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1章後半 デビルサイド編
27.核心に迫る
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「とりあえず浸かろうぜ。もうお湯には慣れたろ」
「そんなことより、ネオプロンが消えたって話……して」
湯気のせいで顔は見えないが、首の向きと声からコチラを見ているようだ。どんな話に興味をそそられるのか、まだ分からないからこのカードはゆっくり切りたいものだが…。
「おいおい、足湯屋に来たワケじゃねえだろ? ここはゆっくり湯船に浸かって…」
「衛兵さ―――」
しかしどうやらそう待ってもくれそうにない。
「おーおーせっかちさんや? ちゃんと話すから待ちなさいよ。そうさな、まず手初めにネオプロンが沢山消えた日がいつかって情報はどうだ」
そう言うと、嫌悪とも呆れともとれる目でコチラに視線を戻した。
戻すというより、釘付けという方が正しいかも知れない。まぁ、彼女にとって垂涎ものの情報を公開しようと言うんだ。それぐらいの反応はして貰わなければ困るが……予想以上に食いついたな。知識についてはとことん貪欲な女らしい。
「…いいわ、なにが聴きたいの? 」
「町の連中に聞きゃいいことなんだけどよぉ、冒険者が消えてる見てえじゃんか? なんでかなぁ、って。冒険者のアンタに聞くのが一番手っ取り早いだろ? 」
「……良いわ。話したら教えてあげる」
ずっと警戒されている以上、踏み入った質問は難しそうだが、どうやら冒険者が外へ流出しているのはそれほど大した理由じゃないのかもしれない。
「ネオプロンが大量に消えたのは二週間前のことだ。何者かに狩られている音も、その現場にも足を運んだぜ。どうだ? 俺っちも冒険者みたいだろ」
「余計なことは言わなくていいわ。……そう、二週間前。それは正確な日時? 」
「二週間前からこの町に来ることを指折り数えてたんだぜ。間違えるかよ」
実行犯ということがバレないよう、情報を公開していくのはとても骨が折れる。
下手をすればここで僕が魔族ということが発覚し、殺されるなんてこともありえる話。
その覚悟もなく人の町に降りてきたわけではないが、水場で死ぬのだけは勘弁願いたいところだ。
「……」
彼女は胸元のタオルを緩めるほど深い思考の中にその身を置き、僕のことなど眼中にないように考え込んだ。
存分に考えるがいいさ。風呂は考え事をするには絶好の場所だ。
考え事をするなら、トイレか風呂場と相場が決まっている。
人の出入りが激しい分少し喧噪もあるが、周りは湯気が立ち込めて常に肌を温めてくれているし、僕達の周りにはなぜか人が寄ってこない。
これなら集中力の途切れを気にしないで済むし、閃き降ってきても受け止める準備はバッチリというワケだ。
こうして彼女が思案を重ねる間に、僕もこれから行う仕事の段取りなんかを考えながら、湯船で時間が経つのを待った。
そしてしばらく経ったあと、冷たい何かが肩を突っついた。
「…ん? 」
もしかしなくとも、彼女の人差し指だ。
思考の整理がついたのか、氷の魔法使いの視線がコチラに再度向き直っていた。
「なにをボーとしているの? 」
こちらのセリフだ。
「もういいのかよ? 」
「なんのこと? 」
「…いや、なにか考えたみてぇだからさ」
「別に……」
どうやら考えはまとまったようだ。その証拠に彼女は気づいていないかも知れないが、口元が微かに笑っている。
「ふーん」
「……この町から冒険者が消えている理由。話してあげる」
「おっ、サンキュー」
話の前提として、色々と人間なら知っていて当然と思われる知識が欠落している自分にとって、彼女の話を咀嚼して飲み込むまでに時間を幾ばくか要することになった。
まず人間達は共通に一柱の神を信仰しているらしいこと(アポライとか言う名前らしい)。
そのアポライ神を奉るため、教会という宗教施設を設置し、そこに神父と呼ばれる人間が代表を務め、神事を行うようだ。
そして今回の冒険者流出に関係のある神事の一つに、冒険者の蘇生があるらしい。
聞いて初めて、「ん? 」と思わず聞き返してしまったが、どうやら本当に死んだ人間を神が生き返らせるらしい。
冒険者の持つドッグタグを教会に持ち込めば、例えどれだけ肉体の損傷が激しくとも、完璧な状態で生き返るのだとか。
「それは……なんかヤベェ話だな」
試しにどんな物か実物見せて貰うと、裏には爪や頭髪それに血が固まったものが挟まっていた。常にこんなものを首から下げているなんて変な集団だ。
「……そう? 神様ならそれぐらいして当然だと思うけれど」
全く不思議がっていないのが、逆に不思議なぐらいそのアポライ神とやらは、人間から信仰を集めているようだ。
「彼方先ほどから、まるでアポライ神を知らないみたいな風に聞こえるけれど。まさか変な邪教の信者だったりしないわよね? 」
「あんまり勉強は得意じゃねえんだ。まぁ大丈夫だって。ここにおらせられる敬虔な信徒様が俺っちに講釈してくれるだろ? 」
「図々しい人ね。なんで私が……」
「そっかー、アポライ神の素晴らしい教えを広めることには如何に敬虔な信徒でも抵抗があることなのか」
「……その話には乗りません。 それはまた後で話をしましょう」
何かを妄信する相手に効く言葉なら、僕は多分よく分かっていると思う。なにせ、僕も魔王様を信仰する魔族の一人だからだ。信じるものは違うが、信じるという行為そのものは彼女と共通している。
先ほどの言葉で好きなものについて語りたい気持ちが強くなったに違いない。いずれ待っていれば、彼女の方からアポライ神について語るようになるだろう。
しかし今は……
「アポライ神がいるなら、冒険者は怖い物ナシだな」
冒険者が消えた理由を探る時だ。
「えぇ。だから、この町から冒険者は消えたのよ」
……は?
「そんなことより、ネオプロンが消えたって話……して」
湯気のせいで顔は見えないが、首の向きと声からコチラを見ているようだ。どんな話に興味をそそられるのか、まだ分からないからこのカードはゆっくり切りたいものだが…。
「おいおい、足湯屋に来たワケじゃねえだろ? ここはゆっくり湯船に浸かって…」
「衛兵さ―――」
しかしどうやらそう待ってもくれそうにない。
「おーおーせっかちさんや? ちゃんと話すから待ちなさいよ。そうさな、まず手初めにネオプロンが沢山消えた日がいつかって情報はどうだ」
そう言うと、嫌悪とも呆れともとれる目でコチラに視線を戻した。
戻すというより、釘付けという方が正しいかも知れない。まぁ、彼女にとって垂涎ものの情報を公開しようと言うんだ。それぐらいの反応はして貰わなければ困るが……予想以上に食いついたな。知識についてはとことん貪欲な女らしい。
「…いいわ、なにが聴きたいの? 」
「町の連中に聞きゃいいことなんだけどよぉ、冒険者が消えてる見てえじゃんか? なんでかなぁ、って。冒険者のアンタに聞くのが一番手っ取り早いだろ? 」
「……良いわ。話したら教えてあげる」
ずっと警戒されている以上、踏み入った質問は難しそうだが、どうやら冒険者が外へ流出しているのはそれほど大した理由じゃないのかもしれない。
「ネオプロンが大量に消えたのは二週間前のことだ。何者かに狩られている音も、その現場にも足を運んだぜ。どうだ? 俺っちも冒険者みたいだろ」
「余計なことは言わなくていいわ。……そう、二週間前。それは正確な日時? 」
「二週間前からこの町に来ることを指折り数えてたんだぜ。間違えるかよ」
実行犯ということがバレないよう、情報を公開していくのはとても骨が折れる。
下手をすればここで僕が魔族ということが発覚し、殺されるなんてこともありえる話。
その覚悟もなく人の町に降りてきたわけではないが、水場で死ぬのだけは勘弁願いたいところだ。
「……」
彼女は胸元のタオルを緩めるほど深い思考の中にその身を置き、僕のことなど眼中にないように考え込んだ。
存分に考えるがいいさ。風呂は考え事をするには絶好の場所だ。
考え事をするなら、トイレか風呂場と相場が決まっている。
人の出入りが激しい分少し喧噪もあるが、周りは湯気が立ち込めて常に肌を温めてくれているし、僕達の周りにはなぜか人が寄ってこない。
これなら集中力の途切れを気にしないで済むし、閃き降ってきても受け止める準備はバッチリというワケだ。
こうして彼女が思案を重ねる間に、僕もこれから行う仕事の段取りなんかを考えながら、湯船で時間が経つのを待った。
そしてしばらく経ったあと、冷たい何かが肩を突っついた。
「…ん? 」
もしかしなくとも、彼女の人差し指だ。
思考の整理がついたのか、氷の魔法使いの視線がコチラに再度向き直っていた。
「なにをボーとしているの? 」
こちらのセリフだ。
「もういいのかよ? 」
「なんのこと? 」
「…いや、なにか考えたみてぇだからさ」
「別に……」
どうやら考えはまとまったようだ。その証拠に彼女は気づいていないかも知れないが、口元が微かに笑っている。
「ふーん」
「……この町から冒険者が消えている理由。話してあげる」
「おっ、サンキュー」
話の前提として、色々と人間なら知っていて当然と思われる知識が欠落している自分にとって、彼女の話を咀嚼して飲み込むまでに時間を幾ばくか要することになった。
まず人間達は共通に一柱の神を信仰しているらしいこと(アポライとか言う名前らしい)。
そのアポライ神を奉るため、教会という宗教施設を設置し、そこに神父と呼ばれる人間が代表を務め、神事を行うようだ。
そして今回の冒険者流出に関係のある神事の一つに、冒険者の蘇生があるらしい。
聞いて初めて、「ん? 」と思わず聞き返してしまったが、どうやら本当に死んだ人間を神が生き返らせるらしい。
冒険者の持つドッグタグを教会に持ち込めば、例えどれだけ肉体の損傷が激しくとも、完璧な状態で生き返るのだとか。
「それは……なんかヤベェ話だな」
試しにどんな物か実物見せて貰うと、裏には爪や頭髪それに血が固まったものが挟まっていた。常にこんなものを首から下げているなんて変な集団だ。
「……そう? 神様ならそれぐらいして当然だと思うけれど」
全く不思議がっていないのが、逆に不思議なぐらいそのアポライ神とやらは、人間から信仰を集めているようだ。
「彼方先ほどから、まるでアポライ神を知らないみたいな風に聞こえるけれど。まさか変な邪教の信者だったりしないわよね? 」
「あんまり勉強は得意じゃねえんだ。まぁ大丈夫だって。ここにおらせられる敬虔な信徒様が俺っちに講釈してくれるだろ? 」
「図々しい人ね。なんで私が……」
「そっかー、アポライ神の素晴らしい教えを広めることには如何に敬虔な信徒でも抵抗があることなのか」
「……その話には乗りません。 それはまた後で話をしましょう」
何かを妄信する相手に効く言葉なら、僕は多分よく分かっていると思う。なにせ、僕も魔王様を信仰する魔族の一人だからだ。信じるものは違うが、信じるという行為そのものは彼女と共通している。
先ほどの言葉で好きなものについて語りたい気持ちが強くなったに違いない。いずれ待っていれば、彼女の方からアポライ神について語るようになるだろう。
しかし今は……
「アポライ神がいるなら、冒険者は怖い物ナシだな」
冒険者が消えた理由を探る時だ。
「えぇ。だから、この町から冒険者は消えたのよ」
……は?
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