108界目の正直:異世界召喚はもうイヤだ!

阿都

文字の大きさ
35 / 57
第3章「英雄を探して」

05,頼もしいパートナー

しおりを挟む
「今はまだ詳しく話せないけれど、私は『名なしの英雄』が行方不明だってことを知っているわ。だから私もずっと探してきたのよ。そんな私と、カズの行動が似ていたから、疑問を持ったの」

 シアは、まっすぐ俺を見ている。

「もしかしたらカズも『英雄』を探しているんじゃないか、と思った。だから……」
「いつもついてきたのか。なるほど、俺が新しい情報を持っているかもしれないって考えたんだな?」
「……そうよ。今更だけれど、迷惑だったわよね。ごめんなさい」

 謝る態度すら堂々としていた。
 偽りを感じさせない。
 真摯と言ってもいいほど、シアは真正面から俺に向き合っていた。

「そんなカズに教団が接触して、即日ギルドも手のひらを返したでしょう?」
「英雄を探しているせいで国やギルドに警戒されていたはずの男の立場が急に変わった。そりゃ気になるよなぁ」
「そう。英雄の行方についてなにか進展があったから、対応が変わったんじゃないか、と思ったわ。教団があなたに依頼したのも、もともとあなたが英雄を探していて、何か掴んでいるからじゃないの?」

 さすがのシアも、本物の女神様から神託があって依頼になりました、なんてトンデモ事実には、調査も想像も届かなかったようだ。

 まぁ、真実はもっと奇天烈だけどね。
 異世界から来た俺が女神様と一緒になって、この世界で起こる「何か」に対処するために頑張ってます! とか、頭がおかしいと思われるよなぁ。

「こんなことが頼める立場ではないことはわかってるわ。でも、もしカズの目的が『英雄』を見つけることなら、一緒に連れて行ってほしいの。邪魔はしないし、私の目的は彼女に会って話をすることだから、それ以上は望まない」

 シアの言葉も態度も、信用に値するように思える。
 第一、たかが40日程度といっても、仲間として付き合ってきた相手だ。
 俺自身、すでにシアを信頼し始めている。

 それにシアと英雄の間には、なんらかの関係があるのは本当のようだ。

 これって俺から情報を引き出すために、カマをかけているのかな。
 わざと口を滑らせてみせて、一定の情報を持っていることをアピールしているのか?

 それはともかく、俺も決断のときだな。

「依頼である以上、守秘義務がある。それは分かってるよな? だから、英雄云々に関してはノーコメント。関係あるとも言えないし、ないとも言えない」
「……そう。そうよね。無理を言ってごめんなさい」

 シアは、かすかに自嘲気味の笑みを浮かべて、引き下がろうとした。

 ……らしくないなぁ、シア。
 ここはそうじゃないだろ?

「シア。英雄に関しては何も言えない」
「ええ、分かっているわ」
「だけど、一緒に来る分にはかまわないよ」
「え?」

 俺の言いたいことが伝わったみたいだ。
 うつむいていた顔を跳ね上げ、みるみるうちに瞳に生気が戻ってくる。

 これだけの告白を受けて、旅の同行を認めるということは、シアの質問に肯定で返したも同じことだもんな。

 俺はわざといつも通りに、軽口を叩いてみせる

「ダメって言ってもついてくる。それがシアだろ?」
「ッ! そ、そうよ。一緒に行くわ! 当然でしょ!」
「うん。知ってた。分かってた」
「なによ。その投げやりな言い方は! 私じゃ不満なの?」

 シアも合わせてきた。
 そうそう。この方が俺たちらしいよな。

「不満もなにも、残念だな。うん」
「え? なにが?」
「あの熱烈なアタックの裏にそんな思惑が隠されていたとは、ぜんぜん気が付かなかった。もうちょっとで俺のことを本気で好きなのかと勘違いするところだったよ」
「え……。あ、それは……」
「トリーシャやハリエットも焚き付けるからさ。もしかしたら、って思い始めていたのに」
「え、えっと。その。あ、あのね?」
「女の子って怖いな。もう騙されないぞ?」
「……だ、騙していたわけじゃないんだけど」
「うん。知ってるよ」
「え?」
「俺のこと、男扱いしてないだけだよなー」
「って、なによ! そもそもカズが私のことを女扱いしてないじゃない!」
「そんなことないぞー」
「またそんな投げやりな言い方で!」

 いつものノリで話している内に、シアも緊張がほぐれたみたいで、やっと自然に笑ってくれた。
 うん。やっぱり美人は笑っている方がいいよな。

 ……半分は怒りに満ちた野獣のような微笑みなので、生命の危険を感じるけど。
 からかいすぎるのはやめておこう。イメージワード8の大法術なんて、本気で死ねる。

 明日の出発も早いことだし、これ以上はシアの堪忍袋が切れそうでもあるので、俺はあてがわれた部屋に戻ることにした。

 ギルドはちゃんとシングルルームを2つとってくれたんだよ。
 ありがたや。昨晩のような苦行はもう経験したくありません。

「あ、シア。1つだけ忠告というか、約束ごとな」
「なに?」
「世間一般では、英雄は男ということになっているから。知ってると思うけど発言には気をつけて」
「あ……」

 シアは、何かに気がつき目を瞬かせると、噛みしめるように頷いた。

 まぁ、情報交換というか、サービスというか。
 さっきの発言のなかで、シアは英雄のことを『彼女』と呼んでいた。
 確信をもってそう言ったのか。それとも、本当に英雄が女なのか確認しようとしたのかは分からない。
 どちらにしても「英雄は女性で確実」ということを伝えて、シアの推理を認めておいたほうがいいだろう。
 
 これからは、一緒に英雄を探すパートナーだ。
 シアが持っている情報と今までの考察も頼りにしている、と伝えておくことは大切だと思う。

 どういう経緯で、シアがその真実にたどり着いたのか。
 それはもっと信頼してもらえたら、説明してくれるだろうし。

 今後を楽しみに、信じてもらえるように頑張るとするかな。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...