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からみ
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※アテンション※
・落ちもなにもないただの雑多
・登場人物は幽霊では無い
・登場人物は幽霊では無い
以下、本文
───────────────────────
『からみ』
好きな人はいるか。多くの学生諸君は、それを問われて顔を赤らめるか動揺するか、何かしらの反応を示すだろう。それは童貞やら処女やら思春期野郎共によくある反応でまったく望んだ反応ではない。
では質問を変えよう。
愛とは何か。我らの知ったことではない。
さらに質問を変える。
好きとは何だ。感情の一種、と答えるものが多いと思う。主観だが。
ぼくはそうは思わない。好きとは感情でもなんでもない、ただの振れ幅だ。好きか嫌いか。それは感情と形容出来るほどに明確なものではないのだ。
__さて、前置きが長くなったな。ここから始まるものは、ぼくの一生の黒歴史のひとつ、高校時代にあったことだ。ただ馬鹿馬鹿しいだけの話で、汚点で、夢を見すぎていた話。
***
わたしは先輩のことが好きだ。いつでも格好良くて、かわいい先輩。
どこが好きかって?
風で揺れる少し短いスカートを手で抑えて振り向くところ。
艶々した美しい黒髪。
少し細められた目元とか、笑い方とか。
枚挙に暇がないくらいに先輩が好きだ。
なのに、先輩は振り向いてくれないの。
かなしいねって、声がして。
わたしは今日も、眠り続ける。
次に起きるのはいつかしら。
***
「────!」
声がする。呼んでくれたから、振り向いて手を振る。
後輩の子はかわいい。忠犬みたいに私に付いてくる。名前を呼べれば、どれだけ良かっただろうか。
たらればは意味が無いのでやめにする。
ああ、卒業したくないな。
***
ふと目覚める。今日は先輩の卒業式の日だ。楽しみ、と呟く声がした。
なるほど今日は自分の日か。独りごちてからぼくは周囲を見渡す。
いつもと寸分違わぬ白い部屋。己を包む衣服も変わらず、ひとつだけ違うのは卒業式の日ということ。それも大多数の人間は何とも思わないが。
景色は移る。今度は廊下が映り、二、三度角を折れて四角い箱に乗って地下へ。
数人の大人に囲まれた先輩を見つけて、景色は止まる。
「──先輩っ!」
声は上擦る。なんて情けない声だと、ぼくは思う。
せっかくの晴れ舞台に、不釣り合いな真白の一張羅を着て、先輩は笑う。声のない笑い、先輩の笑い方。細い腕に触れる。手を離すと先輩はなにか呟いた。
大人がぼくの両側から出て来て、先輩はそれについて行く。
ああ、今の先輩は好きだ。
昔は嫌いだったけど。
だって、うるさかったんだ。
アイツはいつもいつも先輩の事を話すから。しつこくて嫌い。
でも、こんなにアイツが奥手で、仕方なく代わりをしたら、存外好きになって。
譲ってやる。
「──先輩待って!おいてかないで!」
喉の奥に仕舞い込んだそれは、簡単に口を突いた。
先輩は微かにこちらを向き、名残惜しそうに歪な笑みを浮かべて、それから去って行った。
先輩、振り向いてくれて良かったな。
ぼくは、雪が溶けるのを感じた。
***
目が覚める。わたし、寝たままだった。でももう、起きたくないな。先輩と一緒がいい。
ずっと振り向いてくれなかった先輩が、やっと振り向いてくれたんだもん。
それくらいは良いでしょ?
───────────────────────
以下、注釈
・先輩と後輩の百合ではないです、薔薇でもないです。断じて。
・解説はあくまで作者の解釈です。読みたくなければ読まなくて大丈夫です。
《解説》
・主人公について
この話の主人公は二重人格です。具体的に言うと一人称ぼくの方が副人格、わたしの方が主人格。『わたし』は先輩が好きで、『ぼく』は嫌いだったけど、『わたし』がずっとその話をするから好きになった。代わりに何たらはそれ由来。
・先輩について
声が出ない、要は失声症みたいなものと思ってもらえば。日に日に衰弱してってる。
・大人たちについて
先輩を連れていくひと。どこへかは分かる。
・場所について
病院。
・卒業式について
死ぬこと。安楽死させる感じ。
・目が覚める
人格交代のこと。覚めた方に身体の操作権はない。
・ラストシーンについて
『わたし』は先輩と話したことはない。『ぼく』と一度も人格交代をしたことがなかったため。それが卒業式の日に初めて交代させられて、って感じ。結局先輩は死んだので、もう疲れて、以降ずっと『ぼく』に身体を委ねてる。振り向くうんぬんはそこから。
・からみ
現実にはからみというものは存在しないので、そこ由来。
・落ちもなにもないただの雑多
・登場人物は幽霊では無い
・登場人物は幽霊では無い
以下、本文
───────────────────────
『からみ』
好きな人はいるか。多くの学生諸君は、それを問われて顔を赤らめるか動揺するか、何かしらの反応を示すだろう。それは童貞やら処女やら思春期野郎共によくある反応でまったく望んだ反応ではない。
では質問を変えよう。
愛とは何か。我らの知ったことではない。
さらに質問を変える。
好きとは何だ。感情の一種、と答えるものが多いと思う。主観だが。
ぼくはそうは思わない。好きとは感情でもなんでもない、ただの振れ幅だ。好きか嫌いか。それは感情と形容出来るほどに明確なものではないのだ。
__さて、前置きが長くなったな。ここから始まるものは、ぼくの一生の黒歴史のひとつ、高校時代にあったことだ。ただ馬鹿馬鹿しいだけの話で、汚点で、夢を見すぎていた話。
***
わたしは先輩のことが好きだ。いつでも格好良くて、かわいい先輩。
どこが好きかって?
風で揺れる少し短いスカートを手で抑えて振り向くところ。
艶々した美しい黒髪。
少し細められた目元とか、笑い方とか。
枚挙に暇がないくらいに先輩が好きだ。
なのに、先輩は振り向いてくれないの。
かなしいねって、声がして。
わたしは今日も、眠り続ける。
次に起きるのはいつかしら。
***
「────!」
声がする。呼んでくれたから、振り向いて手を振る。
後輩の子はかわいい。忠犬みたいに私に付いてくる。名前を呼べれば、どれだけ良かっただろうか。
たらればは意味が無いのでやめにする。
ああ、卒業したくないな。
***
ふと目覚める。今日は先輩の卒業式の日だ。楽しみ、と呟く声がした。
なるほど今日は自分の日か。独りごちてからぼくは周囲を見渡す。
いつもと寸分違わぬ白い部屋。己を包む衣服も変わらず、ひとつだけ違うのは卒業式の日ということ。それも大多数の人間は何とも思わないが。
景色は移る。今度は廊下が映り、二、三度角を折れて四角い箱に乗って地下へ。
数人の大人に囲まれた先輩を見つけて、景色は止まる。
「──先輩っ!」
声は上擦る。なんて情けない声だと、ぼくは思う。
せっかくの晴れ舞台に、不釣り合いな真白の一張羅を着て、先輩は笑う。声のない笑い、先輩の笑い方。細い腕に触れる。手を離すと先輩はなにか呟いた。
大人がぼくの両側から出て来て、先輩はそれについて行く。
ああ、今の先輩は好きだ。
昔は嫌いだったけど。
だって、うるさかったんだ。
アイツはいつもいつも先輩の事を話すから。しつこくて嫌い。
でも、こんなにアイツが奥手で、仕方なく代わりをしたら、存外好きになって。
譲ってやる。
「──先輩待って!おいてかないで!」
喉の奥に仕舞い込んだそれは、簡単に口を突いた。
先輩は微かにこちらを向き、名残惜しそうに歪な笑みを浮かべて、それから去って行った。
先輩、振り向いてくれて良かったな。
ぼくは、雪が溶けるのを感じた。
***
目が覚める。わたし、寝たままだった。でももう、起きたくないな。先輩と一緒がいい。
ずっと振り向いてくれなかった先輩が、やっと振り向いてくれたんだもん。
それくらいは良いでしょ?
───────────────────────
以下、注釈
・先輩と後輩の百合ではないです、薔薇でもないです。断じて。
・解説はあくまで作者の解釈です。読みたくなければ読まなくて大丈夫です。
《解説》
・主人公について
この話の主人公は二重人格です。具体的に言うと一人称ぼくの方が副人格、わたしの方が主人格。『わたし』は先輩が好きで、『ぼく』は嫌いだったけど、『わたし』がずっとその話をするから好きになった。代わりに何たらはそれ由来。
・先輩について
声が出ない、要は失声症みたいなものと思ってもらえば。日に日に衰弱してってる。
・大人たちについて
先輩を連れていくひと。どこへかは分かる。
・場所について
病院。
・卒業式について
死ぬこと。安楽死させる感じ。
・目が覚める
人格交代のこと。覚めた方に身体の操作権はない。
・ラストシーンについて
『わたし』は先輩と話したことはない。『ぼく』と一度も人格交代をしたことがなかったため。それが卒業式の日に初めて交代させられて、って感じ。結局先輩は死んだので、もう疲れて、以降ずっと『ぼく』に身体を委ねてる。振り向くうんぬんはそこから。
・からみ
現実にはからみというものは存在しないので、そこ由来。
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