2 / 64
序章:旅立ち
2.魔王様とクロックドムッシュ
しおりを挟む
玉座の間には、国の重役たちが沈黙のまま顔を並べて銅像のように立っていた。たとえ誰か一人死んでいたとしても、今の緊張下ではたぶん誰も気づけないだろう。
それぐらい重たい空気の中、魔王様の御前まで絨毯の上を歩いた。
絨毯の両端にはラッパを持って静止する音楽隊の姿がある。
いつ頃演奏が始まるのだろうか。きっと鳴り始めは結構うるさいだろうから、耳は塞いでおきたいな…。
そんな無理な願いを胸に抱きつつ片膝をついた。
「よく来てくれた。伝説の英雄の息子、おにぎり小僧よ」
魔王様がそう言うと、リハーサルでもしていたかのように、音楽隊のラッパがヒュンと音を立てて持ち上がった。
く、くる!
「パパパパーン♪パパパパーン♪パパパパーン♪パーン~~~♪」
音楽隊の豪華な音色が玉座の間を包み込んだ。ワクワクするような冒険のテーマソングが大音量で耳に流れ込んでくる。
この音楽を聞いた後に、父は死地に赴いたのだろう。
だとすれば、祝福というより呪いを掛けられているような気がしないでもない。そんな音楽に耐えていると、ピタッと音楽が止まった。
「ココに来たということは、決心はついたと考えて良いんだな」
魔王様の声は低く、重みを感じさせる。そして大きな肉体と怖い顔は、一度見たら忘れられない。
「勅命を受け取りに参りました」
音楽が鳴りやんだせいか、物の少ない玉座の間に声が反響する。そして重鎮たちの誰かが唾を飲む音が聞こえた。
この場にいる多くの魔族の嫉妬の視線が突き刺さるようだ。
「うむ。クロックドムッシュ、説明を」
魔王様の言葉に応じて、コウモリの翼を持ったオオカミ男のクロックドムッシュが横に立って説明を始めた。
彼の持つオオカミ男特有のギラリとした釣り目は、獲物を求めて百戦錬磨の猛者を彷彿とさせるが、実際はその反対で、若くして事務処理のみで魔王様の側近となった、いわゆるエリートである。
その才を認められ最近では人材育成にも回されていたようだが、戻って来たらしい。
「かしこまりました」
クロックドムッシュは静かに羊皮紙に書かれた資料をめくり、重要なところに赤いマークを印すと僕に渡して見せた。
マーク部分には、『復興大使』という文字と、『食糧問題の解決』が囲まれている。
「おにぎり小僧には今日より復興大使となり、勇者によって破壊された魔族の村を復興する旅に出て貰う」
「復興の旅……」
「復興には多くの建材や食料が必要になる。しかしおにぎり小僧、貴殿は違う。そうだな? 」
魔族にはそれぞれ個別に一つ、能力を持つ。クロックドムッシュはそのことを言っているのだろう。
「はい、僕なら生物をおにぎりにできます」
おにぎりは栄養価の高い食事だ。この力で復興の基盤である衣食住の食を確保しようという算段なのだろう。
それぐらい重たい空気の中、魔王様の御前まで絨毯の上を歩いた。
絨毯の両端にはラッパを持って静止する音楽隊の姿がある。
いつ頃演奏が始まるのだろうか。きっと鳴り始めは結構うるさいだろうから、耳は塞いでおきたいな…。
そんな無理な願いを胸に抱きつつ片膝をついた。
「よく来てくれた。伝説の英雄の息子、おにぎり小僧よ」
魔王様がそう言うと、リハーサルでもしていたかのように、音楽隊のラッパがヒュンと音を立てて持ち上がった。
く、くる!
「パパパパーン♪パパパパーン♪パパパパーン♪パーン~~~♪」
音楽隊の豪華な音色が玉座の間を包み込んだ。ワクワクするような冒険のテーマソングが大音量で耳に流れ込んでくる。
この音楽を聞いた後に、父は死地に赴いたのだろう。
だとすれば、祝福というより呪いを掛けられているような気がしないでもない。そんな音楽に耐えていると、ピタッと音楽が止まった。
「ココに来たということは、決心はついたと考えて良いんだな」
魔王様の声は低く、重みを感じさせる。そして大きな肉体と怖い顔は、一度見たら忘れられない。
「勅命を受け取りに参りました」
音楽が鳴りやんだせいか、物の少ない玉座の間に声が反響する。そして重鎮たちの誰かが唾を飲む音が聞こえた。
この場にいる多くの魔族の嫉妬の視線が突き刺さるようだ。
「うむ。クロックドムッシュ、説明を」
魔王様の言葉に応じて、コウモリの翼を持ったオオカミ男のクロックドムッシュが横に立って説明を始めた。
彼の持つオオカミ男特有のギラリとした釣り目は、獲物を求めて百戦錬磨の猛者を彷彿とさせるが、実際はその反対で、若くして事務処理のみで魔王様の側近となった、いわゆるエリートである。
その才を認められ最近では人材育成にも回されていたようだが、戻って来たらしい。
「かしこまりました」
クロックドムッシュは静かに羊皮紙に書かれた資料をめくり、重要なところに赤いマークを印すと僕に渡して見せた。
マーク部分には、『復興大使』という文字と、『食糧問題の解決』が囲まれている。
「おにぎり小僧には今日より復興大使となり、勇者によって破壊された魔族の村を復興する旅に出て貰う」
「復興の旅……」
「復興には多くの建材や食料が必要になる。しかしおにぎり小僧、貴殿は違う。そうだな? 」
魔族にはそれぞれ個別に一つ、能力を持つ。クロックドムッシュはそのことを言っているのだろう。
「はい、僕なら生物をおにぎりにできます」
おにぎりは栄養価の高い食事だ。この力で復興の基盤である衣食住の食を確保しようという算段なのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる