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第一章 日常の終わりと崩壊の始まり
5話 そうだ……俺は嫌いだった。
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そして、俺達は都心部へ向かう。
アドレナリンがどばどばで、その時は興奮状態に満ちていた。両手を組みながら背伸びをして、窓に向かって呟いた。
「遠出なんて初めてだからワクワクすんなぁー。早く着かねえかなぁ」
若干大人の対応で、樹は俺の興奮を少し落ち着かせる。
「そんなに急がなくてもちゃんと着くからゆっくり待ってなよ」
「そうだな」
そうやって、ある程度の距離を過ぎていた。もう、その時は近かった。俺は身体がどっと疲れたのか、朝食を摂りすぎたのか、少し胸やけしてきた感じが……。
「なあ、なんか疲れないか?」
「そうか?俺は全然大丈夫だけど、颯はさっきずっとソワソワしてたからなんじゃない?」
中学生とはいえ、やはり無意識的な常識と、いざという時に必要な常識、必要なものなんて持ち合わせるわけもなく。
「そういえば、この列車、特急快速だから販売店員さんが居ると思うから、もしまだしんどそうなら言ってみれば?」
「うん……」
「そうする」と、まで言いそうだったけどなんか嫌な予感がして喋る気になれなかった。まもなく販売員のお姉さんが俺達の車両に来て、樹は心配になって早速声を掛けた。
「ビールにお茶、アイスクリームはいかがですかー」
「あ、あの、すいません」
俺達が中学生くらいの年だと気付いた彼女は優しく膝をついて対応する。
「ほら、颯、ちゃんと言えよ」
その時、お姉さんは、なぜか右手にビニール袋を持っていた。それを見た俺は、
「……あ、あの……それをくださ——」
「はい、ここにだして!」
「おおうぇぇぇぇ」
咄嗟に口元に開かれた袋に胃の中の全てを出してしまった……。慌てた樹が背中をさすってくれる。だけど樹、ごめん。それされると余計に——。
「おい嘘だろ颯!大丈夫か!」
「ぼるぇええぇぇ」
「おい……俺まで出そうじゃねえかよ」
見かねた俺達に、お姉さんは流石の熟練対応で、俺達を宥めた。
「大丈夫だよ、乗り物酔いだね。キミたち今日は二人で?」
「は、はい」
「こんな若いのに偉いね、この子はもしかして初めて電車に乗った?」
「そうなんです。すいません、迷惑かけちゃって」
お姉さんは笑顔で首を振る。
「ううん、気にしないで。この先も長いから、もう少しだけがんばってね」
そんな波瀾万丈なスタートで、俺達は初めての日帰り二人旅に出たんだ。散々だったけど、すげぇ楽しかった一日だったのを、今でも鮮明に覚えてる。野球グッズを買ったり、東都ドームの目の前まで行って写真を撮ったりして。スポーチャにも行って山程汗をかいた。本当に楽しかった。
帰りも、吐くギリギリ手前まで来てたけど、流石にそれは耐えた。それ用の袋も用意はしてたけど、袋を見ただけで吐きそうになるからポケット閉まったまま、準備はせずに頑張った。本当に頑張った。誰か、俺を褒めてくれ。
---------
あの何時間もの中で、得られた思い出は、数十秒の苦痛を完全に跳ね返すくらいに培われた。出来る事ならもう一度、そう思いふけながら、今朝も電車に乗ってみたはいいものの、
「ぼるぇええぇぇ」
「ったくお前はホントに、まだまだガキなんだから」
「……ごめん」
間に合わずに地面に落ちてしまったモノを夕華梨さんは、持っていたポケットティッシュで使い切るまで拭いてくれて、それを袋に詰めると車両にあるトイレに捨てに行った。席に戻ってくると、夕華梨さんは疲れた顔の俺に水を渡して、ハンカチで口元まで拭いてくれた。
「前に乗った時もそうだったのか?」
「うん……」
「本当にお前って世話が焼けるんだから」
これに関しては何も言い返せなかった。
「わりぃ」
「はは、気にすんな。こういう時はな、颯。寝ちまえ」
「寝るのか?電車の旅は楽しいぞ?勿体ないじゃないか」
「お前それで疲れられてもな、これから先はもっとしんどくなるぞ」
「そうなのか?」
「ああ、だからあと一時間半はかかるだろうから、もう寝てな」
「わかったよ」
そうして、俺は電車の中で初めて寝ることにした。思っていたよりすんなりと寝れそうだ。身体が揺れるな……、もう、目が……。
「——起きろ、もう着いたぞ」
ん?
「え?はや」
「よく寝れたのか?」
なんか、ふかふかする。
「ああ、おかげさまで。あんた、枕まで持ってたのか?なんでも用意してるんだな」
耳元でクスクスと笑われる声が聞こえた。
「何笑って——、なっ!」
「颯、私の膝枕で、本当に枕だと思って寝てたのか、あははは」
「っるせえ!もう、なんであんたの膝で寝かされなきゃなんねんだよ」
「んな事言って、颯お前、よだれ垂らして気持ちよく寝てたぞ」
膝元にあった濡れたハンカチを見て、何回やらかしてんだと、とことん自分が情けなくなる。
「うーっわ、まじかよ、ごめん」
「ほら、さっさと降りるぞ」
終始ブルーな気持ちで乗り終えた電車の旅は、こうやって幕を閉じる。しかし、ここから本当の試練がやってくる。
「ちょっと待て。なんだよこれ……」
あの和やかな雰囲気とは打って変わり、夕華梨さんはまた、あの時の顔で自分の地元を見つめていた。まるで恨みがあるような目で。
「これが、私の現在の地元だ」
そこに見えた景色は、まるで戦争後に崩壊したレベルの街並みだった。いや、街なんてもう過去の話の様に酷く廃れている。ただ、最も衝撃だった事がある。
「人が……みんな、死んでる……」
衝撃的すぎて開いた瞳孔がおさまらない。
「ずっと、この町は……このままだ」
「おい……樹は⁈」
アドレナリンがどばどばで、その時は興奮状態に満ちていた。両手を組みながら背伸びをして、窓に向かって呟いた。
「遠出なんて初めてだからワクワクすんなぁー。早く着かねえかなぁ」
若干大人の対応で、樹は俺の興奮を少し落ち着かせる。
「そんなに急がなくてもちゃんと着くからゆっくり待ってなよ」
「そうだな」
そうやって、ある程度の距離を過ぎていた。もう、その時は近かった。俺は身体がどっと疲れたのか、朝食を摂りすぎたのか、少し胸やけしてきた感じが……。
「なあ、なんか疲れないか?」
「そうか?俺は全然大丈夫だけど、颯はさっきずっとソワソワしてたからなんじゃない?」
中学生とはいえ、やはり無意識的な常識と、いざという時に必要な常識、必要なものなんて持ち合わせるわけもなく。
「そういえば、この列車、特急快速だから販売店員さんが居ると思うから、もしまだしんどそうなら言ってみれば?」
「うん……」
「そうする」と、まで言いそうだったけどなんか嫌な予感がして喋る気になれなかった。まもなく販売員のお姉さんが俺達の車両に来て、樹は心配になって早速声を掛けた。
「ビールにお茶、アイスクリームはいかがですかー」
「あ、あの、すいません」
俺達が中学生くらいの年だと気付いた彼女は優しく膝をついて対応する。
「ほら、颯、ちゃんと言えよ」
その時、お姉さんは、なぜか右手にビニール袋を持っていた。それを見た俺は、
「……あ、あの……それをくださ——」
「はい、ここにだして!」
「おおうぇぇぇぇ」
咄嗟に口元に開かれた袋に胃の中の全てを出してしまった……。慌てた樹が背中をさすってくれる。だけど樹、ごめん。それされると余計に——。
「おい嘘だろ颯!大丈夫か!」
「ぼるぇええぇぇ」
「おい……俺まで出そうじゃねえかよ」
見かねた俺達に、お姉さんは流石の熟練対応で、俺達を宥めた。
「大丈夫だよ、乗り物酔いだね。キミたち今日は二人で?」
「は、はい」
「こんな若いのに偉いね、この子はもしかして初めて電車に乗った?」
「そうなんです。すいません、迷惑かけちゃって」
お姉さんは笑顔で首を振る。
「ううん、気にしないで。この先も長いから、もう少しだけがんばってね」
そんな波瀾万丈なスタートで、俺達は初めての日帰り二人旅に出たんだ。散々だったけど、すげぇ楽しかった一日だったのを、今でも鮮明に覚えてる。野球グッズを買ったり、東都ドームの目の前まで行って写真を撮ったりして。スポーチャにも行って山程汗をかいた。本当に楽しかった。
帰りも、吐くギリギリ手前まで来てたけど、流石にそれは耐えた。それ用の袋も用意はしてたけど、袋を見ただけで吐きそうになるからポケット閉まったまま、準備はせずに頑張った。本当に頑張った。誰か、俺を褒めてくれ。
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あの何時間もの中で、得られた思い出は、数十秒の苦痛を完全に跳ね返すくらいに培われた。出来る事ならもう一度、そう思いふけながら、今朝も電車に乗ってみたはいいものの、
「ぼるぇええぇぇ」
「ったくお前はホントに、まだまだガキなんだから」
「……ごめん」
間に合わずに地面に落ちてしまったモノを夕華梨さんは、持っていたポケットティッシュで使い切るまで拭いてくれて、それを袋に詰めると車両にあるトイレに捨てに行った。席に戻ってくると、夕華梨さんは疲れた顔の俺に水を渡して、ハンカチで口元まで拭いてくれた。
「前に乗った時もそうだったのか?」
「うん……」
「本当にお前って世話が焼けるんだから」
これに関しては何も言い返せなかった。
「わりぃ」
「はは、気にすんな。こういう時はな、颯。寝ちまえ」
「寝るのか?電車の旅は楽しいぞ?勿体ないじゃないか」
「お前それで疲れられてもな、これから先はもっとしんどくなるぞ」
「そうなのか?」
「ああ、だからあと一時間半はかかるだろうから、もう寝てな」
「わかったよ」
そうして、俺は電車の中で初めて寝ることにした。思っていたよりすんなりと寝れそうだ。身体が揺れるな……、もう、目が……。
「——起きろ、もう着いたぞ」
ん?
「え?はや」
「よく寝れたのか?」
なんか、ふかふかする。
「ああ、おかげさまで。あんた、枕まで持ってたのか?なんでも用意してるんだな」
耳元でクスクスと笑われる声が聞こえた。
「何笑って——、なっ!」
「颯、私の膝枕で、本当に枕だと思って寝てたのか、あははは」
「っるせえ!もう、なんであんたの膝で寝かされなきゃなんねんだよ」
「んな事言って、颯お前、よだれ垂らして気持ちよく寝てたぞ」
膝元にあった濡れたハンカチを見て、何回やらかしてんだと、とことん自分が情けなくなる。
「うーっわ、まじかよ、ごめん」
「ほら、さっさと降りるぞ」
終始ブルーな気持ちで乗り終えた電車の旅は、こうやって幕を閉じる。しかし、ここから本当の試練がやってくる。
「ちょっと待て。なんだよこれ……」
あの和やかな雰囲気とは打って変わり、夕華梨さんはまた、あの時の顔で自分の地元を見つめていた。まるで恨みがあるような目で。
「これが、私の現在の地元だ」
そこに見えた景色は、まるで戦争後に崩壊したレベルの街並みだった。いや、街なんてもう過去の話の様に酷く廃れている。ただ、最も衝撃だった事がある。
「人が……みんな、死んでる……」
衝撃的すぎて開いた瞳孔がおさまらない。
「ずっと、この町は……このままだ」
「おい……樹は⁈」
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