美少女おにぎり

星島新吾

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1章後半 デビルサイド編

39.パオンとその仲間たち

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「マーコさん。あなたはこの町の御出身ですか? 」
 そう聞くと彼女は首を振る。
「アタシ実は家出中でさ、この町に来たのはつい半年ぐらい前なんだよね」
「では氷の魔法使いについてはあまり詳しくありませんか」
「氷の魔法使いさんって冒険者の? 」
 まさか知っているとは。彼女の情報収集能力が高いのか、はたまたパオンが有名人なだけなのか。どちらにせよ、知っていることを話してもらう必要がありそうだ。
「知っていることを話して貰いましょうか」
「知ってることって言ったってう~ん、例えばどんなこと? 」
「それは、もう隅々まで」
「変態みたーい」
「なんですって? 」
 聞き捨てならないマーコの言葉に、問いただしたい気持ちもあったが、今はそんなことをしている場合ではない。
「……どう呼ぼうと結構ですが、話はして貰いますよ」
「えー……甘い物とかあったら思い出すかも? 」
「立場というものがアナタは全く分かっていませんね。命令すればすぐに、口を割るというのに」
「甘い物食べたーい」
 イラッとしたが、ポケットの中に入っていた携帯食料である飴を彼女に差し出した。
「砂糖の塊です。これを食べて白状しなさい」
「わぁ凄い。宝石みたいだね」
 そう言って彼女は冒険者達から聞いたパオンの情報を余すことなく僕に提供してくれた。
 趣味嗜好や男女関係、普段どのように行動するのか。
 おかげで断片的ではあったものの、自分の気づかなかった彼女の情報を、マーコによって補完することが出来た。
「お昼はよく例の酒場に出没するんでしたね」
 パオンと会う以上、イソマルトの姿になるしかないため、マーコに色々命令してから、食後変化の術を使い変身した。
 今回は衛兵に顔バレしないよう、顔の隠れるローブに軍服を変化させる。
「じゃあ俺っち言って来るからさ。いい子にしてなよ~」
「……」
 じろりと無表情でコチラを見るマーコ。
 そう言えばおにぎり小僧の体ではないから、今はもう彼女に命令出来ないんだった。
「おにぎり小僧じゃなくなった途端これか……ったく」
 返ってきても刺されることが無いように命令してはいるものの、恐らくとても彼女は僕を恨んでいるだろうから、隙があれば殺しにくるだろう。あぁ、恐ろしい。
 ♢♢♢
 例の酒場へと向かうと、早速彼女を見つけることが出来た。
 今回はコボルト村で見かけた短剣使いのお嬢さんと、頭を射抜いた戦士も同席している。
 逃亡犯にどんな反応を見せるか分からないが、もし通報されるようなことがあれば逃げよう。もし彼女に直接捕まえられたら、その時のことはマーコに言ってあるからそれも問題ない。
 直接殺されるなんてことはないと思うが、もしも兵舎前の門番が彼女の親類縁者の類で、彼の顔面を色の悪いジャガイモに変えたことに激怒していたとしたら、その時は土下座しよう。きっと許してはくれないだろうけれど。
「よぉーすパオン」
 そう話しかけると、割って入ってきたのは同じパーティーメンバーの剣士君だった。
「なにもんだ? てめぇ…」
 名前は…確か、コンラッド君。ダンジョンの中でパオンにそう呼ばれていたはず。それでコチラに興味なさげに食事に手を伸ばしている少女が短剣使いのティッキーだ。仲間の弓使いを食べた時のことだから、鮮明に今でも思い出せた。
「そうツンケンしないでくれよ。アンタの彼女を口説きに来たんじゃないんだからさ」
「なっ……」
 コンラッド君はそれでしばらく空いた口が塞がらないようだったので、代わりにパオンに向き直った。
「アナタ捕まっていたはずじゃ…」
 彼女は彼女で、脱獄囚が飲み屋に来ていることに驚いているようだった。
「俺っちの父親は偉い貴族様なんだぞーって言ったらすぐに出してくれたよ。それで? どうしたのその装備。今から戦いにでも行くって恰好に見えるけど」
「戦いに行くのよ。と言っても偵察が今回のメイン行動ではあるけれど」
「例の俺っちが教えてあげた森へかい? ココから歩き立ったら結構かかるぜ? 戦亀ならもうちっとばかし早く行けるかも知らねえけど」
「パオンにぁ高速移動があんだよ」
 コンラッド君が鼻高々といった風に代わりに答えてくれたが、余計なことを喋るな、と言わんばかりのパオンの視線が彼に突き刺さることになった。
 それでまたしゅんとなっているコンラッド君。彼はこのパーティの萌え担当なのかも知れない。
 ―――それはそうと、高速移動か。そんな便利な魔法があるなら、封じ手を考えておく必要があるだろう。
「今日中に行って帰ってこれんのかい」
「なに? なんでアナタに教えなくちゃいけないワケ? 」
「そんなチクチクしないで仲良くしよ? 俺たちもう友達以上の仲じゃない」
「友達以下他人未満ではあるかしら」
「知人ですらない!? 」
「ふん」
「なあ頼むぜ。今日夜酒場に探しに来ていなかったら寂しいじゃないの」
「夜はこないわ。すぐに戻って眠るもの」
「夜には帰ってこれんのか。ひゃー、忙しいねぇ~」
「うるさい人…」
「見送り行ってもいいかい。たぶん、俺っちがこの町にいるのも今日までだからさ。夕方にはもうこの町とはバイバイしなくちゃイケねえの」
「しつこいわね、だったらせめて酒場から出て行って。外で待てるなら、見送りぐらい許してあげるわ」
「マジで? よっしゃー。待ってるわ」
「わざわざそんなことを言いに来たの? 」
「ハハハッ…まあ」
「なに? 歯切れが悪い」
「お仲間とのお食事中に邪魔して悪かったな。お仲間さんにもよろしく! それじゃあ! 」
 そう言って酒場を出た。酒の量や机に並べられた食事の量からして一時間ほどで出てくるだろう。それまで適当に時間を潰して彼女達を待っていることにしよう。
 イソマルトにとってもこの町最後の時間だ。連絡を入れた後にやるべきことを考えよう。
 まずはクロックドムッシュに連絡だ。
「コチラおにぎり小僧。突然で悪いっすけど、作戦日は今日のおそらく一~二時間後になりそうっす。あ、あと貴族殺すの時間的に無理そうなんでパスで良いっすか」
 そう言うと向こう側が大騒ぎになった。
「…良いっすかって…そうか、今はおにぎりボディじゃないんだったな」
 おにぎりボディでその態度だったらぶっ殺していたと言われ、おじさんとイソマルトの相性はとても悪いと思いつつ、作戦開始の都合を聞いた。
「もちろんコチラの準備はいつでも問題ない。そちらの指示が届き次第兵をゲートから町へ送ろう。冒険者の数はどうだ? 」
「見たところ前日よりも更に減ってるっスね。町の人間が逃げ出さないように結界の用意も…」
「そういった用意は全て終わっているさ。私を誰だと思っている」
「こりゃ失礼」
「それと、早いところおにぎり小僧の体に戻っておけよ。間違えて殺してしまったなんて報告、聞きたくはないからな」
「了解。それじゃあそう言うことで。よろしくどうぞ」

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