カラダで熱を確かめて

タマ鳥

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七夜

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薫の提案で付き合いを始めてから数日、少しずつ薫がモテる理由が分かってきた。


完璧な旅行の計画。しかしその中でもかなりの自由度があり、私が気になって立ち寄りたいと言ったところは回ってくれるのだ。それに、



「可愛い~!」


着物が着たいとは言ってないのに、着物の予約をしてくれた。目の前には色とりどりの着物。薫を見ると、濃紺のシンプルな男用の着物を着こなしている。白い肌と黒の対比が圧倒的に美しさを醸し出している。


「薫どれがいいかなあ。」


「梓は意外とこういう色合うんじゃない?」


薫が提示してくれたのはくすみピンクのレトロ柄な着物。せっかくなので私はその色に決める。中は白レース基調の半衿。帯もくすんだアイボリーにしてもらい、髪はふわふわの三つ編みにして貰った



「凄いねえ薫!着物のツーショまでお店で撮ってもらえるなんて!」


「ここまではしゃがれると恥ずかしいんだけど。」


ぴょんぴょんとスマホに残った私達のツーショを見せる。でも、薫と二人の写真なんて、中学校までしか撮ってない。そこからは薫とは写真を撮る機会なんてなかったんだから。



「じゃあ今日は、ツーショ沢山撮る?」



薫が呆れた顔をしながらもどこか嬉しそうに私に提案する。



「沢山撮る!そしてアルバムにするんだ~。」


それから、私は一日目同様薫の手を握り、清水坂をずんずんと進む。



「薫~、こっち向いて!」


薫は憎いほど被写体として最高だ。なんだか少年のように清水寺脇の馬小屋を見て喜んでる薫を呼び、振り向いたところを撮る。普通のカメラで撮ってもこんなにかっこいい。加工アプリ混みじゃないと盛れない私とは大違いだ。



「そんな馬小屋見て楽しい?」


「楽しいよ。だってここ、信長とか秀吉も馬を止めてた所らしいから。」



歴史には疎いので、薫が何やらうんちくを語ってるのをポケーっと聞いてる。ハッとした薫が慌ててごめん。と謝った。



「んー、なんだか薫がすごく楽しそうに話すから見とれてただけだよ。だから謝らなくていいよ~。」



そっか。薫は意外と寺社仏閣が好きなのかもしれない。私は、薫に清水寺っていつ建てられたの?と聞く。薫は嬉しそうにその歴史を話してくれた。まるで昔横で私に色々勉強を教えてくれる薫と被って、やっぱり私は見とれてしまう。



「薫ココ!ここでおみくじ引かないと!!!」


ぴょんぴょんと跳ね、薫の腕を引っ張る。薫はなんだか怖いなあと私に苦笑いを向けた。


「ここは薫が引いて。私の念は薫の右手に込めといたから!」


「何でだし。そこは梓が引いてよ。俺そんな大役務められないから。」


「お願い!薫1回引いてみて!」


薫は渋々引く。何故か私まで緊張してきた。それからゆっくり開いたおみくじは、なんと1番の大吉だった。



「思い立ったらすぐ始めるのが吉、だって。やっぱり早くルームシェアしたいね~。」


ニコニコと笑う私を横目に、薫は心の底から安心したような顔をしていた。



「薫どうした?」



「よかった~大吉で。これで凶とか出てたらガチで立ち直れない。」



何だか本当に深刻かのように話す薫に、私は笑う。



「良かったね。私たち2人のパワー最強じゃん!」



「ん。もうずっとこの手を離せない。」


薫が私の左手を握り直す。その手が、先程とは違い、指を絡め合う恋人繋ぎに変わっていて、なんだかドキドキしてしまった。




2日目は、祇園にある焼き鳥屋さんに来ていた。

「ずっとカメラフォルダばっかり見て。ほら、お酒来たよ。」



「ふふ。薫と沢山思い出作っちゃった~って嬉しくって。ほら、これとか薫すっごい楽しそう。」



それは幕末のミュージアムの前でまるで少年のように目を輝かせながら幕末の偉人を見る薫。


「やめて恥ずかしい。」



「楽しかったね~。私薫とずっと一緒にいたけど、薫が好きな物ってあんまり知らなかったから。私はミーハータイプで、何かにハマってるものってのはないけど薫は好きなものがあってこうして楽しそうに見てるから。そして気づいたんだ。私は好きなものを見てる薫が好きだなあって。」



「俺の好きな物とか知りたいの?」



「そりゃあ知りたいよ。」



「じゃあ、俺がアニメとか好きって言ったら?」



「そしたら薫と一緒に私もそのアニメ見る~。てか、好きな人が好きな物って女の子なら誰でも興味あるんじゃない?」



思わず素でポロッと好きな人と言ってしまった。あれ?なんでだ?薫より私の方が混乱する。



「分かってるよ。あくまでも今は俺が彼氏だし、世間一般で見たら好きな人に当たるもんな。」


薫が言った事であってるのに、なんで否定したくなるんだろう。そんなことは無いのに。



「そ、そうそう!彼氏が好きなものは気になるのが世の中の理ってやつです!」



それから誤魔化すようにしっとりしている鶏ハムを食べる。焼き鳥屋さんなだけあって、鳥料理はどれも絶品だ。




帰り道、先程の地主神社から握られたように、当たり前に恋人繋ぎ。


私はふざけたように指をパラパラと動かしたり、中指だけ強くしたりと彼の手のひらの中で遊ぶ。薫も対抗するように私の動く指を自分の指で止めようとしたりする。旅館までは結構距離があるのに、なんだかとっても早く感じた。



旅館に着いた瞬間、薫が私の唇に深いキスを落とす。私もそれに応えるように舌で彼の舌を追いかけた。壁に私の腰が当たる。深くなるキス。私の両手は彼の両手とがっちり恋人繋ぎだ。



「梓、今日一緒にお風呂に入らない?」


薫の提案に、私は真っ赤な顔で頷く。昨日入った時、なんだか広く感じ寂しく感じたから、今日は2人で入れることに嬉しくなり、ついつい緩んだ顔になってしまう。





くちゅ…と広い浴槽の中に卑猥な音が響く。


「っん、薫、のぼせちゃう。」


檜風呂は、一人で入るのには広いが、二人で入るには狭い。私は薫の間にピッタリと挟まる形になる。


「梓柔らかくて、くせになりそう。」


キスを終え、満足した薫は私のお腹や太ももをむにむにと触る。



「んっ、ダメ、結構くすぐったい。」


「くすぐったいんだ。じゃあここは?」


それから背骨を指でツツっと撫でる。思わず背がピンッと伸びた。



「もうやめてよ。そんな意地悪ばっかするなら先上がるよ。」



「ごめんって。」


笑いながら薫が答えるが、声色から全然反省してるようには思えない。

「も~。えいっ!」


私は振り返り、薫の体に腕を回し、背中を指でなぞる。薫もくすぐったいのか、やめろ馬鹿と私の腕を掴んだ。


恐らく私、過去の恋愛を振り返ってもこんなに彼氏とイチャイチャしたことなんてない。なのに、薫とはなんだか気恥しいけど出来てしまうのだ。素直に甘えてしまえるのだ。


「薫の彼女になって、ますます薫がなんで彼女とすぐ別れるのか意味わかんなくなってきちゃった。なんなの?月日が経てば私暴力振るわれるの?」



「振るうか馬鹿。」


それから薫はさっさとお風呂から上がってしまった。うーん、やっぱり1人になるとこの浴槽は駄々広くどこか寂しい。




「わかった!じゃあ薫が自分から女の子振ってんだ!」



「あーはいはい。そうなりますねー。」



お風呂からあがり、バスローブに身を包むと先に上がった薫が自分のカメラロールを見ていた。



「何その返答!薫、今更ルームシェアキャンセルとかやめてよ?私もう電気と水道来月から止まるんだから。」


「大丈夫。梓との同居は梓がやめなければ解消しないから。」



薫はスマホを落とし、私の髪にキスを落とした。



「てかスマホで何見てんの?」



「別になんでもいいだろ。」



そんなにあからさまに隠されると、こっちも気になるってもんだ。



「見せてよ~。ケチー」


それから、スマホのロックを開けるように薫にせがむと、結構あっさり開いてくれた。……元カレは誰もスマホの中身を見せようとしなかったのに。


「えっ、これ私の写真じゃん!」



「…アルバムにすんだろ?だからどれがいいか選んでた。」



先程2人のLINEでアルバムは作ったが、私ばっかりが載せてて薫は何も乗せてなかった。それでも結構写真は撮っててくれてたのには気付いてたから、なんでだろうとは思ってたけど



「薫って結構融通きかない?別に全部乗せてくれていいのに。」



「ほらさっさと選んで。」


「はーい。」


食べ物や薫の写真、ツーショットが多い私のアルバムと比べ、薫は建物や私個人がはしゃいでいる写真が多い。



「被写体が悪くて映えてないなあ。」



「別にそんなことないだろ。これとか結構可愛いと思うよ?」


可愛い!?薫の方をばっと向くと、しまったと言わんばかりの顔。



「…何その顔。本当に可愛いと思ってんの?」



ついつい馬鹿にされたかと思っていたが、薫の反応はまるでポロッと言ってしまったかのように真っ赤。本当に私の事、可愛いと思ってくれてるって感じだ。



「えっ、そう思ってくれてるのならすっごく嬉しいんだけど。」



薫は答える代わりに、私の唇にやさしいキスを落とす。


今まで経験してきた恋愛は、どこか面倒くさいと思っていた。だけど薫と付き合うというのはどこか、ぬるま湯に浸かったような気持ちになれる。


ずっと抜け出せないのだ。



「梓は小さい頃からずっと、可愛いよ。」



チャラ男だったくせにこんな言葉も言い慣れてないのか、薫の顔が赤くなる。私は、薫を受け入れるようにほんの少しだけ唇に隙間を作る。すると薫はその隙間に熱く分厚い舌をねじ込んできた。


「私ね、こんなに彼氏とイチャイチャしたことなんてなくて、なんだかすごく安心出来るお付き合いってのを今改めて実感してる。薫やっぱり、凄いよ。」


長めのキスに恍惚とした表情を薫に見せる。薫は褒められ慣れてないのか、少しだけ困ったような顔をした。



「アズ、バスローブ脱いで。」



私ははらりとまとっていた布を脱ぐ。それからむき出しになった生身。薫はそのまま私のツンとたった蕾にいやらしい音を立てながらしゃぶりついた。



「あ、ひゃん、ッ!」


初めての感触に、思わず背中が弓を張るように反り返る。


「か、かおるぅ~、へんになるぅ~、あっ、」



だが薫は、弄ることをやめない。それどころか優しく少しだけ甘噛みする。



人間の体は不思議なもので、上の蕾を噛まれたのに、下の方もぐちゃっと濡れるのだ。私が股をくねらせた時の僅かな水音。それを薫は聞き逃してはいなかった。



「アズ、変態。」



「やぁ、あぅんっ、」



何回挿れられたかわからない、薫の指が私のナカに入る。薫は私の気持ちのいいところを重点的に攻める。



「あぁ、あん、い、イくっ、」




中と外の敏感なところを同時に刺激され、私はイってしまった。



「はぁ、なんで、薫とヤるとこんなにぐちゃぐちゃになるんだろう。」



「知らないよ。それよりもほら、こっち来て。」



薫は私が果ててぐったりしている間に既にマナーを装着していたようで、綺麗な日本庭園の見える窓ガラスに私の両手を付け、立ったままバックで挿入した。



「あっ、あん、あ、ャあ…ひゃ、っ」



動きに合わせて声が出る。外を見ると、夜なのに綺麗にされている庭園。そんなのを見ながら後ろからは快感を与えられている状況に、なんだか興奮して愛液がナカから溢れ出てしまう。



「すごっ、何回もできそう……ッ」



意外と絶倫な薫は、そのまま1回射精したと同時に、興奮冷めやらぬまま今度はベッドに押し倒しながらもう一度する。私は喉がかれるまで、彼の肉棒を受けいれながら果てた。




「「はぁ~。」」



薫は限界まで射精し尽くし、私も限界までイッた。それくらいお互いがお互いの色んな液でぐちゃぐちゃになってしまったので、もう一度お風呂に入る。



「キモチかった~。」



薫は先程までは獰猛な獣のようだったのに今やすっかり家猫のようにきゅぅと甘えたになっている。



「ね~。今までで1番激しかったかもね。」



「俺、別の条件与えてくれればこれ以上激しくできるよ?」



「例えば。」


「○○○とか?」




「何それ。」


クスッと笑うと、薫も同じように笑い返した。先程とは違い、穏やかな入浴。色々身体を洗い流し、それから2人で濡れてないところを探しながらちまっと抱き合って眠った。




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