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序章:旅立ち
1.美少女をおにぎりにして食べるのが僕のいきがいである。
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美少女をおにぎりして食べるのが僕の生きがいである。
コレが人間だったら大騒ぎになることだが、自分は魔族として生を受けたため問題にはなっていない。
「おきなさい。おきなさい 私のかわいいおにぎり小僧や…」
ベッドで目を覚ますと、母上の優しい顔が映る。
「おはよう、おにぎり小僧。もう朝ですよ」
十七歳になって初めての朝は晴天、サンサンとした太陽が目の裏を焼いていた。
「おはようございます。母上」
暖かな日差しと声に包まれながら布団をめくりあげる。
そして窓際に乗り出して部屋の二階窓から城下を見下ろした。
魔王城を中心に作られた城郭都市の中では、今日も様々な魔族が賑わいを見せている。
その中でも一際騒がしいのは魔王像広場の前だ。
魔王像前では市が開かれ、人々の往来も激しい。
そしてそれとは別に騒がしい場所がもう一カ所あった。
「今日はとても大切な日。あなたが魔王城へ勅命を受け取りにいく日だったでしょ」
母の言葉に耳を傾けながら、目線を魔王城へと向ける。城は都市中央部の高い岩山の頂にあった。
そこでは主に軍の関係者や為政者の往来が盛んにおこなわれており、まだ朝だというのに、魔王城につながる道には馬車の渋滞が絶えないでいた。
「うん。でも、ここからの景色も見納めだから…もう少し見ておきたかったんだ」
乗り出した体を部屋の中に戻ると、寝巻から軍服に着替えて外出の準備を済ませる。
「この日のためにお前を立派な魔族として育てたつもりです―――さあ。母さんについていらっしゃい」
母上に導かれて中央通りまで歩いて行くと、緊張のせいか時間はあっという間に過ぎていった。
あがり症というワケではないけれども、今日は特別だった。
魔王城へと向かう緊張のせいか、いつも見ている風景でさえ新鮮に見えてくる。
「謹慎明けでも緊張することはないわ。さぁ、行きましょう」
嬉しいような、寂しいような、そんな複雑な気持ちが母上の声音から伝わってくる。それに気づかないふりをしながら通りを歩いていると、道行く人々の中には軽い会釈をする人がいた。そんな人たちにお辞儀を返しながら歩いていくと、すぐに魔王城の城門前に到着した。
城の重厚な扉が、心に不安を募らせる。
「魔王様にちゃんと挨拶をするのですよ。さぁ行ってらっしゃい」
母上が衛兵に一声かけたら、彼らは敬礼して重い城門を開けてくれた。横には長蛇の列を作る馬車があり、その御者と馬車の中に者たちが僕を不審な目で見ていた。
「ようこそ、おにぎり元帥の御子息どの! 魔王様がお待ちしております! 」
獅子顔の二人は尻尾を振りながら僕を中へと招き入れた。
「あまり気を使わないでいただきたい」
所詮親の七光りだ。ずっと待っていた人たちを置いて、検査もせずに通っていいはずがない。そう思って、両手を上げて身体検査だけでもするように門番に促した。
…しかし。
「そうはいきませんとも」
門番の一人はそう笑って、ろくに検査もせずに僕を城内へと案内した。
そうやって媚びへつらわれても、僕は貴方に何もお返しできない。
だから止めていただきたい…とは言えなかった。
―――父上は偉大な魔族だった。
しかし『勇者』という傑物との戦い敗れ、今は生死不明となっている。
そんな父を偉大と思う反面、同じ轍を踏みたくはないと思う自分がいた。我ながら親不孝者だ。
「失礼します」
魔王城に訪れても、いろんな姿形をした魔族が僕に会釈をしてくる。
そして偉大な父の話を聞かない場所もなかった。
「ややっ、コレはおにぎり元帥の御子息どの。ご機嫌いかがでございますか」
魔王様に使える側近までもが敬意をもって接してくるので対応に困らされた。
分かってやっているなら悪質だ。
分かっていないならさらに悪質だけど。
「お気遣いいただき…ありがとうございます」
だから僕は魔王城が嫌いだ。みんなが僕を見ようとしない。
父の威光で皆が盲目になり、まるで自分の存在が薄れていくような気がして息苦しさすら感じる。
「フゥ…やっとついたか」
玉座の間に繋がる扉の前で、寝ぐせを少しだけ治す。
三頭身である僕の頭はおにぎりのような三角頭で、顔には海苔がついている。
それがペリッと捲れていて、そこがどうやら父親似らしい。
らしい、というのはあまりあの人についての記憶がないせいだ。ずっと戦場にいたようで、彼の戦果報告だけが家には届けられていた。
おっと…父上のことを考えるとつい、長く考え込んでしまう。
溜息をつくと、海苔をちゃんとピッピッと正して、メクレが無いか触って確認をした。
魔王城につく前に何度も確認したから大丈夫だと思うけど、そうしていないと落ち着かなかったのだ。それから少し扉の前でため息をついてから、前に立つ衛兵に合図を送った。
「おにぎり元帥の御子息、おにぎり小僧様です」
衛兵はそう簡単に説明してから扉を開いた。
コレが人間だったら大騒ぎになることだが、自分は魔族として生を受けたため問題にはなっていない。
「おきなさい。おきなさい 私のかわいいおにぎり小僧や…」
ベッドで目を覚ますと、母上の優しい顔が映る。
「おはよう、おにぎり小僧。もう朝ですよ」
十七歳になって初めての朝は晴天、サンサンとした太陽が目の裏を焼いていた。
「おはようございます。母上」
暖かな日差しと声に包まれながら布団をめくりあげる。
そして窓際に乗り出して部屋の二階窓から城下を見下ろした。
魔王城を中心に作られた城郭都市の中では、今日も様々な魔族が賑わいを見せている。
その中でも一際騒がしいのは魔王像広場の前だ。
魔王像前では市が開かれ、人々の往来も激しい。
そしてそれとは別に騒がしい場所がもう一カ所あった。
「今日はとても大切な日。あなたが魔王城へ勅命を受け取りにいく日だったでしょ」
母の言葉に耳を傾けながら、目線を魔王城へと向ける。城は都市中央部の高い岩山の頂にあった。
そこでは主に軍の関係者や為政者の往来が盛んにおこなわれており、まだ朝だというのに、魔王城につながる道には馬車の渋滞が絶えないでいた。
「うん。でも、ここからの景色も見納めだから…もう少し見ておきたかったんだ」
乗り出した体を部屋の中に戻ると、寝巻から軍服に着替えて外出の準備を済ませる。
「この日のためにお前を立派な魔族として育てたつもりです―――さあ。母さんについていらっしゃい」
母上に導かれて中央通りまで歩いて行くと、緊張のせいか時間はあっという間に過ぎていった。
あがり症というワケではないけれども、今日は特別だった。
魔王城へと向かう緊張のせいか、いつも見ている風景でさえ新鮮に見えてくる。
「謹慎明けでも緊張することはないわ。さぁ、行きましょう」
嬉しいような、寂しいような、そんな複雑な気持ちが母上の声音から伝わってくる。それに気づかないふりをしながら通りを歩いていると、道行く人々の中には軽い会釈をする人がいた。そんな人たちにお辞儀を返しながら歩いていくと、すぐに魔王城の城門前に到着した。
城の重厚な扉が、心に不安を募らせる。
「魔王様にちゃんと挨拶をするのですよ。さぁ行ってらっしゃい」
母上が衛兵に一声かけたら、彼らは敬礼して重い城門を開けてくれた。横には長蛇の列を作る馬車があり、その御者と馬車の中に者たちが僕を不審な目で見ていた。
「ようこそ、おにぎり元帥の御子息どの! 魔王様がお待ちしております! 」
獅子顔の二人は尻尾を振りながら僕を中へと招き入れた。
「あまり気を使わないでいただきたい」
所詮親の七光りだ。ずっと待っていた人たちを置いて、検査もせずに通っていいはずがない。そう思って、両手を上げて身体検査だけでもするように門番に促した。
…しかし。
「そうはいきませんとも」
門番の一人はそう笑って、ろくに検査もせずに僕を城内へと案内した。
そうやって媚びへつらわれても、僕は貴方に何もお返しできない。
だから止めていただきたい…とは言えなかった。
―――父上は偉大な魔族だった。
しかし『勇者』という傑物との戦い敗れ、今は生死不明となっている。
そんな父を偉大と思う反面、同じ轍を踏みたくはないと思う自分がいた。我ながら親不孝者だ。
「失礼します」
魔王城に訪れても、いろんな姿形をした魔族が僕に会釈をしてくる。
そして偉大な父の話を聞かない場所もなかった。
「ややっ、コレはおにぎり元帥の御子息どの。ご機嫌いかがでございますか」
魔王様に使える側近までもが敬意をもって接してくるので対応に困らされた。
分かってやっているなら悪質だ。
分かっていないならさらに悪質だけど。
「お気遣いいただき…ありがとうございます」
だから僕は魔王城が嫌いだ。みんなが僕を見ようとしない。
父の威光で皆が盲目になり、まるで自分の存在が薄れていくような気がして息苦しさすら感じる。
「フゥ…やっとついたか」
玉座の間に繋がる扉の前で、寝ぐせを少しだけ治す。
三頭身である僕の頭はおにぎりのような三角頭で、顔には海苔がついている。
それがペリッと捲れていて、そこがどうやら父親似らしい。
らしい、というのはあまりあの人についての記憶がないせいだ。ずっと戦場にいたようで、彼の戦果報告だけが家には届けられていた。
おっと…父上のことを考えるとつい、長く考え込んでしまう。
溜息をつくと、海苔をちゃんとピッピッと正して、メクレが無いか触って確認をした。
魔王城につく前に何度も確認したから大丈夫だと思うけど、そうしていないと落ち着かなかったのだ。それから少し扉の前でため息をついてから、前に立つ衛兵に合図を送った。
「おにぎり元帥の御子息、おにぎり小僧様です」
衛兵はそう簡単に説明してから扉を開いた。
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