美少女おにぎり

星島新吾

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1章後半 デビルサイド編

40.休み

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 連絡も数分で終わってしまい、彼女達が酒場から出てくるだろう時間まではもう少し時間がある。外を歩いていれば衛兵に目をつけられるだろう。
 どこか見張れるような場所はないものか。
 ローブを深くかぶりながら辺りをきょろきょろする。しかし都合よく、そんな場所は無いようで、仕方なく、マーコの様子も気になるし、出てきたばかりだけど一度宿屋に戻ることにした。
 そして、そう決めてからの行動は早かった。
 宿屋まで移動し、二階の一番階段に近い扉をノック。この間一分も満たない早業を余裕の表情で決めてみせた。
「はーい、お待ちくださーい…って……なんだ」
「大丈夫かー? 」
「こんな短時間で帰ってこられたら、やることも出来ないよ! せっかくゆっくりできると思ったのにー! 」
「そっかそっか。そんじゃ今から出かけようぜ」
「えー。私魔族に襲われたせいで昨日から休みなしなんですけど」
「恐れ知らずの発言だなぁ」
「そうしたのはアナタじゃん」
 おっしゃる通り、君から恐怖を奪ったのは僕だ。だからと言って嫌味を言えるようにした覚えはない。
「休暇がいるのかよ? 」
「魔族は知らないけれど、人間には休暇が必要なんだよ」
 一日も働いていないヤツが言っていいセリフではないと思う。
「何日いるんだ? 」
「週休四日? 」
 彼女の言っていることが一瞬理解出来てなくて思考が停止する。
 これはデビルサイドの娼婦が皆こんな労働環境で生活しているのか、はたまた彼女が馬鹿なのか分からないが、当然許せることではない。
「舐めてんのか。完全週休二日制(土日祝)だ」
「悪魔? 」
「おにぎり族のおにぎり小僧だ」
 魔王様の誕生日のある週は、当然土曜日に仕事をして貰うぞ。
「週休三日で、祝日はそれとは別にお休み! これが守れなきゃ、私はもうここから動かないよ! 」
 コイツ…毎月シルバーウィークを作る気か?
 これは一旦、分からせる必要があるだろう。
「お前さん、立場ってものを理解していないんじゃないか。その気になれば殺してその辺に捨てても…」
「一階に一番近いこの部屋で、音もなく私を殺して外まで運べる? その後はどうする? もしかすると私は既にこの宿屋に遺書を残しているかも知れないよ? 」
 早口で彼女はそうまくし立てた。なるほど、確かにその可能性はあるだろう。
「……この短時間にそんなことがお前さんにできたってか? 」
 チラリと机を見る。確かに机の上にはインク壺に入った羽ペンが置かれていた。紙の方は見当たらないが、書いて何処かに隠したならば、ここに無いことも辻褄つじつまが合う。
「あなたは私に命令したでしょ。この宿屋から出てはいけないって。私は忠実にそれを守ったよ。そんな私を貴方は殺す? 」
 よく口の回る道具だ。
 …どうしたものかな。作戦決行が間近に迫っているこんな時に揉めもめ事をするのは得策ではないことは十分理解している。こんな時に味方の中に敵を作る必要はない。
 しかも折衷案を相手は出してきた。彼女なりの誠意は見せている。この時この場所で出来る最大限の抵抗をしてきたというわけか…なるほど、なるほどなー……。
「ハァ……あのさぁ……仲良くしようぜ…」
「条件次第だよ。私はもう出せる手札は全て出し尽くしたつもり。今度は貴方の番じゃないかな? 」
 今の彼女は今までで一番真剣な顔をしていた。
「…仕方ねぇ。後腐れある関係は好ましくないっつーのが俺っちの持論だからさ」
「週休三日!? ホントに!? 」
「好きにしろよ。ただ、俺っち移動の多い任務だから、休日が何もない道の上ってこともありえるぜ? 」
「なるべく休日までにどこかに到着できるよう、頑張ろう! わたしも頑張る! 」
「休みの日は絶対なんだな」
 彼女は興奮した様子で頷いた。どれだけ働きたくないんだ。
「そんじゃあ、一緒に教会までついて来てくれるか? 」
「素晴らしい労働環境をありがとうございます。おにぎり小僧様。喜んでお供させていただきます」
「調子が良いったらねえ……」
「お給料の相談は後ほど」
「お前さんマジかよ。俺っちから金までむしり取る気か? 」
「私は道具なんでしょ? だったらメンテナンス代だと思ってね」
 失うものもなく恐怖心もない彼女は、どうやら無敵の人になってしまったようで、要求してくることに歯止めが利かなくなっていた。
 適当に男を引っ掛けて貢がせれば良いのに。それが出来なくてもそのビジュアルならいくらでも男なら出すだろう。
 それがなんで初任給をワクワクしながら待ってる十七歳から集るたかる気になれるんだ? 
 皆が自分の武具とか戦亀の購入を検討する中で、なんで僕だけ道具のメンテ代にお金を取られなければならないんだ。
 こうなったら、色んな仕事をやらせてぼろ雑巾のように使い捨ててやる。
 ―――っといけない、いけない、これは悪い魔族の考え方だ。
 彼女も道具なりに馴れない環境で抑制出来ない不安もあるはず。
 出来る限りの配慮はして当然か。
「服を整えたら出発しようぜ」
「そう言えばこの服なんか変! 」
 次から次へと不満が出てくるお口ですこと。次は服ですか。
「ちゃんと魔族の兵士に支給される軍服だぞ」
 服装だって、前に彼女が来ていたものにソックリ合わせてある。何が不満なんだ。
「いやいや、そうじゃなくて! なんかこれ……生きてない? 」
「生きてるに決まってるだろ。軍服だぞ? 」
「あーはいはい、文化の違いだよね! 私は突っ込まないぞ―――――! 」
 文化の違いというより、魔族に対する知識が乏しいだけである。
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