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1章後半 デビルサイド編
21.彼の名前はイソマルト。褐色ハゲのナイスガイ。
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「おいイソマルト。どうしたよ、ボーとして」
五人組の一人、髭を三つ編みにした男が僕のことをイソマルトと呼ぶ。
成り代わった男の名はイソマルトと言うらしい。
僕はイソマルト…僕はイソマルト……よし、返事をする準備も問題なさそうだ。
イソマルトの身長は百五十センチほどで、コボルトよりやや小柄だが、肩幅が広くがっしりとした体格をしている。まさに「筋肉だるま」と呼ぶにふさわしい彼の肉体は、まるで重い鎧をまとっているかのように見えた。
そして人間にしては珍しく頭皮に毛がないが、たぶんそういう種なのだろう。
ツルツル頭だ。
「わりぃわりぃ。…あれ? 俺っちなんでこんなところにいるんだっけ? 」
今回の僕はこういう喋り方か。
ふぅん……もう少し品があってもいいかも知れないな。
「本当に大丈夫かイソマルト。…俺達は森が騒がしいって頭が言うから、わざわざこのクソ寒い中見回りに来たんじゃねえか」
三つ編み髭の男がそう教えてくれた。
それならしばらく歩いたらまた寝床に戻りそうなので、ココは男達の後ろをついていくことにした。
「そうだった。なら、早く済ませちまおう」
屈強な男達は、背の低い草を踏みつけながら森の中を歩いていく。
僕はその後ろを歩きながら、彼らの会話に耳を欹てた。
「明日また早いッてのに、頭がいきなり『森が騒がしい』って言った時には悪寒がしたぜッ…たく」
五人の中では最も顔にホクロの多い男が始めにそう言い、その隣を歩く背筋の伸びた背の高い男が、その文句を受け止めていた。
「でもお頭はこういう時、妙に変な勘が当たる人だ。さっきもそれで血だまりを見つけることができた」
前を歩く男達の話題になっているその『頭』という人物。彼らをまとめるぐらいだから屈強な大男だと思うけれど、その人なら炭の需要が高まったかどうか知っているかもしれない。
早いところ確証を得て戻りたいところだけれど、どうだろうか。
「そういやぁ、それで尻持ちつくヤツもいれば、その場から逃げるヤツもいて大変だったぜ」
ホクロは歩きながら振り返り、後ろを歩く僕達を笑った。
尻もちをついたというのは、僕の隣を歩く三つ編み髭の男で、逃げ出したというのは攫われたイソマルトのことだ。
「テメェが後ろに突き飛ばしたんだろうが」
「そうだっけな? 」
三つ編み髭の男はホクロに言い返したが、イソマルトも何か言い返しておくべきだろうか。
しかし、普段と違う対応をすれば不審がられてしまうだろうし…。
「おいイソマルト! お前も何か言ってやれ」
三つ編み髭の男がそんな悩める僕の肩に手を置いた。
この状況で流石に何も言わないのは不味いと判断して、正直に言ってみることにした。
「正直、俺っちは怖かったよ。情けないけどさ」
そう言うと、前を歩く二人は笑ったけれど、三つ編み髭と後もう一人、無口な男は笑わなかった。
「ヒョー、ダッセ~~。それでもお前さん森の男かよ」
「だからお前はまだお頭に認められないんだぞ。分かってるのか、イソマルト」
そんな賑やかなお喋りをしながら、森の中を巡回した。
そうでないと立ち止まって眠りこけてしまいそうな寒さだった。
ハプニングの一つでもあれば、少しは眠気も冷めたのかも知れないが、肝心のその原因を作り出す側である僕達が動かないので、当然彼らの巡回は徒労に終わることになったのだった。
♢♢♢
そうしてログハウスに戻ると、ベッドの上で美少女が、膝を立てた胡坐を掻いて座っていた。
枝垂桜を彷彿とさせる薄いモフッとしたピンクの毛が、ナイトキャップからはみ出ている。
睨むその三白眼は生来のものだろうけれど、その取れなくなった眉間の皺は後天的に環境が彼女に付けたものだろう。
「遅いよ! アンタ達! 」
少女のドスの効いた声がログハウスの中に反響する。
「お頭すいません。大きな血だまりは見つけたんですが、それ以外には特にコレと言って何も」
ホクロが先ほどとは打って変わって真面目な報告を返した。
「血だまりだぁ~? おまえら歩いている道中に、ネオプロンに襲われなかったか」
何かを確認するかのように、少女はホクロを問い詰める。
「頭、もしかして俺達を心配して…」
「テメェには聞いてねぇ! 」
背の高い男がそう言い終わる前に、美少女に蹴りを入れられて、ログハウスから蹴りだされた。
「は…ハハッ…怒られてやんの」
部屋の中にいた男達の眠気が吹っ飛ぶ一撃にホクロは無理に笑い、場の雰囲気を和ませようとする。
しかしそれは彼女の怒りの炎に油を注ぐ行為に思えた。
「アタシはネオプロンが減ってないか聞いてんだよ!! 」
手元にあった枕がホクロの顔面を襲った。
バスッという音を立てて枕は地面に落ちると、ホクロはそれを拾い上げてベッドに何も言わずに戻した。
睡魔に襲われ限界なのか、お頭の目は半開きだ。
時刻は朝の四時頃、五人が返ってくるまでの間、一人ログハウスで待っていたのだとすると、彼女の眠気が理性をすり減らしていたとしても不思議ではない。
しかしそんなお頭を前にしても、ホクロは冷静だった。
「特にそう言った印象はうけやせんでした」
美少女の頭は、そんなホクロの報告に頷くとコチラをギロリと睨んだ。
「お前たちも同じか? 」
三つ編み髭の男は美少女の言葉に怯えているのか、小刻みに頷くとすぐに目を伏せ、
僕も黙って頷き彼に合わせる。
郷に入っては郷に従え、母上の教えだ。
「そうかい……アタシの勘違いならそれで良いんだ。なら、とっとと寝床につきな。また明日から炭窯の前に立って貰うからね! 」
そうして僕達は、返ってきて早々に暖炉の火と少量のウォッカで体を温めると、すぐにベッドに入ったのだった。
外を見ると蹴りだされた男が、小屋の中の状況を伺っていた。
もう入ってもいいんじゃないか。
そんなことを言う立場なのか、分からないから目が合っても何となく頷くぐらいしか出来なかった。
そしていつまで立っても入ってこないことに痺れを切らしたお頭が、外に蹴りだした男をログハウスに引きずりこむまで、僕らが本当の意味で眠りにつくことはなかった。
五人組の一人、髭を三つ編みにした男が僕のことをイソマルトと呼ぶ。
成り代わった男の名はイソマルトと言うらしい。
僕はイソマルト…僕はイソマルト……よし、返事をする準備も問題なさそうだ。
イソマルトの身長は百五十センチほどで、コボルトよりやや小柄だが、肩幅が広くがっしりとした体格をしている。まさに「筋肉だるま」と呼ぶにふさわしい彼の肉体は、まるで重い鎧をまとっているかのように見えた。
そして人間にしては珍しく頭皮に毛がないが、たぶんそういう種なのだろう。
ツルツル頭だ。
「わりぃわりぃ。…あれ? 俺っちなんでこんなところにいるんだっけ? 」
今回の僕はこういう喋り方か。
ふぅん……もう少し品があってもいいかも知れないな。
「本当に大丈夫かイソマルト。…俺達は森が騒がしいって頭が言うから、わざわざこのクソ寒い中見回りに来たんじゃねえか」
三つ編み髭の男がそう教えてくれた。
それならしばらく歩いたらまた寝床に戻りそうなので、ココは男達の後ろをついていくことにした。
「そうだった。なら、早く済ませちまおう」
屈強な男達は、背の低い草を踏みつけながら森の中を歩いていく。
僕はその後ろを歩きながら、彼らの会話に耳を欹てた。
「明日また早いッてのに、頭がいきなり『森が騒がしい』って言った時には悪寒がしたぜッ…たく」
五人の中では最も顔にホクロの多い男が始めにそう言い、その隣を歩く背筋の伸びた背の高い男が、その文句を受け止めていた。
「でもお頭はこういう時、妙に変な勘が当たる人だ。さっきもそれで血だまりを見つけることができた」
前を歩く男達の話題になっているその『頭』という人物。彼らをまとめるぐらいだから屈強な大男だと思うけれど、その人なら炭の需要が高まったかどうか知っているかもしれない。
早いところ確証を得て戻りたいところだけれど、どうだろうか。
「そういやぁ、それで尻持ちつくヤツもいれば、その場から逃げるヤツもいて大変だったぜ」
ホクロは歩きながら振り返り、後ろを歩く僕達を笑った。
尻もちをついたというのは、僕の隣を歩く三つ編み髭の男で、逃げ出したというのは攫われたイソマルトのことだ。
「テメェが後ろに突き飛ばしたんだろうが」
「そうだっけな? 」
三つ編み髭の男はホクロに言い返したが、イソマルトも何か言い返しておくべきだろうか。
しかし、普段と違う対応をすれば不審がられてしまうだろうし…。
「おいイソマルト! お前も何か言ってやれ」
三つ編み髭の男がそんな悩める僕の肩に手を置いた。
この状況で流石に何も言わないのは不味いと判断して、正直に言ってみることにした。
「正直、俺っちは怖かったよ。情けないけどさ」
そう言うと、前を歩く二人は笑ったけれど、三つ編み髭と後もう一人、無口な男は笑わなかった。
「ヒョー、ダッセ~~。それでもお前さん森の男かよ」
「だからお前はまだお頭に認められないんだぞ。分かってるのか、イソマルト」
そんな賑やかなお喋りをしながら、森の中を巡回した。
そうでないと立ち止まって眠りこけてしまいそうな寒さだった。
ハプニングの一つでもあれば、少しは眠気も冷めたのかも知れないが、肝心のその原因を作り出す側である僕達が動かないので、当然彼らの巡回は徒労に終わることになったのだった。
♢♢♢
そうしてログハウスに戻ると、ベッドの上で美少女が、膝を立てた胡坐を掻いて座っていた。
枝垂桜を彷彿とさせる薄いモフッとしたピンクの毛が、ナイトキャップからはみ出ている。
睨むその三白眼は生来のものだろうけれど、その取れなくなった眉間の皺は後天的に環境が彼女に付けたものだろう。
「遅いよ! アンタ達! 」
少女のドスの効いた声がログハウスの中に反響する。
「お頭すいません。大きな血だまりは見つけたんですが、それ以外には特にコレと言って何も」
ホクロが先ほどとは打って変わって真面目な報告を返した。
「血だまりだぁ~? おまえら歩いている道中に、ネオプロンに襲われなかったか」
何かを確認するかのように、少女はホクロを問い詰める。
「頭、もしかして俺達を心配して…」
「テメェには聞いてねぇ! 」
背の高い男がそう言い終わる前に、美少女に蹴りを入れられて、ログハウスから蹴りだされた。
「は…ハハッ…怒られてやんの」
部屋の中にいた男達の眠気が吹っ飛ぶ一撃にホクロは無理に笑い、場の雰囲気を和ませようとする。
しかしそれは彼女の怒りの炎に油を注ぐ行為に思えた。
「アタシはネオプロンが減ってないか聞いてんだよ!! 」
手元にあった枕がホクロの顔面を襲った。
バスッという音を立てて枕は地面に落ちると、ホクロはそれを拾い上げてベッドに何も言わずに戻した。
睡魔に襲われ限界なのか、お頭の目は半開きだ。
時刻は朝の四時頃、五人が返ってくるまでの間、一人ログハウスで待っていたのだとすると、彼女の眠気が理性をすり減らしていたとしても不思議ではない。
しかしそんなお頭を前にしても、ホクロは冷静だった。
「特にそう言った印象はうけやせんでした」
美少女の頭は、そんなホクロの報告に頷くとコチラをギロリと睨んだ。
「お前たちも同じか? 」
三つ編み髭の男は美少女の言葉に怯えているのか、小刻みに頷くとすぐに目を伏せ、
僕も黙って頷き彼に合わせる。
郷に入っては郷に従え、母上の教えだ。
「そうかい……アタシの勘違いならそれで良いんだ。なら、とっとと寝床につきな。また明日から炭窯の前に立って貰うからね! 」
そうして僕達は、返ってきて早々に暖炉の火と少量のウォッカで体を温めると、すぐにベッドに入ったのだった。
外を見ると蹴りだされた男が、小屋の中の状況を伺っていた。
もう入ってもいいんじゃないか。
そんなことを言う立場なのか、分からないから目が合っても何となく頷くぐらいしか出来なかった。
そしていつまで立っても入ってこないことに痺れを切らしたお頭が、外に蹴りだした男をログハウスに引きずりこむまで、僕らが本当の意味で眠りにつくことはなかった。
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