ご同行願います !」
オスカーの問いにルーシーは諦めたように手錠にかけられ、警察署へと連れられて行こうとする。
だが、これに納得がいかなかったのは、相談役コンシリエーレであるヴィトであった。
「待ってくれ、おれ達はついさっきまでエンパイア・ハミルトンの中華街に居たんだ。どうやってホワイトハウスを爆発するんだ?」
ヴィトの言葉にオスカーは口元を緩ませて答えた。
「我々はこの女が、ワシントンに待機していた部下に命令させ、ホワイトハウスの入り口を爆発させたと睨んでいます !」
ヴィトはオスカーを殴りたい気持ちで一杯になった。
だが、そんな事をする程ヴィトも愚かではない。我慢もできないそこら辺のチンピラとは違うのだ。
「もし、後に彼女が無実だと分かったのならば、我々はあなたを許さないでしょうね、必ず……例えあなたがヨーロッパや中国に逃げようとも、追い詰めてみせますよ」
ヴィトは静かだった。だが、その人瞳にオスカーへの憎悪の炎が宿っていたのは確かな事だった。
「分かりましたよ、もしミス・カヴァリエーレが無実だと分かれば、私は即座にこの街から出て行きましょう !二度とカヴァリエーレ・ファミリーに楯突かない事もお約束致します。ですが、仮に彼女が有罪だった場合は、カヴァリエーレ・ファミリーは全てにおいて法的な処置を受けてもらいますよ、分かりましたね?」
オスカーの言葉にヴィトは即答しかねていた。ルーシーはそんな方法は使わないだろう。仮に血の掟オメルタをアメリカ政府に示すとしても、爆弾なんて派手な真似はしない筈だ。
ルーシーなら、何か別の方法を考えただろう。ヴィトのこの考えには彼女と過ごしてきた日々が影響しているのは明らかであったが、仮に日々が無かったとしても、ルーシーなら、そんな方法を取らない事はファミリーの人間なら、いやニューホーランドの人間なら誰でも分かっているだろう。
「他に逮捕状が出た人間は?」
ヴィトの問いにオスカーは事務的な口調で答える。
「あなた方の言われるコミッションを始め、他の街のマフィアのボスにも逮捕状は出ていますよ、さぁ、来てもらいましょうか」
ルーシーは抵抗する事なく、警察車両へと乗り込む。

ヴィトは拳を握りしめながらその様子を見送ると、運転手にダウンタウンのマーク法律事務所に行くように命令した。
車が、事務所の前に着いた瞬間にヴィトは急いで階段を駆け上がり、事務所の門を勢いよく叩く。
「ジョー !ジョー !早く出てきてくれ !頼むよ、早く……」
ヴィトの言葉が通じたのか、驚いた顔でジョセフが扉を開ける。
「どうしたんだい、ヴィト……」
ヴィトは落ち着けるために懐からタバコを一本取り出した後に、手を震わせながら吸い、それからジョセフに全てを話す。
「何だって !ルーシーがッ!FBIに連れ去られただって!?」
ジョセフは始めヴィトの言葉が信じられなかった。
だが、滅多に狼狽しない彼の姿からそれは真実だと確信する。
「よし、その捜査官の話からすると、他のドン首領たちも同様に連行されたんだね?」
ジョセフの質問にヴィトは反論しないという消極的な方法で同意した。
「よし、他のファミリーの顧問弁護士を集めて、FBIならびにアメリカ政府へと抗議しよう。今回の捜査は違法捜査だという事を知らしめてやるんだッ!」
いつも受け身な彼がここまで積極的になるのも珍しいなとヴィトは感じた。余程、ルーシーの逮捕がショックだったのだろう。
「どうやってやるんだい?」
「決まっているだろう !」とジョセフは子供が分かっている質問を分からないフリをして聞いてくる様子を一蹴する親のように答えた。
「テレビだよ !テレビ !今やテレビは新聞やラジオを抑えて市民の発信源No.1だぜッ!ここから、ルーシーの無実を伝えていくんだッ!大衆にッ!」
ジョセフの言葉にヴィトは意見してみた。
「もし仮にだが……ルーシーが警察に負けて、偽りの自白をしたらどうするんだい?」
ヴィトの質問にジョセフは口元を緩めてみせる。
「やだなぁ、キミも分かっているだろ?彼女はそんな事では口を割らないよ、でも仮に割ったとしたら、裁判で陪審員と判事に同情を買わせるんだ !」
「同情?」
「そうさッ!あの美しい女性が手錠で繋がれている姿や裁判のために移送されている姿を見たら、同情を集められる筈だよ !」
ジョセフの言葉にヴィトは思わずため息を吐く。
「おいおい、キミのいう事は極論だぜ」
「どうしてだい?」
「だってキミのその意見に従って、陪審員や判事の同情を買えなかったら終わりだぜ、だから外から無罪を呼びかける方法しか無いと思うけどな」
「確かにぼくの考えが浅すぎたよ」
ジョセフは申し訳なさそうに頭を下げた。
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