ここに魔法が生まれたら

羽野 奏

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4.朔夜の出来事

(1/9 story・上田・アーサー・来音)指先からシグナル

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「待ってってー、もーぉ!」

さとるっちの声が響く中、灰色の羽に視界が覆われていく。

「うわっ!羽っ!?」

オレはびっくりして、両手を顔の前でクロスするみたいに庇った。
ぶわわっと温かい風が通り抜け、恐るおそる手をほどいて目を開くと、そこは誰かの家の庭先。
ところどころ雑草が残っているところもあるけど、小ざっぱりとしていてちゃんと手入れされているのが分かる。

「僕んちへようこそ」

声の方へ振り向くと、プライベートを覗かれて恥ずかしかったのか、ちょっと照れたように俯き加減のさとるっち。
鼻の頭をちょいちょいっと掻いて、どう?ご感想は?と聞いてくる。

「意外…戸建てに住んでんだ?」
「ん-そうなの、ばあちゃんから受け継いだんよ」
「いい家だね、なんだか落ち着く」
「おう、そう言ってくれると嬉しいわ」

そう言って、普段ハーフアップにしているゴムを解いて、髪の毛をわしゃわしゃと崩す。

なんかちょっと悔しい――

普段は明るい兄ちゃん!って感じなのに
普段よりテンションのギアを落としたゆるい動きをしていて、
顔周りにサラサラと掛かる髪の間から視線を送られると、ちょっと目のやり場に困る。
(大人の色気って言うのか、なんか、よくわかんないけどね)
実はきれいな顔してるんじゃんって気付いちゃったりして…
(これも一種のギャップ萌え?え?萌え?)
なんでオレがオッサン相手に萌えを感じてるんだかって、なんだかそれが悔しいんだ。

縁側にさとるっちは腰掛けて、トントンと隣を手のひらで叩いた。
(座れって事?)
そう思ったとき、茶色い塊が動いた気がして、うわっ?!って声を上げる。

「ハルタ、ただいま」

よく見れば、さとるっちの二の腕にぐりぐりと頭を押し付けて、犬が嬉しそうに尻尾を振っているのが分かった。

「ハルタ?この子の名前?」
「そう、5年前に拾ってなー。今では家族よ、オッサン同士のんびりやってます」

さとるっちの太ももの上にアゴを乗せて、撫でられているハルタはとっても満足そうだ。
そっと反対側に腰を下ろすと、ハルタの上目遣いの目がこちらに向いた。

「――こんばんは、ハルタ。お邪魔します」

おっかなびっくり挨拶をすると、ハルタはさとるっちの腹の方に顔をうごかして目線を逸らされてしまった。
そんな様子を見て、さとるっちが心配そうにこちらをのぞき込む。

「犬、苦手?もしかしてアレルギーとかある?」
「アレルギーじゃないよ、それは大丈夫。んー…ニガテっていうか、オレん家はネコ派で犬に触れる機会が無かったから、どうしたらいいか分からないんだよね、距離感とかさ」
「そっかー、アレルギーだったらいかんなぁーって思ったけど、違うなら良かった」

完全、リラックス状態の甘々な顔。
ランドの時の情けない顔も、普段の冗談交じりに会話をするときの顔も、仕事中のファインダーをのぞき込む真剣な顔も、全部さとるっちなんだろうけど、この顔が一番素の彼なんだろうと思う。
(んー、愛が重そうな顔だ)

「来音ちゃん、実はハルタと仲良くしてみたかったり?」

オレの視線の先を見事に誤解してくれてホッとする。
まさか、さとるっちを見てたなんて言えないもんね。

「そだね…ちょこっと触ってみたいかも?――でも、ハルタ大きいからちょっと怖い」
「んじゃ、まあ無理せずに、慣れてからでね。来音ちゃんの不安や恐怖心はハルタにも伝わるからさ」
「うん、そうする」

少しばかりの静寂、遠くで車の往来の音が絶え間なく…
近所の家々は、すでに眠りに付いているのか生活音もなく、風の通り抜ける音がする。

横から、じっと見つめられる視線を感じて「ん?」てその視線を真向に受けに行く。

「この前も思ったけど、キレイな瞳よな」
「なに、突然…」
「エストニア人だっけ、お父さん」
「よく知ってるね、で、それがなに?」
「いや、ただの感想。夜でもそんなキレイに瞳の色が発色するんだーって思って、そんで、その大変キレイな彫の深いご尊顔を、写真に収めたいなって思っただけ」
「本当に写真、好きなんだね」
「好きだねー!自分の手で思い出を切り取って残せるって凄くない?――あ!そういえば…この前、ありがとうなー。あれ好評で第二弾期待の声が寄せられてるよ」
「シリーズ化でもする?」
「いいの!?」
「タイトルは、”オッサンと行く!レオ散歩”とかどう?」

ニイッと笑うオレの様子に気づいて、さとるっちはオデコをぺーんって叩いて、大げさに天を仰ぐ。

「なーんだ、社交辞令かーい!ぬか喜びさせてっ!来音ちゃんったら悪い子ぉ」
「いや、この前のアレ、事務所に結構怒られたんだよねぇ…なので、仕事はちゃんと事務所を通して事前にオファーしてください」
「ありゃま、そりゃ申し訳ない事しちゃったね」

事後ではあったけど、草案の時点で事務所に確認はとったし、ちゃんと報酬ギャラも発生したはずなんだけどなって、さとるっちは言って、鼻の頭を掻いた。

「でもさ、楽しかったねランド」
「僕にとっては結構ハードでしたけどねー」
「平気そうなのにね、前半は悪かったって思ってマス。でもでも、後半はちゃんとカッコ良かったよ!仕事してる男って感じで」
「え、ホント?!そこは本当に喜んじゃっていいやつ?」
「うん、そこは喜んじゃっていいヤツ」

じゃあ、喜んじゃう!って、噛みしめるように喜ぶ姿。
なんだかいいなぁって思った。
誰かとこんな風に笑い合ったのって、いつ以来だっけ?

「え?あれ?」

ハルタがのっそり立ち上がって、さとるっちの背後を回って、オレ達の間に座った。

「おお。なんかハルタは来音ちゃんと仲良くしたいみたいよ?」

こーやって、手を出してみ?って、軽くグーに握った手を鼻先に持っていくように言われ、オレはゆっくりとハルタの前に拳に握った手を差し出した。

フンフンと近づくハルタの鼻がちょんっと触れて、柔らかさと湿り気に、生き物のリアルな息遣いを感じる。

「そろそろいいかな…ゆっくりこの辺撫でてみな」

人間で言うと肩あたり、体の側面を撫でてみるように言われ、そっと触れた毛のモフっとした中にも少しだけ固い感触、奥の柔らかい身体の温かさに、なんだかほっこりした。

「ステラに怒られちゃうなぁ」
「ステラ?」
「オレん家の可愛いネコちゃん」
「可愛い名前やね」
「でしょ!星って意味なんだよ、我が家のアイドルスターだから”ステラ”なんだ。そういえば、ハルタはなんでハルタ?」
「え?あー…うん、それは、さ」

さとるっちらしくない…躊躇するように返答に詰まって、少しだけ言いよどんだ後、観念したように肩を落として答えた。

「うーん、知らんっ」
「え?なんで?」
「その子の名前、付けたのオレじゃないから」
「そうなの?」
「うん、友達の女の子がつけてくれた」

言い回しが気になる。
彼女だったらそういえばいいのに、だから、そのまま聞き返す。

「彼女じゃなくて?」
「そ、当時、小学生の女の子」

返ってきた返答は予想外なもので、さとるっちと小学生の接点が思い浮かばなくて…

「え?待って、警察呼ぶ?」
「事案じゃないから!健全な友人関係よ?まあ、今は…高校生になっててな。たぶん、来音くんの知ってる子だと思うよ」
「知ってる?誰?」
「河合 美姫ちゃんって言うんだよね」
「河合って――筑波さんの親友の子?クラス一緒だよ、知ってる」

そういえば、あの事故があって…金曜日、河合さん学校に来てなかったななんて思い出す。
その河合さんと知り合い?ますます接点が分からない。

「今、行方不明なんよね、美姫ちゃん」
「え?」

ハルタを撫でていた手が止まる。
(まって、情報過多で理解が追い付かない)

「学校にも来てなかったでしょ?」
「うん、来てなかった。ショックで学校休んだのかなって思ってたんだけど…行方不明?」
「そうみたい、僕も探してるんだけどね…見つからなくてさ」

さっきまでハルタに伸ばしていた手を、今度はさとるっちに向ける。
少し丸まった背を、さすって、ちょっとでも元気付けられないかって手のひらに念じる。

「ねえ、さとるっちと河合さんの接点、聞いてもいい?」
「あー、やっぱりそこ気になっちゃうよね」
「だって、年も違うし、接点なさそうなんだもん」
「まあ、そうなんよね」
「でしょ?で、なんで知り合い?」

ハルタは二人の間で伏せをして、そのまま居座るようだ。
その背中をぽんぽんっと優しく叩いて、さとるっちは、ふぅっと息を吐いた。

「美姫ちゃんのお母さんね、河合 小春さんって言うんだけど、その人が日本で初めての魔法使いって言われてるんだ」
「あ、じゃあ、その人つながりって事?」
「詳しくは端折るけど、まあ、そういうこと」
「心配…だよね?」

オレが覗き込むように聞くと、がばっと視界が塞がる。

「どわっ!?ちょ、やめ…っ!ねぇっ!!」

ガシガシ、わしゃわしゃと、両手で全力で頭を撫でまわされる。

「そんな顔しーなーいー!!」
「もー!髪、ぼさぼさー!」

庭に降りたハルタが、ちょっとだけ興奮した様子でぐるっとひと回りすると
『ボクも!ボクにもやって!!』と言うように、交互にオレたちに頭を押し付けてくる。
その要求に応えるように、さとるっちは縁側から降りて、思いっきりハルタを撫でてやった。

すっと立ち上がると、両手をズボンのポケットに突っ込んで、背中越しにさっきのオレの言葉に返事をくれた。

「心配は、心配なんだけどさ…どうも自分からの家出みたいだから、事件性はないんだよ。だから、来音ちゃんがそんな辛そうな顔するほどの事じゃないから気にしない、ね?」
「家出したってこと?」

振り返った、さとるっちの指先にはカギがぶら下がっている。

「たぶん、家出だと思う。さあ、ずいぶん遅くなったからそろそろ送っていくよ」
「え?もう帰んなきゃダメ?」
「親御さん心配されてるでしょ?せめて日をまたぐ前までには送るから」

先に連絡入れときなって言いながら、おいでって手招かれる。

「パパは海外赴任中、ママは旅行中で誰も家に居ないんだよね…だから、連絡はいらないよ」
「マジかー。でもステラちゃん待ってるでしょ?」
「えー…まあ、そうなんだけどさ」

ここはなんだか居心地が良くて、ずっとここでこうして座っていたくなる。
不思議…他人なんて面倒くさいと思っていたのに、さとるっちの側は落ち着くんだ。
(ハルタの気持ち、ちょっと分かるかも)

トコトコとさとるっちの方へ向かうと「よく来ました」って迎えられる。
ハルタを真似て、そのままわき腹辺りにぐりぐりと頭を押し付けてみた。

「お?おおっ?!ちょー…くすぐったっ!あはは、あははははっ!!くすぐったいってー」

ひとしきり、満足するまでそうしてみて、なんとなく気が済んだ。

「帰る、車あっち?」
「あれ?え?」

ナデナデのための手が空を切って、そのままその手をどうしましょう状態のさとるっちを残して、車へと向かう。

「あ、うん、はい、そっち…いやー、猫派ってそうよなぁー」
「なんか言った?」
「いえ、何でもございません」

カギをプラプラさせながら、横に追い付いてきたさとるっち。

「あ、ハルタもおいでー、久しぶりにドライブしよう」

その呼び声に、嬉しそうに駆け寄ってくるハルタ。

「じゃあ、オレとハルタ後ろね!」
「おーおー、来音ちゃん、すっかりハルタに慣れたね」

さとるっちは、仲良いことはヨロシイ事で…と、言いながら車のロックを解除する。
そして、オレのこと、宣言通り日をまたぐ前に送り返してくれたんだ。
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