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1章後半 デビルサイド編
36.おにぎり小僧って沢山いるの?
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「口を噤みなさい」
目覚めて初めて彼女に命令した言葉はこの一言だった。
おかげで彼女は目の前に魔族が二体いる状態でも、怒ることも泣き叫ぶことも出来ず、瞳孔が開いたままただ現状を理解するのに頭をフル回転させているようだった。
「叫ばないこと。発狂しないこと。助けを呼ばないこと。エトセトラ、エトセトラ…」
一つずつ命令していくのは骨が折れると思いながら、彼女がこの場で我々と話をするのに必要最低限の命令を与える。
「さて…そろそろ口を開けてもいいでしょう」
「…プハッ! ―――一体どういう状況なんですか? 」
生まれ変わって第一声がそれか。まあ、かなり好印象ではあるかな。
「まず初めにあなたには侵略のお手伝いをして頂きたいのです…が」
そこまで言いかけて彼女は気絶した。
「きゅ~…」
後頭部から倒れ、部屋にゴンッという鈍い音が響く。コイツはダメかも知れない。
「駄目そうですね。気絶してしまいました」
「それより頭の方、何か変な音しなかった? 」
町娘の頭から血だまりが見えたので確認してみると、当たり所が悪かったらしく、もう既に息をしていない。
「あっ……死にましたね」
「あちゃー、ビックリするぐらい脆いんだ。治療しちゃうね、あっ次いでにいくつか拡張機能つけても良い? 」
「……使い勝手が悪くならないなら」
「ダイジョーブ」
皮娘の目が真っすぐコチラをみつめてくる。信じてくれとでも言っているような目だ。だから確実に間違いなくコレは嘘だ。多少なりとも使い勝手が悪くなるのは間違いない。しかしだからと言って彼女が理由もなく、そのようなことをする魔族とは思っていない。
「やるなら徹底的に改造してください」
「任せて! マスターピースにして見せるから」
♢♢♢
しばらくして目が覚めた町娘は、状況の整理がまだついていないのか頭を抱えてブツブツと何かを呟いているが、先ほどよりかは現状がハッキリと見えているように思える。
けれどもまた話しかけて、倒れられても億劫だぞ…どうしたものか。
「おにぎり頭が喋りかけてきたら流石にビックリするんじゃないかな? 私が代わりに話してみよっか」
丁度僕もそれが良いと思っていたんだ、ありがとう皮娘。是非お願いしたい。だけども、僕の口は別のことを口走った。
「イメクラにしかいないようなおばさんに話しかけられたのでは、それはそれで困りものでしょう」
馬鹿野郎…せっかく気を利かせてくれているんだぞ。ちゃんと甘えろ僕。どうしてこんなことで相手に甘えられないんだ。甘いお米になるんだ、おにぎり小僧。
「ふふっ。誉め言葉として受け取っておくわ。それでどうする? 」
彼女の心が広すぎる。広すぎる心が逆に不安だ。というか、どんな言語回路をしていたらさっきの言葉を賛辞と受け取れるのか甚だ謎ではあるんだが、おかげで無用な諍いにならずに済みそうだ。
やはり彼女に頼んで正解だった。
「…僕がするより良さそうですね。お願いします」
それからしばらくは、町娘を相手にツインテールのナースコスおばさんによるカウンセリングが行われることになった。
その結果―――
「つまり私はおにぎり小僧さんの子分で、必要となればこの身を捧げれば良いってことだよね! はいはい了解! 」
と、ちょっと頭がおかしくなってしまったようだが、何とか相手に状況を理解させることに成功した。
「いえ、あなたは食べません」
「あははっ。食べないんですか! ウソだ~!」
微妙に面倒くさい性格に捻じ曲がってしまったような気もしないでもないが、短い付き合いだ。気にするだけ無駄だろう。
「僕から見たあなたは吐しゃ物ですからね。あ、ゲロです」
「それぐらい分かるよぉ! 」
ムカつく喋り方だな……調整を誤ったか?
「ゲロをもう一度口に入れるなんてしないでしょ? つまりあなたは食べません」
「ゲ…ゲロ……私は…ゲロ…」
現状確認もできるようになった所で、これからの計画を話そうとしたところ、とても彼女の顔が暗くなっているのに気づいた。ふるふると体もなぜか震えている。
「彼女一体どうされたんですか? 」
「暗い気持ちになっているみたいね。常に幸福な気分になる魔物を寄生させてみる? ポジティブビーっていう蜂型の魔物なんだけど」
活動に支障が出ても困るので、暴れる町娘を取り押さえ首元に蜂の毒針をブスリと指してみる。
それからしばらくは泣いたり笑ったり、しばらく表情筋が忙しかったが、すぐに小さく笑みを浮かべるようになった。
「…どうやら恐怖は消えたみたい。どう気分は? 」
「皮娘さん、これ凄いです。頭がふわふわして、温かい気持ちになってきます! まるで日の当たる窓際のテラスで紅茶を嗜んでいる時みたい! 」
町娘の目の焦点が合っていないが、頬は緩み、笑みを浮かべている。明らかに魔族がヤバい薬を吸った後みたいになっているが、やるしかない。梅毒持ちの薬チュウだって、立派に使ってみせよう。
「不安は残りますが…とりあえずコレでいいです。長くなりましたが説明を始めさせていただきます。皮娘、ありがとうございました。後はコチラで」
「もういいの? 私時間あるよ? 」
「心強いですが、一応機密らしいので」
「その子は大丈夫なの? 」
「コレは道具なので問題ありません」
「そっか~」
そういうことで、皮娘とはお別れをして町娘と会話をすることにした。魔族への恐怖をある程度払拭したと言っても、まだまだ対話には立ちはだかる壁は多いだろう。まずは、彼女の知りたいことから答えていってみよう。彼女にだって聞きたいことは山ほどあるはずだ。
「おにぎり小僧さんは、おにぎり小僧って名前なの? 」
「おにぎり小僧はおにぎり族の子供全員に付けられる名です。成人しなければ真名は授かりません。あなたのいう名前というのはソレのことでしょう? 」
「困らないの? 」
「困るとは? 」
「だってあなたの生活する場所じゃあ、沢山おにぎり小僧君がいるってことでしょ!? おにぎり小僧Aおにぎり小僧Bみたいなことになるってことじゃん」
「…それはもう、ニュアンスですよ」
そんなに困ったことが無いから、改めて言われると不思議な話だ。今までは何となくで判別をしてきた。それで困ったことはない。
「はぁぇー…うまくやってるんだね」
「コホン…そんなことより、早く作戦会議を始めますよ。さぁとりあえず椅子に座って」
目覚めて初めて彼女に命令した言葉はこの一言だった。
おかげで彼女は目の前に魔族が二体いる状態でも、怒ることも泣き叫ぶことも出来ず、瞳孔が開いたままただ現状を理解するのに頭をフル回転させているようだった。
「叫ばないこと。発狂しないこと。助けを呼ばないこと。エトセトラ、エトセトラ…」
一つずつ命令していくのは骨が折れると思いながら、彼女がこの場で我々と話をするのに必要最低限の命令を与える。
「さて…そろそろ口を開けてもいいでしょう」
「…プハッ! ―――一体どういう状況なんですか? 」
生まれ変わって第一声がそれか。まあ、かなり好印象ではあるかな。
「まず初めにあなたには侵略のお手伝いをして頂きたいのです…が」
そこまで言いかけて彼女は気絶した。
「きゅ~…」
後頭部から倒れ、部屋にゴンッという鈍い音が響く。コイツはダメかも知れない。
「駄目そうですね。気絶してしまいました」
「それより頭の方、何か変な音しなかった? 」
町娘の頭から血だまりが見えたので確認してみると、当たり所が悪かったらしく、もう既に息をしていない。
「あっ……死にましたね」
「あちゃー、ビックリするぐらい脆いんだ。治療しちゃうね、あっ次いでにいくつか拡張機能つけても良い? 」
「……使い勝手が悪くならないなら」
「ダイジョーブ」
皮娘の目が真っすぐコチラをみつめてくる。信じてくれとでも言っているような目だ。だから確実に間違いなくコレは嘘だ。多少なりとも使い勝手が悪くなるのは間違いない。しかしだからと言って彼女が理由もなく、そのようなことをする魔族とは思っていない。
「やるなら徹底的に改造してください」
「任せて! マスターピースにして見せるから」
♢♢♢
しばらくして目が覚めた町娘は、状況の整理がまだついていないのか頭を抱えてブツブツと何かを呟いているが、先ほどよりかは現状がハッキリと見えているように思える。
けれどもまた話しかけて、倒れられても億劫だぞ…どうしたものか。
「おにぎり頭が喋りかけてきたら流石にビックリするんじゃないかな? 私が代わりに話してみよっか」
丁度僕もそれが良いと思っていたんだ、ありがとう皮娘。是非お願いしたい。だけども、僕の口は別のことを口走った。
「イメクラにしかいないようなおばさんに話しかけられたのでは、それはそれで困りものでしょう」
馬鹿野郎…せっかく気を利かせてくれているんだぞ。ちゃんと甘えろ僕。どうしてこんなことで相手に甘えられないんだ。甘いお米になるんだ、おにぎり小僧。
「ふふっ。誉め言葉として受け取っておくわ。それでどうする? 」
彼女の心が広すぎる。広すぎる心が逆に不安だ。というか、どんな言語回路をしていたらさっきの言葉を賛辞と受け取れるのか甚だ謎ではあるんだが、おかげで無用な諍いにならずに済みそうだ。
やはり彼女に頼んで正解だった。
「…僕がするより良さそうですね。お願いします」
それからしばらくは、町娘を相手にツインテールのナースコスおばさんによるカウンセリングが行われることになった。
その結果―――
「つまり私はおにぎり小僧さんの子分で、必要となればこの身を捧げれば良いってことだよね! はいはい了解! 」
と、ちょっと頭がおかしくなってしまったようだが、何とか相手に状況を理解させることに成功した。
「いえ、あなたは食べません」
「あははっ。食べないんですか! ウソだ~!」
微妙に面倒くさい性格に捻じ曲がってしまったような気もしないでもないが、短い付き合いだ。気にするだけ無駄だろう。
「僕から見たあなたは吐しゃ物ですからね。あ、ゲロです」
「それぐらい分かるよぉ! 」
ムカつく喋り方だな……調整を誤ったか?
「ゲロをもう一度口に入れるなんてしないでしょ? つまりあなたは食べません」
「ゲ…ゲロ……私は…ゲロ…」
現状確認もできるようになった所で、これからの計画を話そうとしたところ、とても彼女の顔が暗くなっているのに気づいた。ふるふると体もなぜか震えている。
「彼女一体どうされたんですか? 」
「暗い気持ちになっているみたいね。常に幸福な気分になる魔物を寄生させてみる? ポジティブビーっていう蜂型の魔物なんだけど」
活動に支障が出ても困るので、暴れる町娘を取り押さえ首元に蜂の毒針をブスリと指してみる。
それからしばらくは泣いたり笑ったり、しばらく表情筋が忙しかったが、すぐに小さく笑みを浮かべるようになった。
「…どうやら恐怖は消えたみたい。どう気分は? 」
「皮娘さん、これ凄いです。頭がふわふわして、温かい気持ちになってきます! まるで日の当たる窓際のテラスで紅茶を嗜んでいる時みたい! 」
町娘の目の焦点が合っていないが、頬は緩み、笑みを浮かべている。明らかに魔族がヤバい薬を吸った後みたいになっているが、やるしかない。梅毒持ちの薬チュウだって、立派に使ってみせよう。
「不安は残りますが…とりあえずコレでいいです。長くなりましたが説明を始めさせていただきます。皮娘、ありがとうございました。後はコチラで」
「もういいの? 私時間あるよ? 」
「心強いですが、一応機密らしいので」
「その子は大丈夫なの? 」
「コレは道具なので問題ありません」
「そっか~」
そういうことで、皮娘とはお別れをして町娘と会話をすることにした。魔族への恐怖をある程度払拭したと言っても、まだまだ対話には立ちはだかる壁は多いだろう。まずは、彼女の知りたいことから答えていってみよう。彼女にだって聞きたいことは山ほどあるはずだ。
「おにぎり小僧さんは、おにぎり小僧って名前なの? 」
「おにぎり小僧はおにぎり族の子供全員に付けられる名です。成人しなければ真名は授かりません。あなたのいう名前というのはソレのことでしょう? 」
「困らないの? 」
「困るとは? 」
「だってあなたの生活する場所じゃあ、沢山おにぎり小僧君がいるってことでしょ!? おにぎり小僧Aおにぎり小僧Bみたいなことになるってことじゃん」
「…それはもう、ニュアンスですよ」
そんなに困ったことが無いから、改めて言われると不思議な話だ。今までは何となくで判別をしてきた。それで困ったことはない。
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「コホン…そんなことより、早く作戦会議を始めますよ。さぁとりあえず椅子に座って」
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