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1章前半コボルト村
19.ともぐい
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「魔王様! 何やら森が騒がしくなってきました! 」
作業も終盤に差し掛かってきたのか、魔王様は顔を上げて森のざわめきにそば耳を立てられた。
「もう血の臭いを嗅ぎつけたか? ……それにしてはずいぶんと早いようだが」
そう言って魔王様はしゃがんだまま、完成したものを見せてくださった。
ポタポタと血が滴り落ちるそれは、禍々しい雰囲気を漂わせている。
「その手にお持ちの物は一体なんです? 」
「これか? ……コレは予の作った魔法道具、名付けて亡者の招き具だ。コレを一振りすれば、死の香りに誘われ、ネオプロンどもが集まって来るようになっている」
この短い時間に何やら凄い道具をお作りになったみたいだ。
制作過程を見ても何を作っているのか分からなかったが、まさか完成後も原理不明とは恐れ入った。
魔王様はいつも、僕にこうして新しい刺激をくださる。
「試しに振ってみろ」
魔王様はそう言って、亡者の招き具を手渡してきた。
断るワケにもいかず受け取ると、核となっているネオプロンの体は脈打ち、皮膚に刻まれた怪しげな紋様が、それに相槌を打つかのように伸縮を続けている。
長く眼を合わせていると正気を失いそうな、とても生命に対する冒涜を感じられる、一メートルほどある木製の十字架だ。
長い部分を持って振るようで、言われるがまま振り下ろすと、声帯を失ったネオプロンの首なし死体が、「アァー」と精気のない声を上げる。
「コレで…よろしいのでしょうか」
もう一回、亡者の招き具を振る。
「アァー」
…マヌケな声を出すんじゃない。
お前が魔王様の作品でなければ、すぐさまゴミ箱行きだということを忘れるな?
「うむ。中々によい出来だとは思わないか。おにぎり小僧」
「前衛的なセンスもさることながら、使い手の技量も試される道具のようですね。これは……素晴らしい出来栄えです」
嘘はついていない。
魔王様に嘘をつかないと約束したからだ。
「可愛いとは思わなかったか」
「凄く可愛いです」
…相手を傷つけない嘘は、嘘じゃない。
「だろう」
「はい」
勘弁してくれとは、製作者の手前言えるわけもなく、音のなる玩具となったそれを振り回しながら、ネオプロンが寄って来るのを願った。
♢♢♢
狩りは順調に進み、僕が首なし玩具を振りかざす度に、七~八羽のネオプロンの出現が確認された。
そして魔王様は、その全てのネオプロンに弓を命中させ続け、瀕死で苦しむ鳥の山をお築きになられていた。
「順調だな」
「素晴らしい成果をお上げになりましたね。魔王様」
血の臭いに寄せられて、他のネオプロンも寄って来るので、効率的だった狩りが一層の捗りを見せる。
魔王様は仕事のペースが早いことで知られるが、趣味の狩りすらもハイペースでなされるようだ。
なんだか流れている時間のスピードが、他の魔族よりも早いのではないかとすら思える。なんだか不思議な感覚だ。
「魔王様ではない。先輩と呼べ」
多少、価値観に疑問を覚えることはあっても、それは僕が至らぬせいだ。
あぁ…願わくは、魔王様と同じ視点で世界が見えるようになりたいものだ。
「―――はい、先輩。……そろそろ死体の数も増えてきましたが、どうされますか」
「あぁ。帰還の準備をしよう。予はポータルを開くから、卿はネオプロンを運んでくれ。それとも、ココでおにぎりに変えて送るか? 」
ネオプロンは死体を食うため、一般常識的には食用としては用いられない(おにぎり族は例外だ)。
だから一瞬、魔王様がなにをおっしゃっているのか、僕には理解出来なかった。
「……すいません。ネオプロンは、食用として検討されておられるのでしょうか」
「無論そのつもりだが」
いつからそのつもりだったのかは定かではないけれど、僕は森の清掃を命じられたのであって食料調達とは聞いていなかった。
それも、よりにもよってネオプロンだ。
普通の魔族が食べたのでは腹を壊すのではないだろうか。
「ネオプロンは、強い胃液のせいか毒物も食べる場合があると聞いたことがありますが」
「そんなことは知っている。そのために卿がいるのだ」
どうやら魔王様は毒が入っていても食べられるように、ネオプロンをおにぎりにするつもりらしい。
確かに倫理的配慮を無視すれば合理的な考えではある。食糧難の現状を考えると、ココにきてこの数の食料は有難いの一言に尽きる。
…しかし問題なのは、無視されてしまった倫理観にある。
飢餓に苦しむコボルト達を前に貴族の僕がこの問題を口にするのは、本当に場違いというか、この立場のせいで言わされているのが非常に嫌だけれど、誰かがこの問題を魔王様にお伝えしなければならなかった。
「その……コボルト達は間接的に共食いをすることに…なりますが」
振り絞るように言った。
魔王様がそのことに気づいていないワケがない。
だから言うのはとても憚られたけれど、万が一、億が一、ということもありえる。
しかし魔王様は顔色一つ変えない。
「共食いの何が問題だ? 」
「え? 」
落雷に打たれたかのような衝撃だった。
それはもちろん……気持ちの問題だ。誰だって一緒に暮らしていた仲間の肉を口にしたいとは思わないんじゃないだろうか。
僕は昔共食いの話でかなり周りから忌避の眼を向けられたことがあるから分かる。彼らの共食いに対する認識は誤っていないはずだ。
魔族は共食いをしない。我々は元々数が少ないからそこには強い嫌悪感があるんだ。魔王様は合理的とお考えかも知れないが、その反発は恐らくとても強い物になる。
「やはり忌避感を感じるコボルトが多いかと」
「餓死者が出ている中でか? 」
魔王様の冷たいお言葉が耳からスゥーと頭に入って来る。
僕も分かっているのだ。
合理性を考えるなら、この方法で間違いない。
「……ゥ」
なんて言ったら良いのか言葉が出てこなかった。
魔王様もコボルト達が大切で、少しでも助けたいという気持ちから、苦渋の決断だったに違いないのだ(お顔にはいつもの如く現れてはいないが)。
しかし立場上、どんな道でも示すのが王たる役目。
僕がなにかを提案しなければ、このまま辛い道をお進みになれるだろう。
民衆に冷酷の誹りを受けようと、その覚悟がある御方だ。
だけど、僕はルチフェル様にその道を進んで欲しいとは当然思っていない。
「……時間をください」
「今すぐにやれ」
「たとえおにぎりに変えたとしても、彼らがそれを食べることに対して抵抗感を持つのではないかと」
魔王は一瞬、ギロリと睨んだ。
今日何度目の反発だろうか。万死に値する行為だけれど、それでも言ってしまう。
「餓死者が出ている中で、忌避感を優先するのは無意味ではないか? 彼らの命を救うためには、どんな非情な手段であっても行使するべきだ」
魔王様はおにぎり化した時に、おにぎりの顔部分さえ取り除けば、後は大きなおにぎりと大差ないことをご存じである。
『ただの大きなおにぎり』なら、コボルト達も喜んで食べるだろう。なにせ、真実を知るのは魔王様と製作者である僕だけだ。
…吐き気がしてくる。まさかこんなところで、人生最大レベルの秘密を抱えるなんて思いもよらなかった。
僕はどんな顔でおにぎりを配れば良いんだ。
ニコニコ笑顔で共食い進めるほど僕の頭のネジは緩んでいない。
「確かに、仰る通りです。しかし、長い目で見れば、この選択肢が彼らの精神的な安定を損ない、逆に復興の足枷に変貌するかも知れません」
情報とはどこから洩れるか分からない。
僕の能力をダンジョン内で見たコボルトもいるし、例え秘匿したとしても、発覚するのは時間の問題だろう。
だから一歩踏み出し、意見を強く伝えてみる。
そして同時に、初任務の仕事先で上司に盾ついて僕は一体何をやっているんだろうと、強い悔恨も生まれていた。
精神論なんて魔王様が最も嫌いな物だろう。
出来れば僕だって言いたくない。
いつだって魔王様の理論は完璧で、強い信念のもとに動いていらっしゃる。
そんな御方に対して、軸もブレブレなティーンエイジャーが何を言っているんだ? お? 恥を知れ、恥を。
そう自分を窘める。
しかし口は勝手に動いた。
「私たちは彼らを助けるために、他の方法を考えるべきです。たとえば、他の食料源を探すか、外部からの支援を受ける道を模索することができるはずです。共食いを選ぶのは、彼らの倫理観を奪うことになりかねません」
若干泣きそうになりながら言った。
そしてヒロイック精神がそうさせたワケじゃないんだと、自分で自分に言い聞かせる。
コボルト達なんてどうでもいい。
ルチフェル様にそんな外道になって欲しくない、コレは僕の我儘だ。
もしこれで僕の命を代価に、元の覇道に戻られるなら喜んでここで死ねる。
「……」
ルチフェル様は死体の山の上に座って、しばらく黙って考え込まれた。
陰る月の月光に照らされた物憂げな瞳に、僕の心臓はずっと煩く鳴りっぱなしだった。今日ばかりは夜の静寂が恨めしい。
そんな心中を察してか、それとも思ったより現実時間が早く進んだのか、決断はすぐに下された。
「そこまで言うなら仕方あるまい。ネオプロンを食べさせるのはあくまでサブプランとしよう」
本来僕のような一兵卒の諫言ともいえない要望、聞く必要無いのだが。
聴いて下さるのが魔王様の素晴らしい魅力である。
かく言う僕は、もう既に心の中で魔王様に千回は土下座して靴を舐めていた。
「……魔王様」
「その様子だとどうせロクな代案もないのだろう? あと先輩だ」
おっしゃる通りで、魔王様の案以上に合理的かつ、問題にフィットした代案はない。
「すいません先輩! 今から考えます! 」
あの時は、こう言うしかなかったとはいえ、情けない限りだ。
「フッ…可愛いヤツめ。よいか、期限は二カ月だ。二カ月で何かしらの成果を出して見せろ」
怒っておられないどころか、少し機嫌のいい魔王様に、その思慮深さを思い知らされるのだった。
作業も終盤に差し掛かってきたのか、魔王様は顔を上げて森のざわめきにそば耳を立てられた。
「もう血の臭いを嗅ぎつけたか? ……それにしてはずいぶんと早いようだが」
そう言って魔王様はしゃがんだまま、完成したものを見せてくださった。
ポタポタと血が滴り落ちるそれは、禍々しい雰囲気を漂わせている。
「その手にお持ちの物は一体なんです? 」
「これか? ……コレは予の作った魔法道具、名付けて亡者の招き具だ。コレを一振りすれば、死の香りに誘われ、ネオプロンどもが集まって来るようになっている」
この短い時間に何やら凄い道具をお作りになったみたいだ。
制作過程を見ても何を作っているのか分からなかったが、まさか完成後も原理不明とは恐れ入った。
魔王様はいつも、僕にこうして新しい刺激をくださる。
「試しに振ってみろ」
魔王様はそう言って、亡者の招き具を手渡してきた。
断るワケにもいかず受け取ると、核となっているネオプロンの体は脈打ち、皮膚に刻まれた怪しげな紋様が、それに相槌を打つかのように伸縮を続けている。
長く眼を合わせていると正気を失いそうな、とても生命に対する冒涜を感じられる、一メートルほどある木製の十字架だ。
長い部分を持って振るようで、言われるがまま振り下ろすと、声帯を失ったネオプロンの首なし死体が、「アァー」と精気のない声を上げる。
「コレで…よろしいのでしょうか」
もう一回、亡者の招き具を振る。
「アァー」
…マヌケな声を出すんじゃない。
お前が魔王様の作品でなければ、すぐさまゴミ箱行きだということを忘れるな?
「うむ。中々によい出来だとは思わないか。おにぎり小僧」
「前衛的なセンスもさることながら、使い手の技量も試される道具のようですね。これは……素晴らしい出来栄えです」
嘘はついていない。
魔王様に嘘をつかないと約束したからだ。
「可愛いとは思わなかったか」
「凄く可愛いです」
…相手を傷つけない嘘は、嘘じゃない。
「だろう」
「はい」
勘弁してくれとは、製作者の手前言えるわけもなく、音のなる玩具となったそれを振り回しながら、ネオプロンが寄って来るのを願った。
♢♢♢
狩りは順調に進み、僕が首なし玩具を振りかざす度に、七~八羽のネオプロンの出現が確認された。
そして魔王様は、その全てのネオプロンに弓を命中させ続け、瀕死で苦しむ鳥の山をお築きになられていた。
「順調だな」
「素晴らしい成果をお上げになりましたね。魔王様」
血の臭いに寄せられて、他のネオプロンも寄って来るので、効率的だった狩りが一層の捗りを見せる。
魔王様は仕事のペースが早いことで知られるが、趣味の狩りすらもハイペースでなされるようだ。
なんだか流れている時間のスピードが、他の魔族よりも早いのではないかとすら思える。なんだか不思議な感覚だ。
「魔王様ではない。先輩と呼べ」
多少、価値観に疑問を覚えることはあっても、それは僕が至らぬせいだ。
あぁ…願わくは、魔王様と同じ視点で世界が見えるようになりたいものだ。
「―――はい、先輩。……そろそろ死体の数も増えてきましたが、どうされますか」
「あぁ。帰還の準備をしよう。予はポータルを開くから、卿はネオプロンを運んでくれ。それとも、ココでおにぎりに変えて送るか? 」
ネオプロンは死体を食うため、一般常識的には食用としては用いられない(おにぎり族は例外だ)。
だから一瞬、魔王様がなにをおっしゃっているのか、僕には理解出来なかった。
「……すいません。ネオプロンは、食用として検討されておられるのでしょうか」
「無論そのつもりだが」
いつからそのつもりだったのかは定かではないけれど、僕は森の清掃を命じられたのであって食料調達とは聞いていなかった。
それも、よりにもよってネオプロンだ。
普通の魔族が食べたのでは腹を壊すのではないだろうか。
「ネオプロンは、強い胃液のせいか毒物も食べる場合があると聞いたことがありますが」
「そんなことは知っている。そのために卿がいるのだ」
どうやら魔王様は毒が入っていても食べられるように、ネオプロンをおにぎりにするつもりらしい。
確かに倫理的配慮を無視すれば合理的な考えではある。食糧難の現状を考えると、ココにきてこの数の食料は有難いの一言に尽きる。
…しかし問題なのは、無視されてしまった倫理観にある。
飢餓に苦しむコボルト達を前に貴族の僕がこの問題を口にするのは、本当に場違いというか、この立場のせいで言わされているのが非常に嫌だけれど、誰かがこの問題を魔王様にお伝えしなければならなかった。
「その……コボルト達は間接的に共食いをすることに…なりますが」
振り絞るように言った。
魔王様がそのことに気づいていないワケがない。
だから言うのはとても憚られたけれど、万が一、億が一、ということもありえる。
しかし魔王様は顔色一つ変えない。
「共食いの何が問題だ? 」
「え? 」
落雷に打たれたかのような衝撃だった。
それはもちろん……気持ちの問題だ。誰だって一緒に暮らしていた仲間の肉を口にしたいとは思わないんじゃないだろうか。
僕は昔共食いの話でかなり周りから忌避の眼を向けられたことがあるから分かる。彼らの共食いに対する認識は誤っていないはずだ。
魔族は共食いをしない。我々は元々数が少ないからそこには強い嫌悪感があるんだ。魔王様は合理的とお考えかも知れないが、その反発は恐らくとても強い物になる。
「やはり忌避感を感じるコボルトが多いかと」
「餓死者が出ている中でか? 」
魔王様の冷たいお言葉が耳からスゥーと頭に入って来る。
僕も分かっているのだ。
合理性を考えるなら、この方法で間違いない。
「……ゥ」
なんて言ったら良いのか言葉が出てこなかった。
魔王様もコボルト達が大切で、少しでも助けたいという気持ちから、苦渋の決断だったに違いないのだ(お顔にはいつもの如く現れてはいないが)。
しかし立場上、どんな道でも示すのが王たる役目。
僕がなにかを提案しなければ、このまま辛い道をお進みになれるだろう。
民衆に冷酷の誹りを受けようと、その覚悟がある御方だ。
だけど、僕はルチフェル様にその道を進んで欲しいとは当然思っていない。
「……時間をください」
「今すぐにやれ」
「たとえおにぎりに変えたとしても、彼らがそれを食べることに対して抵抗感を持つのではないかと」
魔王は一瞬、ギロリと睨んだ。
今日何度目の反発だろうか。万死に値する行為だけれど、それでも言ってしまう。
「餓死者が出ている中で、忌避感を優先するのは無意味ではないか? 彼らの命を救うためには、どんな非情な手段であっても行使するべきだ」
魔王様はおにぎり化した時に、おにぎりの顔部分さえ取り除けば、後は大きなおにぎりと大差ないことをご存じである。
『ただの大きなおにぎり』なら、コボルト達も喜んで食べるだろう。なにせ、真実を知るのは魔王様と製作者である僕だけだ。
…吐き気がしてくる。まさかこんなところで、人生最大レベルの秘密を抱えるなんて思いもよらなかった。
僕はどんな顔でおにぎりを配れば良いんだ。
ニコニコ笑顔で共食い進めるほど僕の頭のネジは緩んでいない。
「確かに、仰る通りです。しかし、長い目で見れば、この選択肢が彼らの精神的な安定を損ない、逆に復興の足枷に変貌するかも知れません」
情報とはどこから洩れるか分からない。
僕の能力をダンジョン内で見たコボルトもいるし、例え秘匿したとしても、発覚するのは時間の問題だろう。
だから一歩踏み出し、意見を強く伝えてみる。
そして同時に、初任務の仕事先で上司に盾ついて僕は一体何をやっているんだろうと、強い悔恨も生まれていた。
精神論なんて魔王様が最も嫌いな物だろう。
出来れば僕だって言いたくない。
いつだって魔王様の理論は完璧で、強い信念のもとに動いていらっしゃる。
そんな御方に対して、軸もブレブレなティーンエイジャーが何を言っているんだ? お? 恥を知れ、恥を。
そう自分を窘める。
しかし口は勝手に動いた。
「私たちは彼らを助けるために、他の方法を考えるべきです。たとえば、他の食料源を探すか、外部からの支援を受ける道を模索することができるはずです。共食いを選ぶのは、彼らの倫理観を奪うことになりかねません」
若干泣きそうになりながら言った。
そしてヒロイック精神がそうさせたワケじゃないんだと、自分で自分に言い聞かせる。
コボルト達なんてどうでもいい。
ルチフェル様にそんな外道になって欲しくない、コレは僕の我儘だ。
もしこれで僕の命を代価に、元の覇道に戻られるなら喜んでここで死ねる。
「……」
ルチフェル様は死体の山の上に座って、しばらく黙って考え込まれた。
陰る月の月光に照らされた物憂げな瞳に、僕の心臓はずっと煩く鳴りっぱなしだった。今日ばかりは夜の静寂が恨めしい。
そんな心中を察してか、それとも思ったより現実時間が早く進んだのか、決断はすぐに下された。
「そこまで言うなら仕方あるまい。ネオプロンを食べさせるのはあくまでサブプランとしよう」
本来僕のような一兵卒の諫言ともいえない要望、聞く必要無いのだが。
聴いて下さるのが魔王様の素晴らしい魅力である。
かく言う僕は、もう既に心の中で魔王様に千回は土下座して靴を舐めていた。
「……魔王様」
「その様子だとどうせロクな代案もないのだろう? あと先輩だ」
おっしゃる通りで、魔王様の案以上に合理的かつ、問題にフィットした代案はない。
「すいません先輩! 今から考えます! 」
あの時は、こう言うしかなかったとはいえ、情けない限りだ。
「フッ…可愛いヤツめ。よいか、期限は二カ月だ。二カ月で何かしらの成果を出して見せろ」
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