39 / 64
1章後半 デビルサイド編
39.パオンとその仲間たち
しおりを挟む
「マーコさん。あなたはこの町の御出身ですか? 」
そう聞くと彼女は首を振る。
「アタシ実は家出中でさ、この町に来たのはつい半年ぐらい前なんだよね」
「では氷の魔法使いについてはあまり詳しくありませんか」
「氷の魔法使いさんって冒険者の? 」
まさか知っているとは。彼女の情報収集能力が高いのか、はたまたパオンが有名人なだけなのか。どちらにせよ、知っていることを話してもらう必要がありそうだ。
「知っていることを話して貰いましょうか」
「知ってることって言ったってう~ん、例えばどんなこと? 」
「それは、もう隅々まで」
「変態みたーい」
「なんですって? 」
聞き捨てならないマーコの言葉に、問いただしたい気持ちもあったが、今はそんなことをしている場合ではない。
「……どう呼ぼうと結構ですが、話はして貰いますよ」
「えー……甘い物とかあったら思い出すかも? 」
「立場というものがアナタは全く分かっていませんね。命令すればすぐに、口を割るというのに」
「甘い物食べたーい」
イラッとしたが、ポケットの中に入っていた携帯食料である飴を彼女に差し出した。
「砂糖の塊です。これを食べて白状しなさい」
「わぁ凄い。宝石みたいだね」
そう言って彼女は冒険者達から聞いたパオンの情報を余すことなく僕に提供してくれた。
趣味嗜好や男女関係、普段どのように行動するのか。
おかげで断片的ではあったものの、自分の気づかなかった彼女の情報を、マーコによって補完することが出来た。
「お昼はよく例の酒場に出没するんでしたね」
パオンと会う以上、イソマルトの姿になるしかないため、マーコに色々命令してから、食後変化の術を使い変身した。
今回は衛兵に顔バレしないよう、顔の隠れるローブに軍服を変化させる。
「じゃあ俺っち言って来るからさ。いい子にしてなよ~」
「……」
じろりと無表情でコチラを見るマーコ。
そう言えばおにぎり小僧の体ではないから、今はもう彼女に命令出来ないんだった。
「おにぎり小僧じゃなくなった途端これか……ったく」
返ってきても刺されることが無いように命令してはいるものの、恐らくとても彼女は僕を恨んでいるだろうから、隙があれば殺しにくるだろう。あぁ、恐ろしい。
♢♢♢
例の酒場へと向かうと、早速彼女を見つけることが出来た。
今回はコボルト村で見かけた短剣使いのお嬢さんと、頭を射抜いた戦士も同席している。
逃亡犯にどんな反応を見せるか分からないが、もし通報されるようなことがあれば逃げよう。もし彼女に直接捕まえられたら、その時のことはマーコに言ってあるからそれも問題ない。
直接殺されるなんてことはないと思うが、もしも兵舎前の門番が彼女の親類縁者の類で、彼の顔面を色の悪いジャガイモに変えたことに激怒していたとしたら、その時は土下座しよう。きっと許してはくれないだろうけれど。
「よぉーすパオン」
そう話しかけると、割って入ってきたのは同じパーティーメンバーの剣士君だった。
「なにもんだ? てめぇ…」
名前は…確か、コンラッド君。ダンジョンの中でパオンにそう呼ばれていたはず。それでコチラに興味なさげに食事に手を伸ばしている少女が短剣使いのティッキーだ。仲間の弓使いを食べた時のことだから、鮮明に今でも思い出せた。
「そうツンケンしないでくれよ。アンタの彼女を口説きに来たんじゃないんだからさ」
「なっ……」
コンラッド君はそれでしばらく空いた口が塞がらないようだったので、代わりにパオンに向き直った。
「アナタ捕まっていたはずじゃ…」
彼女は彼女で、脱獄囚が飲み屋に来ていることに驚いているようだった。
「俺っちの父親は偉い貴族様なんだぞーって言ったらすぐに出してくれたよ。それで? どうしたのその装備。今から戦いにでも行くって恰好に見えるけど」
「戦いに行くのよ。と言っても偵察が今回のメイン行動ではあるけれど」
「例の俺っちが教えてあげた森へかい? ココから歩き立ったら結構かかるぜ? 戦亀ならもうちっとばかし早く行けるかも知らねえけど」
「パオンにぁ高速移動があんだよ」
コンラッド君が鼻高々といった風に代わりに答えてくれたが、余計なことを喋るな、と言わんばかりのパオンの視線が彼に突き刺さることになった。
それでまたしゅんとなっているコンラッド君。彼はこのパーティの萌え担当なのかも知れない。
―――それはそうと、高速移動か。そんな便利な魔法があるなら、封じ手を考えておく必要があるだろう。
「今日中に行って帰ってこれんのかい」
「なに? なんでアナタに教えなくちゃいけないワケ? 」
「そんなチクチクしないで仲良くしよ? 俺たちもう友達以上の仲じゃない」
「友達以下他人未満ではあるかしら」
「知人ですらない!? 」
「ふん」
「なあ頼むぜ。今日夜酒場に探しに来ていなかったら寂しいじゃないの」
「夜はこないわ。すぐに戻って眠るもの」
「夜には帰ってこれんのか。ひゃー、忙しいねぇ~」
「うるさい人…」
「見送り行ってもいいかい。たぶん、俺っちがこの町にいるのも今日までだからさ。夕方にはもうこの町とはバイバイしなくちゃイケねえの」
「しつこいわね、だったらせめて酒場から出て行って。外で待てるなら、見送りぐらい許してあげるわ」
「マジで? よっしゃー。待ってるわ」
「わざわざそんなことを言いに来たの? 」
「ハハハッ…まあ」
「なに? 歯切れが悪い」
「お仲間とのお食事中に邪魔して悪かったな。お仲間さんにもよろしく! それじゃあ! 」
そう言って酒場を出た。酒の量や机に並べられた食事の量からして一時間ほどで出てくるだろう。それまで適当に時間を潰して彼女達を待っていることにしよう。
イソマルトにとってもこの町最後の時間だ。連絡を入れた後にやるべきことを考えよう。
まずはクロックドムッシュに連絡だ。
「コチラおにぎり小僧。突然で悪いっすけど、作戦日は今日のおそらく一~二時間後になりそうっす。あ、あと貴族殺すの時間的に無理そうなんでパスで良いっすか」
そう言うと向こう側が大騒ぎになった。
「…良いっすかって…そうか、今はおにぎりボディじゃないんだったな」
おにぎりボディでその態度だったらぶっ殺していたと言われ、おじさんとイソマルトの相性はとても悪いと思いつつ、作戦開始の都合を聞いた。
「もちろんコチラの準備はいつでも問題ない。そちらの指示が届き次第兵をゲートから町へ送ろう。冒険者の数はどうだ? 」
「見たところ前日よりも更に減ってるっスね。町の人間が逃げ出さないように結界の用意も…」
「そういった用意は全て終わっているさ。私を誰だと思っている」
「こりゃ失礼」
「それと、早いところおにぎり小僧の体に戻っておけよ。間違えて殺してしまったなんて報告、聞きたくはないからな」
「了解。それじゃあそう言うことで。よろしくどうぞ」
そう聞くと彼女は首を振る。
「アタシ実は家出中でさ、この町に来たのはつい半年ぐらい前なんだよね」
「では氷の魔法使いについてはあまり詳しくありませんか」
「氷の魔法使いさんって冒険者の? 」
まさか知っているとは。彼女の情報収集能力が高いのか、はたまたパオンが有名人なだけなのか。どちらにせよ、知っていることを話してもらう必要がありそうだ。
「知っていることを話して貰いましょうか」
「知ってることって言ったってう~ん、例えばどんなこと? 」
「それは、もう隅々まで」
「変態みたーい」
「なんですって? 」
聞き捨てならないマーコの言葉に、問いただしたい気持ちもあったが、今はそんなことをしている場合ではない。
「……どう呼ぼうと結構ですが、話はして貰いますよ」
「えー……甘い物とかあったら思い出すかも? 」
「立場というものがアナタは全く分かっていませんね。命令すればすぐに、口を割るというのに」
「甘い物食べたーい」
イラッとしたが、ポケットの中に入っていた携帯食料である飴を彼女に差し出した。
「砂糖の塊です。これを食べて白状しなさい」
「わぁ凄い。宝石みたいだね」
そう言って彼女は冒険者達から聞いたパオンの情報を余すことなく僕に提供してくれた。
趣味嗜好や男女関係、普段どのように行動するのか。
おかげで断片的ではあったものの、自分の気づかなかった彼女の情報を、マーコによって補完することが出来た。
「お昼はよく例の酒場に出没するんでしたね」
パオンと会う以上、イソマルトの姿になるしかないため、マーコに色々命令してから、食後変化の術を使い変身した。
今回は衛兵に顔バレしないよう、顔の隠れるローブに軍服を変化させる。
「じゃあ俺っち言って来るからさ。いい子にしてなよ~」
「……」
じろりと無表情でコチラを見るマーコ。
そう言えばおにぎり小僧の体ではないから、今はもう彼女に命令出来ないんだった。
「おにぎり小僧じゃなくなった途端これか……ったく」
返ってきても刺されることが無いように命令してはいるものの、恐らくとても彼女は僕を恨んでいるだろうから、隙があれば殺しにくるだろう。あぁ、恐ろしい。
♢♢♢
例の酒場へと向かうと、早速彼女を見つけることが出来た。
今回はコボルト村で見かけた短剣使いのお嬢さんと、頭を射抜いた戦士も同席している。
逃亡犯にどんな反応を見せるか分からないが、もし通報されるようなことがあれば逃げよう。もし彼女に直接捕まえられたら、その時のことはマーコに言ってあるからそれも問題ない。
直接殺されるなんてことはないと思うが、もしも兵舎前の門番が彼女の親類縁者の類で、彼の顔面を色の悪いジャガイモに変えたことに激怒していたとしたら、その時は土下座しよう。きっと許してはくれないだろうけれど。
「よぉーすパオン」
そう話しかけると、割って入ってきたのは同じパーティーメンバーの剣士君だった。
「なにもんだ? てめぇ…」
名前は…確か、コンラッド君。ダンジョンの中でパオンにそう呼ばれていたはず。それでコチラに興味なさげに食事に手を伸ばしている少女が短剣使いのティッキーだ。仲間の弓使いを食べた時のことだから、鮮明に今でも思い出せた。
「そうツンケンしないでくれよ。アンタの彼女を口説きに来たんじゃないんだからさ」
「なっ……」
コンラッド君はそれでしばらく空いた口が塞がらないようだったので、代わりにパオンに向き直った。
「アナタ捕まっていたはずじゃ…」
彼女は彼女で、脱獄囚が飲み屋に来ていることに驚いているようだった。
「俺っちの父親は偉い貴族様なんだぞーって言ったらすぐに出してくれたよ。それで? どうしたのその装備。今から戦いにでも行くって恰好に見えるけど」
「戦いに行くのよ。と言っても偵察が今回のメイン行動ではあるけれど」
「例の俺っちが教えてあげた森へかい? ココから歩き立ったら結構かかるぜ? 戦亀ならもうちっとばかし早く行けるかも知らねえけど」
「パオンにぁ高速移動があんだよ」
コンラッド君が鼻高々といった風に代わりに答えてくれたが、余計なことを喋るな、と言わんばかりのパオンの視線が彼に突き刺さることになった。
それでまたしゅんとなっているコンラッド君。彼はこのパーティの萌え担当なのかも知れない。
―――それはそうと、高速移動か。そんな便利な魔法があるなら、封じ手を考えておく必要があるだろう。
「今日中に行って帰ってこれんのかい」
「なに? なんでアナタに教えなくちゃいけないワケ? 」
「そんなチクチクしないで仲良くしよ? 俺たちもう友達以上の仲じゃない」
「友達以下他人未満ではあるかしら」
「知人ですらない!? 」
「ふん」
「なあ頼むぜ。今日夜酒場に探しに来ていなかったら寂しいじゃないの」
「夜はこないわ。すぐに戻って眠るもの」
「夜には帰ってこれんのか。ひゃー、忙しいねぇ~」
「うるさい人…」
「見送り行ってもいいかい。たぶん、俺っちがこの町にいるのも今日までだからさ。夕方にはもうこの町とはバイバイしなくちゃイケねえの」
「しつこいわね、だったらせめて酒場から出て行って。外で待てるなら、見送りぐらい許してあげるわ」
「マジで? よっしゃー。待ってるわ」
「わざわざそんなことを言いに来たの? 」
「ハハハッ…まあ」
「なに? 歯切れが悪い」
「お仲間とのお食事中に邪魔して悪かったな。お仲間さんにもよろしく! それじゃあ! 」
そう言って酒場を出た。酒の量や机に並べられた食事の量からして一時間ほどで出てくるだろう。それまで適当に時間を潰して彼女達を待っていることにしよう。
イソマルトにとってもこの町最後の時間だ。連絡を入れた後にやるべきことを考えよう。
まずはクロックドムッシュに連絡だ。
「コチラおにぎり小僧。突然で悪いっすけど、作戦日は今日のおそらく一~二時間後になりそうっす。あ、あと貴族殺すの時間的に無理そうなんでパスで良いっすか」
そう言うと向こう側が大騒ぎになった。
「…良いっすかって…そうか、今はおにぎりボディじゃないんだったな」
おにぎりボディでその態度だったらぶっ殺していたと言われ、おじさんとイソマルトの相性はとても悪いと思いつつ、作戦開始の都合を聞いた。
「もちろんコチラの準備はいつでも問題ない。そちらの指示が届き次第兵をゲートから町へ送ろう。冒険者の数はどうだ? 」
「見たところ前日よりも更に減ってるっスね。町の人間が逃げ出さないように結界の用意も…」
「そういった用意は全て終わっているさ。私を誰だと思っている」
「こりゃ失礼」
「それと、早いところおにぎり小僧の体に戻っておけよ。間違えて殺してしまったなんて報告、聞きたくはないからな」
「了解。それじゃあそう言うことで。よろしくどうぞ」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる