この恋は推すわけにも退くわけにもいかない

藤谷葵

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第3話

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 気分転換に、コンサートに行くことにした。前から予約を入れていたもの。前の方が取れたので、ラッキーと思いながら。
 まあ、気分転換でなくてもコンサートは行くんだけどね。
 そして、コンサート当日。
 行列からやっと会場内に入り、自分の席を探す。そして、席を見つけると、隣には既に座っていた人がいた。

「隣、失礼します……」
「は、はい」

 ちょっとしたマナーのつもりで声を掛けたら、なんと隣の席が花畑さんであった。花畑さんはバツが悪そうな顔をして、反対を向く。
 私は、口を結んで自分の席に座る。色々な意味で緊張するコンサートとなった。
 そして、コンサートが始まり、セナ君が登場した。
 歓声が上がる中、私も負けじとペンライトを振りつつ、応援をする。

「「セナく~ん!!」」

 隣の席の人とハモった。もちろん、花畑さんのことである。お互いに見合わせる。だが、セナ君が歌い始めたので、血みどろの戦争にはならなかった。

「「キャ~、セナ君!! もっとこっち来て!!」」

 また顔を見合わせる。なぜ同じセリフが被るのだろう?
 コンサートはファンを狂わせる。
 最後の方には、私と花畑さんは興奮しつつ、両手を繋ぎ、セナ君に歓声をあげていた。

 コンサートが終わり、謎の虚無感が生まれる。

(なんで私たち、同担拒否なのに、一緒に興奮していたんだろう? しかも、同じタイミングに同じセリフ……)

 二人で無言で帰る。帰るべきは同じ方向なのだから、自然と一緒に帰ることになった。
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