ここに魔法が生まれたら

羽野 奏

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6.決戦の刻

4.一刀両断ー戯咲ー

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「おかえり、大樹。活躍について聞きたいところだけど、今は――ちょっと難しいね」

倒木を避けて咲夜さんの側まで避難すると、チラッとこっちを見て迎えてくれた。

「蛾の女王も、ずいぶんお怒りのご様子。イイねぇ、焦ってるって事は手札が無くなってきたって証拠だ!喜ばしい傾向だよ」

全く力んだ様子もなく、飄々とした態度。
咲夜さんがこんな感じだから、とてつもなく危険な今の状態でも、なんだか平気なのかもって落ち着いていられる。
不思議なんだ、ちゃんと出会ってから何日も経ってないのに、なんだか安心感を感じるなんて。

「できれば、地上に降りていただきたいところだけど…オレのやいばじゃ短くて届かないんだよねー」
「ごめんね、ボクが破壊しきれなくて」

ボクが凹んだ様子を見せると、慌てて顔の前で手をパタパタ振る。

「違うー!大樹を責めたかったんじゃないのー!!オレがもっと力があればなーって、ちょっと悔しかっただけだからー」

ヘラッと笑ってお道化どけて見せる。
でも分かる、きっと内心では自分に凄く苛立ってるんだ。

「だから…ねえ、吾川さん!オレには魔力あるかも疑惑、そろそろ白黒ハッキリさせたいんだけど、どうかな?」

肩越しに、見えてないはずの背後に声を飛ばす。
その声に、瓦礫の間から、吾川さんが顔を覗かせて「はいよー」って手を上げた。

「あ、もう聞いちゃいたい感じ?実はね、もう白黒ハッキリしちゃってるんだよね」
「え?マジ?いつの間に…で、どっち?!」

ちょっとビックリした表情の咲夜さんが目を見開いて、今度こそ吾川さんの方を向いた。

「ふふん、闇墜ちしてないか”解析”したとき、ついでに確認した。魔力はあるよ――”託宣”っていう能力らしいけど」

吾川さんは、心当たりある?って、人差し指を顎に当てて首を傾けた。
咲夜さんは、しゃがみ込むようにして、わーっと喋り出す。

「もーぉ、分かってたんなら、早く言ってよぉー!心当たりある!あるよーぅ」
「そっか、そっか、ゴメンねー。じゃあ、ついでに精錬してもらおうよ――”鑑定・深見 咲夜”」
「おっし!来い!!」

カモーンって、青龍刀を小脇に抱えて両手の指で呼びこむようなジェスチャーをする。
光の収束する先は右目。

「了解!行くよ、咲夜さん!――Refine・amethyst!」

波動に射抜かれて、咲夜さんは片手で顔を覆う。
その上に、蛇目によって”重力”の力で集められた木片が、その魔力を解かれて降り注ぐ。

「咲夜さん危な…!?」

ボクは木片を破壊しようと手を翳した、けど…

「クッ…クククッ、、、フハッ!いいねぇ、本当に気分がいいよ!――佳月・斬・刃砕!」

青龍刀を握り直し、咲夜さんの腕が閃く。青白い閃光、迷いない一撃。
たったその一振りだったはずなのに、バラバラと落ちて来た木片は、手のひらサイズにすべて切り刻まれ、地に落ちていく。

「”託宣”は神の言葉を神託として人々へ宣教すること、つまり、オレの言葉こそがことわり!オレが切れたといえば、刃が届かないところでも切れる!そういう事だよな?」
「――その通り、ちゃんと理解しちゃってる所とか…末恐ろしい神の遣いだよ、咲夜は」

半ば呆れたような表情で、降り注ぐ木屑を払いながら吾川さんが笑う。

「お褒めに預かり光栄。さあ、これでお前に刃が届くぞ!魅せてやるぜ――薄月・両断・諸羽」

――グギャ!?シャギャアアアアァァァッ!!

右の前翅を垂直に切り取られ、バランスを崩して邪の女は叫び声を上げながら地面へと墜落していく。
ズシャアッ!と大きな音をさせて、砂埃を舞い上げた。

(凄っ!邪の女の羽まで7,8メートルくらいはあるよ…)
夜烏の魔力に隠れて見えなかったくらいの魔力だったんじゃなかったっけ?
製錬されて強くなった?それとも元々魔力は高かったけど、それより更に夜烏の魔力が高かった?

ボクが色々と思いを巡らせている間に、再び飛び立とうとして、邪の女は震えながら体勢を整えようと足掻いている。

「人型を脱ぎ捨て、化け物になり果てて…喋ることも叶わず、知能まで吹き飛んでしまったみたいだね――節月・絶・棒脚」

容赦ない咲夜さんの攻撃がまた入る。
身体を支えようとした前脚が2本、簡単に飛んでいく。

「ははっ、流石に6本一気にはムリか。なんかゴメンね、レディに拷問みたいなこと…もっと一発でヤッてあげられればいいんだけど…キミ、デカすぎるから無理みたい」

ほとんど明日の空に沈みかけている月を背後に、肩に青龍刀を乗せて一休みといった感じの咲夜さんは妖艶な笑みを浮かべる。
チャリッと揺れた左耳のタッセルピアスを軽くいじって、次はどこを攻めようかといった感じだ。

(吾川さんのブラックな面とはまた違った怖さがあるよ…咲夜さん)
ボクは、絶対に逆らっちゃダメな人に吾川さんの次に咲夜さんの名前を刻み込んだ。

「すっげぇ、このまま一人で片づけちゃうんじゃない?」

沙羅の木が折れたとき、反対の方へ避けた翼が、なんとかこちらへ回り込んできて、この光景に「はぁー」とため息を吐き出した。

「でも、あんまり甘く見ない方が良いかも…」

そう言った吾川さんの声に反応したような、絶妙なタイミング。
ゾゾゾと音がして、無数の髪の毛のような黒い糸が邪の女の背の辺りから無数に伸びる。

「うえぇっ!?なに、あれ、キモいぃ!!」
「ほんと、バケモノな…」

背中に悪寒が走る。
ボクの声に同意して翼も渋い顔をして頷いた。
神社のお社や鳥居、ご神木に…しめ縄と、結界を張っているって咲夜さんが言っていた場所にまで、ことごとくその糸は絡んでいく。
庭木に伸びた髪は巻き付いて、巻き付かれた木は色を失って枯れてしまった。

「ほらね、古今東西・女の神様は執念深いのがお約束だよ」

吾川さんが嫌だねぇって言いながら、自身に伸びてきたその糸を閉じたままの鉄扇で薙ぎ払う。

「おいおい、これ何が起きてんだ?」って言いながら、薫さんと侑李さんがやってくる。
尋ねた薫さんに吾川さんが張り付けた笑顔のまますかさず応える。

「薫のせいで成長した神様が荒ぶっちゃってるんだよ」
「なんで俺のせいになるんだ?」
「自分で蒸し返すんだ?こうなる前に仕留めようとした咲夜に切られたのは誰?」
「あー、そうか、そうだよ、俺が悪かったって」
「あと5年は薫をこれでつつけそうだね。で?侑李は何やってるの?」

薫さんから侑李さんへ矛先を変えた吾川さん。
(ブラック吾川さん降臨だー)ってチラッと視線を送ったボクに気づいて、笑顔を張り付けたまま「うん?」って首を傾げるから、ジェスチャーで「何でもないです!」って全力で伝えた。

「うーん…やっぱり、これ、魔力とか生命力的なものを吸ってるみたいだね」

侑李さんは吾川さんに返答を返しながら、わざと腕に絡ませた糸を、氷で作った刃でプチンと切り離した。

「また、自分を犠牲にするような行いを…ホント、館山君は変わらないんだから、いいかい?君って人はあの時も!忘れもしない、夏季の集中講座のとき――」
「あー、はいはい。今はそんなことを言ってる場合じゃないよね?ほら、なんか邪の女の動きが変だよ」

粘着モードに突入しかけた吾川さんを、絶妙なタイミングで気を逸らせる侑李さん。
長年の年季を感じるやり取りに、翼とボクは顔を見合わせて苦笑いする。

「羽、修復されてない?」

と、言葉を発したのは彗さん。
いつも吾川さんの側に居るのに、今の今まで側に居なかったことに気づく。

「彗、お疲れ様。来音も無事でよかったよ」
「うん!彗さん凄いんだよ、重力を無効化する盾とか張ってくれて、邪の女の攻撃を心配しなくて良かったから、お陰で見つけられた!」

吾川さんにライトは何やら冊子のようなものを渡している。

「お疲れさま、うん、間違いない。これで少しはマシに戦えるかな」
「墨と筆はこっちに――」

続いて、彗さんが習字でお馴染みのすずりや筆、文鎮なんかも手渡してる。
(何が始まるのかな…?)
ボクは興味深げにそれをのぞき込む。

「咲夜!チャンバラごっこも良いけど、やっぱり咲夜はこっちでしょ!」
「チャンバラごっこって…オレ、これでも真剣に戦ってましたけど!?」
「意味は違うけど”ペンは剣よりも強し”だよ、まあ、さらに言えば、振るうのはペンじゃなくて筆だけどね」

筆の柄を咲夜さんへ向けて吾川さんが差し出す。
あわせて、先ほどの冊子のようなものも突き出すと、咲夜さんはふっと笑った。
(青龍刀を持っていた時の、狂気じみた気配が消えた?)

「もう、結界が破られるの…秒読みじゃない?」

両手を広げて、今、この場の状況を吾川さんが説明をする。

「あの赤黒い魔力は、翼の力で浄化した分を除けば、邪の女がすべて吸い取ってしまった。更に神社に蓄えられていたもともとの魔力も、この黒い糸で吸い上げられてる」

先ほどから、さらなる力を求めて、ボク達に糸が伸びてきている。
邪の女は、吸い上げた魔力を使って完全に復活して、さらに羽の赤い目玉模様もくっきりと縁どられた。

「あの状態の邪の女がここから解き放たれたら、最悪の未来の到来は間違いないよね」

吾川さんは咲夜さんの肩に手を置いて、尚も続けた。

「そうなる前に、咲夜の力で結界を貼れないかな?できるよね、御朱印を描いていたんでしょ?」
「御朱印は…そうだけど、結界ってのは基本そういうもんじゃないんだって!鳥居やしめ縄みたいに、視覚的に分かりやすい境界を作って、そこを聖域として精神的に区切ることでっ!――境界を作って、、、区切る――」

何かに気づいた様子で、口元に手を当てて反芻する咲夜さん。
肩から手を除けて、吾川さんはニッと口の端を上げて頷いた。

「吾川さん…無茶ぶりって知ってる?御朱印描くのって時間も精神力も結構必要なんだけど?時間、ないこの状況で量産まで…」
「うん!頑張ってねっ」
「鬼ぃ…」

吾川さんは「はいはい」って適当に相槌を打って、スルッと咲夜さんの言葉を受け流して、皆へ声を飛ばす。

「4つに分かれよう、咲夜と悟と俺はここに残るよ、それ以外で一組はできるだけこの奥のご神木を守る、もう一組は神社の鳥居、残りは一番遠いしめ縄のある石の所へ!」
「植物系なら俺だ!俺と狭山がご神木を守る」

直ぐに翼が声をあげて、それに続くように薫さんが声を発する

「俺は鳥居だな、しめ縄だと俺の魔法じゃ逆に燃やしかねないから」
「じゃあ、オレが一緒に行く!炎と風は多分きっと相性が良いはずだから」
「おう、じゃあ、行こう!」

2人が去ったあと、残されたのは侑李さんと彗さんだ。
顔を見合わせて、無言で頷く。

「しめ縄の方に、急ごうか」
「分かった、行く。吾川さん!気を付けてね」
「うん、二人とも頑張って!俺と咲夜の事は悟が守ってくれるはずだから大丈夫!」

吾川さんに送り出されて、彗さんは何か言いたそうに悟さんを少し眺めていたけど、やがて二人はお社の奥の方へと走って行く。

「さ、俺らも行くぞ!」って翼に促され、ボクも走り始めた。
咲夜さんが結界を張るまで、何としても守らなくちゃって、ぎゅって手を握りしめる。
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